フランスの上空や高台からニースの街を見ると、オレンジ色の屋根がひしめき合っているのが分かります。
古い建物が多く、近代的なビルはあまり見かけません。超高層ビルは皆無と言っていい程で、どの建物も平均的に同じくらいの高さをしています。
これから一人暮らしや、家族でアパートを借りる方が多いと思いますので、ここでは私が借りたワンルームとアパートの家をご紹介しながら、フランスの家の特徴をご説明していきます。
フランスの賃貸マンション事情
フランスには築100年以上する建物がざらにあります。古い建築物を壊して高層マンションなどを建てる日本と違い、フランスでは建物の外装はそのままにし、部屋の内装をリフォームするのが一般的です。
そのため、水回りのトラブルは日常茶飯事です。また、エレベーターのないアパートもたくさんあります。私は南フランス在住歴4年ですが、その間に3度の引越をしました。
- 初めはニース市内のホストファミリーの家でホームステイ
- 次にニース市内のワンルーム(Studio)で一人暮らし
- 現在はニース近隣市のアパート(Apartement)で二人暮らし
をしています。
ニース市内のワンルーム
立地
ニースの中心街から北に約4キロ離れていましたが、中心街へはバスで約15分でした。バス停からは徒歩約3分、スーパーマーケットまでも徒歩約3分で、大変便利な立地でした。
中心街から離れていることもあり、車通りも少なくとても閑静な場所でした。
隣接するアパートからも少し離れていたので、カーテンがなくても気にならなず開放感がありました。
選んだ理由
重要視するポイントとして、家賃が月500ユーロ台、市街から離れ過ぎていない、騒音が気にならない、以上の3点を挙げていました。この3点をすべて満たしていたのでその部屋に決めました。
他にも2部屋内見に行きましたが、一つは予算オーバー、もう一つは騒音が気になりました。
また、外国人が部屋を借りるとなると、通常は山のような書類の提出を求められるそうなのですが、その部屋のオーナーは日本人というと信用してくれ、最低限の書類で契約してくれました。保証人も立てずに借りれたのは、珍しいことだと言われます。
価格
月額540ユーロ(約64,800円)でした。この金額には管理費、水道代が含まれています。フランスのアパートは、水道代が含まれている場合がほとんどです。
また、家具付きのアパートも多いのが特徴です。特にワンルームは学生が借りる場合が多いので、家具はほとんどの部屋に付いています。
ちなみに、私が借りた部屋には、
- ソファーベッド
- テーブル
- 椅子
- 冷蔵庫
- レンジ
- 洗濯機
- 洗濯物干
が付いていました。食器などはなかったので、自分で買ったり周りからもらったりしました。
フランスでは、部屋毎にオーナーが異なるので、同じアパート内でも調理器具やお皿など完備されている部屋もあります。
間取り
20平方メートルで、バストイレ付き(ユニットバス)のワンルームでした。ちなみにバスタブはなく、シャワールームでした。フランスの家は天井が高いので、実際より広く見えます。
日本にはない設備
Cumulus(キュムルス)と呼ばれる、給水タンクが台所にむき出しになっていました。フランスの家庭にはこの給水タンクが家の中にあります。
表札に関するトラブル
トラブルは散々経験しました。最初のトラブルは、共通玄関とポストの表札に関してでした。
共通玄関は、部外者が入れないようにオートロックになっていました。入口のインターフォンには住民の名前の書いたプラカードが貼ってあり、来客は名前の横のボタンを押すようになっていました。
私が引っ越した時、前の住民の名前のままになっていたので、不動産屋に「紙か何かに名前を書いて上から貼っておけば良い」と言われたので、その通りにしていました。
そうしたら、2週間後くらいにその紙が剥がされていました。また貼り直したら、また数日後に剥がされていました。
こんなことをするのは誰だ?と憤りを感じていたところ、ある日管理人らしきおじさんに玄関で偶然会い、「これあなた?こんなことしたらダメじゃない!ちゃんと表札作って!」と怒られました。
どうやら、自分の名前のプラスチックプレートを、指定の色と素材で作らなければならなかったようです。そんなことは誰も教えてくれないし、第一、管理人を紹介されることもなかったので、どうしたらよいのかとても困りました。
ちなみにこのプレートですが、Serrurerie(鍵屋)に行けば作ってもらえます。
給水タンクに関するトラブル
