国が違えば文化や習慣が違うのは当たり前ですよね。
海外に行くと毎回何かしら新しい発見があって、日本人の基準と違う価値観や考え方が面白いなと思うこと、また驚かされることが多々あるかと思います。
今回は私がイギリスに初めて来た時に目の当たりにした、イギリス式洗い物方法(驚きの習慣の違い)をご紹介します。
こんなに小さなシンクでどうやって洗うの?
私が初めてイギリスを訪れたのが2006年。それまでイギリスについての知識はほとんど何もありませんでした。
その当時親しくしていたイギリス人の友達が「今年のクリスマスホリデー、イギリスに遊びに来ない?」と誘ってくれたのを機に、クリスマス前から年末年始にかけて2週間、休暇を取ってイギリスへ遊びに行くこと。
友達が当時住んでいたのは、ロンドンの中心にあるロンドン大学(UCL)の学生寮。広い敷地に5階建てくらいの建物が数棟あり、部屋は各フロアに15部屋程ありました。
そして、フロア毎にみんなでシェアして利用できるリビング・ダイニングルームとキッチンがあり、地上階にはランドリールームとテレビやビリヤード台が置かれたコモンルームがあり、学生同士が気軽に交流できる場となっていました。
到着してすぐ、紅茶を飲もうと友達に連れられてキッチンに行った時に気付いたのが、食器を洗うシンクがやけに小さいこと。その時「こんなに小さなシンクだと洗いにくそうだな」と思ったものです。
その後、実際に食器を洗う機会があったのですが、お皿1枚を洗うにもすっぽりシンクの中で洗うことは不可能で、斜めにしてなんとか洗えるといった感じでした。
そして洗おうとすると周りに水が飛び散り、お皿もシンクにあたり、なかなかの洗いにくさでした。
「どうしてこんなに洗いにくい小さいシンクなんだろう」と不思議に思いましたが、同時に「みんなあまり自炊をしなくて、外食ばかりなのかな」くらいにしか思わず、あまり気に留めていませんでした。
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シンクが2つある謎
キッチンのシンクを見てサイズの小ささの他に思ったことがもう1つ。「どうして小さなシンクが2つ横並びになっているんだろう」ということです。
2つ大きさは共に同じ。2人で同時に洗い物をするにしては密着しすぎているし、どういった利用法があるのか、その時は謎でした。
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蛇口がお湯と水で分かれてる謎
そんな感じですっかりシンクの大きさに翻弄されていたのですが、自分の使った食器を洗う時に、もう1つどうしても腑に落ちない点に気付きました。
それは蛇口がお湯と水の2つに分かれていて、それぞれ別々にでてくることです。日本でも遠い昔、同じような蛇口があったと記憶していますが、きっと今から30年くらい前のことではないでしょうか。
とにかく、これほど洗いにくいことはありませんでした。当時イギリスを訪れていた時期は12月の寒い日。水で洗い物なんて手が凍りついてしまいそうでした。
そこでお湯の蛇口をひねってみました。ちょうどいい温度のお湯がでてくることを期待していたのですが、そこから出てきたのは熱湯。1秒たりとも我慢できませんでした。
食器を洗う際は毎回究極の選択でした。手がやけどするか、かじかむか。こんなにイライラした洗い物は生まれて初めてでした。イギリス人は一体どうやって、洗い物をしているんだろうと更に疑問に思いました。
泡まみれの食器
友達の家族とクリスマスを一緒に迎えることになり、バーミンガムにある実家にお邪魔しました。初めてクリスマスをイギリスで、それもイギリス人家庭で迎えることができるとあって、とても楽しみにしていました。
クリスマス当日は美味しいクリスマス料理を頂き、みんなで映画を観たりプレセント交換をしたりと、楽しい時間を過ごしました。
「ゲストなんだから何も手伝わなくていいのよ。くつろいでいて」と、友達の母親は言ってくれましたが、そうはいきません。せめて食事の後の食器洗いだけでも手伝いたいと思い、キッチンに行きました。
友達の実家でもそうでしたが、イギリス人は殆ど食器は食洗機を使って洗います。私は友達の母親が、食洗機に入りきらない食器やフライパンを洗っている横にタオルを持って並び、洗い終わった食器を拭いて、食器棚に戻すお手伝いをしようとスタンバイしました。
ところが、そこで驚愕の行動を目の当たりにすることに。
友達の母親はそのシンクに熱湯をため、そこに洗剤を入れ泡まみれにし、その泡まみれの熱湯の中に食器をじゃぶじゃぶつけ始めました。
