二千年の歴史を誇る、フランスの古都リヨン。古代ローマ時代から今に至るまで、多くの人々がこの街に生き、長い歴史の1ページとなってきました。
そんな深い歴史を物語る様々な遺産が、リヨンの街のあらゆるところに残されています。
今回は、リヨンに生きた人々の暮らしの息吹を感じられる、必見の歴史スポットをご紹介します。
古代ローマ劇場遺跡
今から2,000年以上前、紀元前1世紀に、リヨンはローマ植民市として建設されました。ローマ帝国のガリア首府として、古代リヨンが繁栄したことを物語るのが、ソーヌ川西岸・フルヴィエールの丘に残る古代ローマの劇場跡です。
古代の技術者たちの知恵の結集として生み出された、すり鉢状の設計は、優れた音響効果を発揮し、舞台上の役者や歌手の声は、最上段の席に座る観衆までしっかり届いたことでしょう。
筆者も、劇場の底部にある舞台から声を出してみましたが、その響きには驚かされました!ぜひ体感してみてください。
古代ローマ劇場遺跡への行き方
メトロ D線 Vieux Lyon で、St just 行きのケーブルカーに乗り換え、一つ目の Les Minimes – Théatres Romains で下車、徒歩5分です。
劇場跡の見学後は、同じフルヴィエール地区に位置するフルヴィエール大聖堂に行ってみましょう。荘厳な大聖堂と、大聖堂裏手からのリヨン一望パノラマは必見です。劇場跡から徒歩10分です。
リヨン旧市街
フルヴィエールの丘から降りてきたら、次は、ソーヌ川西岸沿いにたたずむリヨン旧市街地を堪能しましょう。
Vieux Lyon 駅を出て、北へ向かって歩き出すと、すぐに旧市街のシンボルであるサン・ジャン大聖堂が見えてきます。
12〜16世紀に建設されたユニークなこの大聖堂が旧市街の玄関口。その先には、石畳の道に沿って、中世ヨーロッパの雰囲気漂う古い建物が立ち並びます。
築何百年という建物の多くは、菓子店、雑貨店、ミュージアム、カフェ、ブション(郷土料理を扱うレストラン)、ホテルとして、いまも現役です。
建物の歴史を感じつつ、軒を連ねる現代的なお店のカラフルな商品に目を奪われます。歴史地区の中で楽しむウィンドウショッピング、このコントラストがなんとも楽しいです。
ここなら、リヨンならではのおみやげ品も勢ぞろい。女性なら、半日、いや1日いても飽きないかもしれませんね。
クロワ・ルッス地区
旧市街のはずれ、サン・ポール教会まで来たら、ソーヌ川沿いの道に出て、手近な橋で川を渡りましょう。
ソーヌ川とローヌ川に挟まれたこのエリアを北東へ進んで行くと、だんだんと登り坂になっていきます。この登り坂の途中からが、クロワ・ルッス地区になります。
この地区は、近代フランスの基幹産業だった絹産業の中心地であるリヨンの中でも、その中心地的存在で、養蚕に適した天井の高い建物が数多く残り、現在はその多くがアパルトマンなどとして利用されています。
リヨンと富岡製糸場の意外な関わり
ところで、2014年に、群馬県の富岡製糸場が世界遺産に登録されましたが、富岡製糸場とリヨンには深いかかわりがあるのをご存知でしたか?
19世紀の半ば、ヨーロッパで蚕(かいこ)の病気が蔓延し、盛んだった絹産業に大打撃が及びました。
そんな中、日本の蚕の病気への耐性を知ったフランスの関係者が、危険な船旅を経て日本に渡り、日本の蚕の輸入交渉をまとめあげます。この交渉によって、日本側にはヨーロッパの最新技術がもたらされることとなりました。
こうした良好な経済交流の一環として、生糸検査人としてリヨンから横浜に派遣されていたフランス人ポール・ブリュナーの指揮のもと、同じくフランス人の技術者エドモン・バスチャンの設計によって、1871年、富岡製糸場は完成したのでした。
絹にまつわる歴史は、トラブールという小道にも見ることができます。
トラブールとは、商品を雨風から守るため、あるいは他の業者にデザインを盗まれないようにするために、建物の間を縫うように作られた抜け道なのです。
このトラブールは、後に、第二次大戦下のリヨンにおいて、ナチス・ドイツの占領に抵抗するレジスタンスのために利用されることになります。
クロワ・ルッスのトラブールには順路表示が設けられていて、実際に歩いて、近・現代のリヨンの人々が流した、汗と涙の歴史を感じることができます。
人家の軒先や、アパルトマンの中庭を縫うようなルートですから、プライバシーに十分配慮しながら、散策を楽しみましょう。
まとめ
今回は3つの歴史エリアをご紹介しました。
地理的にもつながっているこの3つのエリアは、1998年、「リヨン歴史地区」として、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。
ローマ時代、中世、そして近・現代と、時代の流れに沿ってリヨンの歴史を感じる散策は、リヨン観光の大きな特色の一つでしょう。時折カフェで休憩しながら、ぜひ徒歩でじっくりと味わってみてください。
リヨンの歴史を味わってから訪ねる富岡製糸場、というのも、また感慨深いかもしれませんね!
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