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中国・深センの保健所で麻疹(はしか)の予防接種(料金無料)

予防接種

「予防接種」と聞くと、小さい頃受けた三種混合ワクチン、小学校の保健室でのツベルクリンや日本脳炎の注射を思い出すのではないでしょうか?もう卒業したと思っていた予防接種を、大人になってから、しかも中国で受けることになろうとは……。

今回は、決して愉快ではない麻疹の予防接種をなぜ急に受けることになったのか、私の経験を書きます。もしも、皆さんが中国で緊急に予防接種を受けなければならなくなったら、どこに行って、どうしたらいいかをこの記事でお知らせできたらと思います。(2018年12月現在のレート、1人民元=約16.5円)

目次

中国で緊急事態!友人が麻疹(はしか)になる

親しくしている中国人の友達(20代後半)が、ここのところ体調が悪い、というのは知っていました。「疲れがたまって、風邪気味なのかな」と思っていたら、突然メールで「今、人民病院。麻疹(はしか)で入院することになった」と連絡が。

「麻疹って……大人がかかったら大変なやつじゃん⁉︎ 1日2日の入院じゃ済まないよね?すぐ行ってあげなきゃ!」

「え、でも麻疹はうつる病気だっけ?私、小さい頃、もうかかった?それか予防接種受けてる?全く記憶ないや……」とちょっとパニックになりました。

これが日本の病院だったら、入院患者さんの食事の準備や看病は病院がやってくれるので、「すぐに行かなきゃ!」と周りが慌てる必要はないですよね。

でも中国では、大きな病院でも入院患者さんの朝昼晩の食事は出ないので、家族や友人が毎食用意しなくてはいけません。しかも、麻疹にかかった彼女は、実家のある河南省から1人広東省に働きに来ていて、近くに家族や親戚もいません。

家族が急いで飛行機や列車のチケットを買ってやって来たとしても、数日後でしょう。「なんとしても、病院で高熱、そして発疹と闘っている友をすぐに助けに行きたい!」と気持ちが焦りました。

麻疹(はしか)の予防接種を受ける

まずは、ネットで麻疹について、また日本国内での麻疹の予防接種の歴史について調べました。それと同時に、日本にいる母にスカイプして、自分に麻疹の免疫があるかどうかを尋ねました。

すると、「え〜、麻疹?やったかしら……幼稚園の時、すごい発疹が出たのは、あれは何だったっけ?風疹?水ぼうそう?」と、なんとも当てにならない母の記憶。

しばらく調べたり話したりした結果、分かったことは、私は恐らく小さい頃に麻疹にかかったことも、麻疹の予防接種を受けたこともない、そのため麻疹の免疫は無く、麻疹の患者さんとの接触でうつる可能性がある、ということでした。

それでも、「食事を作って届けるくらいはしてあげたい!」と思ったので、「そうだ、今から予防接種を受けよう!」と決めたのでした。

中国の保健所「社康」

今度はネットの「百度」検索で、住んでいる深セン市内で麻疹の予防接種を受けられるところを探しました。「社康」(正式名は社区健康服務中心)と呼ばれる、日本でいうと保健所にあたる所で、週に3、4回、決められた曜日に予防接種が受けられると知りました。

次に、市内にたくさんある「社康」のリストの中から、家から一番近い所に電話してみると、全ての社康で予防接種が行われているわけではないことが分かりました。

そこで、私が住んでいる地区で予防接種が受けられる「社康」の場所、曜日、外国人でも可能かなどを尋ねて、やっといつ、どこの社康に行けばいいか聞き出すことができました。

結局、電話したその日には予防接種が実施されていなかったので、次の日の午前に社康に行きました。

病院

※筆者が行った社康

社康に着くと、まず入り口で係の女性に「何の用?」と聞かれたので、「麻疹の予防接種を受けに来ました」と答えると、「え、誰?あなたが?」と怪訝そうにジロリ。

「2階に行って」と言うのに従って階段を上がると、20畳ほどの部屋に、赤ちゃんを抱いたお父さん、お母さん、そして付き添いのおじいちゃん、おばあちゃんが40〜50人いました。

