日本で事実婚は非常に少ないですよね。ほとんどが入籍をするし、「籍を入れる」ということも書類一枚でとても簡潔です。
では南米のアルゼンチンではどうなのでしょうか?
今回は日本では考えられない少しめんどくさい婚姻成立までの道のりと国際結婚について、アルゼンチンでは当たり前の「事実婚」をご紹介します。
アルゼンチンの婚姻成立までの長~い道のり
日本と違い、アルゼンチンの法律上で婚姻関係になるには紙一枚では済みません。
日本ではありえないのですが、アルゼンチンでは大統領が変わると法律もコロコロ変わります。国際結婚の話の前に、まずアルゼンチン人同士の事実婚をご紹介します。
アルゼンチン家庭の大多数が事実婚という選択
アルゼンチン人同士の結婚でも日本とは違い、面倒な手続きがたくさんあるので、アルゼンチンの一般家庭では事実婚が多いのです。
日本と違いアルゼンチンは3年以上のお付き合いの期間があれば内縁関係とみなされます。
メリット1、付き合い始めてから3年で内縁関係とみなされるアルゼンチン
アルゼンチンはお付き合いを含めての3年なので、婚姻関係を結ばなくても、法的には夫婦と同じ扱いになります。つまり財産分与ですら婚姻関係と同じ扱いになるんです。
3年間で内縁とみなされるので、事実婚が一般家庭に定着しているのです。
メリット2、アルゼンチンでは名字の変更もない
日本では当たり前の氏名の変更もほとんどされません。例えば「山田花子さん」が、「ホセ・フェルナンデスさん」と結婚したとしても、名前は山田花子さんのままです。
結婚している人のアルゼンチン流の公的な名乗り方としては、「花子・山田・デ・フェルナンデスさん」になります。直訳すると、「フェルナンデスさん家の山田花子さん」になり、花子・フェルナンデスさんにはなりません。
アルゼンチンでは名前が変わるということは非常に大変なことなのです。希望をすればできないこともないですが、あまり一般的ではありません。
メリット3、アルゼンチンで産まれたら、たとえ両親が日本人でも子供はアルゼンチン人
そして一番多い、事実婚で子供がいるケース。私もそのケースなんですが、アルゼンチンは出生地主義の国。どこの国籍の両親から生まれた子供でも、アルゼンチン国内で生まれた子はアルゼンチン人なんです。
メリット4、子供がアルゼンチン人であれば、無条件で永住権が出る
アルゼンチン人の両親には、誰であろうとアルゼンチンの永住権を無条件で交付し、子供に関しての親権や監督権も全て平等に配分されます。
日本では両親が入籍していないと生まれた子供は非嫡出子になり、戸籍にもそのような記載がされてしまいます。
メリット5、結婚していなくても、出生証明に両親の名前が記載される
アルゼンチンは出生証明書というものがあり、そこにキッチリと父親と母親の名前が記載されています。両親が婚姻関係を結んでいるか、事実婚なのかは子供に関係ないのです。
なので、アルゼンチンの人もちろん、移民の国アルゼンチンにいる外国人カップルは、アルゼンチン国内で妊娠出産をし、そのまま事実婚の状態でいることが多いのです。
婚姻しなくても3年以上のお付き合いで内縁関係に見られて、子供が生まれれば永住権が無条件で出ます。婚姻関係を結ばないからといって、不便なことが全くないんです。
アルゼンチンで国際結婚をするには?
相手の国籍や住んでいる地域にもよりますが、ここではブエノスアイレス市内に在住のアルゼンチン人と、日本人の国際結婚についてご紹介していきます。
決してこの記事が全てのケースに当てはまる訳でもなく、2016年3月現在でのお話です。2016年度から大統領が変わり、様々な法律がガラリと変わっているので必ずご自身で確認をしてくださいね!
