写真:オフィスで私用電話真っ最中のスタッフ
「ラオスでのんびり暮らしたい!ラオス人のゆっくりした仕事スタイルに憧れる!」
そんな言葉が旅行者の口からこぼれるのを耳にする度に「ラオスに住んで働けば良いじゃん!」と勧誘してみるのですが、未だ説得できたことがありません。
私は、飲食店の経営や旅行商品の開発を行いながらラオスで暮らしています。ここでは、スローライフを送る一般的なラオス人の働き方を紹介してみます。正確さとスピードを求められる日本での仕事生活に疲れを感じている方はぜひご覧ください。
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ラオス人の働き方はデジタル化によって変わった
写真:この小さなハイテク機器が色々と影響を及ぼしています
近年までラオスは自給自足に近い生活を送る人が非常に多い国でした。雨が降れば田を起こして田植えを行い、稲穂が実れば収穫する。多くのラオス人が、自然の恵みに頼ったスローテンポな生活をしていました。
しかし現在は、地方の山間部から多くの若者が町に下りてきて働き始めています。生活スタイルの転換はなぜ起こったのでしょうか?
物々交換から現金決済に
私が初めてラオスに足を踏み入れた2000年には、山岳少数民族の女性が竹のカゴに一杯の山の幸を背負って街の中を売り歩いていました。
ワラビやタケノコ、竹に生息する芋虫、山で仕留めた野生動物を売り歩くのですが、その代金は塩や砂糖の1kg袋であったり米であったりと、いわゆる物々交換で決済されていたのを見て驚いたものです。
数は少なくなったものの、現在も行商する女性の姿をよく目にします。ただし、携帯電話で連絡を取り合いながら売り歩く彼女らの商品は、今では現金決済でしか手に入らなくなりました。
以前にはなかった購買欲を刺激
決済方法が変化した大きな理由のひとつとして、ラオスが物質的に豊かになってきたことが挙げられるでしょう。
以前は首都ビエンチャンですら色彩が乏しい印象を持つほど、物質的に恵まれているとは言えない環境でした。購買欲を刺激するものが特に見当たらなかったと言っても良いでしょう。お金を持つことがあまり大きな意味を持たなかったのかもしれません。
それが、携帯電話の普及が始まったことで大きな転換期を迎えたように感じます。若者達の手の届きそうな金額で最先端のお洒落な小物が売り出されたことによって、今まで感じたことがなかった強い購買欲に火が付いたようです。
高性能のバイクや車なども流通し始め、ラオス人の購買欲はさらに燃え上がっていきます。
欲しいものを買うために働く
以前、私の店で働いていたスタッフが「5,000,000kip(キープ、当時のレートで約5万円)の貯金ができたから辞める」と言って店を離れたことがあります。
「もっとたくさん稼いで家でも建てれば良いのに」と冗談交じりに説得したのですが、「これで冷蔵庫とテレビが買えるから十分」と田舎に帰って行きました。
周りのラオス人ワーカーを見回してもこのような傾向が強く見られ、「欲しいものを手に入れるために働く」という意識が強いようです。
ただ、満足の到達点が低いので、退職と転職を繰り返すようですね。
ちなみに、田舎に帰ったスタッフも2ヶ月程で「お金なくなったから」と戻ってきたのですが、長期的な戦力として考えられないスタッフがいてもしょうがないので、現場復帰は断りました。
ラオスの雇用システム
ラオスの労働法には「雇用者側の理由で雇用契約を打ち切る際には、最大10ヶ月分の給与額を保障しなければならない」というものがあります。「従業員が働かないでサボってばかりいる」との判断での解雇でも、これが適用される可能性があります。
ただし、試験雇用の場合は適用外となるため、インターンとして採用することが多いようです。
従業員側は長期で働くつもりがない場合が多いのでインターン雇用でも問題はないようですが、現地採用でのラオス就職を希望している方はこの点に注意して契約を結びましょう。
一方、ラオスでの起業を予定している方は、従業員の正規採用は先延ばしするのが賢いやり方と言えます。
ラオス人の仕事に対する責任感はゼロ
