今夏、韓国忠清北道清州市にて日本人造形作家・野田智之さんによる韓国人小学生親子対象のアートワークショップ「ART BASE PROJECT」が行われました。
言葉による日韓交流とは違う、アートを通しての日韓交流そして日本人造形作家と韓国人の子どもたちとの触れ合いの交流の記録です。
本記事では、その一部始終のご紹介とともに、夏の日韓交流そして熱くもほのぼのとしたワークショップをここで記録しておきたいと思います。
造形作家・野田智之さんによる韓国でのアートワークショップ「ART BASE PROJECT」
アートワークショップ「ART BASE PROJECT」とは?
※参加者・関係者の方々
「ART BASE PROJECT」とは、韓国忠清北道清州市内にて開かれた、日本人造形作家・野田智之さんによる韓国人小学生親子を対象としたアートワークショップです。
今年の夏7~8月に全5回の日程で行われました。参加者は約20組の韓国人小学生とその親たち。盛況のうちに終了しました。
野田さんの造形作家らしいユニークな発想やアイデアは至る所に発揮され、風で動く彫刻作品を設置したり木に彫った名前(ハングル)を自分の分身として飾りつけたりしました。最後の回では、参加者全員で巨大な壁画を完成させました。
このワークショップ、私も実は数回子連れで参加させて頂きました。その中で、ワークショップの様子や野田さんと韓国人の子どもたちの触れ合う姿を近くで拝見出来たのですが、野田さんたちは言葉の壁を殆ど感じさせる事無く終始和やかに活動していました。
主催者の方が日韓夫婦であったり、他の韓国人の方々のサポートが充実していたのもありますが、野田さんのおおらかで「言葉が分からなくとも、皆と一緒に楽しもうとする」その人柄によるところも大きかったと思います。
最後は韓国人の小学生たちから「のだちゃん!」と親しみを込めて呼ばれており、中には別れを惜しむ姿も見られました。
日韓の言葉の壁をも超える、アートの力
時折、「アート」と「子ども」の前では言葉は壁にならない事を実感します。このワークショップでもまさにそうで、子どもたちは韓国語・日本語などの言葉ではなく、アートによるコミュニケーションを行っていました。
そして何より「ここでは何をやっても良いんだ」という解放感や、描いたもの作ったもの、それを1つ1つ見つけ受け止めてくれる野田さんの笑顔と態度によって子どもたちは心を開き、自身の気持ちや感情を絵や彫刻など作品の中にぶつけていったように見えました。
ワークショップ作品①
「名前のオブジェを作ろう 」(第5回)「靴を作ろう 」(第2回)
※第5回ワークショップの作品「名前のオブジェを作ろう 」(場所:清州市パブリックエアpublic AIR)
※第2回ワークショップの作品「靴を作ろう 」(場所:清州市パブリックエアpublic AIR)
ワークショップのプログラムは毎回違っており、全て参加した子どもたちにとっても楽しめたようです。
絵もあり彫刻もありそれを飾って楽しむ(インスタレーション)のもあり、また全員で1つの巨大な作品を作り上げるというのもあり。子どもたちも飽きることなく毎回取り組んでいたように見られました。
作品については、日本人の私からすると、特に上の写真の木に名前(ハングル)を彫った物に着彩したり粘土を貼りつけたりした作品たちは韓国らしく面白かったです。
野田さんの教え方:全てを受け入れる眼差し
作品を作る前、野田さんから子どもたちに「自分の分身と見立てて作って欲しい。どの角度から見ても大丈夫。好きなように色を塗ったり、粘土を貼りつけて作品を作って欲しい」という説明がありました。
それを主催者の方が韓国語に訳し、子どもたちはそれを聞いて各自作品に取りかかっていました。
「こうしなさい」「ああしなさい」という規制の中ではなく、どのような方法でも受け入れ、子どもたちそれぞれの作品の中に面白みを見つけては楽しむ野田さんの眼差しが印象的でした。
韓国の「美術学院(ミスルハグォン)」
最近の韓国では「美術学院」と呼ばれるお絵描き教室のようなところが至る所で見られます。韓国の多くのお母さん方は、幼い頃から子どもをよく通わせています。
美術学院の数は日本より圧倒的に多いのですが、絵に対する情熱というよりは、子どもを「どこかに預ける」感覚が強いようにも見受けられます。他の習い事より美術学院の場合は楽しめるところが強く、子どもも興味を示すようです。
しかし、絵を自由に描かせるというよりは、やはり「上手く描かせる」という描き方の指導が強いように感じられます(美術学院が目指しているのではなく、親がそれを求めているようです)。
