わたしは香港にある某日系アパレル企業で働いていました。
香港内でのビジネスにおいては、大きなトラブルというのはそんなになかったのですが、商品を生産するためには多くの取引先や工場とのかかわりがあります。中でも工場は中国や東南アジアにあることが多く、日本では起こりえないような出来事がたくさんありました。
仕事をする中で経験したそんなトラブルやびっくり事件を紹介します。
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機械が動かない!工場でいきなりの停電
使っていた工場は主に中国、東南アジアにありました。中国では、1週間に1度は「計画停電の日」が地域によって設けられていました。その時には、あらかじめ工場内に備えられている自家発電機を使い、工場を動かします。
しかし、困るのは想定外に電気を止められる時。急に電気が何時間も止まると、動かせる機械も限られます。
顧客へ納める納期というのは、少し余裕を見て設定されることが多いのですが、その余裕さえもないくらいに急ぎの顧客もいるものです。そんな時の停電による生産の遅れは、大変なことにつながります。
スケジュールに余裕を持たせる
中国の工場の状況は、私が働いていた9年の間に随分とよくなりましたが、東南アジアの郊外にあるような工場はまだインフラが整っていないこともあり要注意です。可能であれば、いつも少し余裕のある納期が必要です。
工場に連絡がつかない!原因はストライキ
「急いでいるのにどうして連絡がつかないの?出荷が止まっているの?」
工場にいくら連絡しても返答がない。メールの返事もない。年間で数日、そんな日が中国でも東南アジアの工場でもありました。
理由はストライキ。経営側と社員・工員がもめていて、いつ終わるか想定できない場合もあります。お客様に迷惑をかけてしまいそうな時には、ストライキの起こっている工場の役員に状況を聞き、至急の判断を迫られることも。
日本では最近あまり聞かなくなったストライキですが、海外では賃金や労働条件等の交渉を求めて時々ストライキが起こります。
発注は青なのに……商品の色が変わった
日本では工場に生産依頼したものは、多少の品質の違いがあったとしても、大体の想定内に仕上がって手元に来ます。
商品づくりに関わる者として、クライアントと素材、色、加工法、出来上がりの状態など、事細かにひとつひとつを決めた上での大事な商品です。
日系の顧客を多く抱えていた私たちは品質にはとても厳しく、「海外でも日本と同じクオリティを! 」と、より良いものをつくるためには妥協しないスタイルを通していました。
納期厳守のために工場が取った驚きの方法
しかし、ある繁忙期のこと。新しい商品をいつも使っている工場で作ると納期に間に合わないということで、比較的新しく使い始めた工場にしっかりと打ち合わせをしてから、まずはサンプル生産を納期も厳守で依頼しました。
少し心配だったので、スタッフに出荷前の生産現場を確認しに行ってもらうと、商品の色が全く違う色になっていたのです。許可なしに「青いキャラクター」 を「紫のキャラクター」 へと変えていました。
理由を聞くと「原材料の○○が手に入るのを待つと納期に間に合わなかったから……」とのこと。
言わずともわかる日本のやり方は通用しない
「そんなこと、前もって言いなさい!」ということですが、できていなかったのですね。時々、わかってもらえていると思っていてこのようなことが起きると倒れそうになります。
もちろん、そのサンプルは速攻でやり直してもらいました。
納期に間に合わない!最終手段は飛行機
顧客へ商品を納期通りに納めるのは当然のこと。しかしながら、どうしても間に合わない、または、約束の日時までに納めなければクライアントに大きな損失を与えてしまうという状況が、1年で数回起こることがあります。
何をどうしても最速での対応が必要。そういう時は、先方の国行きの一番早い飛行機のチケットを購入し、飛行機に乗って直接渡しに行くこともあります。社員が持って行ったりすることもありました。
これは、アパレルの世界では頻繁にあることかもしれません。
これも仕事?従業員同士のもめごとやモラルの欠如に対応
香港では集中して本来の仕事をすることができましたが、1週間のうち3日間あった中国勤務では本来の仕事以外のこともとても多かったです。
そんな時は「自分の仕事をさせてくれ~!」と叫びたくなりますが、雑事を解決するのも仕事でした。
工員同士の喧嘩
気の合わない者同士でしていることも多く、大体は本人同士での解決を求めます。しかし、難しい場合は主任、リーダー等に入ってもらっていました。
それでもまだ、社内の風紀や業務に影響が出てくるようであれば間に入り解決策を見出しますが、本人たちが望まない方法で決着をつけることもありました。
博打
中国・広東省で禁止されている博打、ギャンブルをあるスタッフが他の社員に勧めているということ。
いろいろな地域から出てきている地方出身者も多かったので、禁止されていることを知らない場合には警告、その上でなお継続するなら「クビ」と言い渡しました。
賄賂
わたしの所属していた課は購買も担当していたので、仕入先が注文を取るために私やスタッフに賄賂まがいのものを持ってきます。
すべてお断りした上で、品質価格で選ぶ方針を徹底して伝えました。さらに、再度このような話があった場合は即刻契約破棄ということも通告。
一度、自分のスタッフが賄賂をもらったことが発覚し、優秀でしたが即クビにしたこともあります。賄賂を渡した工場との契約も破棄し、多くの注文を取り消しました。
それ以後は、仕入先、部下や社員にも徹底して教育を行いました。
まとめ~ハプニングが貴重な経験となる
ご紹介したようなことはほんの一部で、実際にはもっとたくさんの“事件”と遭遇してきました。
慣れてくるとトラブルがあって当たり前になり、対応力や耐性がついてきます。トラブルが経験となり、知識となり、強みにもなっていきます。
海外就職には予期せぬハプニングが付きものです。問題が起こっても、そこから学び、周りの協力を得て、乗り越えてください。すべてが貴重な経験となるはずです。
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