観光客の受け入れ世界一を誇る、芸術と美食の国フランス。近年はテロの頻発で物騒になりましたが、それでも毎年たくさんの観光客や留学生が足を運ぶ、世界中の人を惹きつけてやまない国であり続けています。
そんな憧れのフランスで、私たち夫婦はワーキングホリデーの1年を満喫してきました。実際に行ってみて、なぜこんなにもフランスが人々を惹きつけるのか、その理由がよく分かった気がします。
観光客と生活者、両方の雰囲気を味わったフランスでの1年の経験をもとに、フランス生活の良いところ・嬉しいところを5つご紹介します。
見るものすべてが目の保養
フランスは目に焼き付けたい景色の宝庫。まず強く感じるのは、街の景観の美しさです。
「街を作る」「街を見せる」という考え方の下、一つ一つの建物が街を構成する一つのピースとしての役割を果たして、見事な統一感を感じさせてくれます。
赤茶色の屋根が映えるリヨンの市街地、地中海のブルーと最高にマッチするマルセイユの真っ白な家々、小さな教会を中心に、年月と共に色あせた素朴な家が肩を寄せ合う牧草地の小さな村……。
地域ごとの特色はありますが、どこに行っても見とれてしまいます。
自然豊かなフランス
日本の約1.5倍の国土に、人口は半分ほどの約6,500万人というデータからも分かるように、フランスは自然がとても豊かで、広々とした印象を与えてくれる国でもあります。
最高峰モンブランを頂くフランス・アルプス、世界屈指のリゾートである南仏の地中海を筆頭に、息を呑む自然の魅力にあふれています。
どこまでも続くような牧草地帯、広大な麦畑、そして豊富なワインの元となるぶどう畑と、豊かな農業を物語る風景は、私たちを慌ただしい日常から連れ出して、のんびりと癒してくれます。
農業大国の恵み!豊富で安い食料品
そう、フランスは農業大国なんです。昔々、地理の授業で習ったのを思い出すかもしれませんね。
TGVのパリ・リヨン間なんて、2時間の道のり、景色はほぼずっと牧草地です。そんな訳で、スーパーの乳製品コーナーがいかに大きいか想像できると思います。
特に、チーズとヨーグルトの種類の多さには目を見張るものがあります。
そして、本当に安い!例えばですが、私たちは、Fromage blanc というムース状のヨーグルトがお気に入りです。日本ではなかなかお目にかかれないものですが、一つ100gくらいのパックが8個セットで1.7ユーロ(約200円)程度で、どこにでも売っています。
乳製品は日本に比べて格安
バターや生クリームといった日本では値の張る商品も、半分ぐらいの値段で売っていて、これには妻が大喜びでした。肉、野菜、果物その他、だいたいどんなジャンルの物も日本より確実に安いです。
そして、何と言っても、ワインが豊富で、美味しく、なおかつ安い。普段飲みなら、5ユーロくらいの物で十分満足できると思います。一大生産国ならではの、無添加の純粋な味わいを楽しめるのもとても嬉しいですね。
たくさん乗るほどお得! フランスの都市交通
フランスと日本の公共交通システムには、大きな違いがあります。
フランスでは、中・長距離路線は国鉄(SNCF)がカバーし、その他は都市圏ごとに一つの交通公社(パリならRATP、リヨンならTCLなど)が、その都市圏の交通網を一元的に管理しています。
私が住んでいたリヨン都市圏を例にすると、地下鉄(メトロ)、バス、路面電車(トラム)といった、リヨン都市圏のどの交通手段もTCLの管轄下なのです。
このシステムゆえに、定期(日本のように区間指定ではない)を持っている人は、月定額でどの交通手段も乗り放題ですし、切符を買う場合でも、最初の乗車から1時間半であれば、1枚で、メトロからバスへ、バスからトラムへ、という具合に自由に乗り換えができる、といったサービスが可能になっているのです。
これは特に定期所持者にとってメリットが大きく、通勤・通学費用の面でかなり庶民の味方です。しかも、学生、低所得者、年配者などいくつもの減免カテゴリーもあるのです!
