18年振りに足を踏み入れたベトナムは驚くほど発展し、昔の記憶がほとんど役に立たないほど変化していました。
高層建築物が立ち並び、さらに新しいビルの建築が続く様子は、一見建築ラッシュの現在のラオスと変わりないようです。
しかしラオスは中国系企業によって、ベトナムはベトナム企業によって工事が進められていることに、国力の違いを思い知らされました。
それでも路地裏に暮らすベトナム人たちには、気さくなサイゴンっ子気質が残っているのを感じることもでき、ホーチミンが相変わらず魅力的な街であるのは間違いないようです。優しいラオス人としたたかなベトナム人の違いを探りながら紹介します。
立派なホテルも立ち並び激変したホーチミンの安宿街!
写真:ファングーラオ周辺も開発が進み、驚くほどの交通量です。ベトナムはラオスよりエネルギッシュな国ですね。
私が2000年にホーチミンで滞在したのは「闇宿」と呼ばれる、宿泊施設のライセンスを持たず間貸しされている民家でした。現在のAir B&Bで紹介されている宿泊施設のようなものだったと言えるでしょう。
ホーチミンの安宿街ファングーラオとは?そして闇宿とは?
写真:かつては通りと通りをつなぐ細い路地に魅力的な闇宿が軒を連ねていました。
2000年代初頭ホーチミンのファングーラオは、バンコクのカオサンに次ぐ東南アジアの巨大ツーリストエリアでした。
とはいってもデタム通りに旅行代理店やカフェが並び、デタム通りに繋がる路地に闇宿があった程度で、こじんまりとしたエリアだった記憶があります。
しかし現在のファングーラオエリアでは旅行者向けのレストラン、カフェ、屋台の激戦区に変貌し、デタムとブイビエン、ドー・クアンダウの3つの通りが大きく発展していました。
特にブイビエン通りはローカル色の強いさびれた通りだったと記憶しているのですが、コンビニエンスストアも点在する便利な通りに変化しているのには驚かされました。
当時のホーチミンの闇宿は、ホストファミリーと生活を共にするという雰囲気が色濃く、滞在するうちにご近所付き合いなども始まるようなフレンドリーなものでした。
朝方近くまでローカル居酒屋で酒を呑み、昼頃に起き出すという堕落した生活を送る私に、「もう、あんたは観光もしないで酒ばっかり呑んで、外国人なんだから観光しなさい観光!」と小言を言いながらも「酒呑みは朝フルーツを食べないと長生きできないからね!」と毎日冷たいベトナム茶と冷えた果物を出してくれたのは、泊まっていた宿の斜め向かいのお母さんでした。
こんな経験が私をベトナムに長居させた理由ではないかと思います。
宿を探してもなかなか空きが見つからない!
写真:ホーチミンの宿の室内を取り忘れていたので、フエの宿の室内で代用します。1泊160,000(約7ドル:2018年4月の為替を110円で計算すると約770円)の部屋です。
写真:こちらもフエの宿のバスルームです。
過去に記した記事「本当に便利なの?ラオスで感じる宿泊施設予約サイトの功罪とは!」で触れていますが、バックパッカーだった習慣からか、私は予約サイトを利用せず現地で宿を探すスタイルで旅行します。
ファングーラオ到着後、何軒も宿を巡って疲れが出てきたタイミングで「ハロー!ゲストハウス?」と呼ばれました。見ると典型的なサイゴンのお母さんが手招きをしています。背後に見えるのは完全に民家で闇宿のようです。
「いくらなの?」と聞くと「350,000ドン」、「カーちゃん、高くねぇかい?」、「安い部屋もあるよ」、「なんだ先言えよ!でいくら?」、「11ドル」、「ん?253,000ドンか?部屋見せて」、「はいよ、こっちこっち」とトントン拍子に話が進み部屋の内覧です。
応接間の奥にある階段を上り2階の部屋を開けた時の感想は「広っ!」、窓はないものの約40平米の部屋にエアコン、テレビ、バスルームが付いています。シャワーの水圧も申し分なく快適そうな部屋です。
「窓無いなぁ、200,000ドンにならないの?」とダメもとで聞いてみると「それじゃお母さん飢え死にするよ」とのこと。
「200,000ドンにしてくれたら1週間くらい泊まるよ」と食い下がっても駄目でした。
値段を叩き過ぎると快適に過ごせなくなる可能性があるので、1泊11ドル(約1200円)で手を打ち4泊分をドン払いすると、公定レートで1,012,000ドンの処を1,000,000丁度で良いと、微妙なディスカウントをしてくれました。
実際に泊まると居心地の悪くない宿だったので、結局合計6泊しました。やっぱりホーチミンは闇宿に限りますね。
ラオスとベトナムの宿比較!
