私はフランスに学生ビザで滞在していました。学生ビザの有効期限は1年なので、滞在中に1度更新を行いました。
私は日本の留学エージェントを通して最初の手続きを行ったため、渡仏時の学生ビザ取得に関しては何の問題もなく、スムーズに事が運びました。
しかしフランスは、役所に関してはあまり良い噂を聞かない国。噂に違わず、フランスでのビザ更新は今思い出しても大変だったなと思います。
学生ビザの取得よりも学生ビザの更新が大変だった私のビザに関するエピソードをご紹介します。
そもそもビザとは
将来海外で勉強したい、仕事をしたいと考えている方であれば既にご存知でしょうが、ビザとは日本語で「査証」と言われ、他国に入国するために必要な書類です。
パスポートとは別に必要になるのですが、日本国パスポートを持っているとあまりビザを意識することはありませんよね。
それもそのはず。日本のパスポートは、2018年3月に「世界で最も多くの国にビザを取得せずに渡航できる」として、シンガポールと並んで世界一になったそうです。その数は何と180か国。
海外旅行に何度も行ったことがある人ですら、ビザのことをあまり意識したことがないというのも納得できるデータですよね。
フランスのビザについて
とはいえ、ビザなしで渡航ができるのは観光・商用などの短期滞在のみ(ごくまれに、目的によっては短期滞在でもビザの取得が必要になる場合もあります)。
対して、ビジネス・学業などの目的によらず、長期滞在の場合は必ずビザの取得が必要です。
私は初めから最低一年間はフランスに留学する気でいたため、学生ビザの取得を行いました。
ビザの取得にはパスポートをはじめ、戸籍謄本やフランス国内での滞在先や、預金の証明など様々な書類が必要でしたが、留学エージェントを通して手続きを行ったため、特にトラブルもなくスムーズに進みました。
大変だったのは、フランス現地で学生ビザの延長申請をしたときのことです。
フランス現地での手続きは大変
海外での事務手続きは、言葉の問題もさることながら「対応がスムーズではない」等、トラブルがつきものです。
フランスもお役所関連では決して評判のよくない国。よく「日本の役所は愛想がない」などと言われますが、海外でお役所トラブルに当たった日には、日本の役所が天国に思えるほどです。
必要な書類が多い
必要書類が煩雑というのは、日本も海外も同じかもしれません。フランスで学生ビザを更新する場合、たくさんの書類が必要です。主要なところを書きだすと、次のものを準備しなければなりません。
- パスポート
- 証明写真
- 賃貸契約書などの住居証明
- 口座残高を示す財源証明
- 印紙代
- 次学期の学校の登録証明書
など。
「何だ、あまり多くないじゃない」と思うかもしれません。しかし、これ以外に「念のため」用意しておいた方がいい書類も存在します。
あると安心!こんな書類
日本の役所であれば、リストに書かれた必要書類以外に追加を求められることは滅多にないですよね。しかしフランスの場合、窓口担当者の裁量によって、突然必要書類が増えたりします。
「リストに書いてないですよね?」と質問したところで、あれやこれやと言い訳めいた答えが返ってきます。何より、その担当者が「うん」と言わないと書類を受け付けてもらえないのですから、従うしかありません。
そのためフランス在住者の間では、次に挙げる書類は「リストになくても念のために準備しておいた方がいいもの」と言われています。
公共料金の請求書
請求書が公的証明になるなんて、日本ではあまり考えられないですよね。しかも重要なのは、住所と宛名が書かれた表書き部分です。その住所にある住宅に契約して住んでいる、という証明と見なすようです。実際私も手続きの時に持参しました。
学校の成績証明書
学生ビザの更新には、今後も学校に通うことを証明する登録証が必要となりますが、逆に「これまでちゃんと学校に行っていたの?」と聞かれる場合もあります。
その証明のために、学校側で証明してくれる成績証明書(結果が良ければなお良し)があるとベターです。大学付属の語学学校では、期末に行われる試験の結果通知をもらえるので、それを持って行くと安心です。
