フランスで鶏を飼い始めて3年、毎日雄鶏の歌声と共に朝が始まります。まさに田舎ライフの醍醐味です。新鮮で安心な卵を食べられる上に、意外な鶏達の可愛さに日々楽しませてもらっています。
鶏をペットのカテゴリーと思えない人もいるでしょう。しかし、それは見方次第です。
実は鶏は、とても人懐こく、毎日世話をすると、ペット同様に愉快な存在なのです。フランスで鶏と共に暮らす、鶏にまつわる楽しい田舎ライフをお伝えします。
フランスで採卵鶏を探すには
私が鶏を飼おうと思ったきっかけは、フランスのオーガニック卵の値段が一様に高かったからです。6個入りパックが大体日本円にして350円位です。それなら、鶏を飼った方が安くつく?と思いました。
まずは、家族3人分の卵が必要なので採卵鶏3羽から飼い始めました。フランスの田舎には、オーガニックの採卵鶏や卵、鶏肉が直接買える養鶏ファームが結構あります。
しかし、その養鶏ファームを見つけるのも実はひと苦労です。私はオーガニック市場で、鶏肉と卵を売っている店主にそれとなく聞いてみました。それがビンゴでした!
連絡先を貰い、後日ファームへ出向いたのです。私はおすすめの黒鶏2羽と白鶏1羽を購入し、段ボール箱で家まで連れて帰りました。もちろん鶏小屋は事前に準備済みです。鶏の値段は1羽1500円程度でした。
思いつきだったので、鶏代プラス餌代と卵分の対比をちゃんと計算せずに飼い始めました。実際は本当に安くつくかは、微妙なところです。
しかし、これで毎日新鮮卵を確保できる!それだけでワクワクだったのです。
鶏もみんな性格が違う
飼い始めて気付いたことは、みんな似たような顔つきでも、個々に性格が全然違うのです。見ているだけでとても興味深く楽しいです。それぞれに名前も付け、毎日観察するのが日課になりました。
3羽居るので誰かがボスになります。白鶏が早速、虚勢を張り出し、突いたり、邪魔したり、2羽の黒鶏をいじめ始めます。
1羽は少しおどおどし、完全に負けていますが、もう1羽はずる賢く、逃げ回っては先回りして餌を奪います。鶏社会も大変です。手出しが出来ない親心のようなもので、心配しながら見守っています。
鶏が身近に居る暮らし
日中は芝生に放し飼いをしていたので、家のドアを開けたままにすると、しょっちゅう部屋に乱入してきます。部屋を荒らすわけではないのですが、糞が汚いので、もちろん追い出します。
すると、寂しそうに鳴き声を上げながら去って行くのです。とても人懐こく、いつも人が居る所を好む習性があります。
ガラス窓越しに、入れて欲しそうに眺めている姿は本当に可愛いものです。テラスでご飯を食べている時は、常にテーブルの下でおこぼれを待っています。残飯を浚ってくれるので、ある意味助かってます。
こちらが話に夢中になっていると「おい!食べ物はまだか!」と容赦なく椅子に飛び乗ってきたり、ペットさながらの態度で笑わせてくれます。いつの間にか、鶏はとても身近な存在になっていました。
まさか、ペット同様に可愛くなるとは思っても見ませんでしたが。
犬に襲われる!
飼い出して間もない頃、なんと白鶏が近所の犬に襲われて死んでしまったのです。まだ卵も産み始めていなかったのに、無念です。
その犬は放し飼いにされていたハンター犬で、庭に侵入し、白鶏の背骨を銜えて自慢げに主人に持ち帰っていたそうです。
もちろん、飼い主は申し訳なさそうに、買値を支払ってきました。その人にとっては、単なる1500円の鶏だったかも知れませんが、私にとっては名前もある、可愛いペットになっていたのです。
お金を受け取った時はとても複雑な心境でした。その後、その人が鶏を食べたと知った時は、更に何とも言えない切なさが残りました。
実際は、採卵鶏は産み始めると、食用には相応しくないそうですが、まだひな鳥だったので、美味しかったそうです。それも悲しいかな鶏の運命だったかもしれません。
良い飼育方法は一目瞭然!
近所にも鶏を飼っている可愛いおばあちゃんが居て、彼女に色々と自然な飼い方を教えてもらいました。
始めはネットの養鶏情報を参考に飼い始めましたが、元気がない、餌を食べない等、ちょっとした事を相談できる近所付き合いは有り難いです。
そのおばあちゃんは、昔ながらの飼育法で、私の鶏の問題をいつも解決してくれます。ネット情報は散漫で、たまに真逆な情報もあり、迷う事ばかりです。
しかし、おばあちゃんの教えは、信頼しています。なぜなら、彼女の鶏達が元気で、すくすく成長しているからです。それを見れば、良し悪しは一目瞭然です!
昔ながらのおばあちゃんの知恵は何が正しいのかを証明していました。鶏を飼うなら、近所や飼っている人の鶏の状態を見て、信頼できる人から飼育方法を教わる事も賢明でしょう。
田舎で鶏を飼うなら狐に要注意!
