みなさん、「ラマダン」という言葉を耳にしたことはありますか?「ラマダン」とはイスラム教徒の断食月のことを指します。約一ヶ月に渡り断食をするのですが、「え?一ヶ月も何も食べないの?」「何のためにやるの?」「全員やるの?」などなど、私たち日本人からすると疑問が満載だと思います。
私が生活しているのは、イスラム教が国教であるマレーシア。国民の約60%がイスラム教徒です。そんなマレーシアで体験する「ラマダン」を、みなさんに詳しくご紹介したいと思います。
ラマダンとは
「ラマダン」とは、イスラム教徒の断食月だと冒頭で言いました。もう少し詳しく説明すると、イスラム教徒は毎年、イスラム暦の9月にあたる時期に、およそ1ヶ月の間、断食を行います。
その時期は毎年変わるのですが、今年2018年のマレーシアでのラマダンは、5月17日から6月14日までとされています。面白いことに、ラマダンは新月が確認されてから始まるため、世界各地で開始日が変わるそうです。 断食といっても一日中というわけではなく、日昇から日没までの間、飲食を断ちます。
そのため、日没後は食事が許されています。またそのほかの禁欲(喫煙や性交渉などの禁止)も同時に行うとされています。
なぜ断食するのか?その目的は、自分自身の信仰を清め、欲を断ち、神への感謝、献身を誓うためです。
ただし、子供や妊婦、授乳中や生理中の女性、重病人、旅行中の人は、この断食を免除されます。代わりに別の時期に断食を行う場合もあるようです。
ラマダン・マーケット
ラマダン中賑わうのが、この時期ならではの「ラマダン・マーケット」です。
日中、飲まず食わずのムスリムたちは日没後の食事を楽しみにしていますので、ラマダン中に催されるマーケットには、たくさんの人が集まります。この盛り上がりに、もちろんムスリムだけでなく他民族系マレーシア人や在馬外国人、旅行者も集まって、さらに賑わいを見せるのです。
このマーケットで、夕食やスイーツを買って持ち帰るのが一般的です。ですので、一番の賑わいは、日没前となります。17~19時前が最も人が集まっています。先日、ラマダン・マーケットを覗きに行こうと思って、19時過ぎに出かけたところ、すでに片付け始めているお店がたくさんありました。
ラマダン・マーケットに立ち寄る際は、16時から17時過ぎくらいが最も人が集まるのでお祭りっぽい雰囲気を味わいたい人にはおすすめです。
実際には午後からすでにスタートしているので、人混みを避けてゆっくり楽しみたい人は早めに行った方がいいですね。 人が多いので、スリなどには十分気をつけてください。
マーケットは各地で行われていますが、クアラルンプール中心部でのおすすめを3箇所あげておきます。
Bukit Bintang(ブキッビンタン)
言わずと知れたクアラルンプール中心地、眠らない街Bukit Bintang(ブキッビンタン)。
マーケットはマクドナルド周辺で開催されています。青いテントが立ち並んでいるので、すぐにわかると思います。場所柄、ローカルだけでなく、観光客も数多く集まり、賑やかです。
Kampung Baru(カンポンバル)
場所はツインタワーのあるKLCC(ケイエルシーシー)の隣駅、Kampung Baru(カンポンバル)。最高の立地ながら、マレー系の人が多く住んでいるエリアです。
そのためマレー系の生活を肌で感じることができ、マーケット以外の点でも興味深い場所です。マーケットの店主たちも断食明けとともに食事をするため、やはり19時前には片付け始めます。早めに出かけましょう。
Chow Kit(チョウキット)
Chow Kit(チョウキット)は、Bukit Bintang(ブキッビンタン)からTitiwangsa(ティティワンサ)行きモノレールで4つ目の駅にあります。ここにはマレー系マレーシア人が通うマーケット(Chow Kit Market チョウキットマーケット)もあることから、かなりローカル感の強いラマダン・マーケットになっています。
駅を降りたら大通り沿いにずーっとテントが並んでいるので、すぐにわかるはずです。正直買いたくなるようなものはあまり無いとは思いますが、ローカル感をたっぷり味わいたいなら、どうぞこちらへ。
あまり浮かないように小綺麗な格好では行かない方が無難です。貴重品にも十分気をつけてくださいね!
ラマダン・ビュッフェ
この時期ならではなのは、マーケットだけではありません。
各ホテルやレストランが開催する「ラマダン・ビュッフェ」もぜひ行ってみてほしいスポットです。 今年は、Bukit Bintang(ブキッビンタン)にあるJW MARRIOTT HOTELが手掛けるラマダン・ビュッフェに行ってきました。
138種の伝統的マレーシア料理が楽しめ、会場であるショッピングモール・STARHILL GALLERY(スターヒルギャラリー)地下1階のFeast Village(フィーストヴィレッジ)は、マレーシアの田舎を思わせるデコレーションが施されており、気分は上がりっぱなし!