写真:今回利用した闇宿にマッピングしておきました。Miss haiという宿です。
東南アジア有数の旅行者エリア「ファングーラオ」には、ホテルから闇宿まで数多くの種類の宿泊施設がひしめいています。
しかし旅行者も多いことから、宿泊施設はベトナム入国後最初の滞在地となったフエと比較すると、2~3倍の価格が提示されています。
フエでは160,000ドン(約7ドル:約770円)で新築のように綺麗なゲストハウスに泊まれたので、逆にフエの宿代が破格なのかもしれません。
ラオスのビエンチャンでエアコン付きの宿に泊まると、安くて150,000キップ(約18ドル:約2,000円)からという印象があるので、ベトナムの宿泊費はラオスよりも割安感を受けます。
近年多くの旅行者がベトナムに足を運ぶ理由が分かるような気もします。
リアルなご当地グルメを楽しめる!ベトナム居酒屋とは?
写真:牡蠣のチーズ焼きとネギ・オニオン焼きです。
写真:ローカル居酒屋ならではのベトナム料理尽くし!どれをとっても美味しかった!
写真:ホーチミンで最初に開拓したローカル居酒屋「BA HUYEN」です。
写真:闇宿Miss haiとBA HUYENの位置関係。徒歩約20~30分です。ちょっと遠いですね。
ベトナム人の集まる居酒屋で楽しい時間を過ごした思い出があるホーチミンですから、さっそくベトナム居酒屋を探しに出たのですが、なんと言っても18年前の記憶ですから見つけられるかどうかが不安でした。
目的の店はファングーラオエリアから徒歩5分ほどのエリアだったのですが、残念ながら結局見つけられませんでした。代わりに新しい店を3軒ほど開拓することができ、ベトナム居酒屋を堪能する目的は達成できました。
ベトナム居酒屋探訪
写真:焼きホタテでしょうか?周りの席の人達が頼んでいたのを真似しました。
写真:ゲソのから揚げ!ビールが進む!
写真:モツとウズラの卵の炒めもの?これも人気メニューのようでした。
写真:えのきベーコン!前回食べたのは何年前だったろう?
写真:ホーチミンで2軒目に開拓したのは「LAU BO TI CHUOT」というお店でした。
写真:そしてハマグリがゴロゴロ入ったハマグリ鍋!内陸国のラオスでは新鮮な魚介類は望めません。
写真:タコ鍋!ラオス語もタイ語もイカとタコは「パー・ムック」で区別がありません。
写真:ベトナムといえば生春巻きですが、ラオスでも食べられるので揚げをオーダー!美味!
写真:ホーチミンで3軒目に開拓した居酒屋は「OC TRANG」という店でした。
写真:2軒目と3軒目の位置関係です。闇宿Miss haiから近いツーリストエリアの外れですが、外国人客はいませんでした。
旅行の楽しみの中に「ご当地グルメを楽しむこと」が、大きなウェイトを占めている旅行者は少なくないのではないでしょうか?私は美味しいものを食べることが旅行の目的になっていると自覚できるほど、観光やショッピングに興味がありません。
世界遺産や観光スポットが近くにあっても興味を示すことはまずない代わりに、美味しそうなものを探して町中を歩き回ります。
地元民を相手にした居酒屋やパブは、ローカルが認める美味しいローカルフードを提供しているので、地元民で賑わう店に狙いを定めて挑戦しています。
最初の滞在地フエでは2軒の居酒屋に足を運び、1軒はラオスへの帰り道にその店に寄りたくて再びフエに足を止めるほど気に入りました。
小奇麗ではないものの、店の外にも机を出しても18:00を過ぎると席が空いていないほど、現地人で賑わう店です。
ホーチミンでは3軒の居酒屋を開拓しましたが、一番良かった店がファングーラオから離れたエリアなので、アクセスが悪いのが残念でした。
どの店もメニューはベトナム語で表記されていて、英語メニューはありません。周りのテーブルを見回しながら「これはメニューのどこに載ってるの?」とベトナム人客に尋ねたり、スタッフに「あれはなに?」と聞きながら注文します。
2人でお腹一杯に食べて大瓶のビールを5本ほど飲んでも、フエの店で250,000ドン(約11ドル:約1,200円)ホーチミンでは400,000ドン(約17ドル:約1,900円)程の予算で楽しむことができました。
ラオス人は「3人集まるとビールが出てくる」と言われているほど酒を呑むのが好きですが、ラオスにはベトナムのようなローカル居酒屋が存在しません。
ニワトリ、アヒル、豚を網焼きする店などはあるものの、メニューのバラエティが乏しく、専門店という印象を強く受けます。
内陸国であることからシーフードが手に入り難いこともあり、食の楽しみはベトナムが大きくリードしていると感じます。
ラオスには存在しない鉄道!列車でニャチャンへ!
