フランス・リヨンでのワーホリ生活の中で、私がいちばん困った場面、それは病院にかかることでした。
元気でいたいのはもちろんの事、フランス語はあいさつ程度、英語だって治療の説明を聞いたりとなるとかなり不安、という言語面の懸念を考えても、医者に行かずに済むように、と願って始まった1年でした。
結果は、惨敗……なんと、3回の医者通いを経験することになったのでした。
これから海外へ行く皆さんに贈る、私のフランスワーホリ歯科治療体験談です。
突然銀歯が……
それは、フランスでのワーホリスタートから2ヶ月半後、ある日のお昼のことでした。
夏休みを利用して日本から遊びに来ていた家族と、自宅でわいわいお昼を食べていたその時、突然私の口の中に異変が!「なんだ、この硬いものは!?」
なんと、下の一番奥の歯にかぶさっていた銀歯が、何の前兆もなく取れてしまったのです。キャラメルとか、そんな銀歯が取れやすそうなものを食べた訳でもないのに、なんでいきなり……
突然のハプニングの動揺が治まってくると、次に襲ってきたのは、「歯医者どうしよう……」という心配です。
というのも、リヨンには日本語の通じる歯医者がいないのです。念のため、あらためて調べてみましたが、やっぱりいませんでした。
しかも、季節はバカンスシーズン真っ盛り。仮に、日本語の通じる歯医者があったとしても、かなりの確率でお休みでしょうね。
3日後には、家族で南仏旅行に出かける計画です。いやはや困りました……。
そうだ!パリへ行こう!
調べた結果、リヨンからいちばん近い日本語の通じる歯医者となると、パリになることが分かりました。しかも、パリには日本語の通じる歯科が数軒あるのです。パリの国際都市っぷりを見せつけられた気分です。
半ばすねて、「わざわざパリなんて行けないよ、用事もないし……」と思った私。
その時です。閃めいちゃいました!というか、ようやく思い付いたと言うべきかもしれませんが。
ありました、パリに用事が。しかも、明日!
仕事の関係で、義理の弟が遅れて渡仏することになっていて、その到着が明日なのです。はじめて一人で来るので、パリの空港まで誰かが迎えに行こうということで、父がTGVを予約していました。
それを私が代わりに行けば、ついでにパリで歯医者に行けます!義弟の到着は夕方ですから、日中時間は十分にあります。
手間が省ける父は、もちろん快諾!最後の問題は、このバカンスシーズンに歯医者がやっているかどうか、しかも明日のちょうど良い時間に診てもらえるかどうかです。
歯科のアポイント成功
「パリの日本語の通じる歯科医院」リストを見て、良さそうに思える所から電話をかけていきます。
1軒目、……留守電でした。うーん。
気を取り直して、2軒目!……またも留守電。現実は厳しいものです。
さて3軒目、と思ったところで、2軒目にかけた歯科医院から着信です!
電話に出ると、フランス人のドクターの、日本人の奥さんでした。この奥さんが通訳をしてくれるので、日本語対応可ということなんですね。
祈る思いで事情を伝えたところ、「休みの日なんだけれど、明日診てあげましょう」との回答!時間も、ぎりぎり義弟の迎えに間に合いそうです。良かった〜!先生と奥さんにひたすら感謝です。
こうして翌日、私は診察と義弟の迎えのため、パリへ向かったのでした。
居心地の良い、パリの歯医者さん
TGV、パリのメトロ、RER(地上路線の電車)を乗り継いで、無事にクリニックに到着です。
パリ市内、郊外寄りの高級アパルトマン街に、クリニックはあります。入口まで出迎えに来てくださった奥さんの後について、赤いカーペットの敷かれた階段を上がり、広い部屋に招き入れられました。
自宅兼クリニックなんですね。奥に診察室が見え、久しぶりの歯医者に少々緊張を覚えます。
広々としたサロン(リビング)のソファを勧められました。かわいい猫がいます。お隣失礼します。
受付書類の記入をしていると、奥さんが日本茶を淹れてくださいました。
美味しいお茶をいただきながら、少しお話ししていたら、先生が登場です。がっしりした、豊かに口ひげを蓄えたフランス人のドクターです。どうぞよろしくお願いします。
通訳付きで安心 スムーズだった最初の診察
診察台に座り、あらためて状況を説明し、取れた銀歯を手渡します。
今日は問題箇所の清掃をして、次回新しい銀歯を作るための型を取り、3回目に装着して終わり、という流れになるだろうと説明されました。
分かりました。秋にパリに来る用事があるので、その前か後にもう一回来ればいいですね。
奥さんが通訳してくださるので、スムーズで安心です。
説明が終わり、早速治療開始。歯の清掃、仮のフタをして、15分程で今日の治療は終了です。
支払いは、電話で聞いていたとおり、1回一律70ユーロ(約8,000円)。歯科は海外旅行保険の適用外なので、全額負担です。仕方ないですね。
フランスですから、治療費もカードで支払いOK。次回の予約は、また電話でということになりました。
こうして、初めての治療が終わり、ホッとした気持ちでクリニックを後にした私でした。
パリにて2度目の受診
最初の受診から約3ヶ月。2回目の受診が近づいてきました。この間、特に異常もなくて良かった。
再びパリへ向かいます。今回はついでの用事もなく、純然たる治療ツアーということで、いささか交通費がうらめしいところはありますが、行き帰りのTGVと、秋のパリ散歩を楽しむ日帰り旅行と考えましょう。
クリニックに無事到着。さあ、今日は新しい銀歯を作るための型を取るんでしたよね。痛いこともなさそうだし、リラックスして先生とご対面。Bonjour docteur! よろしくお願いします。
型を取る前に、まずレントゲンを撮って、中の様子を確認するとのこと。了解です。
レントゲン室に行ったりするわけではなく、横になったまま、小型のカメラをくわえてればいいんですね。先生が別室へ行き、待つこと数十秒。撮影完了です。
予想外の展開……
さて、私の奥歯はどうでしょうか。先生と奥さんがフランス語で何やら話しています。あんまり良い表情に見えないのは気のせいでしょうか。
お二人の会話が終わり、結果発表です。
「問題の箇所、歯茎の状態が良くないですね」
え、そうなんですか?
