ワイン用葡萄の産地として知られるカナダBC(ブリティッシュ・コロンビア)州オカナガン地方。私は今、そのオカナガンの葡萄畑で働いています。
日本では全く違う仕事をしていましたが、留学する息子とともにカナダへ来て、3年前にビジネスカレッジに通いました。その際にワイン作りについて学ぶ機会があり、こうしてワインに携わる仕事をするにようになりました。
私がカナダの葡萄畑での仕事を見つけるまでの経緯や職場環境などについてご紹介します。
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日本での仕事を辞めてカナダのビジネスカレッジへ
好きだった経理の仕事
日本での私は約6年間、経理の仕事をしていました。
冷暖房が完備されたオフィスでパソコンと向き合い、数字を打ち込む毎日。月ごとの経費をまとめたり、取引先への送金をしたり、従業員の給与手配などを任せられたりしていました。
オフィスでの人間関係も良く、とてもやりがいのある仕事で好きな職種でした。
しかし、息子のカナダ留学に同伴することになって、その会社も退職することに。そして、息子と一緒にカナダに渡り、カナダのビジネスカレッジに入学します。
ワイン作りの授業が転機に
カレッジでのコースはBusiness Administration optioned with Tourism and Hospitalityというもので、ビジネス管理をメインに学び、オプションで観光業を学びました。
その中の選択科目として、Food and Wine Tourismというワイン作りについての授業を履修したことが今の職業につながったきっかけです。卒業後はワインに関する仕事に就きたいと希望するようになりました。
そして私は、経理の仕事とはかけ離れた、しかもオフィス内ではなく屋外の葡萄畑にて、葡萄の木の世話をする仕事に就いたのです。
ワイン産業で有名なオカナガン
私が住むケローナという町があるBC州オカナガン地方は、カナダでも有数のワイン用葡萄の産地です。夏は乾燥気味の温暖な気候で冬はしっかり寒くなる、葡萄を育てるのに適した条件を持つ土地なのです。
オカナガン一帯には約400ものワイナリーが点在し、BC州のワイナリーの約8割はこの地方に集まっています。
そして、オカナガンのワイン作りは現在最も伸び率の高い産業で、カナダ全土はもちろん、そのマーケティング範囲は外国にまで広がってきています。
カナダで必要な就労ビザ
外国人がカナダで仕事をするには、労働できるビザを所有していなければいけません。たとえボランティア活動でも、有償ならWork Permitと呼ばれる就労ビザが必要です。
もし就労ビザがないまま働いてしまうと国外退去処分になり、労働させた雇用主はそのビジネスライセンスを取り消されます。
就労ビザの主な2つの種類
カナダのWork permitは、大きく分けるとOpen Work PermitとClosed Work Permitに二分されます。
Open Work Permit
期限のみ決められている就労ビザで、雇用主を限定せずに働くことができます。Working Holiday ProgramやPost Graduate Work Permitなどが該当します。
カナダに入国してから仕事を探し、見つけ、ときには複数の仕事を掛け持つことも可能です。
Closed Work Permit
別名Employer-specific Work Permit。あらかじめ雇用主が決まっている人が申請でき、その雇用主のもとでのみ労働が可能です。
日本の企業から派遣される場合や、カナダの企業からオファーを受けて仕事をする場合などがこれに当たります。
私のビザは雇用主の限定なし
私が取得したのはOpen Work Permitに分類されるもので、現地のビジネスカレッジを卒業した後に申請できるPost Graduate Work Permitです。これを取得・保持して現在に至ります。
カナダの地方で仕事を探すには
日本と同様、仕事の探し方は希望職種によってさまざまですが、ここオカナガンには人口10万人に満たない町が多く、大都市での就職活動とは違った仕事探しが必要とされます。
大企業狙いなら学生のうちからの行動が必須
カナダ全土、またはグローバルに展開している大企業にこの地方で入るのは至難の業でしょう。カレッジや大学で専門分野を学んだ学歴に加え、経験が必要です。
まずは大学生のうちにCo-opプログラム(学業とインターンがセットになったプログラム)やパートタイム採用で仕事場に潜入し、経験を積み、上司に認識してもらい、正規の雇用を待つというのが一般的なパターンとのこと。
社会経験や仕事経験のない個人をポンと雇ってくれる大きな企業はなかなかありません。
また、日本のように、「今年は新卒を○名採用します」というような基準を設けている企業も少ないのです。
カレッジの就職フェアでコネを作る
私の住む町、ケローナの主な産業は農業と観光業、そして医療です。
ビジネスカレッジで知り合った生徒の多くは、実家の農場を継ぐために経営を学んだり、ホテルやツアー会社に勤務するためにツーリズムを専攻したり、またはナースになるために医療コースを履修したりしていました。
卒業が近くなるとカレッジではJob Fairが開かれます。BC州から求人を募集している企業が集まり、就職を希望する生徒たちは会社の説明を聞いたり面接をしたりする機会が得られます。
生徒たちはここで就職につながるコネクションを作っていくのです。
情報が集まれば方向性が見えてくる
私自身も就職フェアに参加してワイナリーやホテルのブースで説明を聞き、名刺交換をし、とても有意義な情報収集ができました。
そして、かねてから興味のあったワイン産業に関わろうという方向性が見えてきました。
カナダでブドウ畑の仕事を見つけるまで
興味のあった農場労働を選択
