※象使いの少年と象。象と象使いは家族のような信頼関係で結ばれているそうです。
ラオスはかつて「ラン・サン(百万・象)王国」と呼ばれる王国でした。名前のとおり象がたくさん住む国だったと伝えられています。
同時に百万頭の象を巧みに操る、非常に強力な騎馬ならぬ騎象部隊を主戦力として領地を拡大する「強力な軍事国家」でもありました。
ラオスの有名観光地であるルアンパバンなどでは「観光象乗り体験」、「象使いライセンス取得講座」などが人気ですが、現在でもラオス国内では重機が入れない山岳部の工事などに象を利用しています。
「本物の象使いたち」が年に1度集まる「サイニャブリー県の象祭り」を紹介します。
毎年象祭りが開催されるサイニャブリー県とは?
ラオス国内でサイニャブリー県は「象の楽園」として知られています。実際にラオス国内に生息する象の75%がサイニャブリー県に生息していて、現在でもラオスの日常生活に欠かせない労働力として活躍しています。
2007年には「ラオス象保護センター」が設立され、毎年2月に開催される「Elephant Festival(象祭り)」が始まりました。
開始されてからまだ10年ほどの新しいイベントですが、希少なアジア象と象使いとして生計を立てる山岳少数民族の姿を見ることができる、価値の高いイベントです。
サイニャブリーの基本情報
- 面積:16,389キロ平方メートル(岩手県よりやや大きい)
- 県都:サイニャブリー(Saynyabuli)
- 人口:375,000人
- 人口密度:1キロ平方メートルに23人
毎年「象祭り」が開催されるサイニャブリー県はラオス北西部に位置し、タイとの国境や北からボケオ県、ウドムサイ県、ルアンパバン県、ビエンチャン県と接しています。
一般的にラオスとタイの国境線はメコン河のため、ラオスの国土は地図上でメコン河の右側に広がっています。
その中でサイニャブリー県はめずらしくメコン河の左に位置しタイとは地続きの国境となっています。このことからタイとの領土問題が最後まで争われ、1987年~1988年には「タイ・ラオス国境戦争」が勃発した歴史もあります。
また、豊かな自然を誇ることからラオス内戦中には、軍事資金調達のため軍事組織が関与した違法木材貿易の中心地だったと伝えられています。
現在もタイ側が国立公園であることから自然が多く残され、ラオス国内で最も野生の象が生息している場所として知られます。観光開発があまり進まなかったことから、残念ながら外国人にはあまり知られていない場所なのが現実です。
サイニャブリー県へのアクセスは?
※中国車両が長蛇の列です。帰国するんでしょうね。
ラオス国内4県、国境線越しにタイの5県、合計9県と接しているサイニャブリー県ですが、残念ながら今のところアクセスが良いエリアだとは言えません。空路、陸路を選ぶことができますが、一般的には陸路でのアクセスとなります。
ラオス国内からバスでのアクセス
※ルアンパバン行のバスが出発を待っていました。
ラオス国内2つの主要都市からサイニャブリー県には次のルートでバスが運行しています。
【ビエンチャン~サイニャブリー】
- パークラーイ経由:所要時間8~10時間、180,000キップ(約2,340円)
- バンビエン、カシー経由:所要時間8~10時間、180,000キップ(約2,340円)
【ルアンパバン~サイニャブリー】
- タードゥア経由:所要時間2~3時間、50,000キップ(約650円)
ビエンチャンからサイニャブリー県に行くには2つのルートがありますが、メコン河に沿って走るパークラーイ・ルートは未舗装路が多く、移動の難度が高いルートです。快適な移動を求める方はバンビエン、カシー・ルートをおすすめします。
ルアンパバンからのルートは舗装道路が整備されましたので、場合によっては2時間足らずで到着することもあります。
ラオス国内からの空路でのアクセス
※一軒家かと思ったら空港事務所でした。
※空港の滑走路も短いです。
※これも2階建て住宅でなく管制塔のようです。
ビエンチャンからはラオ・エアーの小型機が週3便就航しています(所要時間1時間)。サイニャブリー空港は驚くほど小さい空港ですので、スリリングなフライトになるのではないでしょうか?
