土地バブルが止まらない!急成長するラオス経済の実態とは?

ラオスのK-mart 東南アジア

※ラオスに投資する韓国企業が経営するコンビニは韓国人観光客で賑わっています。

2008年にラオスがホスト国を務め開催されたSEA GAME(サウス・イースト・アジア・ゲーム:アジアオリンピック)をキッカケにラオスの経済成長は始まったと言えます。

2020年には大卒初任給の最低賃金が2,500ドルになるという話も耳にしますので、どうやら本格的にラオスの経済成長は進んできていると考えられます。しかし、現在ラオスの経済成長を支えているものの正体は中国、韓国などから流入する投資であるというのが現実です。

今回はラオスの経済成長の要因について掘り下げながら紹介します。

1台500万円を超える車が普及するラオス!

車

※日本車のFortuner(フォーチュナー)は70,000~80,000ドル(770~880万円)程度です。

トヨタの車

※青地に白抜きのナンバーは役人のナンバーです。お金持ってますねぇ!

ラオス経済の成長を最も身近に感じられるのが「自家用車」の普及です。

2000年代初頭には「1家に1台のオートバイ」というレベルで、オートバイさえ持っていない家庭も多くありました。1台のオートバイに家族4人が乗ってトコトコとゆっくり走っている風景を見ると「あぁ、ラオスに来たなぁ」と感じたものです。

しかし2010年付近から急激に「自家用車」が普及し始めます。自家用車と言っても、当時は半自家用、半営業用という状態でした。

それまでは20~30年落ちの古い日本の中古バスが中長距離バスとして活躍していたのですが、町と町を結ぶ自営の乗り合いタクシー「ロッ・トゥー」が急増しました。

これには韓国の自動車メーカー「現代:ヒュンダイ」のスターレックスと言うワンボックス車の中古車が使用されていました。

当時のスターレックスの中古販売価格は8,000~15,000ドル(当時のレートで約80~150万円)で比較的手を出しやすい金額だったのが爆発的に普及した大きな要因だと考えられます。

11人乗り(ドライバー除く)のスターレックスに、多いときは15~17人の乗客を詰め込み(現在では定員乗車になっています)走っていました。

首都ビエンチャンから直近の観光地バンビエン迄、当時の運賃が70,000キップ(当時のレートで700円程度)でしたので、朝6時の始発から1日2往復すれば1日の売り上げが4,200,000キップ(42,000円程度)手に入る非常に効率の良い商売であったと言えるでしょう。

中古車の購入価格を早ければ20日足らずで完済できるのですから誰もが参入したがる訳ですね。

ロッ・トゥーのドライバーの話では親戚中から現金をかき集めてスターレックスを購入し、売り上げで2台目、3台目を購入し、親戚一同で旅客運搬業に従事している家族も少なくなかったようです。

本格的なモータリゼーションを迎える2015年

車

※若者や主婦層に人気のセダンは韓国「現代:ヒュンダイ」製です。

ワゴン車

※銀行の営業車両は日本でも人気のハイト・ワゴンですが、排気量は1.6リッターあるそうです。

2015年に入るとラオス国内の自動車の立ち位置が変わってきます。2012年ごろから韓国国内でラオス旅行が大流行しました。

韓国:インチョン空港~ラオス:ビエンチャンワッタイ空港への直行便が就航するタイミングで「人気アイドル出演の旅番組」の撮影をラオスで行い放送、1日4便、週28便ものフライトで韓国人旅行者がラオスに足を運ぶようになります。

この時期を境にラオスに対する韓国系の投資が本格的に始まります。ラオスは共産国なので土地は全て国の所有となり、ラオス人も土地の使用権しか所有していません。

基本的に外国人は土地の使用権すら所持できないのですが、韓国人投資家は地元ラオス人を巻き込み瞬く間に土地を買い占めていきます。これで地価が爆騰し「土地成金」や「土地転がし」で巨万の富を手に入れるラオス人が登場します。

2000年初頭まで「物々交換」が存在するほど貨幣経済と離れた処にいたラオス人が、突然日本円で億単位の資産を所有することで、ラオスは突然モータリゼーションに突入します。

彼らが得たまさにあぶく銭とも言える資産は、高値の花であったトヨタやニッサン、ホンダ、マツダなどの日本車の購入のために惜しげもなく使い始められます

ラオス国内には日本車メーカーの工場が存在しないために、隣国タイの日本車メーカーから輸入することになるのですが、ラオス政府が莫大な関税を掛けるため非常に高価なものになります。

それでも最も人気があったのは「ピックアップトラック」でした。平均価格5万ドルですから日本円では500~600万円でしょうか?この車を最初に購入しセカンドカーとして200~300万円の普通乗用車を買い足すのが、現在のラオスでは珍しいことでは無くなりました。