次に、給水タンク。前述した給水タンクから水が漏れ、不動産屋に修理を頼んでも半年以上放置されました。フランスでは、何度もしつこく言わないと誰も動いてくれません。
一番大変だったトラブルが、浸水です。
豪雨が降った時に、ベランダの配水管が詰まり、ベランダから部屋に水が侵入して、部屋中水浸しになったことがあります。
オーナーに電話しても「日曜だから何もできない」と言われ、結局近所の人や、義父に助けに来てもらったことがあります。
ヒーターに関するトラブル
そして、ヒーター。
壁の隅に小さい電気ヒーターが付いていたのですが、部屋中を暖める力はなく、寒さに震えていたのを覚えています。冬は寒くて部屋の中でマフラーを巻き、ダウンコートを来ていた時もありました。
いいところ
トラブルの多いアパートでしたが、唯一気に入っていたのは、南向きなのに太陽の日が心地よいくらいに入り、夏でも寝苦しい日は一度もなかったことです。
また壁が厚く、近所の騒音などはまったく気になりませんでした。
ニース近隣市のアパート
立地
ニース市内へはバスで約20分ですが、家から最寄りのバス停まで徒歩20分かかります。私の住んでいる市の中心街までも徒歩20分かかるので、マルシェで買い物をする時は往復40分の道のりを歩きます。
選んだ理由
旦那の家族が住んでいるレジデンスに、アパートが3棟あり、そのうちの1棟が今の家です。義父が管理人に「空き部屋が出たら教えて欲しい」とお願いしていたところ、ひと部屋空いたので私たちに声がかかりました。
内見した時は改装中だったので、見るも無惨な内観で不安でしたが、リフォーム後は奇麗に仕上がっていたので、そこに決めました。
しかしあとから色々粗が見えてきたので、今では苦労しています…
価格
月額740ユーロ(約88,800円)です。管理費と水道代込みの価格です。
家具付きのアパートで、ほとんどすぐ暮らせる状態になっていました。自分たちで買い足した物は、ベッドシーツとクッションくらいで、あとは掃除機からアイロンなど、こまごました物まで付いていました。
間取り
40平方メートルの1LDKです。大きなテラスがあったのですが、大家がそこをリビングルームに改装しました。北西向きなのですが、一面窓になっているので光はたくさん入ります。
日本にあってフランスにないもの(設備)
「網戸」
ほとんどの家には網戸がありません。私が住んだアパート3つとも、網戸は付いていませんでした。ですから窓を開けっ放しにしておくと、蚊やら虫やらが入り放題です。
一般的な家庭には網戸は付いていませんが、あとから取り付けたい方は購入することができます。
次に、「部屋番号と表札」です。もちろん共通玄関にはありますが、個人玄関には、表札や部屋番号はありません。
日本だと「101号室」などのように、部屋番号と表札が付いている場合が多いですが、こちらのアパートには明記がありません。人によっては名前を書いている人もいますが、あまり多いとは言えません。
住所にも、「何号室」と書かれている場合が少ないので、部屋を見つけるのは一苦労です。
家に誰かが来る場合は、ドアを開けて「ここですよー!」といちいち合図してあげないとならないのです。
収納スペース
次に、「収納スペース」です。
日本の家には、納戸やクローゼット、ウォークインクローゼットなど、収納スペースが設けられている家が多いですよね。
フランスの家には、そのような収納スペースは設計されておらず、自分で家具を買うしかありません。ですから部屋が狭くなったり、見た目がすっきりしないのが難点です。
建物によっては、Cave(カヴ)と呼ばれる地下室がある場合もありますが、これはどちらかというと不要な物や使わない物を入れておく倉庫です。
ベランダ
そして、日本にもあるものですが、使い方が少し異なるのが「ベランダ」。日本のベランダは、洗濯物を干すために使いますよね。植物をベランダで育てる人もいます。
しかし南仏では、テーブルと椅子を置いて、そこで食事やアペリティフ(食事前の軽食とアルコール)をする人がたくさんいます。
太陽が大好きな南仏人ですから、天気が良い日はベランダやテラスで食事をするのが定番です。
共通玄関
以前住んでいた建物と同様、オートロック式の玄関ですが、例の名前のプレートは自分で作るのではなく、管理人に頼むと作ってくれました。
ちなみに、共通玄関の造りは建物に寄って異なり、プレートの代わりにデジタル表示のものもあります。
インターフォンの矢印のボタンを押すと、部屋の番号と名前がデジタルで表示されます。目当ての名前が出るまで押し、表示されたらチャイムを押します。そうすると、その住民と会話ができ、鍵を開けてもらえます。
