NKLA2017!ロサンゼルスが動物と一緒に生まれ変わります
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NKLAはNo-kill Los Angelesの略なのですが、killという単語が使われているとなにやら物騒な話のように聞こえます。これは人間にとってではなく動物の生命と尊厳を守るために行われている取り組みです。
2002年にロサンゼルスのアニマルシェルターに保護された動物が年間に50,000匹殺処分されたことが発端となり、これ以上保護された動物を安楽死などの方法で殺処分しないようにするための運動が始まりました。
もし動物たちに身体的障害や精神的トラウマがあったとしても、年齢にかかわらず全ての動物が人間の友人として扱われることが理想として掲げられ、シェルターにいる動物を殺処分しないというNKLAが目指す目標は今年2017年に達成の年となります。
諸事情でロサンゼルスのアニマルシェルターに引き取られた、住む家や家族のいない動物たちの現状とNKLAの活動についてリポートします。
NKLAの流れ
ジェームス・ハン第40代ロサンゼルス市長が2003年に「今後5年間でロサンゼルスをno-kill cityにする」と公約するまで、ロサンゼルスのアニマルシェルターでは年間に約30,000~50,000匹の動物が殺処分されていました。
なぜなら当時の現行法で動物達は最低4日間は保護されていましたが、 ロサンゼルスシティのアニマルシェルターの施設が過密状態だったためすぐに安楽死の処置がとられていたからです。
公約は次の市長へも引き継がれ、NKLAキャンペーンはベストフレンズ・アニマル・ソサイエティの牽引によりロサンゼルスシティと50以上の地元の動物愛護団体が連携して行われました。
NKLAに賛同する動物愛護団体は現在でも増え続け、今ではゆうに100を超えています。
キャンペーンが始まって数年の間に殺処分の数は少なくなりましたが、完全にno-killを実現することは難しく、2011年の段階でも達成率はまだ57.7%で年間約18,000匹の動物が殺処分されました。
アニマルシェルターには、ロサンゼルスシティの施設と非営利団体が運営するプライベート施設があり、個々にポリシーや動物の扱い方が違うため、なかなか殺処分数を減らすことができなかったのです。
最初は実現不可能なゴールのように思われましたが、ベストフレンズ・アニマル・ソサイエティの地道な草の根活動は続けられました。
それから5年後の2016年、保護された約43,700匹のうち82.7%にあたる約36,100匹が施設から新しい家族や引き取り手の元へ手渡されました。
no-killとはいえ病気が重かったり凶暴すぎて社会に適合できない約1割の動物は安楽死させる方針です。健康で縁組可能な9割の動物をシェルターから新しい家族へ送り届けたり、安全なホームをみつけてあげることがゴールとなります。
今年2017年には現実的にその数値が見えてきています。2003年に始まった活動が14年という歳月をかけてカウントダウンの段階にまでこぎつけました。
アニマルシェルターの動物たち
アニマルシェルターに引き取られる動物は大半が犬と猫です。家を抜け出して迷子になったり、飼い主が世話をできないため保護されたりと、施設に来る理由はさまざまです。
実際、迷子のペットはかなり多く、街中やペットショップに「探しています」と写真入りで自作のポスターがたくさん貼り付けてあります。
必死で探してくれる家族の元に帰れる幸運なペットもいれば、飼育放棄した飼い主が「道端で拾った」とアニマルシェルターへ自分のペットを連れてくる例もあります。
シェルターが飼い主から直接引き取る場合は有料になるため拾ったことにしてしまうのです。
ロサンゼルスシティのアニマルシェルターに入った動物はメディカルチェックを受けチップがつけられます。雨が少ないので、犬が収容されるのは半屋外の風通しのよい建物です。
ペットショップでのディスプレイのように人間側から見やすい作りではなく、ケージの中でも行ったり来たりできるよう表と裏の両サイドを開けて細長く設計されています。大型犬は1匹、小型犬は3匹まで一緒に入っています。
猫は一棟に集められケージが与えられています。部屋の中央にガラスで囲まれたプレイエリアがあり、もらい手はそこで猫と遊んで相性を見ます。
