語学留学先の学校を選ぶとき、あなたは何を決め手にしますか。立地やカリキュラム、講師陣、はたまた課外アクティビティの種類など、比較したい情報は多数あります。自分の語学のレベルアップを託す学校ですから、慎重に吟味したいですよね。
私が留学していたフランスでは、主な選択肢として私立の語学学校か国立大学付属の語学コースがありました。
私の滞在先は南フランスのニースで、現地で私立にも大学付属の学校にも通ったことがあります。しかしおすすめは断然、大学付属の語学コースです。理由はといえば、タフなフランス語教育を受けられるからです。
確かに授業内容はハードでしたし、宿題もかなりの量が出されましたが、確実にフランス語力が伸びる結果にもつながりました。そんな「タフ」な大学の授業内容をご紹介します!
ニース大学の語学コース「C.U.E.F.L.E(キュエフル)」
そもそもフランスには、日本のように多くの大学はありません。国の認可を受けた国立大学が存在するのみです。
ニース大学はその名の通り、南仏の都市ニースにある大規模な総合大学で、学生数は3万人ほど。その大学の一部門として、語学コースの「C.U.E.F.L.E」はあります。
「C.U.E.F.L.E(Le Centre Universitaire d’Études en Français Langue Étrangère/外国人向けフランス語教育大学センター)」は、ニース大学に併設された外国人向けフランス語学校です。
入門から上級まで幅広いコースが設置されており、上級コースの試験をパスすれば、ニース大学を含むフランスの国立大学の本科に転入する語学資格を得ることができます。
私が通っていたのは2010年から2011年だったため、多少のカリキュラムの違いはあるかもしれませんが、当時の私の経験談をお伝えします。(当時と異なる点といえば、「C.U.E.F.L.E」の日本語公式サイトができていて驚きました)
ニース大学語学コースに入学するには
語学コースへの入学に際して、いわゆる足切りはありません。申し込めば入学は可能ですし、もちろん入門のコースもあります。また、授業開始前にレベル分けのテストが行われます。
しかし、全くフランス語が読めない、わからないという状況だと、多少苦労するかもしれません。何故なら入学オリエンテーションが全てフランス語で行われるからです。
入学する生徒が講堂に集められ、授業のカリキュラムや学生生活、レベル分けテストに関する説明が行われるのですが、説明は全てフランス語。渡される書類も全てフランス語です。
もちろん入門レベルの生徒もいるので、説明はゆっくりとした丁寧なフランス語で行われます。しかしひとつも内容がわからないとなると、近くの他の生徒に聞く必要が出てきます。
私は「フランス語は全くの初めてではないけれど初級」という状態で入学したため、先生の説明はふんわりとしかわかりませんでしたが、他の人に聞いて事なきを得ました。
ニース大学の授業カリキュラム
ニース大学では、語学に特化した授業のほか、フランスの歴史や文学、政治経済を学ぶ授業もあります。
初級コースでは文学や経済の授業はオプション程度ですが、中級以上にもなると学期の初めに「歴史文学選択」か「政治経済選択」を選ばされ、期末に行われる試験の対象にもなります。
フランス語の授業
単語、文法、リーディング、会話など、全方位からみっちりとフランス語の授業が行われます。
初級のコースではフランス語を基礎から学ぶものの、勉強量と授業のスピードは私立の語学学校と比べてかなりのもの。フランス語の基礎があやふやな状況では、一度授業を休むと置いて行かれるということもしばしば。
また、初級向けであっても容赦なく作文の宿題が出ます。初めは短い文でもよかったものの、レベルが上がるにつれてどんどん長文を書くことになります。
逆に、日本の文法教育で見られるような選択問題や穴埋め問題はあまり見られません。
選択授業:歴史文学
歴史文学コースでは、その名の通りフランスの歴史や文学を学びます。また、詩の授業や、映画の授業といったものも。