ワイン産業と一口に言っても、職種はワイナリーのオーナーやワインの販売員、卸業者、ワインメーカーをはじめとする農場の労働者などなど多種多様です。
その中で私が選んだのは、ワイン作りを間近で学べる農場労働でした。
私自身は農業の経験は全くありませんでしたが、祖父母が日本で大規模な果樹園を経営していたことから葡萄栽培などの農業は身近なもので、とても興味があったのです。
求人を見つけるのは超簡単
オカナガンのワイナリーでの仕事を見つけるのは、とても簡単です。春から秋までの農業繁忙期には、町の求人サイトに募集が多数掲載されるからです。
最も簡単な仕事であれば「高卒以上、経験なし可、あれば尚良し」という条件。
次の段階になると、重機の運転免許、農薬散布免許、オーガニック資格、ワインメーカー免許など、携わる職種によってさまざまな免許が要求されます。
私の場合はまず、求人を出しているワイナリーのショップに買い物客として訪問し、従業員やオーナー、仕事の雰囲気を偵察しました。そして、ここならやっていけそうと思ったワイナリーに後日、正式に問い合わせをしました。
自分にできるのか…不安を胸に応募
経験もなければ何の資格もなし、唯一あるのはカレッジでのワインコース履修経験のみ。これが私の条件です。
そして最も不安だったのは、「果たして女の私に務まるのか」ということでした。「きっと体の大きいゴツい男性ばかりが働いているんだろうな」と考えると、なかなか応募する勇気が出ません。
数日間もんもんとしたあげく、勇気を振り絞り、一か八かの思いで、ワイナリーの中でも一番小さい規模のところに思い切って問い合わせをしてみました。
すぐに来たオーナーからの返事は「畑に来てみなよ」と、とてもラフなもの。「女性でもできる仕事なのか」との問いには、「女性の従業員もいるから大丈夫」とのこと。
さっそく翌日に面接をお願いし、オーナーに会うことになりました。
巨大な葡萄畑で体験就労することに
翌日、実際に会って葡萄畑を見せてもらいながら説明を聞いたのですが、「一番規模の小さいワイナリー」と思っていたのは見当違いで、裏の丘一帯に45エーカーの葡萄畑が広がっていました。
実に東京ドーム4個分です。
「農業の仕事はやってみないと僕も君も分からないんだよ。作業内容と天候との相性があるからね。大男でも1時間で逃げ帰る人もいるし、君みたいな小さい子が平気だったりもする。やってみるかはすべて君次第だよ」
オーナーにそう言われ、不安いっぱいでありながらも、翌日からまずは体験として雇ってもらうことになりました。
根性で?仕事を継続
それが2月のことで、あれから8か月が経ち、葡萄栽培のワンシーズンは終わりに近づいています。すっかり仲良くなったオーナーがのちのち言うには、
「本当はすぐに辞めちゃうかと思ってたよ。根性あってびっくりしたよ」
カナダの雇用形態と福利厚生
継続雇用と有期雇用、2つの形態
ここBC州の一般的な雇用形態は、Permanent(パーマネント)とSeasonal(シーズナル)に二分されます。
パーマネントは年間を通しての雇用で、1年が終わっても、次年度も続けて雇用の可能性のある形態です。一方、シーズナルは一定期間だけの仕事です。ホテルの繁忙期である夏だけの雇用などがこれにあたります。
私の雇用形態も、農場の閑散期である11月から1月の間は解雇されるシーズナルです。
労働時間による分類
パーマネントとシーズナルはさらに、
- full time(フルタイム)
- part time(パートタイム)
- casual(カジュアル)
といった雇用形態に分けられます。
フルタイム雇用は週に35~40時間の労働を指し、パートタイムはそれに満たない短時間の雇用、さらにカジュアルは必要なときにだけ声が掛かる働き方です。
私は月曜から金曜日まで、1日約6時間から8時間勤務するフルタイム雇用です。
雇用形態により異なる福利厚生
こういった雇用形態は求人募集欄に記載されるので、仕事探しをする際にきちんと把握しておくことが必須となります。
雇用形態によって、会社の福利厚生が受けられる場合とそうでない場合がある他、契約が終わり解雇された場合に失業保険が下りるかどうかも異なるので、あらかじめ雇用主に確認してから労働契約を結ぶようにしましょう。
私が携わっている農業では、天候が悪く農作物が育たない閑散期の間はEmployment Insuranceという失業保険が下りるのが一般的です(従業員の意思で仕事を辞めた場合は該当しません)。
私の仕事場のほとんどの従業員も、2月から10月までのシーズナル、フルタイム雇用。11月から1月の3か月は失業保険の手当てを受け、2月からまた仕事を始めるというのが一般的です。
カナダで働いて挑戦することの大切さを知った
学歴より経験が重要
この転職で私が学んだことは、カナダでは学歴以上に職場経験が重要視されるということ。
そのため、やってみたい仕事があれば躊躇せずに、まずはどんなポジションでも始めてみることが大事です。そこから次の可能性が広がっていきます。
未経験から始めた私は、最も下っ端からスタートしたばかりですが、経験を積んでいくと会社が仕事に必要な資格取得をサポートしてくれる、やりがいのある職場です。
奥の深さを実感する毎日
尊敬するワインメーカーの女性は、私とほぼ同い歳。代々続く葡萄園に生まれ育ち、幼い頃から畑仕事を手伝いながら、さらに大学へ行ってノウハウを身に付けた方で、「ワインを作るというよりも、葡萄を育てるという意識が最も大事」と語ります。
彼女のお話は、とても魅力的で刺激的。ワインのボトル詰めやワインメイキングの作業を見るのは、毎回ワクワクします。
他にもきっとこれから私が知るであろうことがたくさんある、もっともっと奥の深い世界であることは間違いなく、今後の仕事がさらに楽しみです。
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