国民性は、よく先入観とイメージで語られます。
そうして語られる事柄は、決して大きく外れてはいないものの、実際にその土地で体感するものとは異なっている場合が多いと思いませんか?
それもそのはず、ほとんどの人はその国に行ったことがないのですから。
私も、フランスで暮らす前に持っていたフランス人のイメージと、実際に現地で見たこと・感じたことの間には、やはりいくらかのギャップを覚えました。
そこで今回は、イメージではなく私の実感によるフランス人像を、皆さんにご紹介したいと思います。
フランス生活では挨拶を大切に
フランス生活で、私がとても気持ちよく、嬉しく感じたことの一つが、フランス人のしてくれる温かい挨拶です。
目を見て微笑みながら朗らかに挨拶を交わすという小さなことが、こんなにも幸せを感じさせてくれるとは、日本にいる時は気付きもしませんでした。
生まれ育った日本という国が、全体として、細やかな挨拶という美徳を残念ながら失いつつあるということを、フランスに来て痛感しました。
フランス人の生活には本当に挨拶が浸透していて、日本では考えられないような場面でも挨拶が交わされます。
私がいちばん驚いたのは、長距離バスに乗った時のことでした。
パリからリヨンに向かう6、7時間の道中、バスはとあるサービスエリアに停まりました。
少し前にも休憩を取ったばかりなのにと思っていると、どうやらドライバーが交代する様子です。ドライバーは車を停めると、外にスタンバイしていた交替のドライバーと笑顔でハグ。
そして車内に戻って荷物をまとめると、乗客の方に笑顔で向き直って、”Merci beaucoup. Bonne journée!”(ありがとうございました。良い一日を!)と大きな声で挨拶したのです。
すると今度は、60人ほどの乗客たちが一斉に Merci!と返します。
私は清々しさと共にかなり驚きを感じたのですが、周りのフランス人たちはみんな何食わぬ顔です。これがフランスの常識なんですね。
フランスでは、近所の人とすれ違った時はもちろん、バスに乗る時、お店に入る時、レジで自分の番になった時……と、本当にいろいろな場面で挨拶が飛び交っています。
気持ちの良い、こまめな挨拶が作る温かい雰囲気。日本人も見倣いたいものです。
フランス人の自己主張はストレート
自分自身もそうですが、日本では「空気を読むこと」「輪を乱さないこと」を自然と意識します。
多少の不都合は忍んでも波風を立てないのが美徳、という考え方で、これはこれで良い面がありますが、ストレスが溜まりやすいという面もありますよね。
フランス人の考え方は真逆、つまりいちばん大切なのは「個人」なのです。
ですから、自分の言いたいこと・自分の気持ちをはっきりと表現します。周りがどう思うかを気にして発言できないということは、ほとんどありません。
感情表現もはっきりしていて、嬉しい時は嬉しい、ムカつく時はムカつくというのが、ストレートに態度に出てきます。
このスタンスだと、個人個人はストレスが溜まらなくて良いのですが、 協調性はどうしても欠けてきます。みんなで何かを決める場合などにはものすごく時間がかかり、話し合いが紛糾することも珍しくありません。
また、「出る杭は打たれる」日本の社会とは違い、人と違った意見を言える人が優れているという価値観が社会に浸透しています。
フランスに移住・滞在することを考えている人には、人にどう思われるかを気にし過ぎないことをおすすめします。
いろいろな意見を恐れず受け止めながら、自分の意見もしっかり発信するという努力をしていくと、気持ちの良い人間関係が築けるかもしれません。
おしゃべり大好きフランス人
フランス人はおしゃべりや議論が大好きです。バスや電車で一緒になった見知らぬ人とも、すぐにおしゃべりが始まります。これは、しっかり・はっきりとした自己主張、という前述の特徴とも大いに関係がありそうですね。
空気を読むからこそ発言も慎重になって、おとなしい国民と言われる日本人とは対照的です。
これまた長距離バスでの一コマですが、ある時ボルドーからリヨンに向かうバスで、乗客が自分を含めて3人だけということがありました。
あとの2人はと言うと、うちの奥さん、そしてフランス人のおじさんです。そして、この日のバスは20~30代の女性ドライバーが運転していました。
私たちはバスに先に乗っていて、「今日は貸切か」なんて言いながらすっかり寛いでいたのですが、出発近くになって例のおじさんが乗ってきました。
おじさんはほぼ最前列に座り、バスは発車。間もなくすると、おじさんがドライバーに話しかけ、なんだかんだと話し始めました。
最初は、何か用事があって話しているのかと思ったのですが、いつまでたっても話は終わらず。
迷惑しているかなと勝手にドライバーのことを心配していたものの、彼女も楽しげに話している様子を見るにつけ、これはおしゃべりなんだと気付いたのでした。
結局2人は、サービスエリアでの休憩を除いて、7時間の道中ずっと喋っていたんです!
