アルゼンチンは南米の中ではブラジルに次いで2番目の面積の広さを誇り、世界最大の滝であるイグアスの滝など豊かな自然に恵まれた国です。
100年以上前から日本人が移民として暮らしていたこともあり、現在も多数の日系人を抱え親日的な国としても知られています。
そのため、都市部では日本食材が手に入りやすく日常生活で必要な食品は購入できるため、日本食を自炊できます。
気候は地域によって異なり、亜熱帯気候、温帯気候、乾燥帯気候、寒帯気候の4つに分かれています。
今回はアルゼンチ移住についてご紹介します。
アルゼンチン移住のメリット
食べ物
アルゼンチン料理は主にスペイン・イタリアの影響を強く受けています。
また、肉牛の飼育が盛んなため牛肉の値段が安く、アルゼンチン人はお肉をよく食べます。
アサードという牛肉や羊肉の炭火焼が大変有名で、ホームパーティーの時にはバーベキューのように自宅でアサードを料理することもあります。
このほかにパスタやパンも多く食べられますが、あまり野菜を食べないので、日本人が現地の料理ばかり食べていると少し不健康に感じてしまうかもしれません。
教育環境
アルゼンチンは南米の中では特に教育に力を入れている国です。
公立学校は小中高と学費が無料で、大学も国立の場合はお金がかかりません。
ブエノスアイレス国立大学やコルドバ国立大学などは世界大学ランキングにも登場する名門校で、入学試験がないため誰でも入れますが講義のレベルが非常に高いため、卒業できる人は一握りです。
また、年間1,000ドル以下の学費で学位を取得できるプログラムもあります。
また、ブエノスアイレスには日本の教育機関として認定された学校があるため、学費は現地の公立校と比較するとかなり高額にはなりますが、日本人の子どもが日本の教育を受けられます。
医療
アルゼンチンでは外国人の住民や旅行者も、公立病院であれば無料で診察を受けられます。
また南米の中では公共医療のレベルが高く、近隣の国から治療を求めて渡ってくる人がいるほとです。
ただ、公立病院ではほとんどの場合においてスペイン語で意思疎通をしなければならず、待ち時間も長いため医療レベルそのものよりも、治療にたどり着くまでの過程がやや大変かもしれません。
私立病院では入院の前に費用の全額前払いを求められ、それが高額になる場合が多いので、保険の準備をしっかりしておくことをおすすめします。
アルゼンチン移住のデメリット
日本からかなり遠い
日本からアルゼンチンまでは地球をほぼ半周するため、飛行機には直行便がなく、乗り継ぎをして30時間ほどかかります。
往復の航空券代も特に安い時期を除けば平均して1人18万円前後必要なため、もし家族で一時帰国しようとすると大変な金額になってしまうでしょう。
そのため、日本で緊急的な用事が発生した場合でも気軽に飛行機に飛び乗ってすぐに帰ることはことは、難しくなってしまうと思います。
住環境の違いに戸惑うことも
南米の中では生活水準が高くインフラも整っているアルゼンチンですが、やはり日本と比べると生活に関するサービスへのアクセスは大変に思うことが多くあります。
まず、水道設備の故障や停電が日本ではおそらく経験のないほど頻繁に起こり、そのための修理を頼んでもすぐに直してもらえません。
修理屋を呼んだのに来てくれなかったり、きちんと直してくれなかったりと、日本人の感覚からはストレスに感じるかもしれませんが、彼らはアルゼンチンの文化でおおらかに生きていて決して悪気があるわけではないので、現地のやり方を受容する心が必要です。
アルゼンチン移住する方法
長期留学生として移住
語学留学などの3ヶ月以内の滞在であれば、特別なビザの申請は必要ありません。
大学など高等教育機関への正規の留学の場合は、事前にアルゼンチン大使館に学生ビザの申請をします。
申請書や写真の他に銀行口座の残高証明や無犯罪証明書が必要となっており、日本語の書類はスペイン語に翻訳しておくことを求められています。
申請には大使館での面接も含まれています。
ただ、成人になってからの留学の場合は大使館での事前申請ではなく、現地に入国してからの申請をすすめられる場合もありますので、学校によく確認した方が良いでしょう。
現地人と結婚して移住
アルゼンチン人と結婚するためには、アルゼンチンの市役所で式を挙げなければなりません。
結婚の手続きは日本のように書類1枚にサインをすれば良いというものではなく、身分証明書が必要なことは元より、指定された国立病院で受けた血液検査の結果や、実際に立ち会ってくれる証人2名が必要です。
血液検査を受ける病院では予約が大変混み合っており、また書類を全て揃えた後の役所への提出も、混んでいる時には数ヶ月待ちになる場合もあります。
観光ビザでの滞在の場合、申請をして一度だけ国外に出ることなく滞在可能期間を延長できます。
