フランス人の働き方の違いとは?仕事と私生活の大切なバランス

フランスで働く

「僕たちは仕事のために生きているわけじゃない、生きるために仕事をしているんだ」

私がフランス留学を終えて東京で会社員をしていた時、あるフランス人から言われた言葉です。

その頃の私は、早出残業当たり前、時には自宅でも週末でも仕事をするという生活をしていました。日本ではレアケースとは言えませんが、フランス人からすると噂に違わぬワーカホリックな「ザ・日本人」だと思ったのでしょう。

では、フランス人の働き方や、仕事と私生活のバランスはどうなっているのでしょうか。

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フランスの労働時間、休暇、雇用形態

仕事

フランスといえば、週の労働時間は35時間、残業はなく年間のバカンス約5週間取得も法律で決められているというのは有名な話。

そして雇用形態。日本で就職する場合にまず気になるのは、お給料もさることながら正社員かどうかですよね。フランスにもいくつかの雇用形態はありますが、日本のような正社員、非正規社員というような区分けではありません。

就業期間が限定されているかどうか

フランスの基本的な雇用形態は、

  • 就業期間が定められた「CDD(セーデーデー/Contrat à Durée Déterminée)」
  • 終業期間の定めのない「CDI(セーデーイー/Contrat à Durée Indéterminée)」

この2つに分かれています。アルバイトやパートタイムの場合は、いずれかの雇用形態を選び出勤時間を決めます。

ただし、労働時間は週35時間、バカンスは1年で約5週間ルールは、どの雇用形態でも共通です。

業種や立場によって実際の働き方は異なる

フランスに留学している間、「CDD」の週35時間より少ない程度で飲食店でアルバイトをしていました。終業時間が来れば、何かやりかけの仕事があっても「はい、帰っていいよ」と言われていました

週の労働時間が契約書に明記されていても、プラスで残業や休日出勤が発生する日本とは随分違いますよね。

もちろん、この労働環境がすべてのフランス人労働者に当てはまるわけではありません。例えば個人事業主や年俸制で働く役職者などは、週35時間を大きく超える場合もあります。

特に大企業の役職者の場合は、高い給与に見合う成果を求められます。そのプレッシャーと長時間の労働から、心身の健康を損なってしまう人もいると言われています。

フランス人は私生活に仕事を持ち込まない

フランス

一部を除き、日本人よりはぐっと労働時間が短いフランス人。必然的にプライベートに充てる時間が長くなりますが、彼らはオンとオフをきっちり切り替え、そのプライベート時間を仕事に邪魔されることなく過ごしています。

定時ぴったりに仕事を終える

フランスの銀行や郵便局の窓口で「今日はもう終わりだからまた明日来て」と言われた、というのはよく聞く話です。

日本人からすると「まだ窓口に人がいるんだから、あと一人くらい受けてくれても……」と思ってしまうところです。しかし、フランス人にとって終業時刻は終業なんです。これもフランス人の潔さだなぁと感じます。

終業後は完全に自分の時間

仕事の後は、仲の良い友人とカフェで夕食前の一杯を楽しんだり、恋人とデートをしたり、はたまた家族団らんを楽しんだりと、過ごし方はさまざまです。

共通しているのは、フランス人は職場を離れれば仕事のことはシャットアウト。「会社から連絡が来たからちょっとオフィスに戻るね」とか「仕事帰りに会社の人と一杯」ということはありません。日本と大きく違う点です。

よほどウマが合う同僚となら一緒に出掛けたりすることもありますが、基本的には仕事は仕事、私生活は私生活なのです。仕事終わりの流れで何となく飲みに……ということはありません。

バカンス中に仕事はしない

ビーチ

土日含めて5日連続のお休みとなると「今回の休みは結構長い!」と思ってしまう日本人。対して、年5週間のバカンスが法律で定められているフランス。

この5週間は、例えば夏に3週間、残りはクリスマスや別の時期に1週間ずつなどの取り方をします。

そんなに長く休んで大丈夫なのと思いますよね。でも、バカンス中は他のスタッフが対応したり、「担当者がバカンス中なのでX月X日までお待ちください」で済ませたりするのです。バカンス中に仕事をすることはありません

仕事をするときはする、休むときは休む。フランス人の思い切りの良さを日本でも見習えるといいですよね。

フランス人の仕事観「やりたいことをやる」

ビジネス

バリバリと仕事をしつつ、私生活もきっちり楽しむフランス人。では、仕事に対してはどのように考えているのでしょうか。

大企業や正社員といった肩書にこだわらない

自己紹介をする時、日本人は「XX(有名な企業名)で働いています」と言い、フランス人は社名ではなく「エンジニアをしています」と職種を伝えます。

以前と比べると少なくなったとは感じますが、依然として日本では「大企業の正社員になる」志向が高いのではないでしょうか。しかし、フランス人は所属する企業にこだわりはなく、自分のできることややりたいことをメインに考えます