乗客数が少ない場合欠航する可能性もありますので、移動は陸路をおすすめします。
タイ側からのアクセス
サイニャブリー県は国境越しに北からタイのパヤオ県、ナーン県、ウッタラディット県、ピッサヌローク県、ルーイ県の5県と接しています。
北部ではナーン県のフアイコン(Huay khon)南部ではルーイ県のナーカセン(Nakaxeng)の2つの国境が開放されています。
タイの有名観光地「チェンマイ」や「チェンライ」からであれば、ナーン県経由でのアクセスも可能です。
チーク材をふんだんに使った歴史的木造建築が多く残る街並みで、近年タイ人の間で人気上昇中の観光地「チェンカーン」はルーイ県に位置しています。現地人に人気の観光地経由でアクセスするのも楽しそうですね。
バイクツーリングでもアクセスできる!
※メコン河にかかる橋です。手前がサイニャブリー県側です。
※さすがに舗装が綺麗にされていました。
今回、私はバイクでサイニャブリーまで足を延ばしました。
09:00に外国人観光客に人気のバンビエンを出発し北上、カシー、タードゥア経由のルートを選びました。サイニャブリー到着は15:00で所要時間は約6時間、走行距離は約170キロです。
カシーの町で左折し、5年ほど前に開通した新道を利用します。海抜約500メートルから2,000メートル程度まで一気に高度を上げる急坂が1番の難所です。
今回は昨シーズンの雨季に発生した土砂崩れの改修工事があり、急坂の上に悪路というコンディションでした。
また、時期的に中国人が祝う旧正月が近かったため、中国ナンバーの車が非常に多く、工事のための通行止めとも重なって、かなり渋滞している区間もありました。
山頂付近は肌寒かったものの、周りの景色はため息が出るほど素晴らしかったです。交通インフラが整っていないラオスだけに「バイクでの旅」は利便性も高くおすすめです。
巨象が集まる「象祭り」は象好きにはたまらない!
※象乗り体験は欧米人旅行者にも人気でした。
※象って大きな生き物ですね。頭頂部がフタコブになっているのがアジア象の特徴です。
※パオーン!象らしいポーズでパシャリ!
※小象は動きが速くて写真を撮るのが難しいです。
※神の使いとされる「白象」もいました。
※牙が切られているということは気性が荒いのかも知れません。おじさん危ないよ!
ラオス国内では約500頭のアジア象が飼育されています。また、野生の象は現在推定200頭ほど生息していると考えられています。
サイニャブリーの「象祭り」はアジア象の保護活動を行う、フランス系NGO「Elefphant Asia」の提案によって、2007年から開催されている比較的新しい祭りです。
会場は象だらけ!まさに「象祭り」
ナム・ホーン(ホーン川)沿いに設置された会場周辺では、象のパレードやショーが催されます。私が訪れた時は会場内に40~50頭の象が居ました。
数だけ見ると少ないように感じるかもしれませんが、一頭一頭の身体が大きいので会場では「象だらけ」の印象を受けます。
象の背中に付けられた大きな鞍(ベンチみたいです)に乗って会場内を歩く「象乗り」が20,000キップ(約260円)で体験できます。
また象に与えるサトウキビを売り歩く少数民族の女性の姿も目立ちました。買ってもらったサトウキビを使って象使いが象に色々なポーズをとらせて一緒に写真を撮ってくれたりもします。
象にお客さんを乗せたまま一緒に川に入り、水浴びをさせてくれる象使いもいました。
会場内で気をつけないといけないのは、象が「足音を立てずに静かに歩いてくること」です。夢中で写真を取っていると、背後の思わぬ近距離に巨象が居るのに気付き「うわっ!踏まれる!!」と何度もギョッとさせられました。
「巨大な象がこんなにも静かに歩けるものか」と感心しながらも、至近距離で見る象はちょっと怖かったです。
ラオスの象祭りは人と象の距離が非常に近い、いや近すぎる祭りだと言えます。身長180センチの私でも見上げてしまう象は迫力満点ですが、優しい目をしていました。近付きすぎなければ問題ないですね。
象以外でも大盛り上がりの会場
象祭りは広大な面積の会場で催されています。この会場の半分近くは露店や模擬店で占められています。
会場入口で一際目を引くのが「自動車ディーラーの模擬店」でしたが、「象を見に象祭りに行ったついでに車でも」って考えはあり得ませんよね。
