もしあなたが日本を離れ、異国の地での妊娠(Grosesse)・出産(accouchement)をするとしたら。想像するだけで不安が募りますよね。でも、海外で出産することは、取り立ててて特別なことではないのです。
だって、よく考えてみて下さい。
フランスでも、アメリカでも、インドでも、世界中のどの国でも毎日の様に多くの赤ちゃんが生まれているんです。日本人が海外で出産することは、言葉の壁や文化の違いから戸惑うことも多いかもしれませんが、しっかりと学んで順を追っていけば何の問題もありません。
特にフランスは、出産に関しては多大なサポートをしてくれる国で、妊娠・出産に関わるすべての費用を医療保険で100%カバーしてくれるのです。この辺も日本とは大きく違いますね。
今回は、フランスでの妊娠から出産までについてご紹介します。
フランスで妊娠したかな?と思ったら
フランス滞在中に妊娠したかな?と思ったら、まずは日本と同じ様に薬局(Pharmacie)で妊娠検査薬(Test de grosesse)を買ってきて自宅で検査することができます。
キットには色々な種類がありますが、基本的には日本の物と同じ物が多く、使い方は簡単です。万が一、使い方がわからない場合も、薬局の人に聞けば親切に教えてくれますのでご心配なく!
妊娠が濃厚になったら、病院へ行こう
自宅での検査の結果、妊娠が濃厚になった場合、産婦人科(Gynécologie)、又は一般医(Médecin généraliste)を受診し、血液検査をしてもらい、妊娠を確定させます。
妊娠が確定したら、ここからが大事!これから1年間お世話になる病院(Hôpital)選びは慎重に行いたいですよね。
フランスでの産婦人科は、妊娠が確定してからを担当してくれる産婦人科医と出産時を担当してくれる産科医(Obstétricien)に分かれます。
このほか、エコー検診、血液検査(la prise de sang)など、様々な検査を総合して行える大きな総合病院にかかることも可能ですが、自分で信頼できる個人開業の診療所の産婦人科医を見つけ、その先生にお世話になることも可能です。
その場合、月に1回の定期検診は個人開業の産婦人科医の診療所で受け、出産は、その産婦人科医が契約している、出産に必要な設備を持ち合わせている大きな病院で行われることになります。
私は、先に自分の出産をしたいクリニックを決め、そこのクリニックに所属している産婦人科医のリストを取り寄せ、出産まで月1回定期検診に通うことを考慮し、便利の良い場所にある産婦人科を選びました。
フランスの産婦人科は、もちろん先生との会話もフランス語で進んで行きます。
ただでさえ難しいと感じることが多いフランス語、そこに専門用語がたくさん出て来たら、と心配になってしまいますよね。
そんな方のために、パリに2件だけ存在する、「日本語の通じる産婦人科」をご紹介します。
フランスで日本語の通じる産婦人科
アメリカンホスピタル(HOPITAL AMERICAIN)
- 住所: 63, bd Victor Hugo 92200 Neuilly-Sur-Seine
- 電話番号: 代表0146412525、日本語24時間サービス0146412515
日本語サポートされている病院として1番有名なのは、パリ郊外のBoulogne(ブローニュ)の隣街のNeuilly(ヌイイ)にあるアメリカンホスピタル(Hôpital American)です。
アメリカンホスピタルは、24時間日本語で対応してくれるホットラインがあり、診察の際には、日本語の通訳がついてくれるそうで、心強い限りです。
ドウィエブ医師(Dr. Patrick DOUIEB)
- 住所:65bis, av Victor Hugo 92100 Boulogne-Billancourt
- 電話番号:0146033724
日本語が流暢なフランス人医師、ドウィエブ先生が診て下さる街の産婦人科は、パリ郊外ブローニュにあります。
ユーモアがあり優しいドウィエブ先生の元で安心して出産された日本人の方は多く、フランス生活.comのサイトにも紹介される有名な医師です。
そのほか、日本語の通じるパリ近郊の医師一覧は、在仏日本大使館のオフィシャルサイト内でご確認頂けます。
フランスの医療制度はどのようになっている?