「この銀歯を入れた歯医者さんの治療が良くなくて、中で小さなボルトが腐食して、その腐食のせいで歯茎が炎症を起こしているんですよ。ドクターも、この治療は信じられないと言っています。歯を温存できるかやってみますが、抜歯しないといけないかもしれませんね」
ショックでした。予想外の抜歯の話もショックでしたが、知らないうちにずさんな治療をされていたことはもっとショックでした。
先生の話によると、利益重視のいい加減な歯科医も多いとのこと。悲しいですね。
その後、温存できるかどうか試みたドクターでしたが、結局抜歯することになりました。
「このまま、今日すぐ抜けますよ。そしたら、今日で終わりますけど、どうされますか?」
かなりの歯医者恐怖症の私。突然の展開に腹が決まらず、「帰りの電車の時間もあるし、どうせ用事でもう一回パリに来るので、その時にします」。
今日やれば、かなり治療費が浮くと知りつつ、ビビリな自分なのでした……。
抜歯の日、テロ直後のパリへ
10日ほど経ち、今日は土曜日。いよいよ抜歯の日です。明日パリで用事があるので、今日は歯医者とパリ観光をして、ホテルに宿泊の予定です。
朝起きて、ネットでニュースを見始めたら、衝撃の報道が……。
なんと前夜、パリで同時多発テロが起きたとのこと!抜歯の緊張が吹っ飛ぶような大事件です。
しかし、いまのところパリでの用事は予定通り、TGVも平常運転ということで、恐る恐るパリへ向けて3度目の出発です。
厳戒態勢で、閑散としたパリの街に到着。何もできないので、早いですがホテルにチェックイン。
さみしくホテルの部屋で昼食を取り、まもなく歯医者に出かける時間になりました。今日はバスで出かけます。
ドクター「ムシュ」の見事な手際
クリニックに到着。奥さんとひとしきりテロの話をした後、先生が登場。いよいよ抜歯です。
仮のフタを外し、最初の関門は麻酔です。先生はとても上手で、ほとんど痛みは感じませんでした。ひと安心。
まもなく、抜歯開始です。永久歯を抜くのは初めてですから、緊張します。痛みは感じませんが、衝撃はけっこうありますね。しばしの辛抱です。
数分後、先生の手が止まりました。抜歯完了です。思っていたよりずっとスムーズでした。
抜歯後の空間はそのままにして、歯茎を回復させるとのことです。
ちょうど抜いた歯の近くに、まだ出てきていない親知らずがあり、「抜歯して空いたスペースにその親知らずが生えてくるとベストだね」と先生。なるほど、親知らずを抜かなくて済みますもんね。そうなるといいなぁ。
こうして、思いがけない私のフランスでの歯科治療は、無事終了となりました。
歯科情報
- ジャン=ポール・ミュラー医師
- 住所:78 Avenue Henri Martin 75116 Paris
- 電話番号:0142677515(日本語対応)
まとめ
何の前兆もなく銀歯が取れるというハプニングで、歯医者にかかることになった私でしたが、日本語が通じる良いクリニックに出会えたこと、用事と組み合わせてパリでの治療を受けられたことなど、本当に恵まれていたと思います。
自分の体験を通して言えることとすれば、長期の海外滞在前には、何も不調がなくても歯科検診を受けると安心、ということになります。
特に、ワーホリのように海外旅行保険での渡航の場合、歯科は保険適用外なので、万全を期しておくことをおすすめしたいと思います。
私の場合、3回の通院で、交通費も含めて3万円ぐらいかかりました。(ビビらず2回目で抜歯していれば、8,000円は浮いたのですが……)
「備えあれば、憂いなし」どうしようもない事態は生じるものですが、できるかぎりの準備をして、安心の海外生活を楽しみたいものですね!
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
フランスで働くには?フランスでの就職方法や仕事・求人の探し方
あわせて読みたい