中国人は「春节(チュンジエ)」、日本でいう春節(旧正月)をとても大切にしています。この時期に大勢の旅行者が日本に押し寄せるニュースを見て、ご存知の方も多いかもしれません。
中国人の春節への思い入れは、日本人のお正月への思い入れ以上に強いものです。それだけに色々な習慣があり、中国に行ったり住んだりする外国人の生活に影響がおよぶものも少なくありません。ぜひこの特別な祝日を理解して、上手に過ごしましょう。
今回は中国の春節(旧正月)についてご紹介します。
春節の時期について
春節の日付が毎年違うのはなぜでしょうか。
中国でも日本と同様、仕事や学校などの普段の生活は西暦「阳历(ヤンリー)」を用いますが、伝統的な祝日は今でも旧暦「农历(ノンリー)」の日付で行なわれます。
伝統的な祝日の中でも最重要とされているのが春節です。 西暦の1月1日も、前後3日ほど休みになりますが、これといって特別なことはしません。
中国人にとってのお正月は、やはり旧暦の春節、日本でいう旧正月です。大体1月20日から2月20日の間で毎年日付が変わります。 ちなみに「春节」は旧暦の1月1日を指す言葉で、春節前後の一定期間を「过年(グオニエン)」と呼びます。
「元旦(ユエンタン)」は西暦の1月1日を指す場合が多いようです。中国に行くとよく耳にする言葉ですので、使い分けを覚えておくと役立つかもしれません。
中国では、日本人は「春节」を祝うのかとよく質問されるので、日本には「元旦」しかないと説明することができるでしょう。
有名な大移動「春运」を理解しよう
春節の前後は「春运(チュンユン)」と言われる帰省ラッシュがあります。春節が始まる15日前から春節後25日後の40日間、鉄道を中心に交通機関が混みあいます。
仕事や学校で故郷から離れている人の大半が、この時期は実家に戻るためです。
びっくりするのは帰省の期間で、学生だけでなく、仕事をしている人でも一ヶ月くらい実家で過ごす場合があるという点です。もちろん会社の正社員はそうはいかないでしょうが、商売をしている人であれば結構長く店を閉める人もいます。
パートの仕事の人は、年末に仕事をやめて、春節が過ぎて実家から戻ったらまた仕事を探すという場合も少なくありません。 さらに驚くのは、帰省の旅程全般があまり計画的ではないことです。
実家に帰る日もそこから戻ってくる日も、その時になるまで分かりません。この時期は列車の切符がなかなかとれないこともあり、当初の予定より数日遅くなることも、ごく普通です。
限られた休日の期間をきっちり計画する日本とは対照的ですね。 最近は、経済的に余裕がある人を中心に、この時期を利用して海外旅行をする人もかなり増えてきました。
とは言え、中国全体としては故郷に帰省する人のほうが大部分を占めます。それでも中国の人口は半端でなく多いため、一部の人が海外旅行に流れただけでも、日本などの諸外国にとっては「大人数」が押し寄せたような印象を受けますね。
「春运」 の時期に中国へ行く時には
冬の時期に中国へ行く計画がある際は、今度の春節がいつなのかをネットで調べておくことがおすすめです。
ちなみに春節そのものである旧暦の1月1日から3日間くらいは意外と混まず、飛行機チケットの値段も高くありません。もう故郷に到着してひと段落しており、人々の移動があまり無い時期のようです。狙い目と言えるかもしれません。
要注意なのは、その前後です。旧暦の年末にあたる一週間と旧暦の1月5日以降の一週間辺りが、飛行機の値段がはね上がることが多いようです。
最近私が帰省のために調べた時には、片道999円(税抜)の格安チケットが出ることで有名な春秋航空でさえ、この時期だと片道20,000円以上の日もありました。
列車も切符が非常に取りにくいですし、人が多すぎて大変なので、この期間の移動は避けたほうが無難でしょう。
ただし、ちょうどこの時期に旅行する場合、春節前に日本から中国に行き、春節後中国から日本に行くチケットを買うのはまだ良いかもしれません。なぜなら春節で日本に旅行する中国人とは逆方向だからです。
同様の原則が国内移動にもあてはまります。春節前の大都市から地方都市への飛行機、春節後の地方都市から大都市への飛行機は混みますが、その逆方向であればそれほど混みません。
多くの人は地方から大都市に出て働いていて、春節には大都市から地方に帰省することになるからです。中国の大多数の人の動きを考えて、それと重ならないようにすると移動が楽になるでしょう。
このようなわけで、冬に中国旅行を計画する場合は、「時期」と「方向」にくれぐれも注意したほうがよさそうですね。
親戚みんなでわいわい中国のお正月料理
春節には、各地から親戚が故郷に集まり、みんなで食事をします。
中国の北半分の地域では皆で餃子(「饺子(ジャオズ)」)を作って食べるのが習わしで、日本でお正月には餅を食べるのに似ています。
