海外生活が長くなると、久々に日本に帰って来たときに感じる違和感があります。祖国であるはずの日本で、「ひょっとして自分はズレているかも!?」とカルチャーショックを受けるのです。
約2年半のフランス生活と、約3年間スイスで生活した後の一時帰国で感じた、日本でズレていた自分の行動をまとめてみました。
エレベーターで0階を探す
ヨーロッパでは、地上階は0階として数えます。その上の階、日本でいう2階を1階、その上を2階、3階……というように数えます。
エレベーターで地上へ出る階に行くためには、0のボタンを押すか、フランスでは0階を意味するRez de chaussée レッド・ショッセの頭文字を取ったRボタンを押します。
アパートのエレベーターでも毎日のように0のボタンを押しているため、日本に帰国して早々、空港やホテルのエレベーターで0階のボタンを無意識に探してしまう自分にびっくりします。
「え!0階がない!外に出られない!?」と一瞬ですが本気で焦るのは、時差ボケやロングフライトの疲れだけではなさそうです。
クレジットカードを自分で引き抜こうとして止められる
ヨーロッパでクレジットカードを使って買い物をするとき、店員さんはカードリーダーをぐいっとこちらに突き出すか、カードリーダーを一瞥するのみで、カードを差したり抜いたりする作業はすべてこちらが行います。
ひどいときは、カードリーダーから出てくる店の控えのレシートをむしるよう店員さんに指示されたりします。
そんなわけで、ヨーロッパ生活が長くなると、自然とクレジットカードを自分で抜き差しするクセが身についてしまうようです。
日本に帰国してクレジットカードを使って買い物をした際、カードリーダーにカードを自分で差そうとして、店員さんにやんわりと「あ!お客様……」と制止されたときの恥ずかしさ!
日本では、クレジットカードの抜き差しは店員さんがしてくれて、レシートもきれいにそろえて渡してくれます。みなさまもご注意ください。
スリや置き引きを過剰に警戒
ヨーロッパでは、どんなに治安が良さそうな田舎町でも、自分の荷物には常に注意を払う必要があります。
日本のように、コーヒーショップの席に荷物を置いて注文にいくようなことをしてしまうと、席に戻ってきたときには荷物はなくなっていることでしょう。
どこへ行ってもスリや置き引きには注意が必要です。特に、混雑している乗り物の中や、観光施設の中、自動現金引き出し機でお金を下ろす際には、手回り品や背後に特に注意しなければなりません。
日本に帰国してもそのクセが抜けず、満員電車で荷物のチャックが開けられないよう必死で握りしめていましたが、ふと、こんなに気をつけなくてもいいのでは?と気がついて、気が抜ける瞬間がありました。
未だに銀行でお金を下ろす際には、背後を警戒して何度も振り向いてしまいます。警戒するに越したことはありませんが、ヨーロッパに比べると日本は治安が良いので、もう少し安心しても良さそうです。
サービスが素晴らしすぎてチップを渡しそうになる
飛行機が日本の空港に降りたった瞬間から、あるいは日系の航空会社で帰国する場合はその機内から、日本式のサービスの素晴らしさに涙が出そうになります。
パリでは店員さんに舌打ちされることは日常茶飯事。店員さんとお客さんは対等……ならまだしも、勝手がわからずグズグズしていると、店員さんに怒られたり、舌打ちされたり、ため息をつかれたり……と精神的ダメージすら与えられるのです。
それが普通になり、慣れきってしまうと、日本のサービスの素晴らしさが身にしみます。
お客さまのして欲しいことを先回りして考えた、痒いところに手の届くサービス、優しい気持ちに満ちあふれたサービスに感動しすぎて、ついチップを渡してしまいそうになります。
普段、特に素晴らしくないサービスにチップを払う習慣があるため、日本の気持ちのこもったサービスに、心からチップを渡したくなってしまうのです。そして、ここは日本だった……とブレーキをかけるのでした。
一度、本当に千円札を差し出してしまったことがありますが、「決まりで受け取れませんので……」と完璧な回答が返ってきました。困らせてしまって申し訳なかったです。
トイレの機能にびっくり
日本に降りたった空港のトイレで、その清潔さと機能に驚かれる在欧邦人の方は多いと思います。
フランスではトイレの便座ははずれているのがスタンダード。トイレットペーパーはたいがい切れており、床は入るのをためらうほど汚れていることもあります。
それが、日本では公衆トイレはどこもピカピカ、トイレットペーパーはもちろん置いてあるし、ウォシュレットや排泄音を聞こえなくするための川のせせらぎ音が流れるシステムまであります。
久々の日本のトイレで川のせせらぎ音が自動で流れた際、驚いて音源の機械を二度見してしまうほどでした。日本のトイレは世界一だな……と帰国するたびに思います。
土曜日に焦って買い物しようとする