衣類、日用雑貨、モン族の漢方(ラオスでは結構ポピュラーです)、オモチャ、驚くほど種類がある食べ物屋台などで賑わっていました。
ツーリングの途中で立ち寄った雑貨屋の女将さんも「後で私も象祭り行くの!」と言っていたのは、この屋台村が目的なのでしょう。
夕方には心温まる象の入浴シーンも
※潜水の術を披露する若い象は水遊びを満喫していました。
※見て下さいこの嬉しそうな象の表情!象使い必死です。
※水から上がるとき何故か「どや顔」の象使いが謎。
夕方になり象祭りの1日が終わりに近付くと、鞍を下ろされた裸象と象使いが会場脇のホーン川に向かいます。象と共に川に入り入浴タイムが始まります。鼻だけを水面に出した状態で完全に潜水している象もいて驚かされました。
一方で水が嫌いなのか、象使いがどんなに叫んでも座らない象もいて、「象によって性格が様々なんだなぁ」と感じさせられました。
因みにホーン川で歯磨きをする象使いやその家族もいて、2000年当時のラオスを思い出し、川の水が汚れていないことに驚きました。
意外と多い宿泊施設
※こちらの宿でお世話になりました。
※清潔な室内で快適に過ごせました。
※テレビは必要ないのですが、言葉の勉強にはなりますね。
私がサイニャブリー県の象祭りの存在を知ったのは、ラオスに移住した2008年でした。それから10年経ちますが、象祭りに行くことを躊躇していたのは宿の問題があったからです。
「象祭り開催中はどこの宿も空きがなく、民家に泊めてもらう人もいる」という噂が流れていました。
今回も最悪、宿の空きがなければ周囲20~30キロ圏内で宿を探すことを覚悟してサイニャブリーに向かったのですが、道路の整備が進むにつれ宿が増加したのか、サイニャブリー近郊には多くの新しいゲストハウスがありました。
さらにサイニャブリーの町中も建築ラッシュのようで、簡単に宿を探すことができました。タイとの国境を2つ持ち、ラオスの世界遺産ルアンパバンに程近いサイニャブリー県では、これから旅行者が増加する気配を濃厚に感じました。
今回宿泊したのは「SAYLOMYEN GUESTHOUSR(サイロムイェン・ゲストハウス)」です。象祭りの会場からの距離は1キロほどなので、歩いて会場にいける立地で、1泊120,000キップ(約1,560円)のエアコン付きの部屋は快適でした。
英語の通用度はビエンチャンやルアンパバン、バンビエンなどと比較すると高くはないですが、親切なスタッフが働いていました。
食事は会場近くの串焼き屋がおすすめです!
ラオスの田舎町に足を延ばすと毎回頭を悩ませられるのが、食事の問題です。ラオスには外食の習慣がなく、有名観光地から外れるとレストランが見当たらなくなります。
どこでも美味しいローカルフードの屋台がある、タイやベトナムとは全く習慣が異なるのがラオスです。
今回も「あー、また焼きアヒル食べるんだろうなぁ」と半ば諦めていたのですが、象祭り会場で驚くほどのローカルフードの屋台を見たので「最悪、ここで食べれば良いか」と思っていました。
象祭り会場脇を流れるホーン川の対岸、橋の下流に立ち並ぶ東屋がたくさん見えたのでそちらを覗くと、串焼き屋が立ち並ぶ「串焼き通り」になっていました。
さっそく試してみると、多くの串が1本2,000キップ(約26円)、スルメイカの串が1本5,000キップ(約65円)、魚のみりん干しが10,000キップ(約130円)と激安です。
砂肝やレバーなどを、ラオス風の辛いタレを付けて焼き上げた串をつまみに飲むビア・ラオ(ラオス産のビールです)は最高でした。
サイニャブリーに足を運んだ際にはぜひホーン川沿いの串焼き通りを訪ねてみてください。おすすめです!
まとめ
東南アジア最後の秘境と呼ばれるラオスの中でも、サイニャブリーは知名度の低さから観光開発が遅れているエリアの1つです。観光地化が進んでいないということは、逆説的に考えれば、素朴な人たちが数多く残っていると言うことです。
象の楽園であり、素朴なラオス人が数多く住むサイニャブリー県、1度足を運んでみてはいかがでしょうか?
バイクでのツーリングをご希望の方は、私がバッチリとナビゲートしますのでご連絡下さい。
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