筆者は現在マレーシアに海外駐在しています。
日本にいたときに趣味で勉強していたワインが思ったよりも海外に出て来て、ビジネスや生活、人間関係の形成に役立ちました。
ワインがなぜビジネスに役立つのか、その奥深さ、面白さ、海外生活ならではの役立ち方についてご紹介したいと思います。
ワインとは
ブドウを原料とする醸造酒で赤、白、ロゼなどさまざまな種類があり、日本はもちろん世界的に楽しまれているアルコール飲料です。
アルコールは原料に含まれる糖分が、酵母の働きによってアルコールと炭酸ガスに分解されることで生まれます。
ですが、ブドウはもともと糖分を含んでおり、つぶしておくだけでも条件が整えば自然に発酵してワインになります。
つまり、ワインはブドウそのものがお酒に変化した自然なお酒です。
そのためなんと紀元前7,000年前から5,000年前に黒海東海岸付近のジョージア共和国で存在していたことが確認されています。このように非常に歴史のある飲料です。
ワインの勉強と教養
ワインを勉強することは幅広いジャンルを教養として学ぶことにつながります。
例えば、地理、歴史、言語、化学、文化、宗教、芸術、経済、投資など。
ワインの知識はさまざまなジャンルに横断的にかかわっており、ワインを勉強することは幅広い知識と教養を身につけることにつながるのです。
キリスト教とワイン
例えばワインはキリスト教の正典、旧約聖書に出ています。登場するのは「ノアの箱舟」「カナの洗礼」「最後の晩さん」です。
特に有名なのは「最後の晩さん」で、イエスが十二弟子と一緒に食事の席で話す場面です。
「みなこの杯から飲め。これは罪の許しを得させるようにと、多くの人のために流す私の契約の血である。あなた方に言っておく。私の父の国であなた方とともに、新しく飲むその日までは、私は今後決して、ブドウの実から作ったものを飲むことはしない」
この部分がバックボーンとなり、キリスト教の儀式では必ずワインが用いられます。
ヨーロッパとワインの歴史的関係
ワインが本格的にヨーロッパに普及したのはローマ帝国時代、特にジュリアス・シーザーによる勢力拡大の影響が大きいです。
遠征に伴って、今のフランスのローヌ、ロワール、アルザス、シャンパーニュのワイン造りの基礎が築かれました。
つまり特にヨーロッパの人と、キリスト教や歴史を語るときにワインは欠かせません。そしてワインへの理解なしに歴史やキリスト教から密接に発展してきたヨーロッパの文化は語れないことになります。
グローバルクラスで活躍する上でワインを勉強することは、万国共通のソーシャルマナーの一つとして捉えられています。
最近は欧米の一流大学の学生は国籍を問わず、ワインを一つの教養として勉強しています。
海外ではワインを飲む機会が増える
焼酎やウイスキーなどの蒸留酒がマレーシアでは高い
普段欧米のグローバルエリートとワインや歴史の話などしない人にも、実はワインを勉強するメリットはあります。
洋食に限らず、最近は高級日本料理店でもワインを置いていない店の方が少ないほど。日本食にもワインを積極的に取り入れるトレンドがあります。
特に海外に住むと会社の同僚との飲み会、取引先との接待、週末の家族との外食など、外でワインを飲む機会は日本と比べて大変多くなります。
日本ではビールの次に焼酎やハイボール、ウーロンハイかもしれません。
が、マレーシアでは焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は酒税が大変高く、ハイボールさえ高級品です。そのため、比較的安価で食事に合わせやすいワインが重宝され、飲む機会が増えるのです。
日常的にワインを飲む欧米駐在員
ちなみに欧米に駐在する知り合いに聞いても傾向は同じです。欧米では日本と比べて圧倒的に安く飲めるため、日常的にワインを飲む生活になるようです。
飲む機会が増えると、より楽しむための食事のセレクトを含め、ワインの知識があるかないかで大きな違いが出てきます。
また、海外では日本と比べてBYO(Bring your own)文化が発達しており、レストランにワインを持ち込む習慣が定着しています。