科目

※予防接種は2階で。他にも各種検査や妊婦さんの定期検診を行っている

人混みの向こうに受付が見え、みんな受付を済ますために並んで待っているようでした。最後尾に並んで待つこと20分、やっと受付窓口に着きました。

予防接種の受付窓口

※予防接種の受付窓口

「麻疹の予防接種ね?」

「はい」

「身分証は?へ?パスポート?日本人?あなたが受けるの?なんで?」

たぶん、予防接種を受けに来た外国人の大人は初めてだったんでしょう。事情を詳しく話して、しかも、私の受付を担当した人だけではなく、受付窓口にいた4人の係の人全員に説明して、やっと予防接種のチケットをもらえました

中国の麻疹のワクチンは生菌?

ついに手にした予防接種のチケット。見ると「麻疹疫苗 ・蘭州生菌」の文字が。「蘭州(地名)といえば、ラーメンで有名な所だよね……そこの生菌?ずいぶんと生きのいい麻疹菌なのか……そんなの打っちゃって大丈夫?」と少し不安になりました。

蘭州ラーメン

※中国各地にある「蘭州ラーメン」の店。「蘭州」と聞くと、まずラーメンを連想してしまう

後で考えたら、要するに「はしか生ワクチン、蘭州産」と理解すれば良かったんですが。「麻疹の予防接種は、こっちに並んで!」の声に従って、列に並びました。すると、私以外で麻疹の予防接種を受けるのはみんな赤ちゃんでした。

これも後でネットで調べて分かったことですが、中国では生後8ヶ月から麻疹の予防接種を受けることができるそうです(免疫を付けるには2回の予防接種が必要で、生後8ヶ月と1歳半で受けるのが一般的だと、後で保健婦さんに聞きました)。

皆さん、幼い我が子に(または孫に)早めに予防接種を受けさせようと来ていたのでした。まだ1歳前後の赤ちゃん達ばかりですから、注射をされれば当然、大泣きです。泣き声の大合唱の中、およそ15分間待って、やっと自分の番になりました。

小さな腰掛けに座ると、1人の保健婦さんがもう一度「本当にあなたが受けるのね?」と確認し、とても手際よく私の左上腕を消毒し、その後、もう1人の保健婦さんがチクっとやってくれました。

腰掛けている時間は1分以内でした。痛みもあまり感じませんでした。

麻疹の予防接種は無料

丸椅子から立ち上がりながら、保健婦さんに「今夜シャワーにかかってもいいのか、他に何か気をつけることは?」と尋ねると、「別に大丈夫。心配することはない」とのこと。

そこで帰ろうとして、ふと「そういえば、お金を払ってなかった!」と気付きました。中国の病院では、全ての医療行為の前に、まず支払いをしなくてはいけません。それなのにこの社康では受付窓口でお金を要求されなかったのはなぜ?

慌てて、保健婦さんに「費用はどこで支払えばいいんですか?」と聞くと、「は?無料よ」との答え。「ええっ?いいんですか?大人ですよ。しかも外国人ですよ!」と言いたいのをぐっと抑えて、「ああ、どうもありがとう!」と社康を後にしたのでした。

麻疹の予防接種を受けホッとしたのもつかの間……

中には、麻疹の予防接種を受けた後、倦怠感があったり、少しの発熱や発疹が出たりする人もいるそうですが、私はそのような症状もなく、予防接種を受けた次の日から、麻疹で入院している友達に食事を作って届けたり、身の回りのお世話をしたりすることができました。

彼女も、入院して最初の3、4日は40度近い高熱と全身の赤い発疹でとても辛そうでしたが、5日目には、私の作ったチキンスープがもう一度食べたい、と食欲が出てきて、その後どんどん回復し、8日目に退院することができました。