それに見慣れていた為、野田さんの「どのように作っても良い」という各子どものやり方や作ったものを受け入れてくれる大らかさは、本来の絵の楽しさを教えてくれるものであったかと思います。これは日韓の美術教育の違いなのかどうか、興味深いところです。
ワークショップ作品②:「空から連想する絵を描こう 」
インスタレーション(設置)による鑑賞も
各自描いた絵を開催場所PublicAIR (パブリックエア) の敷地内の庭に飾り、風で揺れて動く作品を見て楽しむという、インスタレーション(設置)での鑑賞も行われました。
自身の作品を誇らしげに飾る子どもらの姿が見られました。また参加者の弟妹など特に幼い子どもらは、自身の作品が動いていくのを追いかけて遊んでいました。
動く彫刻作品ジャン・ティンゲリーにヒントを
野田さんは「以前ジャンティンゲリーの作品を見て、感銘を受けた事がある」と私に話されていました。
ジャンティンゲリーとは、スイスの有名な現代美術家です。特に彫刻においては、廃物を利用し、機械のように動く彫刻を作ったことが知られています。美術分野では「キネティック・アート(動く美術作品)」と呼ばれます。
ティンゲリーに感銘を受け、野田さんは、野田さんなりの動く彫刻作品を模索していると言います。
野田さんの構想メモ
ワークショップが始まる前に野田さんが構想していたものです。子どもたちが楽しそうに作り遊ぶ姿が目に浮かぶようですね。
ワークショップ作品③「大きな絵を描こう」
最後の回では、皆これまで以上に感情を発散!体全体を使って、伸び伸びと絵を描きました。この時の会場は他の回と違い、同じ町内の住民センターにて、広い部屋で行われました。
地元のTV局から取材も
ワークショップが行われていく中、地元・清州市のテレビ局CJBから取材も入り、ワークショップの様子や野田さんへのインタビューなどが放送されました。
野田さんの滞在期間スケジュール
主催者Public AIR(パブリックエア)の方から、今回の野田さんのワークショップ報告書を見せて頂きました。約1ヶ月、野田さんは韓国で活動しました。
「BASE Project _ 野田智之in Public AIR(韓国清州市)報告書」より
7/18 野田さん清州へ到着
7/18〜21 ワークショップの為の準備(ミーティング、材料購入等)
7/22 第1回 ワークショップ
- 時間:13~16時
- 場所:世宗特別自治市 鳥致院 水源地公園内 教育室
- 参加人数:13人
- 内容:「自分全身を描く→デザインする」高さ約1mの自分を自由に表現して描く。制作した作品は後日モーターで動かす。
7/23〜27 ワークショップの為の準備
7/28 第2回 ワークショップ
- 時間:10~12時
- 場所:清州市 Public AIR
- 参加人数:3人
- 内容:「靴を作ろう 」
- シェマ美術館、ドローイングハウス訪問
7/29 第3回 ワークショップ
- 時間:13~16時
- 場所:世宗特別自治市 鳥致院 水源地公園内 教育室
- 参加人数:6人
- 内容:「靴を作ろう 」
8/4 第4回 ワークショップ
- 時間:10~12時
- 場所:清州市 Public AIR
- 参加人数:16人
- 内容:「空から連想する絵を描こう 」
8/11 第5回 ワークショップ
- 時間:10~12時
- 場所:清州市 Public AIR
- 参加人数:10人
- 内容:「名前のオブジェを作ろう 」
8/18 第6回 ワークショップ
- 時間:10~12時
- 場所:清州市サジク2洞住民センター
- 参加人数:8人
- 内容:「大きな絵を描こう」
8/27 展示オープニング
- 時間:16時〜
- 場所:清州市サジク2洞ロードギャラリー
8/31 野田さん日本へ
まとめ
造形作家・野田智之さんによるアートワークショップ「ART BASE PROJECT」の全日程の様子、お分かり頂けたでしょうか。熱くもほのぼのとした日韓交流の姿でした。
ここで作られた数々の作品や巨大な絵は、現在、清州市内のロードギャラリーに展示されています。
後編では、ギャラリーの紹介や野田さんのワークショップへの気持ち、また「ART BASE PROJECT」が生まれたきっかけなどについてご紹介したいと思います。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
【保存版】韓国で働くには?日本人が韓国就職する方法を徹底解説
【韓国求人】日本人向けのおすすめ転職サイトまとめ!韓国での働き方や暮らしの関連情報も
あわせて読みたい