日本に住んでいると、日本の大学に進学することがごく当たり前のように思いますが、もし、どうしてもフランスでしか学べないものがあるなら、留学を検討する価値があるかもしれません。
ただ、フランスでの学生生活がイメージできないと、自分に合うか合わないかもわからないものです。
今回は、フランスの大学での学生生活とはどういったものかイメージできるように、日本とフランスの大学を比較しながら、それぞれの特徴をご紹介したいと思います。
フランスでの大学の位置づけ
大学以外にも高等教育機関が多数
日本では高等教育イコール大学と思いがちですが、フランスで大学はあくまで高等教育の一機関でしかありません。
大学以外にも、グランゼコールと呼ばれる大学より格上とされているフランス独自の教育機関をはじめ、科学技術専門機関、大学付属の技術専門学校とさまざまな高等教育機関があります。
いわゆるエリートと呼ばれる人たちは、大学よりもグランゼコールに行く場合が多く、そのためには高校卒業時から2年間 CPGE : Classes préparatoire aux grandes école(クラス・プレパラトワール・オ・グランゼコール)と呼ばれるグランゼコール準備学級、通称「プレパ」で受験勉強をします。
将来の選択肢を念頭に進学のプランをたてる
こう見ると「フランスの大学は日本の大学とはかなり違う高等教育機関なのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。日本の大学は、フランスの大学とグランゼコールとを合わせたものだと思えばよいかもしれません。
そしてもしも、より高度な専門知識を身につけたいと思ったら、大学院まで行く、またはグランゼコールに入る、もしくは就職に有利と言われている各種高等専門学校をめざす、という選択肢があるということも覚えておいてください。
日本人がフランスで大学に行くには
入学条件
高校卒業レベルの証明書
日本人がフランスで大学に行くためには、まずバカロレアと同等とみなされる高校卒業証明書または高等学校卒業程度認定試験(通称、高認試験)の証明書が必要です。
授業を受けられるフランス語能力
当然ですが、フランス語での授業についていけるだけの語学力が求められます。近年は英語での講義を提供している大学もありますが、残念ながらその数は限られていますので、やはりフランス語は必須になってきます。
なかには入学前に外国人向けの、フランス語とフランスの地理や歴史などの一般教養に関する準備コースが設けられていることもあります。
このコースがないときは、大学の新学期開始前にそれなりのフランス語レベル(一般的にはヨーロッパ言語共通基準のC1レベル)に達することが条件で、入学許可が下りる場合もあります。
私の場合は大学付属の語学学校での勉強が、これにあたりました。また、入学後も週数コマの外国人留学生向けの授業が必須科目となっていました。
入学前の準備
準備コースがなければ進学先の変更の検討も
入学を検討する際は、ご自分の入学してみたい大学が、どのようなオプションを提供しているのか確認をしてみて、それがない場合は希望大学を変更することも視野に入れてもいいかもしれません。
それほど、この入学前の準備は大切です。これがあるかないかで、その後フランス社会に適応できるか否かが決まるような気がします。
いったん講義が始まると、そちらの勉強で手いっぱいで、とてもフランス語の勉強をする余力がない状況になると思います。
私の周りでは、最低1年間はこのコースに参加することが一般的でしたが、日本語が母国語の方は、もう少し時間をとったほうが大学の授業に問題なくついていけるフランス語レベルに達すると思います。
最低2年は必要というのが実感
もちろん、個人差がありますし、時間がない、という方もいると思いますが、できれば1年目を語学の基礎固めと応用に費やし、2年目をフランスに関する一般教養とアカデミックな(専門分野の学術用語の)フランス語に費やすことが必要だ、と私個人の経験から感じます。
実際に語学力があまりなかったクラスメイトたちは、再追試を受けたり、留年したりしていました。
授業がすんなり理解できるだけの語学力があるほうが、テスト勉強もはかどりますし、より専門知識を深めることにもなるので、決して無駄ではないと思います。
入学前の1年か、入学後の1年(留年)かで、どちらがご自分にとってよいのか検討してみてください。
フランスの大学で学べること
グルーバルな環境で学ぶ
近年日本でもグローバル人材の育成のための学科のある大学が増えてきました。それでも、キャンパス内には日本の学生がまだまだ多いことは変わりません。
