スウェーデンは私のような外国人でも比較的住みやすく、働きやすい国だと感じます。福祉の充実や働く人の権利を守る仕組みが整っていることなど、理由は様々あります。
実際にスウェーデンで会社員として働いていた頃、日本と違う働き方がいくつか目に留まりました。人々は、のんびりするときと頑張るときとでメリハリのある生活を送っている印象を受けました。
プライベートと仕事のどちらも充実させることが可能だと感じたスウェーデンの働き方についてお話ししたいと思います。
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スウェーデンは在宅勤務(リモートワーク)可能
現地で会社勤めをしていたときにありがたかったのが、在宅(リモートワーク)が認められていたことです。普段はオフィス勤務でしたが、体調が悪いときや子供の具合が悪いときなどは、急きょリモートワークに切り替えることが可能でした。
スウェーデンでは、発熱後24時間は学校や保育園に登校してはいけない決まりがあります。そのため、自宅待機期間が長引きます。そういうとき、職場に行かずに自宅で仕事ができるというのは特に助かりました。
また、スウェーデンでは体調不良などのときにマスクをする習慣がなく、風邪など病気の症状がひどいときに出社するのは好まれません。病気を人にうつさないこともマナーの1つだと言えます。
健康と家族が一番という考え方
「体調が悪いけど仕事があって休めない」という状況は、日本なら誰しもが経験のあることですよね。
しかし、スウェーデンでは「健康と家族を大事にすることが最優先」という意識が高いので、個人個人の状況に合った働き方を認めてくれるのです。
リモートワークを可能にするのがノートパソコンです。入社した際に、専用のノートパソコンを1台支給されました。これさえあればどこでも仕事ができるので、本当に助かりました。
スウェーデンでは社員の健康づくりを会社がサポート
スウェーデン人は、健康づくりに余念がありません。医者にかかるのが難しいと言われるスウェーデン。病気になってもなかなか医者に診てもらえなかったり、病気の原因を知るまでに時間がかかってしまったりというのも、残念ながらよくあることです。
そういう観点からも、健康維持のための体力づくりはスウェーデンで暮らす上では不可欠です。
そして、スウェーデン人の健康づくりを後押しするのが「Friskvårdsbidrag (フリスクヴォードビッドラーグ)」という、会社から支給される手当です。「friskvård」は「健康維持のための予防的ケア」というコンセプトです。
ジム会費に使える非課税の手当
通常、スウェーデンの税制では、育児休暇手当、失業手当など各種手当にも課税されます。しかし、このフリスクヴォードビッドラーグは課税されないのです。
この手当が適用されるものとして代表的なのはジムの会費やヨガクラスの会費などです。私が勤務していた会社では、ジム会費の3分の1くらいの手当が支給されていました。
人として健康でいる権利があるのは当然のことながら、会社がそれをサポートしてくれる仕組みは興味深いです。
スウェーデンでは長期間、職場を離れても解雇されない
スウェーデンにはTjänstledighet(シャンステレディグヘット)という休暇があります。 日本語に訳すとサービス休暇となります。
これは雇用されている仕事以外にやりたいことがある場合に取れる休暇で、有給休暇とは異なります。雇用者がある一定期間(たいていの場合6ヶ月間)休職しても解雇されない権利が認められているのです。
休職期間は無給になりますが、この休暇制度を利用すれば解雇されずに職場復帰することができます。休暇が認められるのは、
- 介護が必要な親の面倒を見る
- キャリアアップのための勉強をする
- 自分自身でビジネスを始める
などの場合です。
実際の利用例
私の回りにもこの制度を利用している人が少なからずいました。
前職のポジションをキープしたまま転職
一人は、職場にこの制度を利用して転職してきた人です。
この人の場合、転職先のポジションがそれまでの仕事とは異なる分野だったこともあり、前職のポジションはキープしたままの状態で転職してきました。
新しく転職する仕事が自分に合うかどうかは、やってみるまでは分からないというのが本音ですよね。そういうときにも、元のポジションをキープしたまま安心感を持って新しいことにチャレンジができます。
この制度を利用すれば、キャリアアップにつながっていく可能性も十分に考えられるのです。
両親の介護のために遠く離れた実家へ
私の子供はストックホルム市が運営するカルチャースクールで習い事をしています。そこでお世話になっている習い事の先生も、現在この制度を利用している一人です。
その先生はある日、両親の介護のため、シャンステレディグヘットを利用してストックホルムから400キロ離れた街へと引っ越して行きました。休暇取得を伝えられたのは、実際に休暇に入る2週間前。
しかし、すぐに代わりの先生が手配され、子供のレッスンは普段と変わらずに行われました。
雇用も生み出す休暇制度
シャンステレディグヘット制度を利用する雇用者が出た場合、通常は欠員補充をします。スウェーデンの求人募集には、欠員補充の広告も少なからずあります。
欠員補充のために雇用された人が、そのまま正規雇用になるというのもよくあることのようです。
これらの例のように、仕事を失わずに一定期間、安心してやりたいことに集中できるのはうれしいですよね!
