世界で3番目に大きな島、ボルネオ島(カリマンタン島)。両側をマレーシアに挟まれた南シナ海側に、わずか5,765平方キロメートルしかない国があります。これがブルネイ・ダルサラームです。
国土は日本の滋賀県とほぼ同じですが、石油と天然資源の豊かな国です。ブルネイは日本人にあまり馴染みのない国かもしれませんが、実はブルネイの輸出の35.5パーセント(2016年)は日本が相手で、貿易関係がとても深い国なのです。
そんなブルネイへ隣のマレーシアから行ってみましたので、ブルネイについてご紹介します。
ブルネイ概要
国の成り立ち
正式名称は「ブルネイ・ダルサラーム」。これは”永遠に平和な国”という意味を持ち、首都はバンダル・スリプガワンです。
「ブルネイ」はサンスクリット語なので、かつては仏教国だったのではないかとも推測できますが、14世紀の国王がイスラム教徒に改宗したためイスラム国家となりました。
以前からこの国は王国でしたが、イギリスから完全に独立したのは1984年とごく最近なのです。
国を訪れるための注意事項
厳格なイスラム国家で、ラマダン(断食)時期は空港内でさえ飲食も禁止。もちろん外国人も同様です。イスラム教徒にとって最も大切な金曜のお祈りの時間、午後12時から2時の間は、どの店も閉まります。そして、公休日は金曜と日曜なのです。
この国でお酒の販売は行われていませんが、非イスラム教徒の17歳以上に限り、1人ビール12缶までとボトル2本までの持ち込みが可能です。ただし、これも公の場で飲むことはできないので、ホテルの部屋などで飲まなくてはなりません。
ブルネイの王
国王
第29代の現国王(スルタン)であるハサナル・ボルギア国王(写真左)は、国王であるほかに、首相・国防相・蔵相を兼任しています。一国の王が国のすべてを舵取りしているのは何とも驚きです。
その国王が住む宮殿「イスタナ」はとてつもなく広く、7,000台分の駐車場、国王が所有する車はなんと5,000台と言われています。そんな国王に「家がないから家が欲しい」と手紙を書いたら家がもらえた人がいるそうです。
安定した国を築き、市民に不満を持たせない”ビック・ダディ”のような王ですが、来日した際に「ママチャリ」が大変お気に召したそうで、70台くらい購入して帰ったのだそうです。広いイスタナをママチャリで走っているかもしれません。
ブルネイ人の言語
公用語
公用語はマレー語と英語とうたっているブルネイですが、マレー語を第1言語とは呼びません。実際にブルネイではすべて英語でしたし、マレー語で話しかけた際に「英語にして」と言われたほど英語が浸透しています。
マレー語が必修と言うわけでもないようで、親の考えでインターナショナルに通わせる場合は英語のみになります。もちろんイスラミックの学校もありますし、少数ですが中華系ブルネイ人もいるため中華学校もあります。
多くの国が母国語と位置付ける言語がある中で言葉にとらわれないのは、英国の支配下にあった時期が長かったからでしょうか。教育システムの話をしてくれたホテルの従業員は「英語ができるのが一番でしょう」と言っていました。
自国言語を持たないのも、また不思議な感じがします。
国民の7割が公務員
王国の経営
国王主権の国なので、国営のものが多く、国民の7割が公務員です。資本主義国の民間人からしたら、どうやって国が成り立っているのか不思議で仕方ありません。なぜなら税金というものを徴収していないからです。
石油と天然ガスが出るとはそういうことなのか、と納得させられます。もちろん、いつかは尽きる天然資源なので、国王もさまざまな投資はしているようです。
国民の生活
写真のローカル店エリアにはおしゃれなカフェが、駐車場には高級車がズラリと並んでいます。
給料日には昼間からスーパーやショッピングモールが祝日のように混み合います。いったい何事かと思いきや、その返答は「今日は給料日だから」でした。
税金が一切かからずガソリンや光熱費も安いためか、給料が入るとその日にほぼ使い切ってしまうそうなのです。国民のあまりの計画性のなさに、国王は給料日を月、2回に分けたそうですよ。
インフラは日本並み
インフラ
東南アジアといえば、インフラが遅れている印象を持っている方も多いでしょう。水が出ない、トイレが流れない、停電がある。ところがブルネイではまったく不自由しません。
驚いたのは、熱湯が蛇口から出てくることです。日本にいたら当たり前なのですが、熱帯雨林のこのあたりは、特に熱いお湯がなくても暮らすことができます。
お湯と言ってもぬるま湯程度なことが多いのですが、水を混ぜないと触われない熱さのお湯が蛇口から出てくるのです。
道路
道路も日本と変わらないくらいきれいです。特に隣国マレーシアから行くとその違いは顕著です。道に穴が空いていることなどありません。
そして、人口42.87万人(2017年)のこの国は渋滞もほぼなく、ドライバーは親切です。心のゆとりが表れているからでしょうね。
世界中の大理石はこの国に?