フランスでは状況は少し違っていて、学科によってはフランス人よりも外国人学生のほうが多いこともあるほど、国際化は進んでいます。
また、インターナショナルなのは学生だけではありません。教授陣もフランス人だけではなく、世界中の国々から来た人たちが教壇に立ちます。フランスの大学はまさに多種多様な知識の宝庫です。
マルチカルチャーな生活環境
最近でこそ居住外国人が増えてきた日本ですが、フランスと比べればまだまだです。フランスでは大学があるような大都市に関して言えば、外国人を見かけないことのほうが珍しいほど、外国人の存在はあたりまえになっています。
そういった意味では、外国人であるみなさんがフランスで暮らすことになっても、受け入れてもらいやすい下地があると思ってよいと思います。
ただ、文化風習の違いがトラブルに発展しないように、自分たちも多様性を受け入れる必要があるということは忘れないようにしましょう。
自国に対する意識の高まりや多様性が身につく
また、フランスで外国人として日本の文化や習慣について説明する機会が出てくることにより、自国に対する造詣を深めることもできます。
そして文化や宗教の違う人々と共に暮らすことで、多様性や柔軟性を身につけることができます。
大学で学ぶ専門の勉強以外での社会勉強も、日本の大学ではなかなかできない貴重な体験です。
日本の大学とフランスの大学の評価方法の違い
自分なりの答えが重視される
日本では、大学のみならずすべての教育課程において、正しい答えさえ導き出せればよしとする風潮があります。
ところがフランスでは理系ではその限りではありませんが、そうでない場合、答えはいる人の数だけあると言われるほど、自分の意見を主張しなければなりません。自分の意見がないと、評価は低くなってしまいます。
試験は論文形式がほとんど
試験は論文形式がほとんどで、口述試験もありますし、あらかじめ指定された本を読んでいかないと答えられないこともあります。
外国人にとってはこの記述式試験は非常にやっかいなもので、フランス独特の書き方に慣れていないだけでなく、フランス語で理路整然とした文章を時間内に書くのは非常に大変です。
また、自分の意見を展開していかなければならないので、日頃からそういった訓練をしておかないと、とても歯が立ちません。丸暗記の試験勉強さえしていればなんとかなるような問題が出されるわけではないのです。
しっかり基礎能力を身につけて
フランスで大学へ行こうと思った場合は、自分の意見をしっかり持ち、理論的かつ論理的な思考ができるように常日頃から訓練していく必要があると思います。
もちろん、それにともなった語学力をつけることも必要です。そのためには、やはり語学学校でフランス語の基礎を学び、フランス式の論文の書き方も習うなど、きちんとした準備をして実践力をつけてから大学に進学することが望ましいでしょう。
フランスでの学生生活
質素でも工夫を凝らして
フランスの大学生は、日本の学生と比べて非常に質素な生活を送っています。おしゃれにもあまりお金をかけず、ブランドものよりも着まわしでいろいろと個性を表現するのがフランス流です。
家賃を節約するため友達とアパルトマンをシェアしたり、外食をせず自炊したりすることが多いようです。奨学金で賄う場合も、親からの援助プラス・アルバイトで賄う場合も、非常に切り詰めた生活をしていることに変わりありません。
勉強熱心にならざるをえない
また、しっかり勉強しないと単位を取ることができず、追試・再試・留年が待ち受けているので、みんな思いのほか勉強熱心です。しっかり遊んでも、しっかり勉強する。オンとオフの切り替えが上手な人が、学業でも成功しているようです。
せっかくのフランス生活を満喫したい気持ちもわかりますが、フランス人のように暮らすことでフランスでの生活を楽しむように考え方を切り替えましょう。
観光旅行のついでに大学に行こうという軽い気持ちでフランスでの留学をしようとすると、留年が待ち受けていると思ったほうがよいでしょう。
まとめ
フランスの大学についてだいぶイメージが湧いてきましたか?ひょっとすると、想像していたのとは全然違っていたかもしれません。
もしフランスへ留学したら、さまざまな文化の人たちと交流する機会に恵まれ、専門の勉強以外にも多くの貴重な体験ができることは間違いありません。
その経験は将来の仕事に就く際にも大きなアドバンテージとなり、可能性を広げてくれるに違いありません。
日本の大学ではできない経験を積みたい、そんな方にはフランスの大学をおすすめします。
Bonne réflexion!
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