周りを楽しませる知識
もちろんお店に置いてあるワインをリストからセレクトすることもできます。
でも自分で好みのワインを持ち込んだ方が安価で済むことも多く、また食事会の参加者に特徴や味わいを説明して飲んでもらうと喜ばれます。
ワインは自分が勉強することによって、周りの人にも喜んでもらえる知識なのです。自分が頑張ることで周りに喜ばれる教養って案外少ないです。
ブドウ品種
ワインを勉強する上で一番わかりやすくて実用的なのは、ブドウ品種の違いを理解することです。ここで代表的なものをいくつかご紹介します。
黒ブドウ(赤ワイン用のブドウ品種)
カベルネ・ソーヴィニヨン
カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配により生まれた、赤ワインの代名詞的な人気高級品種です。
フランスのボルドーをはじめ、アメリカのナパ・バレー、オーストラリア、チリなど世界中の温暖な畑で栽培されています。
世界で最も生産量が多く、タンニンを豊富に含んでいます。若い(収穫年数が新しい)ときはアルコール度数が高く、濃厚でしっかりした味わいが特徴です。
ピノ・ノワール
フランスのブルゴーニュ地方原産で、栽培が難しい繊細な品種として知られています。
ロマネコンティ、シャンベルタンなどブルゴーニュの有名な超高級ワインに使われています。ポテンシャルが高く、他の品種とブレンドせずに単一で使われることが多いです。
どっしり重たいフルボディーというよりは、ミディアムボディー。しっかりした味わいと奥行きがありながらも、繊細なベリーの香りを感じられ、非常に複雑で奥行きのある味わいがあります。
ガメイ
ピノ・ノワールとグーエ・ブランの自然交配種で、フランスのボジョレー地方が名産地として知られています。
収穫数年が飲みごろの早飲みワインとして有名なボジョレー・ヌーヴォーで使われており、日本でも大変人気です。
軽快でライトな印象が強いですが、クリュ・ボジョレーという熟成ポテンシャルをもったワインも生まれます。
タンニンが少なく、冷やしてもおいしいフレッシュでさわやかな味わいです。そのため日本食のようにあっさりした味付けの食事にも合わせやすい赤ワインです。
白ブドウ(白ワイン用のブドウ品種)
シャルドネ
ブルゴーニュ地方の白ワインの代表的な品種で、世界中で栽培されています。
果実は黄緑色から黄金色まであり、ワインの色も薄い黄緑色から黄金色まで幅広く、ブドウ自体に際立った個性がないことが特徴です。
産地や醸造方法による影響を強く受け、カジュアルから銘醸ワイン、スパークリングワインまでバリエーション豊富な味わいに仕上がります。
ソムリエ試験では2次でテイスティングがあるのですが、試験で出されると意外にも難しい品種です。出されたワインに大きな特徴がなければ、「シャルドネ」と回答するのがいいと言われています。
ソーヴィニヨン・ブラン
フランスのロワールやボルドーを中心に、世界各地で栽培されている白ブドウ品種です。
フレッシュハーブの香りに清涼感とミネラル感が際立ち、独特な青いグレープフルーツのような香りを持つ辛口白ワインに仕上がります。
チリなどの温暖な地域ではトロピカルフルーツなどの香りが加わり、よりボリューム感が増します。ハーブのような香りを持つことから好みは分かれますが、食事に合わせやすいです。
チリ産やニュージーランド産では価格帯が70リンギット(約1750円)を下回るものも珍しくないため、バーベキューや屋外レストランなどで持ち込むことが多いです。
辛口白ワインが多いですが、ボルドーのソーテルヌ地区では甘口貴腐ワインにも使われます。
リースリング
ドイツを代表する品種で、非常に強いキリッとした酸味と繊細で品のある香りがあり、辛口から甘口までバランスの取れたワインです。
フランスだとアルザス地方で栽培されています。辛口白ワインは酸をしっかり持ちながら、黄金色のボリュームのある口当たりです。
そのため、3千円程度でも食中だけでなくワイン単体で楽しめます。
ワインの味わい方
ワインの味は甘味、酸味、タンニン、アルコール度数、ボディーという要素から成り立っています。これらの個性と特徴を見極めるのがテイスティングです。