初めての場合は少し戸惑うと思いますが、このやり方を分かっていれば、他の家に招待された時でも焦らないで済みますよ。
隙間風のトラブル
前述した窓一面のリビングルームですが、立て付けが悪く、隙間風が入ってきます。冬は冷蔵庫のように冷え、暖房を置いてもまったく効果がないので、冬の間は内側の扉を閉めて足を踏み入れないようにしています。
水回りのトラブル
古いアパートなので、水回りのトラブルは頻繁に起きます。台所や洗面台の水が詰まることはしょっちゅうですし、水道管からの水漏れも何度かありました。
業者に修理をお願いすると高いので、フランス人は自力で直す人が多いです。我が家も義父に来てもらい、水漏れを直してもらいました。
換気扇のトラブル
また、換気扇がないので、料理をした後は部屋中匂いが立ち込めてしまいます。しかし窓を開けると網戸がないので虫が入ってくるという、悪循環が避けられない造りです。
テラス改造のトラブル
一番困ったことが、大家がテラスを部屋に改造したことです。
テラスの横にクーラーの室外機を置く小さいベランダがあるのですが、雨が降った時は水がテラスに流れ、穴から水を外に排出するようになっていました。しかしそこを塞いでしまったため、水の流れ道がなく溜まってしまうのです。
モップで水を吸うとバケツ一杯くらい絞れるほどびしょびしょになります。今は工事をして直りましたが、当時はその作業を繰り返さなければなりませんでした。
いいところ
路駐の多いフランスですが、レジデンス内には駐車場があるので、駐車の場所に困ることはありません。ニース市内は駐車場の付いてないアパートが多く、道路も狭く駐車スペースが限られているので、場所を探すのは大変だと聞きます。
あとは何と言っても、旦那の家族が同じレジデンス内に住んでいるので、何かあった時はすぐに助けてもらえます。これは大変心強いです。
部屋選びのポイント及び注意点
Immobilier(不動産屋)かParticulier(個人)か?
まず家を借りる際、不動産屋と契約する場合と、大家と直接契約する場合があります。私は、ニースのワンルームは不動産屋を通しましたが、今のアパートは大家から直接借りました。
不動産屋を使う場合
不動産屋を通すと、敷金礼金がかかったり、何か依頼する際は不動産屋を通さなければならないので、時間がかかり面倒でした。また現在は家賃の3倍の給料収入を求める不動産も多く、低収入の方には少しハードルが高い場合もあります。
大家と直接契約する場合
その反面、大家と直接契約する場合は、通常敷金礼金はありません。また設備のトラブル等があった際は直接やり取りができるので便利です。
大家の人柄にもよりますが、提出する書類が少なかったり、ある程度融通がきくことも利点でしょう。
幸い、私たちの大家は、日本人が好きなとても感じの良い女性なので、上手くお付き合いしています。
しかしそういう人ばかりではないので、大家と人的トラブルを避けたい人は、不動産屋を介すのが良いでしょう。ご自身の都合に合わせて選択されることをおすすめします。
内見は必須
南仏は坂が多い街なので、行ってみたらすごい高台に家があった、なんてこともなきにしもあらずです。地図だけでは分からない部分もありますよね。
あとは交通機関の便が良いかも見ておきましょう。実際に住んでみたら、学校や職場に行くのに不便だった…ということにならないように。
また写真と実物が異なることもあるので、内見は必ず行きましょう。
また、日本でいう1階はフランスでは0階(Rez-de-chaussée)です。物件には必ず階数が書いてありますので、「プラス1」をしてくださいね。ですからPremier étage(1階)と書いてあれば、日本でいう2階です。
時期も重要
ワンルームの部屋探しはとても苦労しました。というのも、私が探していた時期がヴァカンスシーズンの7月だったので、なかなか部屋が空いていなかったからです。
ヨーロッパのヴァカンスは長いので、アパートを長期で借りる人が多いのです。そのため私は不動産屋を10軒ほど回りました。
まとめ
家賃はさほど日本と変わりませんが、住んでいると、建築技術は日本のほうがずっと上だと感じることが多々あります。なによりフランスの家はトラブルが多いです。
古い歴史ある建物は、レリーフが素晴らしかったり、外観も厳かな雰囲気ですが、やはり実際生活するには不便なところがあるので一長一短です。
日本の場合も同じですが、とにかく色々物件を見て、納得できる物件を見つけることが望ましいですね。
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