これらは持って行ったからと言って必ず使うというものではなく、担当者次第、としか言えません。
南仏でビザを更新するには
フランス国内には、日本と同様に各県が存在しています。私は南仏のニースに在住していたのですが、ニースがあるのは「アルプ=マリティム県」。ビザの更新には、県庁に赴く必要があります。
この県庁での更新も曲者で、私が住んでいた時は「とにかく朝早く行け」と言われていました。学生ビザ、労働ビザ等、種類を問わず更新したい人が県庁に集まってくるので、毎日ビザ更新の窓口は人で溢れかえります。
しかも、朝から並んでいたとしてもある程度の人数で切られてしまうという話があったため、朝6時頃から並んだ方が安全、と言われていました。
さらに行列に並んでいる間も油断はできません。しれっと横入りをしてくる人がいるため、前の人との隙間は空けずにぴったりと張り付き、割り込む人は傘を持った手でブロックしろとフランス人の友人から言われたものです。
そのため、雨が降ってなくても県庁に行くときは傘必須だと……
聞いているだけでストレスがたまりそうな話ですよね。
そんなところでビザの更新をしなくてはいけないのかと思っていたのですが、何と私が通っていたニース大学の学生は、県庁に行く必要がないと分かったのです。
何でも、ニース大学に通う生徒が学生ビザを更新するための専用の受付オフィスがあるとか。
悪名高い県庁に行かなくて済むと聞いて小躍りしたのですが、実際は喜ぶにはまだ早い、という状況でした。
私が学生ビザを更新した時のエピソード
結果的には無事に学生ビザの延長申請をすることができました。更新手続きの時も、ニース大学の生徒専用のオフィスだったため、噂の県庁のような人混みではありませんでした。
しかし、やはりそこはフランス。日本のような懇切丁寧な対応ではありませんでした。
ニース大学の生徒専用のオフィスはニース中心街から少し離れたところにありました。手続きには時間がかかるというのがつきもののフランスなので、受付開始前に現地に到着し、オフィスが開いてから数人目で手続きという好条件に恵まれました。
待つこと30分程で、私の順番です。受付担当のいるオフィスに入ると、全部で3人の係員がいたように思います。一対一で応対するため、同時に3人の学生が手続きできることになります。
私の当たった担当者は、見るからに不機嫌そうでした……割とキツイ口調で書類を出すように言われ、準備してきたものを提出しました。
すると、「で、あなたがここに今住んでいるという証明は?」と言われました。賃貸契約書を出しているにも関わらずです。
契約書は出していることは伝えたものの、「契約書に名前があるだけでは認められない。公共料金の振り込み用紙などがなければ書類は受け付けられない」とのこと。
まずは目の前にいる担当者が書類を受理してくれないとビザ発給までたどり着けないので、しぶしぶ家に取りに帰ることにしました。
追加書類を持って戻ってきたらどうしたらいいか、と念のため聞いたところ、「列に並びなおして」との言葉が。既にオフィスは、手続き待ちの学生であふれかえっています。家に戻って書類を取ってくる頃には、もっと増えていることでしょう。
結局、再びオフィスに戻ってから約3時間は待ち、手続きが終わった頃にはもう夕方。しかし2度目の手続きの時は朝とは違う担当者で、すんなり書類が通ったことが不幸中の幸いでした。
ちなみに、わざわざ取りに帰った公共料金の請求書は、結局使用しませんでした……
まとめ
私は、日本のサービスや対応は、世界一だと思っています。こんなにスムーズに事が運ぶ国は日本だけ、と心の底から思います。
対して海外では、担当者の気分や機嫌で対応が最悪だったり、はたまたビックリするほどのスピードで進んだりと、ある意味スリリングです。
郷に入ったら郷に従えという言葉がありますが、海外に行ったら「日本ではこんなんじゃないのに」という思いは捨て、何が起きてもどんと構えていましょう。
そうしているうちに、自分のコンディションを前面に押し出してくる担当者が、逆に人間らしく可愛く見えてくるかもしれませんよ。
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