ナンバープレートにも大枚を叩くラオス人

知人の一人が高級4輪駆動車レクサスを購入しました。車両代が150,000ドル(当時のレートで約1,500万円)だったと言われ驚きました。

ナンバープレートがぞろ目だったので、「ナンバー高かったろ?」と尋ねると「最初は8,000ドルだったんだけど、もう1人欲しがってる人が居てセリになって結局12,000ドルかかった」と言われ更に驚かされました。

確かにラオスを含む東南アジアでは「1111」や「2222」などのぞろ目や「1234」や「6789」などの連番は電話番号でも人気があります。

それでも中古車が1台買える程の金額を、ナンバープレート1セットに惜しげもなく支払える財力に開いた口が塞がりませんでした。

参考までに普通のナンバープレートは登録手続き費用込みでも、800,000~1,000,000キップ(100~125ドル)で手に入れることができます。縁起が良いと言う理由だけでナンバープレートを、一般価格の100倍以上の金額で購入するなんてまさにバブルですね。

ラオスを含む東南アジアに旅行をした際にはこういうナンバーには気をつけましょう。マフィアや不良政治家の可能性が非常に高くなります。

もう現地人の若者が起業できない!ラオスの土地の高騰ぶりとは?

ラオスのマーケット

※家家東超市(ジィアジィアドンチァオシィ)中国系のスーパーマーケット(超市)では食料品から寝具まで取扱っています。

レストラン

※中国人観光客の数に対して中国レストランが少ないので大繁盛です。

韓国系カラオケ

※韓国人経営のカラオケ店も増えてます。

韓国料理店

※ローカルフードに飽きた時に嬉しい韓国料理店です。

完全に土地バブルに沸く現在のラオスですが、この土地バブルがどの程度なのかを具体的に検証すると驚きの事実が判明します。

私が住んでいるのはビエンチャンではないのですが、ラオスの有名観光地です。旅行者としてラオスと向き合っていた2000年代初頭、私に「ゲストハウスを借りてくれないか?」という話が飛び込んできたことがあります。

相手の希望価格を確認すると「5年間5,000ドル」の金額が提示されました。当時の為替レートが1ドル=100円でしたので、年間1,000ドル(約10万円)の家賃で良いとのことでした。

3階建てで部屋数は18部屋の物件は当時としては中規模のゲストハウスでした。しかし、旅行者の数がそれほど多くなかったことや、シングルルームの相場が1.5~2ドルであったこと、若干立地が悪く稼働率を考えると面白い商売にはならないと判断し断りました。

現在でもそのゲストハウスは存在しているのですが、家賃はなんと「年間35,000ドル:約385万円」に上昇しています。建物は当時のままなので、経年劣化が進んでいるはずなのですが20年弱で38.5倍の値上がりを見せています。

何人もが借りては改装を行い撤退することを繰り返すことで、館内は一定のレベルで保たれていることがこの高値の理由らしいです。

現在はベトナム人オーナーが運営するドミトリー宿(1部屋に6~8人が寝泊りする宿)として稼動しています。当然宿泊費はダブルルームで150,000(約19ドル)、ドミトリー40,000(約5ドル)と上昇していますが、経営は楽ではなさそうです。

現地人の若者が起業できない!

カフェ

※タイではカキ氷が人気のカフェチェーンがラオスに上陸しました!因みに経営は韓国人です。

カフェ

※ホテルとライブハウス、カフェの3社複合店です。韓国人の経営です。

レストラン

※こちらはカフェとコリアンBBQの複合店です。やはり韓国人経営です。

韓国式BBQ

※コリアンBBQの入口です。店舗は奥に広がっています。

マップ

※バンビエンの町中は外資のレストランが溢れています。

数年前にラオス人の友人と久しぶりに町の近所を散策している時、ふと土地の価格の話になりました。彼自身は町の中心に土地を持っているのですが、近年のラオス国内の土地の高騰ぶりはおかしいと言っていました。

「このままでは町中の商業地域は中国人や韓国人、欧米人やベトナム人の金持ちのエリアになってラオス人は町の中に住むことができなくなる!」、「若い頃からレストランで修行したカップルが、自分の店を持とうにも家賃が高くて独立することができない!」と嘆いています。

その時は既に土地の値段が上がり始めていたのですが、現在ほどの価格帯には至っていなかったので、現在は完全に現地人の若者の独立は「夢のまた夢」。現実的には無理になっているのでしょう。

ラオスやタイでは40メートル四方の1,600平米を「1ライ」といって土地取引の目安にするのですが、現在私の住む町の中心部では1ライが1億円からという価格になってきています。

町の中心部に川が流れているのですが、川沿いはロケーションが良いので1ライに満たない3階建てのゲストハウス(築約10年)が約3億円で売りに出されています。

売主に3億円の根拠を尋ねると「定期預金の利回りが約10%だから3億円で年間3,000千万円になる、3,000万円あれば例えば年間半分ずつ日本とラオスに住んで生活することができるだろ」と得意げに語ってくれました。

「そうね、3,000万円あれば日本でも余裕だね」と答えたのですが、お金の価値が判っていなくてただ漠然と値付けしていることが良く判りました。

現在ラオスには路線価のような土地の評価価格の指針となるものが存在しないので、売値は売り手の欲しい金額となっています。

なぜラオスで土地バブルが発生したのか?