中国で餃子を食べる場合、具はもちろん、皮も小麦粉をこねて一枚一枚手作りするのが普通です。しかも主食として食べるので、非常に大量に作ります。人にもよりますが、一人当たりおよそ20個くらいでしょうか。
餃子は外国人に味わってもらいたいと思う典型的な料理の一つのようで、特に春節の時期におうちに呼ばれると、一緒に作ることも多いです。
日本とは包み方も違うので教えてもらう必要がありますし、中国の餃子は基本的にゆでて食べるものなので多少勝手が違いますが、とてもおいしいです。
親戚が集まると、適齢期の未婚の人は結婚相手はいるのかなどと皆からたずねられ、早く見つけるようにとかなりの圧力を受けるようです。一家団らんとは言え、自分の状況によっては、楽しいことばかりではなさそうですね。
人数が多いと食事の準備が大変なため、外食にする場合も多いようで、春節の時期レストランはたくさんの人でにぎわいます。もし外食の場合、多めの人数の場合は予約をとったほうが無難かもしれません。
中国各地の爆竹や花火の激しい音に耐える
春節前後には非常にたくさんの爆竹をならし、花火をうちあげます。
あちこちで怖いくらい大きな音が続くので、初めて中国で春節を過ごした時は、思わず戦争の爆撃を想像してしまいました。本当の爆撃を知らないからこそかもしれませんが、まるで爆撃の予行演習でもしているかのように感じます。
特に大晦日 から元日にかけての夜は一番激しく、音が鳴っている間はとても寝られたものではありません。いつになったら寝られるのか……と少しゆううつな気分になります。
春節に関係した爆竹や花火は旧暦1月15日の「元宵节(ユエンシャオジエ)」まで続き、街を歩いているとたまに遭遇します。
路上で突然大きな鳴り出して、周囲に火花が散るわけですから、すぐ近くにいる場合はちょっと怖い思いをします。 そんなわけで、私の場合この時期外を歩くのはあまり好きではありません。
中国の春節の時期に日本に帰省することになると、少しほっとします。 爆竹は政府が制限を課したこともあるようですが、徹底して実施するのは難しいようです。
たくさんの中国人にとってはこれが無いと物足りないらしく、魔除けなどの意味もあるそうです。ただでさえ汚染されている空気がさらに汚れてゴミも出る上、ひどいと怪我や火事につながる場合さえあるのですが、それでもしぶとく続いている習慣です。
玄関のドアの回りに貼る赤い紙「对联」
春節の時に貼り替えるのが、多くの中国人が玄関ドアの外側の両脇や上に貼る赤い紙「对联(トゥイリエン)」(または「春联(チュンリエン)」)。赤い紙の上には、一年の平安や幸福を願う言葉が書かれています。
書かれている内容は、圧倒的に財運に関するものが多く、お金を稼ぐことへの関心の高さがうかがえます。その年の干支に関するシャレなどが含まれていることも多いです。
また、イスラム教やキリスト教などの宗教に関する言葉が書かれていると、一見してその家の宗教事情が分かります。 「对联」は春節の時に貼り替えてその年中貼りっぱなしにしておくもので、日本のお正月の飾りとは対照的です。
日本では玄関ドア周辺の飾りつけはリースや鉢植えや照明など家によって個性豊かなのに対し、中国では「对联」以外の飾りをあまり見かけず、どの家も比較的似たような印象を受けます。
出費がかさむ様々な習慣
中国人もお年玉「压岁钱(ヤースイチエン)」を子どもにあげる習慣があります。専用の赤い袋にお金を入れて(そのため「红包(ホンバオ)」と言われることもある)、あげるようです。
私はあげたことも、もらったことも無いため詳しいことは分かりませんが、これは日本と比較的似ている習慣ですね。
ネットで調べたところ、2014年の春節では北京の10-13歳の子供の平均お年玉金額は4867元(日本円にして約75,000円)だったとの調査がありました。かなりの金額ですね。
大人の平均収入が日本より低いことを考えると、子供の収入がこれほど高いのは驚きです。 事前に買っておいた新しい服を着て春節をむかえるというのも、よく聞く習慣の一つです。
そんなわけで年末のショッピングセンターやデパートは、服の売れ行きが良いようです。 それにしても、故郷の親戚にお土産もたくさん買う上に、子供にはお年玉をあげ、さらに家族の服も買うとなると相当の出費になりそうです。
まとめ
日本のお正月とはちょっと様子の違う中国の春節をご紹介しました。
中国の春節は色々な意味で本当ににぎやかです。中国に住むようになってから、日本のお正月は静かだということに気づきました。期間的にも、中国は前後合わせて1か月くらいお正月モードが続きます。
現代になって中国人の生活は大きく変化しましたが、春節に関連した伝統的な習慣はまだまだ多いようです。 中国らしさが一番出るこの時期を、上手に乗り切ることができるといいですね。
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