先にも申し上げましたように、フランスは、医療保険が大変充実している国の1つです。
フランス人・在住外国人ともにすべての人の加入が義務づけられている社会保障システム(Sécurité Sociale)の中に医療保険(Assurance maladie)があります。
この医療保険で、妊娠・出産にかかるすべての費用がカバーされるのがフランスでの妊娠・出産の最大のメリットと言えるでしょう。
この素晴らしい医療保険を有効活用するために、まず最初にしなければいけないことは、妊娠14週目までに社会保障事務局に以下の必要書類を提出することです。
- 妊娠証明・申告書 Vous attendez un enfant
- 両親のパスポート Passeport
- 両親の滞在許可証 Carte de séjour
- 健康保険証 Carte Vitale
- 家族手帳 Livret de Famille
- 血液検査結果 Résultat de la prise de sang
- 住居証明書 Justificatif de domincile
※ 妊娠証明・申告書(Vous attendez un enfant)というのは、医師によって出される必要事項が記入されている3枚綴りの書類で、外国人には他にも色々と追加で必要書類が求められることもあります。
フランスでの妊娠中の定期検診の流れは?
妊娠期間中に、毎月1回の定期検診が行われるのはフランスも日本と一緒で、定期検診の内容は、問診、内診、尿検査、血液検査などで、妊娠12週目に行われる血液検査では、ダウン症の有無を調べます。
超音波検査は、全妊娠期間で3回、超音波検査の専門家(Médecin échographiste)によって行われます。
産婦人科の定期検診に行くと、産婦人科医から血液検査とエコー検査の処方箋が渡され、その処方箋を持って血液検査センター(Laboratoire)や超音波検査の専門家のところに行き、検査を受けるシステムになっています。
すべての施設を備えた大きい病院ならば1回で済む検査ですが、このように毎回同じ先生にきちんと診てもらえると、出産に向けて徐々に先生との信頼関係が築け、安心して出産に挑むことができることが最大のメリットだと思います。
日本での妊娠週数とフランスの妊娠週数の数え方の違い
日本とフランスでは、妊娠週数の数え方が違います。
日本では最終月経の初日を妊娠開始日としているのに対して、フランスでは様々な検査や診察結果をもとに推定した受精日を妊娠開始日としているので、出産予定日も日本とは2週間程のずれが生じます。
日本の雑誌などを見ながら、私はいつも混乱しては、日仏照らし合わせて数えなおしておりました。ただ、日本でもフランスでも妊娠している期間はもちろん同じで、フランスの方が長い!なんてことはないのでご安心下さいね。
フランスでの出産は無痛分娩(la péridurale)が主流?
フランスで出産経験のある私も、「気づいたら無痛分娩を選択していた」ほど、フランスでは無痛分娩が出産方法の主流です。
出産全体の80%以上が無痛分娩だそうで、無痛分娩も国民保険でカバーされ、無料で行うことができますが、もちろん無痛分娩が義務というわけではなく、妊婦さんはみんな納得して自分の1番良い方法を選んでいることには変わりありません。
私がお世話になったクリニックでは出産予定日の3ヶ月前にクリニック所属の産科麻酔科医と個人面談をする機会が設けられていました。
身長・体重・アレルギーなどの基本情報を伝えると同時に色々と質問をすることができ、無痛分娩に不安なく挑めるようになりました。
そのときの先生と話をして印象に残っていることは「日本は医学がこんなにも進歩している豊かな先進国なのに、どうして自然分娩を推奨しているのかしら?」と言う質問です。
「日本には、生みの苦しみ、という言葉があり、日本人にとっては美徳であり、また、痛い思いをして生んだ我が子ほどかわいいものはない、ということだと思います。」
と私が答えると、「無痛分娩で生んだ我が子も、絶対に同じぐらい死ぬほどかわいいわよ。」と先生に切り替えされてしまいましたが、確かに、無痛分娩で生んだ我が子ですが、先生の言うように死ぬほどかわいいです。
フランスでいざ出産!
出産1ヶ月前になると、出産のお世話をしてくれる助産婦さん(Sage femme)を紹介されます。助産婦さんは、産科医とタッグを組んで出産を導いてくれる大変重要な人物です。
臨月に陣痛(Contraction)が起こっているかどうかの確認をしてくれるのも彼女のところで、出産への具体的なアドバイスをしてくれるのも彼女、と、最後の1ヶ月間は大変お世話になった方でした。
さて、出産時は、子宮口が4cm開いた時点で麻酔を入れてもらえるのですが、麻酔を入れた瞬間、嘘みたいに陣痛が消え去ります!
