海外就職が決まって現地に長期滞在する場合、意外と後回しにしがちなのが住民票、住民税、年金、保険などに関する手続きです。
字面を見ただけでなんとなく面倒な手続きが必要な気がして、避けたくなりますよね。ですが、海外での長期滞在の際にはしっかり準備しておきたいことです。
ここでは、住民票に関する手続きを中心に、住民税や年金、健康保険のことにも触れながら解説します。日本不在中の出費にも関わってくるので、ぜひ確認しておいてください。
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住民票と住民税とは?
まず「住民票」とは何のことでしょうか。住民票は、あなたが「今どこに住んでいるか」を証明するものです。
そして「住民税」とは、この「住民票」の情報を基に、前年度の所得に応じて毎年1月1日に計算され請求される税金のことです。
海外で就職する場合、住民票はどうしたらいい?
日本にいない間、住民票はそのままにしておいていいのでしょうか。それとも、住民票を抜く手続きをしなければいけないのでしょうか。答えは「どちらでも大丈夫」。
え?と思われる方もいるかもしれませんが、実は住民票を抜く・抜かない(転出する・しない)は任意なのです。特に残しておいて問題ないようであれば、わざわざ抜く意味はないでしょう。実際のところ、海外で働いていながら住民票を抜いていない人も多くいます。
なお、住民票を抜くということは「日本国に住んでいない」ということになります。
住民票を抜く(転出する)メリット
あなたが今どこに住んでいるかを示す住民票。この住民票を抜く・抜かないでどのような違いが生じるのでしょうか。
抜いた場合を例にして、まずはメリットから紹介します。
住民税を払わなくて済む
住民税は1月1日現在に居住している市区町村で課税されます。海外就職や留学などを理由に1月1日から1年以上海外に居住する場合は、日本国内に住所を有しないものとされ、その年度の住民税については課税されません。
逆に、海外に住んでいても住民票を抜かなければ日本に居住しているとみなされ、住民税がかかります。
年金を支払わなくても資格期間として算入可能
住民票を抜けば通常、年金の支払いをしないため通算の支払い金額(将来の受け取り金額)はその分減りますが、 支払い期間には累計することができるようになっています。年金受給資格を得るには25年(2017年8月より10年に短縮)の支払い期間が必要です。
もちろん、海外転出しても年金を支払いたいという方は、任意で払うことができます。
住民票を抜く(転出する)デメリット
続いてデメリットをご紹介します。
日本の銀行口座やクレジットカードが利用できない
銀行口座やクレジットカードを利用する場合、日本国内に居住していることが原則です。海外に住んでいても、送金やローンの支払いなど、日本の銀行を利用する機会は意外と多いものです。
実際に銀行口座やクレジットカードを止められたという話は聞いたことがないですが、一応原則は原則です。頭の片隅に入れておきましょう。
地方選挙に参加できない
〇〇県知事選挙や〇〇市議会選挙などはその地域に住んでいることが原則になるので、住民票を抜くと参加できなくなります。
逆に国政選挙であれば、海外から参加可能です。在外選挙人名簿に登録申請した上で海外にある日本国領事館などへ行けば、在外投票ができます。
国民健康保険が利用できない
国民健康保険は住民票に基づいているため、住民票を抜くと利用できなくなります。一時帰国などの際に日本で病院にかかると10割負担になります。
なお、住民票を抜かず国民健康保険に加入したままの場合、海外での治療費に保険を利用することができます。これについては後述します。
住民票を抜く方法
メリットとデメリットを踏まえた上で、住民票を抜きたい、転出したいという方は、区役所や市役所に行けば簡単に手続きができます。
役所へ行って「海外で働く(留学する)ので住民票を抜きたいです」と伝えれば対応してくれます。手続きは煩雑なものではなく、時間は30分程度です。
基本的に出国の2週間前から手続きが可能です。
手続きに必要なもの
- パスポート
- 印鑑
その他、市区町村によって異なる場合があるためご確認ください。
補足:海外での治療費にも使える国民健康保険
前述したように、海外での治療費にも国民健康保険から保険金が支給されます。これは「海外療養費制度」と呼ばれ、住民票を抜かずに国保に加入したままなら利用できます。
海外で生活を始めて最初の頃は、気候や習慣の違いから何度も体調を崩すというのはよくある話。普段健康な人でも、海外では何が起きるかわからないものです。
一般的には民間の海外旅行保険が使いやすく安心ですが、住民票を残したまま国民健康保険が使えるようにしておく方法もあります。ただし、請求手続きや補償される金額などの情報をよく調べた上で決めましょう。
海外での治療費の請求に必要な書類は?
海外療養費支給の申請には、いくつかの書類を提出することが必要です。以下に主な必要書類を挙げます。
- 海外療養費支給申請書
- 診療内容明細書(医師の署名が必要)
- 領収明細書(医師の署名が必要)
- 2と3を翻訳したもの(翻訳者の住所・氏名・捺印が必要)
- 領収書原本
- 海外渡航期間が分かる書類(パスポートのコピーなど)
申請は、各市区町村の窓口などで行う必要があります。ホームページなどで確認してください。
海外の医療機関や病院で治療を受けた際には、いったん全額を自己負担します。その後、必要な書類を揃えて申請することになります。
支給金額はどれくらい?
治療費のうち、自己負担相当額を差し引いた額が支給されます。
ただし、同じ病気・ケガを日本の医療機関で治療した場合にかかる費用が基準となります。日本での治療費と実際に海外でかかった治療費を比べて、日本の方が低い場合には日本の治療費を基に計算が行われます。海外で払った治療費の方が低い場合には、その額が基準になります。
注意点は?
- 提出書類は海外出発前に手元に揃えておきましょう。ダウンロードするにしても、現地ではネット接続や印刷が困難な場合もあります。
- 日本国内で保険適用の医療行為として認められていないものについては給付を受けられません。
- 請求期間は治療費の支払日から2年です。早めに申請しましょう。
手続きは少し面倒ですが、住民票を残すのであれば上手に利用したい制度の一つです。
なお、詳細はお住まいの市区町村に問い合わせるなどしてご確認ください。
まとめ~状況に合わせて判断しよう
日本に住民票を残しておくのも一つ、節税のために抜くのも一つ。きっちりと情報収集を行い、状況に合った方法をご自身で選択することが大事です。
期間が長くなればなるほど出費も大きく違ってきます。これから海外就職などで日本を長期間離れる方は、メリットとデメリットをしっかり考えて判断しましょう。
また、渡航準備に追われて忘れてしまわないよう、住民票に関する手続きも今のうちにスケジュールに入れておいてくださいね。
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