バンダル・スリプガワンには観光客が必ず訪れるモスクが2つあります。正直、このモスクくらいしか見どころがないのです。
これらのモスクと王の私物を集めたブルネイ博物館、世界で2つと言われる7つ星ホテル、これらの建物にはふんだんに大理石が使われており、世界中の大理石を使ってしまったのではないか、と思うほどです。
どこを見ても真っ白な大理石と24金に囲まれた建造物は、まぶしい限り。ブルネイは文字通りキンキラキンの国でした。
シンガポールドルが使えるって本当?
通貨
ブルネイはシンガポールと通過協定を結んでおり、面白いことに国内でシンガポールドルの使用が可能です。ガイドブックには紙幣のみ可能と記載されていましたが、試しにコインを出して見たところ、よく確認したあと受け取ってくれました。
物価
ブルネイの物価はシンガポールに次いで、東南アジア第2位です。ほぼ、シンガポールにいると思っていた方が良いでしょう。
ローカルエリアのカフェでランチをしたら、ドリンク、デザートセットで1人約2,000円、ケンタッキーではチキンナゲットのセットが約900円と日本よりも高いかもと思うほどです。
物価が高いのも、この通過協定が関係しているのかもしれませんね。
石油のとれるブルネイ、ガソリンは本当に安いのか?
マレーシアから陸路でブルネイに入った際に、バンダル・スリプガワンで給油をしました。ブルネイの石油価格が事前に調べられなかったので、石油王国のガソリンが一体いくらなのか興味深々でした。
ガソリン価格
その値段はRON97というハイオクガソリンでBND0.5(約40円)と、驚くほど安かったのです。そしてどのレーンを見てもハイオクしかありませんでした。まさしく「水より安いガソリン」です。
ただし、これはブルネイナンバーの車のみの価格で、マレーシアナンバーの車はこの1.5倍ほど値段が高いのだそうです。ガソリンの安さは国民の特権でした。
ブルネイに行く方法
空路
2019年3月、成田からバンダル・スリプガワンの直行便が就航します。機内でお酒は飲めませんが、評判の良いロイヤルブルネイの空の旅はさぞ快適なのではないでしょうか。
日本から経由する場合は、シンガポール、マレーシアのクアラルンプールが主になるでしょう。2019年2月からはエア・エイジアも就航するので、さらに手軽に行けるようになりそうです。
海路
海路はサバ州コタキナバルから、タックスヘイブンの島であるラブアン島を経由します。所要時間はおそよ3時間で、船は午前8時と午後1時30分の2便あります。
座席はエコノミー(MYR39.6)とファーストクラス(MYR44.6)の2種類です。船の2階がファーストクラスになります。
【基本情報】
Jesselton Point
- 住所:Kota Kinabalu 88200 Kotakinabalu Sabah Malaysia
- 電話番号:(60)88-235787
- ホームページ:http://jesseltonpoint.com.my/
陸路
陸路はマレーシアのサラワク州側からと、サバ州側からの2通りあります。
サラワク州側からは「ミリ」のプジェット・コーナーにある長距離バスターミナルへから1日2本、午前8時45分発と午後3時45分発のブルネイ行きが出ています。料金はMYR40です。
途中、船ごと川を渡るフェリーに乗り換え、所要時間は4時間ほどです。
【基本情報】
Miri Bus terminal
- 住所:Kuara Baram By Pass Rd.98000 Miri Sarawak Malaysia
- 電話番号:(60)85-433501
※「PHLS Express Bus」に乗車します。
サバ州からはイミグレーションを4カ所超えることになり、片道で8個のスタンプがパスポートに押されることになります。これはマレーシアのサバ州とサラワク州が特別自治権を持っているため、州を越えると出入国の扱いとなるためです。
所要時間
コタキナバルから1日1本、コタキナバル市内の高裁所前のバスターミナルから午前8時発のバスが出ています。片道MYR100で所要時間は8時間30分です。
【基本情報】
- Sipitang Express Bus terminal
- 住所:Jalan Tugu,Pusat Bandar 88400 Kotakinabalu Sabah Malaysia
- 電話番号:(60)16-8360009
- ホームページ:http://www.sipitangexpress.com.my/
※「Jesselton Express」に乗車します。
レンタカーや自家用車で行くことも可能ですが、ブルネイ入国時に車の製造番号とエンジンの製造番号、パスポート番号の登録が必要となります。これは違法な売却を防ぐ目的のようで、特に料金はかかりません。
まとめ
ブルネイは見どころがたくさんあるとは決して言えませんし、自然豊かな地域に観光客が足を踏み入れられるほど観光化されていません。
しかし、絶対君主の国を覗くといろいろと疑問が湧いてきます。見方を変えて国に足を踏み入れたら、不思議に思うことがたくさん出てくるでしょう。
自然と資源の豊かな豪華絢爛な王国を、一度肌で感じてみてください。
※MYR1=2.7、BND1=80.6(2019年1月)
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