そしてスポンジで汚れをさっさとこすり、その泡がまだいっぱいついた食器を私に渡してきました。私は一瞬ギョッとしましたが、とっさの判断でその泡まみれの食器を必死に拭きました。
そうです。イギリス式洗い物方法は「水で洗い流さない」だったのです。
友達の家のキッチンのシンクは普通の大きさでしたが1つでした。汚れた食器類をテーブルからキッチンへさげる時、シンクの中にはいれず、キッチンカウンターにざっと置いていきます。
そしてシンクに熱湯をため、洗剤で泡を作り、そこにつけていって汚れを泡で落としていきます。少々汚れが残っていても大丈夫なんです。
なぜならタオルで拭くから。この「タオルで拭く」という行動には2つの意味があって、1つ目はもちろん乾かす為。
そして2つ目はこびりついて取りきれていない汚れを綺麗に落とす為。これには本当に自分の目を疑いましたが、誰も注意しないところをみると、普通のことなんだと悟りました。
またこれも後に知ったことなのですが、小さなシンクが2つある場合は、1つのシンクには熱湯と洗剤を入れて泡を立たせ、もう1つのシンクには水をはり、熱湯用シンクで食器をバシャバシャ洗った後に、水用シンクにつけて泡を取るようです。
「え!でも一応水で泡は落とすんだ!」
と、また違う驚きもありました。この方法からだと、イギリス人にも「泡は洗い流した方がいい」という概念はあるようです。
それでも汚れてきた水を途中で入れ替えるようなことはしませんでした。最後までその水で洗い切ります。最初の数枚はいいですが、後になってくると綺麗になっているようには感じませんでした。
思いきって理由を聞いてみた
友達にこの洗い方について、聞いてみようかどうか悩みました。私にとっては普通じゃなくても、友達にとっては生まれてきた時から当たり前に行われてきた日常ですから、それが人と違うやり方だなんて、もしかしたら想像もしていないことなのかもしれません。
「これを聞いて失礼にあたるだろうか」、「いや、これがイギリス人にとっては普通のことなんだから」と自問自答しながら、勇気をだして聞いてみました。
「どうして最後に洗い流さないの?」と。すると友達は「水の節約の為だよ」と、さらっと答えてくれました。
水の節約の為と言われれば、何となく腑に落ちないながらも納得せざる終えませんでしたので、何も聞き返すことはしませんでしたが、確かに日本人は洗い物にしても、お風呂にしても、水を使いすぎる傾向にあるなとその時気付かされました。
ただ、洗剤が残っている食器は体に害がないのかどうなのか、一抹の不安は残ります。
洗剤の成分を調べてみると、日本で販売されている洗剤と、さほど成分に違いは見当たりませんでした。
ということは、日本の洗剤でもすすがなくても体に害がないということになりますね。
食洗機の重要性
ここで思ったのは食洗機の重要性です。食洗機は汚れを落とし、その洗い流しから乾燥まで、全て自動でしてくれる上、1回で済みます。そして限られた水の量を使用するので、水の節約にもなるようです。
イギリス人家庭の食洗機利用率はかなり高いです。家のキッチンに食洗機があるのはマスト事項なくらい普及していて、それが例えひとり暮らしのフラットのキッチンでも同じでした。
そして家族4人分の1日の量の食器類が1回で洗えてしまえるくらいの大きさがあります。その為、手で食器を洗うことは日本人に比べて非常に少ないです。
食洗機の普及は水の節約の為だけではなく、家事の負担をも軽減してくれていると思います。
今でこそ日本も共働き家庭が一般的になってきていますが、イギリスではもっと以前から女性の社会進出が進んでいたので、家事分担をしていく意識の中で、少しでも仕事の後の家事の軽減ができればと思い、食洗機利用が増えたんだろうとも考えられています。
まとめ
いかがでしたか?
私個人の意見としては、口を直接つけるコップやフォーク、スプーンなどは徹底して綺麗に洗い、しっかりすすいでいて欲しいです。
お皿やフライパンなどは多少汚れが残ってようが、泡がついていようが、そこまで害があるわけではなさそうなので、そこはあまり神経質になる必要はないのではないかな、とも最近は思えてきています。郷には入れば郷に従えといった感じでしょうか。
ただ今でもイギリス人夫の実家に行って洗い物を手伝う際、義理の母が隣にいる時は、日本式の水ですすぐ洗い方か、イギリス式のすすがない洗い方かで、1人葛藤しています。
見えないところでされるのいいのですが、自分も同じように実践しないといけないとなると、やはりまだ抵抗がありますね。
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