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スペインのカタラン地方に新しくできた参加型のオルタナティブ教育、El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)小学校とは

El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)小学校

Arbúcies(アーブシス)という、スペイン、バルセロナより北上した山あいにある人口約6,000人の小さな町に、El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)(カタラン語でニコールのパン)という名前の小学校が生徒の親の有志により運営されています。

人間関係は縦関係で主従が厳しく、宿題の量が一番多いといわれるスペインの公立学校の方針に疑問を持った親が声をかけあって、6歳から14歳の生徒が60人通う、小さな学校です。

自分の子供の小学校入学を数年先に予定している私は、休暇をかねてこの小学校を見学してみることにしました。今回はスペインのカタラン地方にある、できたてほやほやの小学校をご紹介します。

目次

ヨーロッパで人気のオルタナティブ教育とは?

El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)小学校

一見ちょっと広い、スペイン地方によく見られる農家の建物に見えるのが小学校です。イメージそのままですが、学校として利用される前は羊や馬を飼う農家でした。

今世紀に入ってから多くの人に知られる様になったオルタナティブ教育でよく知られているものに

  • シュタイナー教育:ヴァルドルフ教育とも呼ばれる、ルドルフ・シュタイナーの提言に基づく芸術を重視した教育方法
  • モンテッソーリ教育:マリア・モンテッソーリにより提唱された感覚教育を重視した教育方法

などがあります。

シュタイナー教育は、「はてしない物語」や「モモ」の作家であるミヒャエル・エンデや、日本では黒柳徹子が受けた教育として知られています。

アマゾンやGoogleの創設者や、若くして才覚をもった将棋棋士である藤井聡太がモンテッソーリ教育の出身者です。

詰め込み型である公立学校の教育に疑問を持った教育者達が提唱するオルタナティブ教育に共通するのは「まずは子供に学ぶ楽しさを体験してもらう」ところです。

先生という絶対があり、「〜しなくてはならない」事項が課されていく現代の一般教育法と異なり、子供の意志が尊重されます。

絵画や踊り、音楽などを多く取り入れ、好奇心や興味心を育てることにより、「教える」のではなく子供たちが自分の意志で「楽しんで学ぶ」姿勢になるよう助長します。

オルタナティブ教育は、ドイツを始めヨーロッパ各国で人気が高まり、そのための施設が増設されています。

私立扱いのため学費がかかる

私の在住しているドイツでも、スペインでも、義務教育は公費で負担されるので授業料はかかりません。オルタナティブ教育は、政府に認可されているものが多くあるものの、私立扱いなので学費が別途かかります。

今回見学したEl brot de la xicola(エル ブロト デ ラ シコーラ)は月々260ユーロの月謝がかかります。

両親が学校の設営や昼食の準備など、月40時間学校行事に奉仕すると、全額ではありませんが免除があります。

El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)小学校

舗装された市道から4kmほどあぜ道を進むと学校が見えます。近郊の町からも来る生徒達のほぼ全員が車で送迎されています。

子供たちの声や音楽が響く校舎の外には、毎日一緒に登校して子供たちの授業が終わるのを待っている犬が散策していました。学校では車道からの音は全く聞こえません。市道から学校に続く道は一本道のため、入ってくるのは学校関係者のみです。

竹林に囲まれ、野鳥の声が響く山の麓で、子供たちが大喜びで登校していく様に早くも感動しました。

El brot de la xicola(エル・ブロト・デ・ラ・シコーラ)小学校の授業風景

授業

各科目は年齢別に分かれた教室で行われます。「あの人は聖人よ」と笑って親御さんたちに紹介された先生は、自分の幼い子どもと一緒に授業をしていました。

生物の授業中でしたが、机、椅子に座っていませんね。先生が近郊で見つけられる虫の名前を言い、生徒達がその生態系をクイズのように次々と想像しています。

「食べ物は」「活動時間は」「害があるか(刺すか刺さないか)」「冬眠するか」など、数分覗いていただけでも生徒全員が発言しているのがわかりました。

先生が「正解は〜」と発言するのではなく、「何月頃に見られるかしら?」など質問して、正解の答えは生徒が発言するようにしていたのが印象的でした。

授業で行われるアクティビティ

校庭

学校の校舎から100mほどの自然あふれる校庭に設置されているのはサーカスの備品です。

校庭

学校の近くには常設のサーカスがあり、団員が週一回、子供たちにサーカスの演目の指導をしています。表現豊かなピエロに空中ブランコ、本格的なトランポリンに縄を上手にあやつる演目など、毎回指導内容が異なるそうです。