周りのマレーシア人たちは、テーブルいっぱいに料理を取ってきて、がっついておりました。しかも、日没時間前から食べ始めている人も。
ツッコミどころ満載ですが、宗教心は人それぞれですし、私たちがとやかく言うことではないんですよね。
さて、ここでひとつ豆知識です。これ、何かわかりますか?
これは、デーツと言って、ナツメヤシのドライフルーツなのですが、ムスリムは日没後、断食明けの食事の前に、まずこのデーツと飲み物を口にします。
イスラム教徒の聖典コーランでは、デーツは「神の与えた食べ物」と記されており、長時間飲食をしていなかった胃腸の調子を整える効果があるそうです。 このデーツ、ミネラル豊富、食物繊維も多く含んでおり、大変栄養価が高いため、ここ数年は日本でもとても注目されています。GI値の低い食品としても有名で、ダイエット中の人、妊婦さんにもおすすめです。
ラマダンに対する国や企業の取り組み
国
ラマダンは国にとっても大変重要な宗教行事の一つです。一ヶ月に及ぶラマダンを終えると、イスラム教徒たちは家族や近所の方、親しい人を招待して、ともにご飯を食べて喜びを分かち合います。それが「オープンハウス」です。
民間のお宅だけでなく、モスクや首相官邸でもオープンハウスが行われ、無料で食事が振る舞われます。
企業
企業もラマダンを支える努力をしています。例えば、ラマダン中はムスリム社員は休憩を短くし、早めの帰宅が許される企業もあります。
また断食明けの食事を「イフタール」と言いますが、そのイフタールを各企業が社員のために用意していることもあります。
また、鉄道会社が駅で水とデーツを無料配布していたりと、イスラム教国家ならではの光景をいろいろな場所で見ることができます。
こうして個人レベルでだけでなく、国や企業もラマダンを支えているのです。
ラマダン仕様の街
ラマダンが近づいてくると、街も一気にラマダン仕様になります。各ショッピングモールはイスラムデザインの飾り付けをし、モールのメインホールには手の込んだラマダン・デコレーションが施されます。イスラムデザインがまた何とも素敵なんです。
星や月をかたどったデザイン、色… まるでアラビアンナイトの世界にいるようですよ! そして在馬日本人の間で毎年話題に持ち上がるのが、スターバックスのラマダン・カップとカード。
毎年この時期になると、スターバックスではドリンクのカップデザインがラマダン仕様になるのですが、毎回本当にかわいい!このカップが出回ると皆さんSNSでアップされています。
先ほど豆知識で紹介したデーツも、ラマダン時期ならではのアイテムです。毎年ラマダン前からスーパーではデーツコーナーが設けられ、様々な種類のデーツが用意されます。一言にデーツといっても、たくさんの種類があるんです。小ぶりなもの、大ぶりなもの、ねっとりしたもの…などなど。
さらにはデーツにアーモンドやカシューナッツを挟んだものや、チョコレート・コーティングされたものまであります。
もう、これが本当に美味しいんです。止まらぬ旨さなんですが、体に良いとされるデーツとはいえ、食べ過ぎは要注意です。
ラマダン中の注意点(他民族系マレーシア人から学ぶこと)
ラマダン中、気を付けておきたいこともあります。気遣いと言ったほうが近いかもしれません。ここマレーシアは多民族国家ですから、イスラム教徒だけでなく、中華系やインド系の人々もいます。彼らはもちろん断食はしません。
ですが、学校や会社などで飲食する場合は、目の前で堂々と食べたり飲んだりしないようにするなど、断食中のイスラム教徒を気遣うそうです。
断食はイスラム教徒の義務とはいえ、彼らも人間です。喉も乾きますし、目の前で食べている人を見たら、自分も食べたい欲求が沸き起こります。
そんな彼らを気遣う意味でも、断食をしない私たちは最低限の配慮をしたいものです。
また、このラマダン期間中は空腹ゆえ、仕事の生産性も落ちますし、イライラするムスリムもいます。ですから、彼らを刺激するようなことはなるべく避け、多少の効率の悪さは寛大な心で見守りましょう。
まとめ
イスラム教国家以外の国にいると、なかなか体験できないラマダン。大変貴重な経験で、興味深い文化です。
一方で、イスラム教人口は急速に増えています。イスラム教徒は出生率も高いですし、イスラム教徒へ改宗する人も増えているのが理由の一つだと言えます。 日本でもハラル(イスラム法において合法なもの。豚やアルコールを使用していないなど。)認証のレストランや商品が増えています。
つまり、私たちはイスラム教徒の文化を知り、それを受け入れる時期にきていると思います。そのひとつがラマダンです。
今回紹介したラマダンの風習から、イスラム教へのさらなる興味を持っていただけたら嬉しく思います。
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