フランス一周旅行も夢じゃない!激安長距離バス
ここまで書いてきたとおり、いろいろな物やサービスがリーズナブルなフランスですが、私の1年のフランス生活で最大の衝撃、それは激安の長距離バスの存在です。
最初にその話を聞いたのは、リヨンで知り合った日本人の友達からだったと記憶しています。彼女曰く、リヨンからパリへ行く高速バスに、1ユーロ(110〜120円)で乗れるらしいと言うのです。
片道約400㎞、6時間以上かかる路線の運賃がたったの1ユーロなんて、信じられますか?本当だったらすごいなと思いつつも、すぐには信じられず、ネットでいろいろ調べてみました。その結果、本当にあったんです!
激安バス「Megabus」
その激安バスを運営しているのは「Megabus」という会社で、欧米各地に路線を持っている大きな会社でした。もちろんすべての便ではありませんが、確かにリヨン・パリ間1ユーロというチケットが出ています。
他のいろいろな路線も見てみたところ、1ユーロを始め、3ユーロ、7ユーロなどなど、激安の便が多数あることが分かりました。しかも、トイレ完備、車内ではwi-fiも使えるとのこと。信じられません……
私のはじめての「Megabus」体験は、思いがけずパリのテロ事件によってもたらされました。テロの影響で、パリでの予定を繰り上げて急きょ帰ることになり、どうしようかと思案した結果、思い切ってMegabusに乗ってみることにしました。
テロの影響か、単に日曜日の午後だったからなのかは分かりませんが、私たちの乗ったリヨン経由マルセイユ行きのバスは、ぎっしり満員でした。他のお客さんがたくさんいるのは安心です。
トイレもwi-fi(通信量制限あり)も情報通りちゃんと使えました。車内もとてもきれいですし、きちんと休憩も取ってくれます。前日に取ったということもあり、この便は10ユーロだったのですが、それでも十分に安いです。
これで1ユーロだとたまらないでしょうね!利用客が多いのも納得です。
はじめての激安長距離バスに大満足した私たち。翼を得たような気持ちで、翌月早速、バスだけを使ったフランス半周旅行に出かけました。
リヨンからストラスブール、ナンシー、ランス、パリ、トゥール、ボルドーと回ってリヨンに戻る2週間の旅でした。バス賃の合計は、なんと1人50ユーロ!
時間に余裕があり、バスが苦にならない方は、一度試してみる価値アリです。もはやフランス一周旅行も夢ではありません。
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人の温もりが嬉しかったフランス生活
本当にフランスは魅力たっぷりですが、その魅力あふれる国を作り上げている人たちの存在抜きには、フランスは語れません。
フランスへ来るまでのイメージはネガティブなもの
実際に来てみるまで、私のフランス人に対するイメージには、プライドが高そう、フランス語しか話そうとしない、など、ネガティブな部分がありました。
しかし、私が接した多くのフランス人は、とても優しく親切で、親しみやすい人たちでした。社会福祉を重視した国家政策ゆえか、学校教育の賜物なのか、詳しい背景は分からないものの、総じてフランス人には、困っている人を助けようという気概が満ちています。
しかも素晴らしいのは、がんばってしている感が全くなく、自然に、何の躊躇もなく手を差し伸べられることです。乗り物の中でも、スーパーでも、アパートの階段でも、そんな心温まる光景を毎日のように目にしました。
英語で話しかけてくれるフランス人
言語についても、私のイメージは間違っていました。実際には、フランス語ができない外国人に、英語で話してくれる人がたくさんいました。
フランス人、特に年長の世代の人たちが自分たちの言語を愛し、誇りを持っているのは事実だと思います。でも、それより前に、彼らは自分の目の前にいる人とコミュニケーションを取りたい人たちなので、相手がフランス語が分からないのなら、それなりに対応してくれるのです。
現地でいくらかフランス語を勉強した私ですが、片言の英語同士でフランス人と話すのがけっこう好きでした。どの言語だったとしても、分かり合えることが嬉しいですよね。
まとめ
私にとって、1年のワーホリ滞在は、想像以上の興奮と幸せを感じられる特別な時間になりました。
フランスという国の持つたくさんの魅力を発見できたいま、この国がなぜこんなにも人を惹きつけるのか、その問いの答えも私は見つけられた気がします。
私の答え、それは、人間らしい生活の喜びがそこにあること、とまとめられると思います。助け合いが深く根付いた社会、美しさを大切にする心、豊富な食卓から来る喜び……。
人々の努力と、豊かな自然と恵まれた土壌という神様からの贈り物が合わさって、心地よいゆとりと豊かさがこの国には満ちています。これからも、多くの人がフランスの魅力を体験し、そこにあふれる人間らしい喜びを味わってくれたらと願っています。
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