写真:サイゴン駅前に展示されている蒸気機関車、現在はディーゼル化されているのでSLは走っていません。
ホーチミンの滞在を1週間で切り上げ、次の目的地ニャチャンを目指しベトナムを北上し始めます。
現在ラオスに鉄道は存在しないのですが、ベトナムには古くから運行しているベトナム統一鉄道が存在するので、試しにホーチミン~ニャチャン間を列車で移動することにしてみました。
ホーチミンからニャチャンへの列車の旅
写真:サイゴン駅のホームです。何両連結されているか分からない位繋がっています。
写真:車両の中心に向かって座席が向かい合う謎のレイアウト。
写真:乗客全員に配給された弁当。何故私たちは1個だけだったのだろう?
写真:車内のトイレは意外と清潔に保たれていました。
ホーチミンから約400キロ離れたニャチャンへは、列車で約7時間で到着します。市内のサイゴン駅からニャチャンへの列車は1日7便、06:00、09:00、11:50、14:40、19:45、20:30、21:25にサイゴン駅を出発します。
乗車券は前日に購入しておき、09:00の便に乗るべく宿を出て、路線バスに乗り込みました。ホーチミン~ニャチャン行きのソフトシートのエアコン車両で1人224,000ドン(約10ドル:約1,100円)です。
駅のホームに入ると何両編成かは判らないものの、連結された車両の列が長く続いているのに驚かされました。
当時の列車はバスよりも遅い速度で走っていて、長距離移動に利用できるものではなかったことから、前回は同じルートをローカルバスで移動した記憶があります。
定刻に汽笛を鳴らしながら統一鉄道が動き出したのですが、想像を超える速度で走るのには再び驚かされました。
せっかくのソフトシートですが、全てのシートが車両中心に向かって設置されているので、半分の乗客は進行方向に背を向けて座ることになります。
私たちのシートも進行方向に背を向ける側に指定されていて景色を十分に楽しむことができなかったのは残念でした。
昼食時に愛想のない乗務員が弁当の入ったカートを押しながら登場し、全員が弁当を手にしているので「美味しいのかな」と思いながら見ていると、1つ投げつけるようによこしてきます。
「いくら?」と訪ねても応えないので「まぁ、100ドルはしないだろう」と開けてみると白米と鶏肉が入った鶏肉弁当でした。
味は可もなく不可もなくでしたが、ソフトシートの乗客には無料で配られる弁当だったようなので文句も言えません。
2人で乗車しているのに弁当が1つしか渡されなかった理由は理解できませんが、2人で食べても十分なほどのご飯が詰まっていたので、きっと2人分だったのだろうと理解しています。
車窓からの景色は単調なもので居眠りをする時間が長かったのですが、ニャチャンが近付くと進行方向右側に海が見え、羊の群れなどにも遭遇して、約7時間は比較的快適に過ごせました。
現在ラオスでは中国高速鉄道が乗り入れるために、大規模な鉄道工事が推し進められています。多くのラオス人が鉄道の乗車体験がないので、開通すれば競うようにして列車に乗ろうとするでしょう。
鉄道の存在の有無でもラオスよりベトナムが一歩リードしていることは間違いありません。
ベトナム人気質を思い知らされたニャチャン!
写真:ビーチリゾートのニャチャンですから海鮮鍋をオーダー!
写真:おー!ホタルイカも美味しいねぇ!
写真:ここまで見かけなかったビアホイ(自家製ビール)発見!