本来ラオス人は土地に対する資産評価が高くなかったと言えます。

貨幣経済に巻き込まれたのがこの10年程度なので正直な処「お金の価値の何たるか?」を理解しているというよりも「お金は欲望を満たすことができる神アイテム」と言うような捉え方をしているラオス人が多いと感じます。

ここに中国、韓国の投資が流入したことでラオス人の価値観が一気に「拝金」に寄ったと感じます。

韓国人投資家の多くは自分で開発した観光産業の案件を新しく来る韓国人に売り渡すことで投資を回収しているようで、トラブルも絶えないのが実情です。椅子取りゲームとババ抜きをラオスで行っているようなものです。

一方中国からの投資と言えば中国雲南省から北ラオス、ビエンチャンを経てタイ国鉄の東北線に繋がる鉄道を建設するなど国家プロジェクトの色が濃いと言えます。

多くの労働者が中国国内からラオスを訪れるため、この中国人労働者向けの住宅や娯楽施設の投資を行う一般投資家も少なからず存在します。

双方の投下する資本が莫大なために、やはりラオスは両国の投資家に対して強いことが言えないというのも悲しい現実です。

土地バブルに乗って乱開発が進む現状

私の住む町の周辺や首都ビエンチャンに続く道の風景が激変しつつあります。小さな山は切り崩されそこから出た土砂で水田が埋められ、平地が広がっています。長年手付かずだった空き地も整地され、新興住宅地として売りに出されています。

その一方でインフラ整備が追いつかず、小さな町の時代に開発された水源地とそこからの給水施設は完全に需要が上回ったために断水することが多くなりました。

現在地元民の間では敷地内に「井戸」を掘ることが盛んになってきていて、町のあちこちで井戸掘り工事を見かけるようになっています。

以前は井戸や川の水、貯めた雨水などを使用して生活をしていたのが、一旦簡易上水道を利用するようになり、再び井戸水の生活に戻るという逆行現象が発生しているのも、乱開発の影響だと言えるでしょう。

ラオス国内でも首都ビエンチャンなどの大都市部や国際的な援助の対象となりやすい「ベトナム戦争被災エリア」などは浄水場の設備が完備されています。

しかし、そのエリアから少し離れると沢の水を山からホースで引き下ろしている「水場」が目に付くようになってきます。

規制緩和でより一層の投資を煽るラオス政府

ラオスは現在世界中に残された数少ない共産党一党独裁のいわゆる「共産国」です。

共産圏の国々も1978年から行われた中国の改革開放、1980年代後半から行われたソビエトのペレストロイカ、1986年のベトナムのドイ・モイと経済開放政策に大きく舵を切りました。

ラオスもベトナムと同年の1986年に「チンタナカン・マイ(新思考)」という経済開放政策を行っています。しかし現実的にはお世辞にも積極的に外国からの投資を受け入れる体制だとは言えませんでした

2010月にラオス国内初の証券取引所が開設され中国、韓国からの投資が増えたことで旧態依然としていたラオス政府に変化が見られ始め、遂にラオス商工省は2017年11月17日に「最低資本金撤廃に関する商工省官房室通達(No.2770)」に於いて「一般事業の外資最低資本金撤廃」を行いました。

このことで従来必要とされていた「10億キップ(約1,400万円)以上」の外資最低資本金が廃止されたことになります。

一般事業の外資最低資本金の撤廃と言っても、外資参入が認められない業種も多く残されており、完全に市場が開放されたとは言えない状況ですが、非常に大きな一歩だと評価するに値する決議です。

まとめ

基幹産業が存在しないことから、自力での経済発展が難しいのがラオスです。国体を保つためには観光産業だけでは非常に難しい局面に差し掛かるタイミングで幸運にも、中国や韓国からの投資が殺到し土地バブルに沸いています。

しかし一旦不動産を手放してしまうと、現地人不在のマネーゲームで不動産価格が爆騰し、もはや現地ラオス人がラオスで起業することが難しくなる状況にまで事態は悪化しています。

ラオス南部に設置された「経済特区」への外国企業の誘致も思うように進まない状況で、最低資本金を撤廃したことはラオス政府が本格的に個人投資家にターゲットを絞ったということではないかと考えられます。

ラオスの経済発展は非常に興味深い局面に差し掛かったと言えるでしょう。

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記事を書いた人
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2000年から東南アジアを中心に滞在型の旅行(タイに1年半、中国に2年など)を続け2008年にラオスに移住しました。
現在は飲食店の経営や旅行商品の開発を行いながら暮らしています。
趣味はバイクツーリングとビールを飲みながらギターを触ること。
ラオスに興味がある方はご連絡ください。

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