プレイエリアには日課として時間になると運動のために順番に入ります。逃げ出し防止のために棟もプレイエリアもダブルドアになっていて最初のドアを閉めないと次のドアが開かないようになっています。
ベストフレンズ・アニマル・ソサイエティの施設は開放的で明るくとてもモダンです。
団体としての規模が大きく賛同者が多いのでパブリックの施設とは設備に差がありますが、ロサンゼルスシティのアニマルシェルターも不潔さはなく、きちんと動物たちの生活が守られています。
ピットブルが多い理由と非合法のアニマルファイティング
犬のシェルター内で目立つのはピットブルと高齢の犬です。高齢の犬は種類にかかわらずなかなか引き取り手がないのですが、ピットブルはまだ若い成犬が多く収容されています。
ピットブルは、闘犬用として改良されている犬種なので攻撃的な気質が備わっており、頭が良いのできちんとトレーニングすれば大丈夫ですが、 幼少期に躾ができていないと体が大きい上に筋肉が発達しているので飼い主が扱いきれなくなります。
加えて赤ちゃんの頃のかわいさに比べ、成犬になると顔が猛々しくなり、生来の獰猛さと顔相があいまって飼い主が恐怖を覚えて手放してしまいます。
また個人で強い犬を作るために繁殖を繰り返し、必要のない他の兄弟を捨てたり、管理がずさんで犬が逃げ出してしまうというケースもあります。
凶暴なピットブルが野良犬として徘徊していると危険なので、アニマルレスキューが保護してシェルターに連れていく事例も多いです。
いたずらな繁殖で作られた強い犬は、闘犬用としてストリートアニマルファイティングに出されます。これはギャンブルと見なされ非合法です。
禁止されているにも関わらずディーラー側が儲かるシステムのため、毎週末どこかで行われロサンゼルス近辺で問題になっています。
ストリートアニマルファイティングは犬ばかりでなく鶏同士を闘わせるものもあります。一晩で15,000ドル(約168万円)近くの掛け金が動くと言われています。
闘鶏は鶏の足につけた鋭利なナイフで相手を切らせ、どちらかが死んだら勝敗がつきます。
傷ついて死にかけている鶏に強壮剤としてEpinephrine(アドレナリン)という合成ステロイドホルモンを投与し、一時的に血圧をあげて最後まで無理やり闘わせることもあります。
闘犬の場合は両方のピットブルが大半のゲームで息絶えることが多く、勝って生き残った犬は強い血統を残すためにブリード用となります。 またドッグファイティングで優位に勝てるようピットブルを大きくするような改良も行われています。
これらの行為は、非合法ギャンブルという側面だけでなく動物保護的な観点から問題視されています。
殺処分を減らすために
そもそもシェルターに動物がいなければ不要な殺処分をしなくてよいというシンプルな解決方法のため、NKLAでは避妊、去勢の手術を受けられる無料サービスを始めました。
それまでの傾向としては、低所得者地域のアニマルシェルターへたくさんの動物が持ち込まれていました。市中のアニマルクリニックでは、犬は100ドル(約11200円)猫は50ドル(5600円)程度の避妊・去勢手術費用がかかります。
経済的理由からペットに避妊、去勢手術を施す人が少ない低所得者地域に限定し、そのエリアに住む年収40,000ドル(448万円)以下の家庭を無料サービスの対象としました。
1000軒の家庭の5匹の動物を避妊、去勢手術すれば5年間でシェルターに持ち込まれる動物が30%減る計算になります。
ちなみに殺処分数は犬と猫の総数ですが、実際は犬よりも猫のほうが殺処分される割合が大きいです。2011年には生後8週間未満の子猫が7,000匹処分されていて、その数はその年全体の殺処分数の約1/3にあたります。
野良猫が民家で子どもを産み置いていくケースも多いので、子猫がシェルターに連れて行かれてしまいます。その対策としてTNR(Trap-Neuter-Return)という方法があります。トラップ-去勢-返却という流れです。
けっして虐待にならないように箱型の罠をしかけて野良猫を生け捕りし、獣医さんが避妊か去勢手術をします。ワクチン接種をして耳にワクチンと去勢済みであるというチップをつけてからまた野良猫として外へ放します。
この方法で野良猫の繁殖数がおさえられ、シェルターに持ち込まれる猫の数が減りました。
またロサンゼルスでは2013年よりペットショップなどの店頭でペットの販売を禁止しました。puppy millsやbackyard breedersと呼ばれる営利目的で動物を劣悪な環境で生産する業者を牽制する新しい法律です。