その他、「学期を通して一冊の本を読む」という授業では、フロベールの「ボヴァリー夫人」が使われました。学期の初めにテキストとして「ボヴァリー夫人」の原書が渡され、日本の現代文授業のように、分析などをしつつ読み下していきます。
ある程度フランス語ができるようになってからの授業ではありましたが、それでも原書を一冊となるとかなりハードでした。
選択授業:政治経済
政治経済のコースでテーマとなるのは、フランスの政治の仕組みや社会問題など。日本語でも複雑な内容を、全てフランス語で勉強していきます。
しかし、フランスで暮らしたい、仕事をしたいと思っているのであれば、フランスという国の社会の成り立ちや抱える問題について知ることができる非常に良い機会となります。
気になる宿題の量
かなりの量が出ます!もちろん担当の先生やその時の授業内容によって異なりますが、少ないとは言えません。
フランス語作文、選択授業のテーマに沿ったエッセイ、詩の授業では「詩を作ってくる」、また会話授業用のプレゼンテーションなど、様々な宿題が出ます。
中級以上のコースともなると、「フランスの社会問題に関するプレゼンテーション」というような宿題が出るため、新聞を読んだり図書館で情報収集をする必要が出ることも。
しかも全て「調べて終わり」ではなく、調べたうえで自分ではどう思うか、という点がないと、評価はものすごく低くなります。それはプレゼンだけでなく、エッセイなどすべてに共通します。
皆が神経ピリピリ!期末試験
ニース大学の語学コースは2月から6月、9月から1月の二学期制で、期末となる5月と1月には試験が行われます。受かれば次のコースに進むことができますが、落ちればそのレベルで同じ授業をまた半期間受けることに。
試験内容もシビアで、生徒たちのピリピリした空気は語学学校とは思えないほど。また、いくら授業で習った範囲の中から出題されるといっても、エッセイを書くタイプの試験が多いため、暗記して満点が取れることはありません。
自分が持っているフランス語力の全てをフル活用して試験に臨む必要があります。
例えば「ボヴァリー夫人」を使った授業の試験では、原書から一説が抜き出されており、「ここに見られるボヴァリー夫人の心境の変化を述べよ」というような問題がでます。
解答用紙はA4で罫線がひかれているだけのもの。そこに裏表両面、自分の考えを記入していきます。
制限時間は3時間。記入はボールペンで、間違えた場合は修正液を使用します。下書き用の用紙はもらえるものの、本番の用紙に記入する時間も計算しなければなりません。
また、本番の解答用紙に記入してから文章ごと修正をかけたい場合は全てに修正液をかけ、乾くのを待ってから再度記入といった、時間との闘いになります。
加えて、用紙片面だけで終わってしまうような短い答案は減点対象。自分の意見が書かれていない、論旨が一貫していないことでも点数がひかれます。
逆に自分の意見がしっかり書かれたオリジナルな答案でも、文法や単語の綴りがめちゃめちゃであればどんどん減点されます。極めつけは、設問に外れたことを書いていたら、いくら解答用紙両面に答案が書かれていても、一発アウト。
試験時間3時間は決して長くはありません。
まとめ
個人的な意見ですが、留学期間として半年以上とることができるのであれば、私は断然、大学の語学コースをすすめます。
半年以上というのは、大学の語学コースでは入学時期が決まっており、最低でも6か月間の在籍が求められるためです。
確かに授業内容はハードでしたし、宿題も試験もかなり大変でした。しかし、フランス語とフランスという国の知識を得るためには非常に有効です。
特に社会問題に関する授業を受けた後は、例えばフランス人同士が失業問題や移民問題を話す会話にも参加できるようになり、逆に「よく知っているね」と驚かれたこともあります。
また、私は社会人になってからの留学であったため、ニース大学での授業は自分の大学生時代を思い出し、非常に楽しかった覚えがあります。
せっかくフランスで勉強する機会を得られるなら、大学付属の語学コースで腰を据えて勉強するのはいかがでしょうか。
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