写真:平日の14時過ぎ、仕事を投げ出してお寺の行事を見に来る人々
腰掛としか考えていない仕事に対してモチベーションが低いためか、国民性なのかは分かりませんが、仕事に対する責任感は全くないと言っても過言ではないでしょう。
所属するだけで自動的に給料がもらえることが就職する理由であるかのような言動も度々見聞きしました。
面接時の「あなたは何ができますか?」という問いに対し、「給料はいくらもらえますか?給料によってできることは変わります」というのが典型的な回答です。
「金額によっては今すぐにでも日本語で会話しますよ!」くらいの認識でいるのでしょうね。
契約するなら責任者を通すのがベター
ラオスで何かしらの契約を結ぶ際には、できるだけ責任者(オーナー)と話すことをおすすめします。
契約がほしい担当者は必死で責任や保証を口にしますが、その担当者は来週には辞めているかもしれず、担当者の独断で約束したことはいざという時には全く履行されないのが普通ですから。
ラオス人はスキルを磨くことを考えない
ラオス人が職場環境に求めるのは「サバーイ(心地よい・快適な)」です。ごく少数の一部の人間以外はスキルアップを全く考えていないように見えます。
これは、スキルアップが昇給や昇進につながることを理解できていないからだと感じるのですが、もしかしたら強烈な学歴社会であることも関係しているのかもしれません。
確かに、私の周りのラオス人の学歴を見てみると、2~3ヶ国での留学を経験し、4~5ヶ国語を自由に操るマルチリンガルが非常に多いのが事実です。
彼らが企業の上層部に君臨している限り昇進は望むべくもないと、一般的なラオス人はあきらめてしまうのかもしれません。
一生懸命働かなくても経済は発展する
私の知る時代の日本の企業は、滅私奉公とも言える厳しい労働環境が普通だったので、ラオス人のこのワークスタイルを最初は受け入れることができませんでした。
「こんな適当なやり方で通用するの?」と呆れながら、「これじゃあ発展しないよな!」と納得もしていたのですが、意外にも現在のラオスの経済発展の伸び率は東南アジア屈指となっています。
最近は、彼らの仕事ぶりを見ても「努力もせず積極的に動かないスタイルが意外と世界標準なのかもしれないな」と感じてしまう自分に気付いて驚きますが、確実に成長するラオス経済を見ていると納得せざるを得ません。
ラオスの近未来の社会像とは?
一説によると、2020年にはラオスの改定労働法が施行され、大卒初任給の最低金額が月USドル2,400になるようです。
ただ、法定賃金がこのように定められるというだけで、現実的に現場にまで影響を及ぼすのには時間がかかると思うのですが、外資の企業などには厳格な施行が求められる可能性があります。
発生し始めた中産階級は非常に教育熱心で、子供が小学生のうちからフランス語、英語、中国語などの外国語を習得させるために塾や私学に通わせ始めています。
大学への進学率も年々上昇し、修士や博士の資格を持っていないと就職に不利だとも囁かれています。
有望な海外就職先となる可能性
安価な労働力だけが魅力のタイプラスワンやベトナムプラスワンの可能性を秘めているラオス、と言われ続けてきましたが、数年先には大きな変化があるのかもしれません。
海外就職を希望する方や、アジア進出の拠点を検討中の方にとって、大きなチャンスが転がるダークホースがラオスである可能性は高いと感じます。
まとめ~労働意欲の高まりとともに失われる素朴さ
現状では、労働意欲や仕事に対する責任感の低さが若干残念なレベルのラオスですが、年々この環境は改善されています。競争が激化し始めた首都ビエンチャンを訪れる度に、労働に対する意識のレベルが上がってきていることを実感します。
経済成長が進むにつれ「素朴でのんびりとしたラオス」の影は薄くなっていきますが、そこかしこに昔のラオスの残り香が漂っているので、ぜひラオスにいらしてみてください。
今ならまだ、素朴さの残るラオス人に癒してもらえると思いますよ。
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