ペットショップなどの店頭においてもよいのは、店がシェルターを介して引き取った動物だけです。動物を卸す小売店をなくし、商品として不衛生な環境で動物を乱繁殖させる業者が減ることが期待されています。
その他、縁組料を下げたことをメディアを使って広告したり、ピットブルなどの大型犬が飼えるよう、賃貸物件のオーナーに賃貸規約から体重制限を外してほしいとリクエストする働きかけも行われています。
セレブもNKLAに参加しています
実写版「美女と野獣」の主題歌を歌うアリアナ・グランデの愛犬トラウザーが2015年にバッグブランドCOACHのキャンペーンモデルになりました。
トラウザーはビーグルとチワワのミックス犬でアニマルシェルターから引き取られました。施設からランウェイに行くなんて!!とアリアナはSNSで喜びを綴っています。アリアナは他にも3匹の犬を施設から引き取っています。
COACHはトラウザーの名前でNKLAに寄付をし、アリアナはそれについての感謝をSNSに投稿しています。
ファンやフォロワーが多い有名人がNKLAやその運動を牽引するベストフレンズ・アニマル・ ソサイエティを語ることで民間での認知度があがります。
他にはラックスシャンプーのテレビコマーシャルに出ていたオスカー女優のシャーリーズ・セロンや「レ・ミゼラブル」のコゼット役のアマンダ・セイフリードもベストフレンズ・アニマル・ソサイエティから犬を引き取っています。
シャーリーズ・セロンは、ベストフレンズ・アニマル・ソサイエティの新しい保護施設が避妊、去勢のできる設備をかねた建築物の許可を取るための助力を頼むようロサンゼルス市議会の議長に電話をしています。
アマンダ・セイフリードは「動物を引き取るということは命を救うだけでなく素晴らしい友人にめぐり合うということでもあります。どうか次のペットはシェルターかレスキューから縁組してください。彼らの命すべてが助かるまで一緒に活動しましょう」と呼びかけています。
名前をあげればきりがありませんが、その他多くの有名人、著名人も賛同しています。彼らが声をあげることでNKLAの認知度が高まり殺処分される動物の数が減ります。
犬と縁組
シェルターから動物を引き取るのは簡単です。ロサンゼルスアニマルシェルターの場合、動物の建物を自由に見て回り、ケージに表示してある個別の情報を得ます。
一匹ずつ通し番号で管理されていますが、すでにある名前と生年月日、エサの種類などシェルター側が知りうる範囲の情報が表記されています。
興味のある動物がいたら職員かボランティアの人にケージから出してもらいオープンプレイエリアへ移動します。
遊びながら相性をみたり、歩き方、健康状態など先にチェックしておきたいことを聞き、納得して縁組を決めたら一緒にオフィスへ向かいます。
縁組が決まると職員もボランティアもよかったね!おめでとう!と動物のほうへ声をかける姿が印象的でした。
動物が最後のメディカルチェックをしている間、オフィスのほうで事務手続きをします。運転免許証などの身分証明書を提示し、どこの誰にどの動物が飼われているかが記録されます。
首輪につけるようにと渡されるタグにも管理番号が刻印されているので、万が一逃げ出したり迷子になったとしてもレスキューされれば照会することができます。
費用はその時々によって違いますが、5月はナショナル・アニマル・アドプションウィークとして諸手続きの費用が20ドル(約2240円)になりました。通常はロサンゼルスアニマルシェルターでは120ドル(約13440円)です。
まとめ
ベストフレンズ・アニマル・ソサイエティはno-killキャンペーンを全米に広めていく姿勢を示しています。
途方もない取り組みのようですが、14年前に始まった草の根活動が、今年2017年に実現するのを目の当たりにするともしかしたら無理ではないのかという気がします。
ロサンゼルスで犬が野生のまま群で生きるという選択肢を選ぶことはできません。野良猫もひっそり街の片隅で生きていかなくてはなりません。
人間にとって住みよい環境を整えたのならば、動物と共存し共生していく責任を負わなくてはいけません。
今一度ペットとの共存方法を考え、今年が新しい出発の年になることを願ってやみません!
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