鶏を飼う時、一番のリスクは狐に襲われる事です。
狐は夜半にやって来て、鶏が寝ている時を狙って襲いに来ます。賢いのでどんな隙間からでも侵入します。凄い場合は、土をトンネル状に掘って、柵の中に入るのです。
たった一晩、鶏小屋の鍵を閉め忘れただけで、全滅させられたという話もよく聞きます。それだけ、狐も毎日狙いに来ているという事です。
私はなるべく時間を決めて、真昼にだけ外に出すよう細心の注意を払っています。
新鮮卵は毎日の宝
いくらペットのような存在とは言え、何より嬉しいのは生産性がある事です。初めて卵を産んでくれた時の悦びは、想像以上でした。
通常、鶏は4ヶ月頃から卵を産み出すそうですが、うちの鶏は1ヶ月程遅かったので尚更です。ファームから違う環境に来たので、ストレスもあったのでしょう。鶏は意外に敏感です。
それからは毎日、濃い肌色の卵を産んでくれます。最初の卵は、当初から決めていた卵掛けご飯で、美味しく頂きました!
産みたての卵は白身がトロッと厚く、ダブルの層になっています。黄身の艶感もスーパーの卵とは雲泥の差です。
普段からオーガニックの卵を買っていたので、味の違いを問われると、正直よく分かりません。しかし、ひいき目にこちらの卵の方が美味しいと信じて食べています。
フランスでもベジタリアンは増えています。私も野菜中心の食生活なので、卵は貴重なプロテイン取得の栄養源になってます。毎日1個、安心で良質な卵を頂けるのは、有り難い事です。
卵以外に鶏を飼うメリット
卵を産んでくれるだけで充分嬉しい存在ですが、鶏を飼うもうひとつのメリットは、生ゴミの処理です。鶏はほぼ何でも食べます。
これについてもネットの情報サイトによって記述は様々です。人間の残飯はNGとか、食べさせてはいけない食品をたくさん明記しているサイトもあります。
しかし、フランスでは(私の知る限りですが)鶏に残飯を当たり前に食べさせています。
フレンチだから?か、うちの鶏はチーズやオイスターの殻が大好物でいつも奪い合いです。その他、野菜類、卵の殻、パン、果物など、好き嫌い無しで、ほぼ何でも食べてくれます。
飼う側が何を食べているかで、卵の品質が変わります。オーガニック食なら卵ももちろんオーガニックです。鶏用のオーガニックの餌はフランスでは高額です。だから、なるべく残飯と併用して餌を与えると節約にもなります。
鶏は生ゴミを処理し、ゴミを減らしてくれる優れ者です。
ひよこから育てる楽しみ
ある程度慣れて来ると、雄鶏を仲間入りさせ、有精卵から孵卵させるのも良いでしょう。ひよこから育てると、更に楽しみが増えます。
この雄鶏を飼い始めると、田舎ライフらしき朝の「コケコッコ〜」も聞けるようになります。ちなみに、フランスでは「コックエリコ〜」と言います。私にはやはり、「コケコッコ〜」にしか聞こえませんが。
私はおばちゃんの伝授で、孵卵器を使わず、無事5羽孵卵させました。段ボールに新聞を裂いて敷き、寒かったので遠赤外線ライトで温めました。
もっと自然に、雌鶏にそのまま温めさせる方法もフランスではよく聞きます。しかし、卵を食べる、孵卵してすぐに踏みつける等リスクがあります。
ひよこが産まれたら可愛くて仕方ありません。まさかこのひよこが、あの鶏になるなんて!当時は想像もできませんでした。
ある程度の体格になるまで家の中で育てるので、人間への抵抗感が全くありません。ひよこ達が成長し、ひな鶏になると鶏小屋に戻しますが、その後もやはり人への懐き方は親鶏とは違います。
ひよこから育てるのは一手間増え、大変な事もありますが、それ以上の喜びを味わう事ができます。
世話も工夫次第で楽になる
鶏の世話は毎日のことなので、もちろん多少の手間をかける覚悟はいります。鶏小屋は掃除をこまめにし、清潔にしていないと、病気にかかる可能性もあります。ペット同様、毎日の水や餌は欠かせません。
しかし、私は3、4日間程度なら、自動的に餌が出るシステムを取り付け、旅行にも行きます。
また、長期の旅行の際は、近所に餌と水やりのみを頼んでいます。新鮮卵と引き換えなので、喜んで引き受けてくれます。
その他、フランスでは、近所同士での共同飼育をしている所も結構あります。世話を分担し、卵を分け合う、そして近所同士の交流も増え、そこに新たなコミュニティが生まれます。
色んな形で飼育の方法は楽になります。一人で飼い始めるのが不安なら、近所を巻き込むのも手かも知れません。
まとめ
フランスで田舎暮らしをするなら、鶏はとても有り難い存在です。共に暮らせば、可愛いペットのように、愛おしい存在にもなります。
卵をお裾分けがてら、ご近所と世間話をするのも日々の楽しみです。そして、フランスの子供達に、なぜか鶏は人気者です。近所の子供達も、余ったパンを片手に遊びに来ます。
子供からお年寄りまで、常に触れ合いの場を齎してくれる、そんな鶏の居る暮らしは本当に心地良いものです。
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