ワインはブドウの果汁が発酵してアルコールになりますが、発酵しきれずに残った糖分が甘味です。
そして糖分をアルコールにほとんど変えたワインが辛口ワインです。甘口ワインに基本的にアルコール度数の低いワインが多いのは、そういった理由です。
酸味はブドウにもともと含まれるリンゴ酸と酒石酸で、酸味の高いワインは冷やすほどおいしいと言われます。
ボディーはワインの骨格、強さ、重厚感など飲んだときの感覚で、フルボディー、ミディアムボディー、ライトボディーと分けられます。
フルボディー
リッチで力強い味わいでタンニン、甘味、アタック(最初の口当たり)がしっかりしており、色も濃くて濃厚な香りです。飲んだときには口いっぱいに広がる強さがあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズを使ったワインに多く、タンニンやポリフェノールを多く含み、長期熟成に向くとも言われます。
ミディアムボディー
フルボディーとライトミディアムボディーの中間で、ピノ・ノワールやサンジョヴェーゼ種を使ったワインに多いです。
フルボディーは非常に力強いのに対して、男らしさはないものの、上品で香り高いロマネコンティやキャンティクラシコなどを思い浮かべます。
ライトボディー
アルコール度数が低く、タンニンが少なめ、色も薄いワインが多いです。若いピノ・ノワール、ガメイに代表され、飲んだ感触は軽やかで重厚感はありません。早飲みタイプが多いのも特徴です。
ワインの勉強方法について
始めるならフランス産から
「勉強してみたいけど何から手を付けたらいいのか分からない」という人は、フランスワインから始めてみることをお勧めします。
フランスは世界の中でもっとも伝統と多様性に富んだワインを造っている国で、世界のワインの縮図といっても過言ではありません。
軽やかなボジョレーやリッチで果実味豊かなピノ・ノワールを生み出すブルゴーニュ地方。
高級スパークリングワインを生み出すシャンパーニュ地方。タンニン豊富で重厚なワインを生み出すボルドー地方。ドイツ系の文化を持つアルザス地方……。
一つの国の中に多様な生産手法、種類のワインが存在します。そのため、フランスワインを理解できれば、世界中のワインを理解する上でのベースができます。
通えるならスクールがお勧め、独学も可能
日本にいるうちはワインスクールに通ってみるのもいいですね。海外にいて近くにスクールがなければ、ソムリエ対策本やワインに関する書籍を覚えていくところから始めてみましょう。
特にスクールは、個人ではなかなか購入できないような高級ワインを飲む機会をつくってくれます。1本1万円以上するワインは普段なかなか買わないと思います。が、スクールに通うカリキュラムの中で、何本か高級なワインを飲む機会は出てきます。
実際飲んでみると、自分の想像を超えるワインの奥深さ、おいしさに驚き、どんどんはまっていきます。
地理の勉強にもなる
ワインはその畑の位置によっても大きく味わいが変わります。
ブルゴーニュにいたっては、数百メートル離れるだけで畑で栽培されるブドウの性質が変わると言われています。そのため、ワイン生産地各国の都市の位置を含めた地理や歴史も勉強することになります。
筆者は最初は単なる興味本位でワインの勉強を始めたのですが、あまりの奥深さに驚きつつ、どんどん引き込まれていきました。
まとめ~ビジネスマンとして欠かせないワインの知識~
多少飲めるのであれば、ワインは海外生活では欠かせません。
フランスでは一部地区を除いてラベルに品種は記載しません。ロマネ・コンティもピノ・ノワールとはどこにも書いてありません。そこが難しくさせているのですが、勉強さえすればわかるようになります。
逆にニューワールドと言われるオーストラリアやアメリカ、ニュージーランドでは分かりやすく品種を書くケースがほとんどです。
まずは品種とその特徴を覚えれば、世界のビジネスマンとしての第一歩と言えるのではないでしょうか。
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