ジャンル替えの転職もためらわない

転職活動のイメージと言うと、「前職の経験を活かしてもっといい会社へ」という感じではないでしょうか。もちろん、フランスでもそのタイプの転職もありますが、時にはまったく畑違いの分野へ職種替えすることも。

「未経験でも仕事をしながら資格を取れる」という雇用形態もあります。

私のあるフランス人の友人は、前回会った時はレストランで料理人をしていたのに、先日会ってみたら不動産コンサルタントになっていました。

やりたいことにいつでもまっすぐ

年齢を重ねれば重ねるほど、やりたいことがあっても「経験がないから」「今から仕事を変えるのは怖い」など、いろいろと言い訳をしてしまいがちですよね。しかし、やりたいことに目をつぶって生きていて楽しいのでしょうか

例えば、小さい頃からピアノを弾き、音楽院を卒業してピアニストになったものの、30歳を過ぎてから舞台役者に転向した人。

例えば、物理学の博士号を取得し研究機関で働いていたものの、漫画が好きだったため仕事を辞めて漫画専門の本屋を始めた人。

これらは私のフランス人の友人の話で、2人とも年齢的には40代後半の男性です。

がまんして生きるぐらいならキャリアもいらない

最初に会った時は現在の職業しか聞いていなかったため、前職を知った時には非常に驚きました。

世間的にはその道のエリートでもある「音楽院卒業」や「物理学博士号」といった経歴をある意味捨て、まったく違うことを始めるなんて!無謀なのでは……と思ってしまいます。

しかし、2人とも口をそろえて「やりたいことがあるのに、それをがまんして生きる方が嫌だ」と言っていました。

ワークライフバランスを実現させるフランス人の働き方

フランス人

日本でも働き方改革が叫ばれ、ワークライフバランスを考える機会が増えてきましたよね。

仕事も私生活もどちらも楽しむという点で、ワークライフバランスの大先輩とも言えるフランス人。とはいえ、仕事が1日の大半を占めることに変わりはありません。

では、仕事と私生活、ひいては自分の人生を充実させるために、フランス人はどのような働き方をしているのでしょうか。

必ずしも週5勤務ではない

会社員といえば、基本的に週5日勤務とイメージしがちですよね。

しかしフランスでは、契約時に雇い主と労働者の双方が納得すれば「週35時間は働きたいけれど週4日出勤にしたい」ということもできます。

実際に、私のフランス人の同僚は1日7時間・週5日出勤の雇用なのですが、週4日の出勤にして1日約9時間ほど働いています

自宅でも外国でも仕事ができるテレワーク

日本でもじわじわと市民権を得てきている「テレワーク」。フランスではすっかり浸透しています。

例えば、いつ家に行っても父親がいる家族。仕事をしていないのかなと思ったら、テレワークで自宅をオフィスにしていました。

もっとすごいのは、違う国で働く人もいること。フランスのIT企業でエンジニアをしていたものの、カナダ移住のため雇用関係はそのままに、勤務形態をテレワークに変えたという友人がいました。

自宅で働いている男性も、カナダで働いている友人も、注目すべきなのはそれが会社命令ではなく自己都合による理由だったことです(カナダに引越した友人は、当時付き合っていた彼女がカナダの大学におり、一緒に住むためにテレワークに切り替えました)。

リモートワーク

仕事をするときは集中!生産性が高い

「週の労働時間が短くバカンスも長いなんて、フランス人って仕事をしていないんじゃないの?」、それは誤解です。むしろ時間当たりの生産性は、日本人よりもフランス人の方がよっぽど高いのです。

OECD(経済協力開発機構)の調査(2016年)によると、1時間当たりの労働生産性は日本が46.0ドル(約5,100円)。これはOECD加盟諸国35カ国中20位です。対してフランスは66.9ドル(約7,400円)で第9位。

※1ドル=約112円

休むときは休む、仕事をするときはぐっと集中するという姿勢が見て取れますよね。すべては、自分の人生のためなのです。

日本の考え方や価値観がすべてではない

仕事に対する意識も私生活に対する意識も、私たち日本人とはまったく違うフランス人。彼らの働き方を真似しようとしても、そもそも土壌が違う、日本にはそこまで選択肢がないという事情はあります。

しかし、仕事だけに生きず私生活も大切にする考え方とか、やりたいことを見つけたら挑戦してみるという姿勢には、見習うべきところが多いのではないでしょうか。

まとめ〜フランス人は一度きりの人生を自分らしく生きている

フランス

フランス人を見ていると、仕事と私生活のバランスの取り方が上手だなというだけではなく、楽しそうに人生を生きているなと思うことがあります。

それぞれ悩みや不満は当然あると思いますが、「本当は今の仕事は嫌だけど、世間体や生活のためにがまんする」という鬱屈とした雰囲気は感じ取れません。

がまんをしないというと、それはわがままだと思ってしまいがちです。でも、私たち日本人は、自分の人生にもう少しわがままになっても良いのではないでしょうか。

一度きりの人生を自分らしく生きるために、フランス人の仕事と私生活のバランスのいいとこ取りをしてみませんか。

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