スウェーデンは子連れ出社にも寛容
スウェーデンは子供に優しい国なんだなと実感したのが子供をオフィスに連れて行ったとき。学校の長期休暇中は、オフィスに子供がいるのはよくあることでした。迷惑がられることもなく、むしろ遊び相手にまでなってくれるような接し方でした。
日本で職場に子供を連れて行くのは気が引けますが、スウェーデンではそれもある程度許容されています。
長期休暇時に学童保育がやっていなかったとき、私も子連れで出社したことがありました。また、夕方までオフィスで仕事をしなくてはいけないときには、学校帰りの子供たちがオフィスに来ることもありました。
自然に子供の相手をする大人たち
オフィスには人が集まれるキッチンがあり、そこには大きな卓球台兼テーブルが置いてありました。子供たちは、そこで学校の宿題、ゲームなどをして時間を過ごすことが多かったです。
勉強をしていると、同僚たちが「頑張ってるね!」とフルーツやお菓子などをあげたり、ときには卓球の相手をしてくれたりすることもあったようです。
他の社員も子連れ出社することがよくありました。私が働いていた会社はアパレル関係だったのですが、デザイン室にはたくさんのカラーペンやデザインノートがあり、小さな子供にはそれらを貸してあげることもありました。
大人が仕事で実際に使うものを遊びの道具として使わせてもらえるのは、子供にとってはうれしいことでしょうね。
子供がいても仕事はきっちりと
スウェーデンでは家族のことは何よりも大事なこととして認識されている印象を受けます。仕事も家庭も両立できる働き方が当然のこととして認められているため、個人の家庭事情に対してとても理解度が高く、寛容的だと言えます。
つまり、自分のライフスタイルに合わせて仕事をすることがある程度許容されているのですが、中身がともなっていなければ、残念ながら仕事ができていないと見なされてしまいます。
逆に、自由に働きつつもきちんと仕事が達成できていればそれは良しとされるところがあります。たとえ子供を連れて出社しても、やるべきことはやる。仕事に対して自分の責任を全うしなくてはいけないのは当然のことです。
会社と同僚に助けられながら仕事をこなす
仕事を達成するためには、自己責任で管理しなくてはいけません。
個人主義が徹底しているスウェーデンでは、個人のやり方に対しては口出しせずに尊重します。一方で、仕事の出来そのものに対しては厳しく評価されるので、自己責任において仕事をやり遂げることはとても大事なことです。
仕事をきちんとしていることが大前提ですが、やむをえないときに会社や従業員が柔軟に子育てしている人を支えてくれるのは本当に助かりました。
働く親の姿は子供にとっても新鮮
また、いつも家で見る親とは違う、一生懸命働いている姿を見ることで子供が得るものは大きいと感じます。子供にとって、自分の親が実際に働く姿を目にする機会は、普通は少ないと思います。
そうした意味でも、会社に子供を連れて行ける環境があることはプラスに働いてくれそうです。
スウェーデンの金曜日はくつろぎの日
金曜日はオフィス全体がリラックスモードでした。15時くらいには「良い週末を!」と同僚に声をかけて退社する人もいました。思い思いに金曜日の夜を過ごすため、足早に家路につくのです。
スウェーデンには「Fredagsmys(フリーダスミュース)」という言葉があります。fredagsは「金曜日」、mysは「くつろげる」を意味し、「金曜日に楽しいことをしよう」というスウェーデン語特有の造語です。
平日の締めくくり、金曜日をくつろいで楽しく過ごすというスウェーデンらしいコンセプトを含んだ言葉なのです。
オンからオフに切り替える日
金曜日は平日の忙しさを労い、週末に向けて気持ちをリセットする日として、特に大事な日とされています。スウェーデンでは金曜日はタコスの日と決められていて、家族でゆっくりタコスを食べながら映画を見たりする人が多いようです。
スウェーデン の人はオンとオフの切り替えがとても上手だと、週末の過ごし方からもうかがえます。金曜日に足早にオフィスを後にする人を見ると、改めてスウェーデン流のゆとりある働き方を実感します。
アフターワークはオフィスで
また、金曜日の夕方にはオフィスでワインやビールを開けて、仲間内でアフターワークを楽しんだりもしました。
働き始めた頃、オフィスの冷蔵庫にたくさんのビールやシャンパンなどが入っているのを見て、なぜオフィスに大量のアルコールがあるのかと不思議に思ったものでした。
後に、それらのアルコール類は金曜日にオフィスで消費するものだったということがわかりました。仲間内でお金を出し合って購入し、それが冷蔵庫に冷やしてある状態だったのです。
職場ではいつも音楽が流れていたのですが、金曜日は15時くらいからだんだんとボリュームが上がってきます。職場で音楽が大きな音でかかっていることに慣れていなかったので、最初は戸惑いました。
仕事だけではないオフィスでの過ごし方
もちろん毎週というわけではありませんが、職場で仕事だけではない別の過ごし方や楽しみがあるのは、同僚とコミュニケーションを取る上でもいいことだと思います。
このように、私が働いていた会社ではとにかく、リラックスした雰囲気でその週を終えることが多かったです。
まとめ~メリハリと余裕のある働き方
会社員として働くにしても、自由度がかなり高いというのがスウェーデン流と言えます。
個々の権利が認められていることで、働く側の気持ちに余裕が生まれ、逆に仕事の生産性を上げているのかもしれません。人口が少ないスウェーデンでも世界に進出する大企業が多いのは、こうした背景があるからとも考えられます。
自由度が高い働き方ができる反面、実力主義の一面もあります。仕事ができるかできないかはきちんと評価されます。のんびりばかりはしていられませんが、「メリハリをつけて仕事をすること」がスウェーデンの働き方の特徴だと言えるでしょう。
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