「海外駐在」と検索すると、駐在員のポジションを得るためのノウハウや住みやすい国などを紹介するウェブサイトなどがたくさん出てきます。
駐在員を目指す人にとっては「どうしたら駐在員になれるか」という情報が最も気になると思います。が、海外駐在は「辞令を獲得したらゴール」ではありません。ここでは、駐在員の「その後のキャリア」についてご紹介していきます。
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海外ビジネスの現状と駐在員への期待
海外駐在員の減少
近年、駐在員のポジションが狭き門となりつつあるのをご存じですか?
2018年に日本在外企業協会が行った調査では、日本企業の海外従業員数に占める日本人派遣者数は1.2%であることがわかりました。これは調査を開始した1996年の半分以下で、過去最低の割合です。
ビジネスの現地化
この駐在員減少の背景には、日本企業の活動方針の変化がみられます。同調査では海外現地法人の日本人社長比率が2016年の51%から大きく減少し、38%となったことが発表されています。
また「グローバル経営を進展させるための本社からみた主要な経営課題」では「ローカル社員の育成」が最多の71%を占めました。
これらの情報から、海外進出している日系企業の多くが本社主導型から脱却し、現地化をはかっていることが読み取れます。
※出所:第10回日系企業における経営のグローバル化に関するアンケート調査(2018年)
海外駐在員に求められる要件
企業としてはグローバルに活動しながらも、個々のビジネスは現地に根付いたものにする「グローカル経営」が主流となりつつあります。
そんな中で、本社と現地をつなぐ駐在員への期待はより大きくなっています。調整力、交渉力、語学力、積極性など、求められる素質はあまたあります。とある研究論文では、駐在員に求められる要件を以下の7つに分類しています。
- 主体性の発揮
- 異文化適応
- 教養
- 業務の専門性
- 信頼関係構築力
- 思考力と発信力・調整力
- 語学力
※出所:海外で活躍する「グローバル人材」に求められる要件の構造(2018年)
「任期満了=帰任」だけではない!駐在員の「その後」
貴重な海外駐在員の椅子を獲得し、無事に任期を終えた後の最も一般的なキャリアパスは「日本に帰任し引き続き同じ会社に勤務する」ことです。が、さまざまな理由で駐在を終えたのちに、転職をする人は少なくありません。
海外駐在中のビジネス経験により前述の能力が磨かれた海外駐在経験者は、転職市場でとても人気です。「駐在経験者」という肩書により、前段で紹介したような要件を満たしていると認識されるからです。
「錯覚資産」とも呼べるこの肩書ですが、自らの駐在経験で得たものを棚おろしし整理してみましょう。すると自分の駐在経験の価値を、「錯覚」から実体験に基づく「強み」へと練り上げることができます。
駐在員のその後1:日本へ本帰国
同じ会社で勤務していく
駐在を終え、日本へ帰任し引き続き古巣で業務にまい進する……というのが駐在後のキャリアで最も一般的です。
駐在中に身につけた市場固有の知識を駆使して、社内で「その道のプロ」の立場を確立するのもいいでしょう。現地でのマネジメント経験がある人は、それを生かして課長、部長と社内キャリアを駆け上がっていくことも可能です。
日本帰任後に転職する
帰任した元駐在員の中には帰国後しばらくたってから転職を決意する人がいます。一度は「また日本で頑張ろう」と決めて帰国したはずなのに、なぜ転職を志すようになるのでしょうか。
労働政策研究・研修機構が駐在経験者を対象に実施した調査では、「帰国後に感じる仕事上の不安」として30代当事者からこのような回答を得ました。
- 日本の仕事の進め方になじめない
- 社内の制度や規則の変化に疎くなる
- 社内のインフォーマルな最新情報に疎くなる
- 海外での経験が役に立たない
※出所:海外派遣勤務者の職業と生活に関する調査結果/第I部 海外派遣勤務者(本人)についての調査結果
駐在経験者の「不安」が転職の呼び水に
最新の社内規則や情報網に関する不安は、時間と慣れで解消されうる不安です。が、仕事の進め方の不一致や経験を役立てられていないという回答は、不安というよりも自分と会社のミスマッチです。このため、転職がひとつの解消策になります。
「社内で交渉したものの、理解を得られなかったり納得のいく対応が取られなかった」という場合はなおのこと。「転職」という選択肢が現実味を帯びてきます。
駐在員のその後2:駐在中に転職を決めてしまう
海外駐在員の中には、任期中に転職活動を始める人もいます。部外者は「せっかくの駐在なのになぜ?」と思うかもしれません。が、駐在員になったからこそ見えてきた新たな事実により、転職を決意するケースもあるのです。ここではその一部を紹介します。
家族との関わり方が変わった
海外駐在は本人だけでなく、配偶者や子どもとの関係にも変化をもたらします。
- 治安の悪い国なので単身で駐在しているが、家族と離れ離れの生活に疑問を抱いている
- 日本で勤務していた頃よりも家族との時間を取れるようになったが、帰任したらまた仕事漬けの日々になってしまう
- 駐在地で結婚したが自分と配偶者の帰任の時期が異なり、このままでは別居を余儀なくされる
このように駐在による家庭環境の変化がきっかけとなり、転職を検討するケースは多々あります。
本社優位の意思決定プロセスに疑問を抱いた
現地側の意見や提案が至極妥当であるにもかかわらず却下され、結局本社の決定に従うことを余儀なくされるーー。こういった場面は昨今のグローカル化の流れの中でも、まだまだ見受けられます。
本社が日本にある限り、多少は仕方のないことではあります。が、本社に何かを阻まれた経験が多い人が「社内で無益に戦い続けるよりも転職した方がもっと活躍できる」と考えるのは自然なことです。
駐在国の社会や生活が気に入り、帰りたくなくなった
海外での生活は、その人の価値観や人生観に大きな衝撃をもたらします。今まで触れたことのなかった生き方や考え方を知り、「こんな世界があったのか」と驚かされることもしばしばです。
また、「何を尊重するか」も社会によって異なります。多様性、同一性、宗教、寛容さ、軍事力、正義、教育……。駐在国の社会がより自分にとって「生きやすい」と感じた場合、駐在国に残るというのも取りうる選択肢のひとつです。
転職に対する抵抗感が下がった
国により多少の差異はありますが、一般的に海外では日本より転職が盛んというのはよく知られた事実です。このことをただ知識として知っているのと、海外で自分の肌身で直接感じるのとでは大違いです。
例えば「自分の所属している部署の全員が中途入社」や「部下がキャリアアップのために転職した」という形で、体験したとします。すると圧倒的に「身近なこと」として受け止められ、転職に対する心のハードルが下がります。
以前から転職を考えていた人には実行する大きな後押しとなります。
まとめ~駐在で大きく人生が動く〜
海外で働くこと自体が大きな人生の転機ですが、駐在地での出会いによってより大きく人生が変わることは決してまれではありません。私も駐在前はこうして駐在について発信する立場になるとは全く想像していませんでした。
駐在という言葉はキラキラしたイメージと共に語られることもありますが、実際は良くも悪くも驚きと衝撃の連続です。人生に大きな変化が起こる可能性を知った上で駐在に臨み、よりスムーズに人生のかじを取っていきましょう。
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