海外生活を始めて、できれば行きたくないところ……。それは病院ではないでしょうか?
日本とは医療システムがまったく異なるフランス。初めて病院へ行く時は緊張しますよね。しかも、診察では専門用語も使われるので、フランス語が話せないとなおさら不安になるでしょう。
フランス在住の私は今まで、風邪や花粉症、腰痛等で病院にかかったことがあります。その時の経験も含めて、病気になったらどうすればよいかを説明していきましょう。
※1ユーロ=130円
フランスでは症状が軽ければ薬局へ
もし、風邪の引き始めや一時的な頭痛、喉の痛みなど、病院へ行くほどでもない軽い症状であれば薬局へ行きましょう。
薬局は「Pharmacie(ファルマシー)」といいます。街中至るところにあるので、すぐに見つけられるでしょう。上の写真のような、緑色の十字架と文字が目印です。
どの薬を買っていいか分からない時は、薬剤師に聞けば症状に適した薬を出してくれます。薬剤師に、どこが悪いのか説明しましょう。
例えば、
- 頭が痛い時は「J’ai mal à la tête.(ジェ マラ ラ テット)」
- 喉が痛い時は「J’ai mal à la gorge.(ジェ マラ ラ ゴルジュ)」
- お腹が痛い時は「J’ai mal au ventre(ジェ マロ ヴォントル)」
と言います。「J’ai mal à + 体の部位」で体のどこが痛いかを表現することができるので、覚えておきましょう。
フランス家庭の常備薬
ちなみに、フランスの家庭に必ずある薬が「Doliprane(ドリップランヌ)」という痛み止め薬です。
日本のバファリンのような存在で、頭痛、歯痛、筋肉痛、生理痛などに効き目があります。2ユーロ(約260円)もしないので、常備薬として買っておくのもいいでしょう。
フランスではどんな症状でもまず一般医にかかる
とにかく医者に診てもらいたいという時や、薬局で買った薬を飲んでも治らないという場合は、一般医(Médesin généraliste)のところに行きましょう。
病院というと「Hôpital(オピタル)」と思いがちですが、これは公立の大病院を指します。まずは一般医に行かなければなりません。
そうです。日本では、「皮膚科」「内科」「耳鼻科」「整形外科」など自分がかかりたい診療科に直接行きますが、フランスではどんな症状でも最初は一般医にかかるのです。
その一般医で診察をしてから、医師の判断で処方箋をもらうなり、専門医に紹介状を書いてもらうなりという流れになります。
一般医となる主治医を選ぶ
フランスは「主治医制度」を採用しているので、まず一般医となる主治医(Médecin traitant)を決めなくてはなりません。
私の場合、義父と旦那の主治医が同じなので、私も必然的にその医師にしました。家から近いところを選ぶのもポイントです。
主治医を決めたら、主治医申告書(Déclaration de choix du médecin traitant)に記入し、登録を依頼します。私は初診の時に直接医師に依頼したので、その場で記入とサインをし、あとは医師が処理してくれました。
予約が必要かどうかは主治医次第
医師によりますが、診察の際に必ず予約を取らなくてはならない場合もあります。
私の主治医は予約は不要で、行きたい時にいつでも行けます。一方、知人の主治医のところは完全予約制のため、診察まで1週間待たされたと聞いたこともあります。
フランスでいざ一般医の診察へ
診療所(Cabinet médical)はアパートの一室にあることが多く、日本のように大きな看板があったりはしません。基本的に、門や共同玄関に「Docteur ○○」と書かれた金色のプレートが控えめに掲げてあります。
受付はない
診療所内には日本と同じように待合室と診察室があります。一方、異なる点は受付がないことです。そのため番号札を渡されたり、呼び出されたりすることはありません。
待合室に入ったら、自分の前に誰がいたかを把握しておきましょう。
診察はもちろん来た順番なので、医師が「次の方どうぞ」と呼んだら、自ら「はい私です」と名乗り出なければならないのです。患者間で「次はあなた?」という会話を耳にすることもあります。
症状を伝えて問診
診察室に入ると、まず問診があります。医師に症状を詳しく伝えましょう。
問診が終わると、症状によって異なりますが、ベッドに横たわって血圧を測ったり、触診や聴診などが行われたりします。ここで何か施術や検査をされることはありません。
施術や検査をする場合は、専門医にかかることになります。
会計は医師に直接
検診が終われば、あとは会計です。前述した通り受付がないので、お金はその場で医師に支払います。ここで、Carte Vitale(キャルト・ヴィタル=健康保険証、詳細は後述)の提示を求められます。