美しいビーチを持ち古くからベトナムのビーチリゾートスポットとして栄えたニャチャンは、現在中国人とロシア人の観光客で溢れています。有名観光地は人がスレているものですが、ニャチャン人のスレっぷりはなかなかのものでした。
昔のベトナム人を彷彿とさせるニャチャンの飲食店
ニャチャン到着後、宿探しのために場所の確認でもしようとローカル茶屋でアイスコーヒーをオーダーしました。
ローカル茶屋にはメニューがなく、女性スタッフに訪ねると「1杯10,000ドン」とのことなのでアイスブラックコーヒーを2杯オーダーすると「ミルクも砂糖も入れないなら7,000ドン」と作りながら教えてくれました。
宿街の場所が確認できたので精算を頼むと、私たちの後ろの席に座っていた女性が「30,000ドン」と言い出しました。「はぁ?2杯で14,000ドンだろう!ってかお前誰だ?」と訪ねても「30,000ドン」を繰り返します。
「1杯7,000ドンでしょ?」と女性スタッフに眼をやると鬼の形相で「知らない!」と、シラをきる始末です。
こんな時に限って小額紙幣の持ち合わせが20,000ドンからしかなく20,000ドンを渡して終わりにしました。
それ以降はメニューがあるカフェで1杯20,000ドンのアイスコーヒーを飲むようにしました。値段を倍払っても気分良く過ごせる店のほうが満足度は高いですからね。
居酒屋探訪は海鮮料理を中心とした居酒屋を探し出して訪ねました。メニューは中国語のメニューと英語メニューを出されましたが、ベトナム語メニューを隣のテーブルから借りていつもどおりにオーダーしていきます。
料理は素晴らしく美味しかったのですが、精算の際に外国人料金を請求され何故か600,000ドン近くの支払いになりました。請求書を見ながらメニューを広げて「これ何処に書いてるやつなの?」と訪ねても「ノーノーノー」としか言いません。
メニューの中には請求書に書き込まれている単価の半額以下しか載っていなかったのですが、1品1品確認しながらオーダーしなかったこちらのミスです。
結局メニューも取り上げられ「ノーノー!ペイマニー!ペイペイ!」と居直られる始末です。妻には「これがベトナム名物のボッタクリだぜ」と説明しましたが、今回の旅行で飲食店で不愉快な思いをしたのはニャチャンだけです。
ラオス人はこれほど露骨に値段を吹っかけることがないので、「ベトナム人相手にささくれ立った心をラオス人が優しく癒やしてくれる」という昔の旅行者の言葉は現在でも通用するのではないでしょうか。
ニャチャン探検!見どころは国立海洋博物館?
写真:エビだエビ!綺麗だけど美味しそうですね!
写真:屋外の水槽にはサメやウミガメが飼育されていました。
観光スポットとして栄えたニャチャンですが、現在はニャチャンの沖合いの島に遊園地が作られ、その遊園地が最も人気の行楽スポットとなっているようです。
もともと観光スポットに興味がないうえに到着初日に海鮮居酒屋で不愉快な思いをし、ニャチャンを楽しむモチベーションは消え失せてしまいましたが、相変わらず町歩きは続けました。
やることもないから行ってみた国立海洋博物館は脱力スポット?
写真:国立海洋博物館の目玉!巨大クジラの骨格標本です!奥に映っている観光客の大きさと比べるとどれ程大きいかが分かります。
写真:ジュゴンの骨格標本。このあとダナン近郊でジュゴン料理の看板を沢山見かけて微妙な気持ちに。
今回のベトナム訪問時は日中の気温が高く、ラオス生活で暑い気候には慣れているはずの私たちもバテ気味になるほどでした。
ニャチャンのツーリストエリアはそれほど広いわけでもないため、暑い中を散策しても既に見たものばかりになってしまい、すぐに飽きてしまいました。
こんなときは路線バスに乗って気になるものを見つけたらそこで降りて、ローカルエリアを散策するに限ります。
ベトナムはエアコン完備の路線バスが走っているので、乗車すれば暑さを忘れて車窓の景色を楽しむことができます。
行楽スポットの島へのロープウェイ(ニャチャンの街から島へはロープウェイで移動するようです)の近くにあるニャチャン港に向かいました。
港には大型コンテナを満載にしたコンテナ船が多く停泊していましたが、これといって目を引くものもなかったので、国立海洋博物館に入ることにしました。
国立海洋博物館は水族館も併設していて、非常に多くの海洋生物の研究サンプルが展示されているとのことです。
空調が効いた薄暗い水族館を期待したのですが、窓が開け放たれた建物の中に水槽が並んでいました。研究サンプルの展示も目玉となる巨大鯨の骨格標本以外は、棚にホルマリン漬けされた魚が並んでいるだけという脱力スポットでした。
水族館が存在しないラオス人を連れて行けば喜びそうだとは思うものの、日本人の観賞には耐えられるレベルのものではなかったというのが正直な感想です。
まとめ
ホーチミンもニャチャンも人は多いのですが、日本人旅行者と会うことは1度もありませんでした。日本人の海外旅行離れが進んでいるのかと言えばそうでもない様なので、渡航先に東南アジアを選ぶ旅行者が減っているのではないか?と感じます。
ニャチャンでは残念な結果となりましたが、ベトナムは以前と比べると遥かに旅行が簡単になったと言えるでしょう。ベトナム経由でラオスを目指すのも面白いのではないでしょうか?
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