アルゼンチンで国際結婚するときの必要書類
- 相手のアルゼンチン人の住所
- 相手アルゼンチン人のDNI(身分証明書)
- 自分の身分証明書(パスポートでOK)
- 血液検査の結果
- 保証人(市内に住むアルゼンチン人2人)
- 公認の日本語通訳者
上記のものをそろえれば準備完了です。
血液検査
アルゼンチンで国際結婚をするには血液検査の結果が必要です。指定された国立病院で両人の血液検査を受けなければなりません。まずは指定された国立病院で診察券を作る事から始まります。
アルゼンチンでは診察券を作るだけでも数時間の長丁場になります。病院で必要なのは身分証明書のみ、私たち外国人は査証等の必要はなく、パスポートで大丈夫です。
アルゼンチンの国立病院は無料
過去にも何度かご紹介しましたが、アルゼンチンの国公立の病院は無料なので、患者数もハンパないんです。だから朝一番の窓口が空く1時間以上前(朝7時くらい)から、ものすごい行列ができます。
その行列をクリアし、診察券をゲットしたら次は血液検査の予約です。そう、もちろん予約コーナーも尋常じゃない行列です。予約のコーナーも全科一緒になっている場合が多いので、ここでも数時間かかってしまいます。
その上で指定された日時に血液検査を受け、後日結果を取りに行き、血液検査の書類は揃います。
入籍当日に立ち会う保証人
この保証人は誰でも良い訳ではありません。ブエノスアイレス市内に住所のあるアルゼンチン人でないといけません。
しかも2人必要です。
入籍の当日には、彼らにも仕事を休んでもらう必要があります。
公的な日本語翻訳者
外国人の私たちには翻訳者が必要です。法律的な事なので、しっかりと言葉を理解した上でないとダメですからね。
数ヶ月待ちもありえる役所の予約
この条件を全て準備したら、インターネット上で日付と時間を予約して、予約した日の1週間前に必要書類と血液検査の結果を持参し、役所(Registro Civil/レジストロシビル)に提出しに行きます。
地区によってはとても混んでいて数か月待ちなんてこともあります。
入籍当日
そしてめでたく当日になったら、結婚する両人・保証人二名・その他の友人知人が、役所の中にある結婚式場のような部屋に集まります。
裁判官立会いのもと、色んな法律上の説明を受けて、同意するならば誓約書にサインをし、婚姻関係が法的に認められ、結婚証明書が交付されます。
日本のように紙一枚に記入・捺印だけではないんです。
日本国内でも国際結婚の手続きは手続きが複雑
日本の法律上で籍を入れるのが簡単なのは日本人同士だけです。アルゼンチン人とのケースだけではなく、日本人と外国人の国際結婚になると入管や大使館など、準備する書類がかなりあります。
日本で国際結婚する場合は国外で結婚をしてから、日本の法律上で婚姻関係になった方が楽な場合もあります。
日本の滞在ビザが切れかかっている外国人と結婚する場合はさらに大変
特に日本国内の滞在ビザが切れかかっている外国人との結婚は、本当に本当に本っ当ーーーーーーに大変です。ビザ目的の偽りの結婚だと疑いをかけられようもんなら、神経を逆なでするような内容の質問だってされる場合があります。
場合によっては何の裏付けを取りたいのか分からない、男女間のとってもプライベートな、耳を疑うような内容の質問をされたりもします。そういうことを全て踏まえて
- 日本で婚姻関係を結ぶのがいいのか
- 海外で籍を入れてから日本の法律的に婚姻関係を結ぶのか
- 事実婚を選ぶのか
国際結婚を考えている人は大変だと思いますが、一度考えてみるといいかもしれません。
まとめ
日本では当たり前の入籍という事は、海外からすると当たり前ではありません。戸籍制度という観点からして考え方が違います。先ほども触れましたが、私はアルゼンチン人と事実婚で、アルゼンチン国内で出産をし、息子の母親として永住権を獲得しました。
今まで何の不便もありませんでしたし、現状ではアルゼンチンに住んでいるので、婚姻関係を結ぶ必要性すらあまり感じていません。ただ、両親に対しては寂しい思いをさせてしまってるな、と思います。
生まれたばかりの孫はもちろん、花嫁姿すら見せてあげられませんでした。これから将来、私が婚姻関係を結ぶ日は…….きっと日本に長期間滞在することが決まった時だと思います。