診察料は、基本的には一律で25ユーロ(約3,250円、2017年8月現在)です。日本の健康保険と同様、フランスにも自己負担がありますが、フランスではいったん全額払います。
ただし、診察料は医師のセクターによって異なるので、一概に25ユーロとは言えません。医師のセクターはSécurité Sociale(セキュリテ・ソシアル=健康保険)のサイトで調べることができます。
セクター1(Secteur 1)と書いてあれば診察料は25ユーロです。セクター2、3の場合はより高くなります。
処方箋や紹介状も忘れずに
薬が出る場合は、処方箋(Ordonnance)を渡されます。専門医にかかる場合や、何か検査を受ける場合は紹介状を用意してもらえます。
医師の字は殴り書きで大変読みづらいことが多いので、読めない場合は素直に聞いた方がいいでしょう。処方箋は薬剤師に渡すので問題ありませんが、紹介状の場合は自分で予約の電話をしなくてはならないからです。
フランスで処方箋をもらったら
処方箋を渡されたら、日本と同じように病院の近くの薬局や行きつけの薬局などに行きます。ここで必ず、先に述べた「Carte Vitale」と「Mutuel(ミュチュエル)」の提示を求められます。
- Carte Vital(健康保険証):
「Sécurité Sociale(健康保険)」に加入するともらえるカードです。
フランスの自己負担分は通常3割です。あらためて説明すると、日本では会計で自己負担分のみ支払いますが、フランスではいったん全額を払い、後から還付されるシステムになっています。
ちなみにこのCarte Vitaleは、フランスで労働する際には必ず必要となります。
- Mutuel(互助保険):
Sécurité Socialeで還付されない部分を補う任意の保険です。Sécurité Socialeに加入していて、フランスに在住している人なら誰でも入れます。
日本でいう生命保険のようなイメージで、プランによって還付される割合や月額の支払額が異なります。
要するに、Sécurité Socialeから7割、残りはMutuelの契約内容に応じた割合が還付されるというわけです。
Sécurité SocialeとMutuelの還付を合わせて、支払い額の100%が戻ってくるようにもできるので、Mutuelのプランはよく検討されるとよいでしょう。
なお、処方される薬は保険がきかないものもあります。その場合はもちろん自腹で払うことになります。
また、処方された薬を一度に渡されないことがあります。これは医師が2、3ヶ月分など多めに処方する場合で、渡された分が切れたらまたもらいに行かなければなりません。
フランスで紹介状をもらったら
自分で紹介先に電話をかけて予約を取ります。フランスでは一つの施設ですべての検査ができず、血液検査、レントゲン、エコーなど、それぞれ別の機関に行かなければならないのが面倒なところです。
しかも、この予約がなかなか取れなくて、数週間後になったりすることもあります。
専門医にたどりつくまでが長い
私は以前、腰痛で主治医にかかった時に、レントゲンを撮りに行くよう言われました。
総合病院に行きましたが、そこではレントゲン撮影をするだけでした。というのも、そのネガを持ってまた違う理学療法士にかからなければならなかったのです。
しかも、総合病院ではその日にネガを渡してもらえず、また別の日に再度取りに行かなければなりませんでした。
このように、フランスの医療は分業制となっているので、最終的に専門医に診てもらうまでに時間がかかることがよくあります。
フランスの医療制度のメリットとデメリット
日本では自分で症状を判断しなければならないので、どの診療科に行けばよいのか分からない時もありますよね。間違った診療科に行ってしまい、他の診療科に回される……というのもよくある話です。
その点、フランスでは主治医が症状を判断して、処方箋を出してくれたり、必要であれば専門医を紹介してくれたりするので、迷う必要もなく安心です。
ただ、分業制のため時間がかかるのは大きなマイナスポイントと言えます。治る病気も手遅れになってしまっては話になりません。急を要する場合は、総合病院の急患受付(Urgence)に直接行くこともできます。
まとめ~病院に安く行ける点はありがたい
日本とフランス、どちらの医療システムにも長所と短所があります。
ただ、フランスでは医療費の還付率が高いので、出費の面を考えると気兼ねなく病院に行けるのが良い点でもあります。
病院にかかる必要のない健康体であるのが一番ですが、万が一体に変化を感じた時は、迷わずすぐに一般医に診てもらってくださいね。
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