移住ビザを取得して移住
アルゼンチン国内で生産、商業、サービスなどを営む投資家は、3年の在留許可を取得できます。
3年が経過したのちは、永住権を申請可能です。
以前は特別移住プログラムとして一定の預託金の支払いによって移住査証が取得できたようですが、現在のアルゼンチン大使館のページにはその案内がなくなっています。
投資家ビザで移住する際には、必要な書類は全てスペイン語に翻訳した上でアポスティーユ(公証)をつけることが求められていますので、書類の準備は計画的にしっかり行いましょう。
就職して移住
アルゼンチンの就労ビザにはトランジットとテンポラリーという2種類があります。
テンポラリーには就労のほかに投資家スキームでの移住も含まれていますが、一般的な現地採用で働く場合にもこのテンポラリーを取得します。
トランジットも就労ビザではありますが、こちらは観光や医療関係、農場での季節労働などについての査証のため、該当する日本人は少ないと思います。
普通の会社員としてアルゼンチンで働くためには主にテンポラリーのビザを申請し、身分証明書、無犯罪証明書、健康証明書を申請書類に付けて提出します。
全ての書類はスペイン語に翻訳されている必要があります。
アルゼンチン移住の生活費
アルゼンチンの物価は南米では高めです。
また、インフレが激しいので毎年値段が上がっていきます。そのため、こちらで紹介している物価も将来的には上がっていくものと考えておいた方が良いと思います。
家賃は独身の人に多いシェアハウスを借りた場合は3万円代から探せます。注意の部分に記載しますが、外国人がシェア以外で家を借りることは大変難しいです。
食費は、自炊をする場合は卵が6個入りで約100円、牛乳1パックが約150円、トマトが1kg約150円と日本と同じくらいものもあれば安いものもあります。
お肉は日本よりも大幅に安いです。交通費や携帯など全て含めて7万円くらいで余裕のある生活ができると思います。
アルゼンチン移住に必要なビザ
ビザの種類
アルゼンチンでは、トランジットとテンポラリーという一時滞在許可の中に、就労ビザや投資家ビザなどが含まれています。
現地採用で一般的な会社員として働く場合には、ほとんどがテンポラリーのビザを申請します。
その他、3ヶ月以上の長期に渡って留学する場合には学生ビザを取得します。
また、アルゼンチンは出生地主義をとっているため、アルゼンチンで生まれた子どもは両親が外国人であってもアルゼンチン国籍を取得できます。
取得条件など
学生ビザは留学を希望する学校にビザを申請してもらいますが、実際のところ語学学校などでは3ヶ月を超える長期の滞在を希望していても、なかなかビザ申請に同意してもらえないこともあります。
3ヶ月以内の語学留学の場合にはビザなしで滞在できますので、その期間を利用する人も多いようです。
現地で働く場合のビザの申請には、申請用紙に加えて無犯罪証明や個人事項証明書の提出が必要なほか、大使館にて面接を受けなければいけません。
アルゼンチン移住に必要な語学力
英語力やスペイン語力
アルゼンチンはスペイン語圏の国のため、必要な語学はスペイン語です。
学校教育に英語が組み込まれているため簡単な挨拶や単語ならば英語が通じますが、日本人の平均的な英語力と大差がないと思っていて良いと思います。
外国では英語が話せると多くの国でやり取りがスムーズになりますが、アルゼンチンでは英語が話せない人も多いです。
話せる人も一部を除いて意思疎通に十分であるとは言い難いので、英語よりもスペイン語を事前に習っておいた方が良いでしょう。
アルゼンチン移住の初期費用
アルゼンチンに渡ってしまえば、家賃や光熱費、通信費、食費を合わせて7万円代から生活できますが、現地に行って家を探すまでがなかなか大変で費用もかかります。
まず航空券代は安い時期でも片道7万円は必要で、平均値で考えると10万円は考えなければなりません。
また、アルゼンチンで家を借りるためには現地で不動産を持っている保証人を探さなければならず、そのためシェアハウスやサービスアパートメント、ホテル住まいなどで長期滞在をしている外国人はとても多くいます。
そのため家賃は割高ですが、多くの場合は家具や家電が備え付けとなっているため、自分で買う必要はありません。
アルゼンチン移住で住みやすい都市
ブエノスアイレス
ブエノスアイレスはアルゼンチンの首都で、南米のパリと呼ばれるほどコロニアル調の建物が残る街並みが美しく素敵なカフェや雑貨屋もたくさんあります。
日系人含め日本人も多く住んでいるため日本食材も比較的手に入りやすく、日本語で学べる学校も2校あります。
中心部は観光地として整備されているため警察官の目も割と行き届いていますが、郊外に行くにしたがって治安の良くないエリアも出てきますので、立ち入ってはいけないエリアをしっかり把握しておきましょう。