ヨーロッパでは日曜日は安息日。ほとんどの商店がお休みとなります。そのため、食料品の買い出しは土曜日にすべて済ませておかなければなりません。毎週末、土曜日は大忙しです。
その癖が抜けず、日本にいるのに、土曜日になると食料を買い込んでおかなければ……という強迫観念にかられます。日本は24時間365日営業しているコンビニがそこかしこにあるというのに!しみついた習慣とは恐ろしいものですね。
自分の声の大きさにハッとする
海外に暮らしていると、周りの人は日本語が分からないという気楽さから、公共の場でもついつい大きな声で話してしまいます。
また、外国人相手に話す際、日本人は声が小さめで聞き取ってもらえないケースが多々ありますので、自然と日本で話すよりも大きな声で話す癖がついてしまいます。
日本に帰国して、バスや電車の中で自分でも気づかないうちに大声で話しており、同行者に「ちょっと声が大きいよ!」とたしなめられることもあります。
「そうだ、ここは日本語が通じるんだった」と我に返り、話していた内容に恥ずかしくなってしまいます。
日本のレストランでは食べた気がしない
ヨーロッパのレストランの食事は、一般的に日本のレストランよりもボリュームがあります。
住み始めた当初は、「こんなに食べられないよ~」と胸焼けしていたポテトやステーキも、今となってはぺろりと平らげるようになり、胃腸はすっかり欧米サイズ。
日本の美味しい食事は一時帰国の最大の楽しみですが、ボリュームのある食事に慣れた胃袋には、日本のレストランで出される食事が少なく感じられ、いつも物足りなさを感じます。
楽しみにしていた日本のイチゴショートケーキを食べた際、甘みをまったく感じられず、ふわふわの優しい食べ心地と上品なケーキの大きさに、全然食べた気がせず、おかわりしたい衝動にかられました。
ヨーロッパでは、ケーキは頭痛がするほど甘く、ピザのワンピースか?という程巨大です。味覚も胃袋のサイズも欧米化していることにショックを受けました。
スーパーで「お釣りは結構です」と言って引かれる
ヨーロッパでは、スーパーや商店で買い物をした際、数セントのお釣りや不足は「なかったことにする」という日本では考えられないやり取りがあります。
例えば、スーパーで買い物して、1セントのお釣りが出る場合でも、レジの中に1セントがなければ、店員さんは悪びれもせず「1セントないから勘弁して!テヘ♡また来てね~」と言います。
お客さんの方も「1セントのお釣りを出さないなんておかしいじゃないか!」なんて言う人はまずいません。自分が買い物して数セントなかった時には、「5セントないからまけて~」と言うケースもあるからです。
レジのお金を合わせたりしないんだろうか?と心配しつつも、こんなやり取りに慣れているので、日本のスーパーのレジで子供がぐずり出し、数円のお釣りをもらい財布にしまう手間が惜しかった際、「もうお釣り結構です!」と言い放ってしまい、店員さんにドン引きされてしまいました。
日本ではお釣りはきっちりもらいましょう。
物を買った時の包装が丁寧過ぎて環境問題に思いを馳せる
ヨーロッパのスーパーでは、ビニールの買い物袋は基本的に有料です。ビニール製の大きなエコバックや、紙袋を持って来て再利用している人など、自前の買い物袋を使っている人が主流です。
また、お土産屋さんでお土産を買っても、ばらまき用の小さな袋やリボンをくれるところは少なく、ギフト包装を頼んでも、日本と比べ簡易な包装となります。
これに慣れているので、日本に帰ると過剰ともいえる丁寧な包装に驚かされます。
スーパーで肉や魚を買えば薄いビニール袋に入れて、レジ袋の中に入れてくれます。手土産を買えば、持ち運び用の紙袋の他にお渡し用の紙袋も入れてくれます。
丁寧でお客様を気遣う日本ならではのおもてなしの素晴らしさに感嘆するとともに、こんなに資源を使っているのは日本だけじゃないか?と地球環境に思いを馳せてしまうようになりました。
まとめ
海外に住みはじめた当初は、なにをするにも日本が恋しく、海外特有の不便さに「日本ならこんなことにはならないのに……」なんて思うこともありました。
いまではそんな海外のペースや習慣にすっかり慣れ、祖国であるはずの日本で違和感を感じるまでに。人間って慣れる生き物なんですね。
海外生活をはじめたばかりの時には、さまざまな違和感や習慣の違い、不便さに悩まされることでしょう。でも、時間はかかるかもしれませんが、人間も強いものできっとそのうち慣れてしまいます。慣れてしまえば生活を楽しむ余裕が生まれます。
海外生活に慣れない方やはじめて海外へ行く不安がある方も、そのうちこんな風に日本人としてズレてくることもあるのかも……と、クスリと笑って前向きにとらえてがんばってください。
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