それでも、大人がかかる麻疹は本当に大変なんだと近くで見ていて分かりました。実は、私の周りの麻疹患者は、彼女1人では済まなかったのです。彼女が退院してホッとしたのもつかの間、次の週には、なんと私の弟が39度の高熱を出したんです。

友人が麻疹で入院したその日、私が母に連絡して麻疹の免疫の有無を尋ねている時に、弟もその場にいました。

そして「弟は小さい頃、麻疹にかかった」という母の言葉を信じ、彼は私が作った夕ご飯を入院中の友達に届けてくれたのでした( 母から「やっぱり、弟がかかったのは水ぼうそうだったわ〜」と連絡が来たのは、その日の夜遅くでした……)。

彼もしっかりマスクをして病院に行き、消毒液で手洗い、うがい薬でうがいもしたのですが。

そして、「麻疹患者と接触して72時間以内に予防接種を受けるなら効果がある」というネットの情報を頼りに、次の日、つまり私が近所の社康で麻疹の予防接種を受けた同じ日の午後に、弟も別の所で予防接種を受けたのですが……麻疹菌、恐るべし!

ただ、予防接種により、彼の麻疹はいくらか軽く済んだと言えます。4日間、39度の熱が夕方から深夜に出たほか、後半の2日間にはお腹や太ももに赤い発疹が出ましたが、その後、熱も発疹も引いて、1週間ですっかり回復しました。

「中国の病院には絶対行かない!熱冷ましの薬も飲まない!」と頑固に自分の体力だけで回復し、弟は自慢気でしたが、「心配しながら看病している姉の身にもなってよ!しかも、2人目!」と叫びたくなりました。

とにかく私は、予防接種を受けておいて良かったです。1ヶ月の間に2人の麻疹患者を看病することになったのですから。

スポーツドリンク

※高熱時の水分補給に……

中国のスポーツドリンク(3.5〜4元、日本円で約58円) ポカリスウェットやゲータレードは少し高め(5元、日本円で約80円)

ココナッツウォーター

または「天然のスポーツドリンク」、ココナッツウォーター(10〜15元、日本円で165〜250円。季節によって価格、産地に変動あり)

深センでの麻疹予防接種の後日談

今回、学んだことは、身近な人が麻疹にかかったら、そして自分に麻疹の免疫がないなら、早めに予防接種を受けた方がいい、ということです。繰り返しになりますが、大人の麻疹は怖いです。甘く見ないでください!

後日談ですが、「社康に行ったら、どうしてあんなにめずらしがられたんだろう、外国人だったから?」という疑問が、以下のサイトを見て解けました。中国語ですが、「子どもは社康で、では成人はどこで予防接種を受けたらよいのか?」という記事です。

結論から言うと、大人は社康ではなく、深セン市の羅湖にある「羅湖区中医院成人疫苗接種中心」という所で受けるように、と書いてありました。

中国では、「そこをなんとか!」とお願いすると、公共の施設でも結構融通をきかせてくれるものなので、今回もその方法で、近所の社康で赤ちゃん達にまぎれて予防接種を受けられたわけですが、中国語でごり押しをする図々しさと厚い面の皮がないと、難しいと思います。

深センで麻疹の他にどんな予防接種が受けられるか、おすすめサイト(中国語)

この2つのサイトには、深センで、麻疹の他にどんな予防接種が受けられるか、また予防接種を受けるにあたっての注意点などが書いてあるので、参考にしてみてください。

ちなみに深センでは、14歳以下は各地区の社康で、15歳以上は「羅湖区中医院成人疫苗接種中心」で予防接種を受けるように、と指示されています。また、外国人でも受けられます。費用ですが、麻疹ワクチンは無料です!

日本では、成人が麻疹ワクチンを受けるには6,000円以上かかるそうなので、中国で受けたらお得?かもしれませんよ!

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この記事を書いた人

中国広東省深セン市在住。アメリカ留学や台湾留学経験もあり。

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