コルドバ
コルドバはアルゼンチン第二の都市で、日本での知名度はあまり高くありませんが、こちらにも大聖堂や現在は博物館となっている旧市議会堂など歴史的な建物が多く残る、大変美しい街です。
大きな街ですが治安も比較的よく、アルゼンチンで最も古い大学であるコルドバ大学があるなど教育水準も高いところです。
週末の夜には民芸品市場が開かれていますが、観光客向けのお土産ではなく地元のアーティストの作品やアンティークなども売られているので、ローカルの人のお出かけ場所として賑わっています。
ロサリオ
大河パラナ川流域にあるロサリオには大学や語学学校があるため留学生が住みやすい街です。
また、リオネル・メッシ選手の出身地で大きなサッカーのクラブチームのホームタウンでもあることから、サッカー好きの人にとってはとても魅力的な場所ではないでしょうか。
大きな街なので、買い物や外食などの日常生活の面でも大きな不自由はありません。パラナ川沿いには公園が多く広がり、緑豊かな場所でゆったり暮したいという方にはおすすめです。
アルゼンチン移住前にすべきこと
お住まいの自治体で海外転出の準備をする際に、年金の支払いを継続するかストップするかを決めておきましょう。
国民年金は海外にいても、日本国内から支払う方法があれば積み立てを続けられます。
海外10年以上の資格期間があれば、64歳以降に海外にいても受給可能です。
また、アルゼンチンでは日本のように気軽に医療にアクセスすることが難しくなります。
診療自体は無料で医療水準も決して低くはありませんが、英語がほとんど通じず、また診察を受けられるまでかなり待たされます。
私立病院もありますが、こちらは入院費用を前払いで請求されかなり高額になりますので、健康診断などを一度受けてケアをしてから行った方が良いでしょう。
アルゼンチン移住で注意すべきこと
物価
アルゼンチンはインフレが激しく、日常的に物価が上がり続けています。
お米や牛乳、野菜など基本的な食料品の値段もどんどん上がるため、ある程度外貨建ての生活費を用意するなどインフレ対策をしておくことをおすすめします。
また、農業大国のためお肉や国産野菜などは日本よりも安く買えますが、輸入品は日本よりも高くなっています。
外食もアルゼンチンの平均的な収入から考えると高めなので、物価の差を有効に使ってゆとりのある生活を……、と考えていると少し難しい面が出てくるかもしれません。
油断しない
アルゼンチンの治安は比較的落ち着いていると言われており、高レベルの渡航注意情報も出ていません。
都市部の中心地はヨーロッパに来たかのように錯覚するほどクラシカルで美しいのですが、そのために油断してしまうと、危ないエリアに足を踏み入れてしまいかねません。
比較的良いと言っても、日本と比べてしまうと、やや危ないと認識しておくくらいが、身の安全を守る上では役立つと思います。
スリや強盗は決して珍しくないので、自衛のために夜間の一人歩きは避けた方が良いでしょう。
また、都会でも中心部から外れていくにしたがってスラム街もあるため、気軽に知らない地域に足を踏み入れないようにしましょう。
賃貸
アルゼンチンで賃貸の不動産を借りる時には、家やマンションなどの不動産をしっかり持っているアルゼンチン人の保証人が必要です。
アルゼンチン人と結婚した人であれば親戚に頼めますし、駐在であれば会社が対応できますが、通常は個人の外国人がこの保証人を探すことは非常に難しく、家具付きのサービスアパートメントやシェアハウスなどに住む人が多いと思います。
また、アルゼンチンの住居では家の設備が壊れることは日常的にあるため、停電する、水が使えないなどの不測の事態が日本よりも頻繁にあることを念頭におくことをおすすめします。
アルゼンチン移住体験談
アルゼンチンは色々な人種の人たちが共存している国です。
そのため個人の違いにとても寛容で、人と違った見た目、考えをしているからといってそれを非難されません。
常識を押し付けず、おおらかなアルゼンチン人に接していると、自分を良く見せようと取り繕うことを自然としなくなります。
また、何十年も前から移民して現地に溶け込んで暮らしている日系人の方の真面目で誠実な生き方のおかげで日本人に対するイメージが非常に良く、とても親日的な国です。
日本人に対しては非常に好意的に見てくれますが、逆にお金を持っているように思われて盗みのターゲットになることもあるため、常に注意は必要です。
アルゼンチン人はおおらかな人たちですが、ラテン系の他の国と比較すると、待ち合わせに遅刻はしてもドタキャンはしない、約束事を無断で破棄したりしないなど、日本人が付き合いやすい面も持っています。
日本にいる時よりも少しだけ几帳面さを緩めるようにしてみると、とても溶け込みやすい文化だと思います。