この他にも、TGVの中で、一緒に出かけた車の中で、あらゆるところでフランス人たちが長時間のおしゃべりをしている光景を目にしました。
フランス人は、老いも若きも、男も女も、とにかくおしゃべりが大好きなのです。
旅先のフランスでは、見知らぬ人から話しかけられることがきっとあると思います。フランス人は日本人が好きですから、余計に好奇心が沸くのでしょう。
言語の壁もあり緊張するとは思いますが、冷たくあしらわず、おしゃべりしたい彼らの気持ちを汲んで上手に対応してあげてください。
ただしスリの手口の場合もあるので、用心は怠らず。
無愛想で感情的なフランス人の店員さん
日本人がフランスへ出かけて戸惑うことの一つに、お店やお役所のドライな接客があると思います。「お客様は神様」という日本の接客に慣れていると、失礼だな、と感じますよね。
いったいなんであんなにドライなんでしょうか。
理由は簡単。彼らにとって、「お客様は神様」ではなく、「お客さんも同じ人間」だからです。
逆に、フランス人が日本に来ると、きわめて愛想良く丁寧で、深々とお辞儀をする日本人の接客に違和感を感じるんだそうです。
ちなみに、明らかに店員さんの機嫌が悪い時があります。
それは、予定どおりに休憩に入れなかったとか、嫌なお客の相手をした直後だとか、そんな理由でイライラしているのが態度に出ているだけの場合がほとんどです。
仕事さえちゃんとやってくれればOK。そんな心持ちでいれば、きっと楽でいられますよ。
フランス人は助け合いが当たり前!
フランス人の尊敬できる部分として私が筆頭に挙げたいのが、助け合いです。彼らはごく自然に、困った人に手を差し伸べられるのです。本当に素晴らしいと思います。
考えてみると、フランスというのは福利厚生が手厚い国なのです。
就業時間が短く有給休暇が多い勤務スタイル、事実上無料の公立教育、低所得者住宅の充実などなど、国民の生活に優しい様々な政策が実施されています。
そういった社会政策が生み出すものなのか、はたまた時代を超えて受け継がれてきた精神なのか、はっきりとは分かりません。しかし、とにかくフランス人が総じて弱者に優しいというのは、厳然たる事実です。
いかにもやんちゃ盛りという雰囲気の10代後半の男の子も、後からバスに乗ってきたおばあちゃんにさっと席を譲っています。
たまたま自分の前にいた盲人の男性に、彼がバスに乗ってから降りるまでずっと手助けし続ける女性がいたりもします。そんな光景を見ると、心が温かくなりますよね。
彼らのように自然とできる時ばかりでなく、勇気を出してでも困っている人に手を差し伸べたい、そんな気持ちにさえさせてくれる、フランス人の助け合いなのでした。
おしゃれに年を重ねるフランス人
最後にご紹介したいのが、フランスのご老人たちのファッションです。
街で見かけるお年寄りの多くが、70、80代になっても、本当に行き届いた、センスを感じるファッションをしているのは、新鮮な驚きでした。
たぶん彼らは、近くのスーパーに買い物に行く、郵便局や銀行に行く、そんなちょっとした用事のために外出してきたのでしょう。
それでも明らかにファッションに気を配っていることが伝わってきて、見ているこちらはなんだか嬉しくなりました。
いくつになっても、年相応のおしゃれをして街へ出かけることは、きっと彼らが若々しさを保つ秘訣にもなっているんでしょうね。
まとめ
いかがでしたか?
こうしてフランス人の特徴を挙げてみると、たしかに我々日本人とは違う部分がいろいろありますよね。良いな、尊敬できるな、と思うところもあれば、ちょっと面倒くさいなと感じる部分もあったことでしょう。
この記事を読んでくださっているあなたは、きっとフランスに興味をお持ちのことと思います。フランスに行くことを考えている、という方かもしれません。
フランスに行ったら、フランス人の文化の良いところを大いに楽しんでください。
もし不快に感じることがあったなら、彼らがそうする理由を考えてみてください。そうしたら、きっと広い心で受け入れられるんじゃないかと、私は思っています。
日本とフランス、フランス人と日本人との交流が、末長く発展していきますように……。
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