せっかくだから挑戦してみようとチャレンジしたものの、4m近くある空中ブランコの揺れ幅の大きい事に驚きました!トランポリンもサーカス用のため、思ったより高く跳ねるようになっていました。

音楽の時間に次いで、生徒達に人気のある授業だと、案内してくれた父兄が教えてくれました。

子供たちに演技の指導をしているサーカス、Circ cric(サーク・クリック)の公式ウェブサイト:https://circcric.com/es/inicio/

昼食もおやつもオーガニック食材を使用

オーガニック野菜

校舎の真ん中には食堂があります。食堂に隣接した、大きな暖炉がある部屋が学校のキッチンです。食材はすべてオーガニック野菜で、学校の給食はビーガンに近いベジタリアンです。たまにチーズは用意するのだとか。

料理は授業料の免除が受けられるため、父兄が調理することがほとんどです。生後3カ月〜未就学児の子供と一緒に来るお母さんがほとんどでした。

下の子も、赤ちゃんでなければ自由に校舎を周り、野菜を切る手伝いをしたり年齢の低い生徒の授業に混ざったりと、楽しんでいる様子でした。

簡易キッチン

晴れた日は学校前にある竹林で給食を食べる事もあるそうです。竹林に設置された簡易キッチンでは、このたらいに水を入れ、使い終わった食器を生徒が自分で洗います

現在新校舎を手作り中!

ホームページ

私がこの学校を訪問した2018年6月初旬には、学校名がまだ決まっていませんでした。そして私が「素敵素敵!」と感動した校舎を今年中に引き上げて新校舎に移動するそうです。

そこは「オルタナティブ」な人達、ただの移転ではありません。チラシからも分かる様に、土壁の新校舎を手作りしています。

納屋

新校舎のメイン校舎はまだ壁が出来上がっていませんでしたが、となりの納屋は完成していました。「準備室から◯◯取って来て!」と頼まれて向かう先がこんなにかわいい小屋だと、喜んで先生のお手伝いをしたくなりますね!

自宅を土壁で作り上げたという父兄が主催し、2018年6月現在も新校舎を建設中です。旧校舎は賃貸に出したいと現在借り手を探しているそうです。

まとめ

フリースクールというと、日本では不登校の子供が行く所というイメージがありますよね。私の在住するドイツでは、フリースクールというと「私立」というイメージが強く、選択科目の幅が広かったり、芸術関係に進む人が多いという評判です。

義務教育である小、中学校は、その後の人生の価値観を左右する多感な年頃に毎日通う場所です。地域により評判がいい学校もありますが、だいたい学区で区切られているために「毎日通いたくない雰囲気」を醸し出している学校もあります。

オルタナティブ教育は、授業料がかかるという面もありますが、子供の教育に強い有志をもった両親が多いので、自然と先生や学校の体制も真摯に教育に取り組む方向へ向かいます。

今回訪問した小学校に通う子供たちは家族ぐるみでほぼ全員と付き合いがあり、送迎のアレンジや休日のおでかけ、夏のキャンプなど大家族のように過ごしていました。

珍しい教育法と言われた過去から、ひとつの選択肢として注目されているオルタナティブ教育に、より感心を持てるようになった訪問でした。

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この記事を書いた人

海外就職・海外求人マッチングサービスGuanxiを運営しているIT企業。
世界各地をお仕事で飛び回っています。

世界各地で滞在し、見たもの、感じたもののリアルを届けます。

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