でも、私の出産時にはちょっとしたハプニングがありました。
というのも、深夜の出産だったため、担当の麻酔科医がすでに帰宅済みで病院におらず。何度も連絡を取ってくれていたのですが電話に出ないため、子宮口が4cm開いているにもかかわらず、麻酔を入れてもらえなかったのです。
その後、1時間以上してから、ようやく現れた麻酔科医は、寝癖がついていて寝起きのお顔。
「ごめんね、深く眠っちゃって携帯が鳴ってたことに気づかなくて。」と言い訳もせずに謝ってくれるところが、これまたフランスらしいというかなんというか。
麻酔を入れてもらえずに陣痛に耐えた1時間をちょっと損した様な気持ちになりましたが、フランスで出産した、これもひとつの良い経験だと思うことにしました。
出産までの流れは、無痛分娩でも、日本と同じように変わりません。無痛分娩で生んだ赤ちゃんだって、やはりかなりの感動もの!無痛分娩で生んだって我が子がかわいくないわけない!と言っていた麻酔科医の先生の言葉は本当だとすぐに実感したのでした。
フランスでの出産後の手続き
無事に赤ちゃんが生まれたら、まずしなければいけないのが出生届けを出すことです。
フランスで生まれた子供は、国籍が日本であろうが、フランスであろうが、いかなる国籍でもフランスに出生届を出さなければいけないのです。
出生届けを出す場所は、自宅の住所がある町の市役所(Mairie)ではなく、子供が生まれた産院のある町の市役所ですので、充分に注意してくださいね。
そして、出生届は、出生から48時間以内に出さないと効力をなさないので、生まれてから悠長に名前を決めている時間はあまりなく、生まれたときにはだいたいみんな名前が決まっている、というのがフランス流です。
我が家もいくつか候補を決めており、生まれた我が子の顔を見てから、なんて思っていたのですが、生まれた瞬間に「この子の名前は?」と先生に聞かれてしまいました。
とっさに候補の中から夫が口に出した名前が、結局我が子の名前として決定してしまったという、なんとも慌ただしい名付けをしてしまったのでした。
フランスでの出生届に必要な書類
- 出産証明書 declaration de naissance (出産した病院の医師又は助産婦が出してくれる)
- 両親の戸籍謄本のフランス語法廷翻訳 (Traduction certifiée de l’acte de naissance)
- 両親の身分証明書 Carte de séjour
市役所の出生係に、上記の書類を提出すると、1枚の書類を渡されます。その書類に、子供の名前、性別、生年月日など、必要事項を記入して提出すると、役所は出生登録の原本を作成してくれます。
こうして、登録が完了すると、 出生証明書写し(copie integrale d’acte de naissance)と、日本で言うところの健康手帳(carnet de sante)が交付され、手続きは終了になります。
無事にフランスの出生届けが完了したら、日本へ出生届けを提出し、日本国籍を得なければなりません。フランスの出生届けは48時間以内とものすごく急がなければならないのに対し、日本への届け出は、3ヶ月以内と決められており、ずいぶんとのんびりしております。
日本への出生届け提出は、フランス国内の在仏日本大使館及び領事館で行うことができます。
日本への出生届けに必要な書類
- 出生証明書写し(copie integrale d’acte de naissance)2部
- 出生証明書写しの翻訳2部 (大使館・領事館の窓口でもらえる書類に自分で訳を記入すれば良い)
- 出生届け2部
- 戸籍謄本1部
これらの書類を提出すると、後は自動的に処理され、無事に日本国籍を取得することができるのです!
最後に私の出産体験談の中で、ちょっと笑える、でも、気持ちの悪いへその緒のお話を!
日本では、赤ちゃんのへその緒を桐の箱に入れて保存するという伝統がありますが、ここ、フランスではそんな話、聞いたことないんですよね。
私たちは日本人!ならば、私たちの子供のへその緒も保存しておいてあげないと!ということで、出産前にそんな話をちらりと助産婦さんに話したのです。
でも、きっと私の話し方が上手じゃなかったのか、助産婦さんの理解が間違っていたのか、出産当日、無痛分娩で安産だった私のへその緒を、助産婦さんは約束どおり、透明の小瓶に入れて主人に渡してくれたのです。
私がお願いしたかったのは、もちろん、子供のおへそからポロっと落ちたへその緒を捨てずに保管したいなぁといったごくごく普通の願い。
勘違いした助産婦さんから渡された小瓶には、ただいま切除したばかりの血まみれの長いへその緒がグニュグニュっと折りたたまれて入っていたのです。
そのグロテスクなこと、この上なく、主人は心底ビックリしたと言っていました。日本の文化とフランスの文化、色々と違う中で発生してしまったこんなハプニングすら微笑ましく思えるフランスでの心温まる出産ができ、私はとても満足しています。
まとめ
皆様、フランスで出産する勇気は湧きましたか?言葉の壁なんて、文化の違いなんて、ひとつの命が生まれる重大さの前ではなんの意味もないことがおわかり頂けたと思います。
そしてフランスは、手厚い医療制度のもと、安心して出産に挑んで頂ける国のひとつだとご理解頂けたことと思います。
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