サービス残業は当たり前、有休などあるようでないもの……そんなブラック企業の存在は日本ではよく聞きますよね。
日本での激務に疲れ果て、ヨーロッパでののんびりした働き方に憧れて海外就職を夢見る人も少なくないでしょう。 けれど国が変わっても仕事や会社に関するトラブルは存在するもの。
今回は、イギリスで企業相手に人生初めての訴訟を起こした経験を紹介します。
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支払われない最後の給料と郵送された給料明細の矛盾
イギリスで最初に働いた会社では4年半ほどお世話になりました。けれど、いつまで経っても1ポンドも上がらない給料に不満を持ち、転職活動をスタート。
運良くすぐに仕事は決まりましたが、退職は1ヶ月前に申請しなければならないところ、新しい勤務先から引き継ぎのためどうしても2週間以内に来てほしいと懇願されました。
幸いにも直属の上司はとても理解のある人で、惜しまれながらも申請から2週間での退職を受け入れてくれました。
退職から半年後に届いた最後の給与明細
そして転職。最後の給料がなかなか支払われないことが気になりましたが、申請から2週間という短期間での退職に後ろめたさを感じたこと、そして新しい仕事を覚えることに必死で放置してしまっていました。
半年ほど経った頃、突然前の会社から給料明細が郵送されてきました。書かれていた金額は日本円で約5万円。
さらに『小切手にて支払済』とも記載されていたのです。
イギリスの労働裁判所でブラック企業を訴える!
最後の給料は突然辞めた迷惑料として諦めようと思ってはいたものの、もらってもいないお金を支給したと言われることに違和感を覚えました。
新しい職場の人事に相談すると、実は前の職場から税金の手続きに必要な書類ももらっていなかったことが判明。前の職場の経理担当は設立以来のメンバーで1人しかおらず、ややきな臭いものを感じました。
まず電話で問い合わせをするとあっさり「小切手は追って郵送します」と言われましたが、待てど暮らせど届かず。何度電話をしても経理担当者は逆ギレして話にならず、メールは全て無視されました。
同じく退職した元同僚に連絡をしてみると、彼も同様に最後の給料をめぐって会社と揉めていました。
訴訟はオンラインで申請可能!手続きも簡単
知り合いの弁護士にも相談したところ、Employment Tribunalと呼ばれるイギリスの労働裁判所でならば少額でも訴訟を起こせると教えてもらい、すぐに申請を決意。オンライン申請が可能で、今までの経緯と全てのメールのやり取り、雇用契約書を添付するだけという簡単な手続きでした。
その内容によって受理されるかどうか決まるのですが、ものの数時間で受理のメールと担当法律事務所の連絡先が送られてきました。前の職場にも訴えを起こし受理されたことをメールすると、すぐに電話がかかってきました。
イギリスで経験した初めての訴訟(未遂)と和解に至るまで
「証拠として残らないやり取りはしないこと」というアドバイスに従い、メールにてその旨を前の職場に伝えましたが、電話は鳴り止まなかったため、仕方なく無視を続けました。
数日後、前の職場に裁判所からの通達が書面で届いたらしく、とうとう会社のCEOから直接メールが届きました。全額小切手にて支払いをするので訴えを取り下げてほしいという内容でした。
そのまま訴えを起こせば、慰謝料や支払いが遅れた分の利息も取れる可能性がありましたが、これ以上事を大きくしたくなかったので、このCEOからの提案に合意することにしました。
小切手はすぐに郵送されてきたので、それを銀行で現金にした後、訴えを取り下げました。
イギリスの契約社会で「証拠の残る書面」の重要性を知る
この一件はこれで決着しましたが、その後もビザの手続きなどで裁判所に関わった経験から、契約や取り決めに関するやり取りは全て書面で証拠として残すことが重要であると学びました。
日本でも対企業となると個人は弱者ですが、海外ではそこに外国人という立場も加わり大変心細く感じます。けれどイギリスではそんな弱者でも守ってもらえる体制が整っています。
トラブルには巻き込まれないことが一番ですが、万が一に備え、自分の身は自分で守れるよう普段から書面で証拠を残す習慣をつけましょう。
まとめ~自分の身は自分で守ろう
日本も近年では契約社会になりつつあるようですが、まだまだ個人の意識としては欧米に比べると低いかもしれません。
日本と就職先の国の意識の差、常識の差も事前にしっかりリサーチしつつ、海外就職の体制を整えると良いのではないでしょうか。
日本を飛び出して「外国人」として生きるには、自分の身は自分で守る強さと賢さが必要!備えあれば憂いなしです。充実した海外生活を送りましょう。
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