タイは仏教国であることは日本人でも多くの人が知っているでしょう。そして現在も王政が続いていることも、タイに行こうと思うような人なら、知っているかもしれません。
しかしタイ人にとって仏教や王室がどういった位置づけなのかについては、実際タイ人と付き合ってみなければわからないと思います。
わかりやすい例として、2016年のプミポン国王のご崩御を挙げつつ、できるだけ詳しく説明します。
仏教と王室は、タイにおいては軽々しく扱ってはいけない2大タブーともいえる事柄です。宗教に無関心な日本人には理解しづらいこともあるでしょうが、タイ人と付き合うに当たってはせめて知識としてでもとりいれておきましょう。
タイ人の僧侶・寺院に関するタブー
タイ人の90%以上が仏教徒とされており、彼らはとても信心深いです。現在も僧侶という職業が特別扱いされていることからもそのことはわかるでしょう。
街で僧侶に出会った人たちは手を合わせて拝み、お金などを奉じています。こうして徳を積むことで、現世や来世で幸せになれるのだそうです。
もちろん日本人はここまで倣う必要はありませんが、仏教や僧侶が特別に敬うべきものとされている以上、守らなければならないルールというものがあります。旅行や移住の際に、最低限気を付けるべきことはこの2つ!
- 寺院では露出の多い服装は控える
- 女性は僧侶に近寄らない
寺院は神聖なところですから、やはりそれなりの服装で訪れる必要があります。
暑いのでタンクトップやひざ丈くらいのスカートでタイを観光する女性も多いでしょうが、これらの服装は寺院巡りにはNG。もちろん男性も短パンなどはNGです。もし持っていなければ有料でズボンなどを貸してくれるので、それを利用しましょう。
そして僧侶は修行中の身にある男性です。そのため、修行の妨げとなる女性が彼らに近づくことは禁止されています。本当は触れなければいいそうですが、すれ違う際もある程度の距離を取るのが無難です。
仏教だけではない?祭壇を祀る“ピー”とは
タイには上の写真のような祭壇がいたるところに設置されていて、タイ人たちは通り過ぎるときにこれらを拝みます。タイでは日常的に見られるこの光景を、私はてっきり仏教的な習慣だと思っていたのですが違いました。
これらに祀られているのは、バラモン教の神様や精霊・幽霊といった超自然的なものすべてなのだそうです。そして精霊や幽霊などをまとめて“ピー”と呼ぶのだとか。
仏教も信仰し、日本でいえば八百万の神ともいえる“ピー”やバラモン教の神様まで祀るのですから、タイ人の信心深さは並大抵ではありませんね。
街中の祭壇だけでなく、お店には必ず神棚のような小さな祭壇がありますし、護符のようなものが貼られているのも普通に見られます。そして新しい建物を建てる時やお店を開くときには、ちゃんとお坊さんを呼んで何日も祈ってもらうのだそうです。
信心深いタイ人にはオカルトも厳禁!
私はタイ人が僧侶や祭壇を拝むのをあちらこちらで目にしながら、それをせいぜいゲン担ぎ程度のものかと思っていました。
しかしどうやら、タイ人が仏教もバラモン教もピーも祀るのは、助けてもらうためだけでなく、祟られないためでもあるようです。
タイ人は大人でも幽霊や怪談を本気で怖がります。冗談でも幽霊話はタブーで、寝る前に話すと本気で怒られることもあるのでやめましょう!
前に飼っていた猫が死んでしまったときに、夫の会社の運転手さんに車で運んでもらったのですが、「死体を見えないようにしてくれ」と頼まれたこともあります。
タイには設備の整った近代的な病院もたくさんあるのに、そこまで死を恐れるなんてなんだか不思議な感覚ですよね。そう思うと、タイの医療職の人たちは特別に先進的なエリートなのかもしれません。
外国人も他人ごとではない王室への“不敬罪”
仏教と並んでもう1つ、いや、もしかしたら仏教以上にタイ人の心に深く根差しているかもしれないものが、王室への敬意です。
タイのお札にはすべて前国王のプミポン王の顔が印刷されていますし、祭壇や神棚と同じようにあちらこちらで肖像画が飾られています。
そして映画館でも映画の上映前には国王を称える歌が流れるのです。また1日に2回、国王への敬礼をするという習慣もあります。
とはいえ外国人がこれらのことを強要されることはありません。しかし、タイ人にとって国王はそれだけ大事な存在であることを覚えておいてください。特にプミポン前国王は民衆からの支持が厚い王様でした。
そんな国王や王室のことを少しでも悪く言おうものなら、外国人でも容赦なく投獄される恐れがあります。もちろんネットの書き込みや写真への落書きも同様です。
日本人には馴染みがありませんが、これは“不敬罪”というれっきとした犯罪であり、そうでなくてもタイ人の心を傷つける行為です。最大のタブーとして心にとどめておきましょう。
仏教と王室への愛がわかるプミポン国王の葬儀
プミポン国王が特別に愛された国王であることは先ほど述べました。そんな国王の葬儀ですから、かなり大掛かりに行われました。
2016年10月にお亡くなりになってから、いわゆる喪中にあたる期間は1年間。
それだけの期間をかけて国王のためだけの火葬場を建設し、タイ人が大好きな2つの大きなお祭りであるソンクラン(水掛け祭り)やロイクラトン(水の精霊のお祭り)も自粛し、喪に服したのです。
そして翌年10月の葬儀では、国中の寺院や集会場に喪服を着た国民たちが長蛇の列をなして弔問に訪れました。
タイで10月といえばまだまだ暑く、気温は30度近いです。そんな中、真っ黒な正装で1時間近く並ぶというのは、そうできることではありませんよね。私も実際見て、しかも中には涙する人も多く、前国王が国民に深く深く愛されていたことを知りました。
そしてこの国は、王室と仏教への敬愛でまとまっているんだなあと実感しました。この2つは、本当にタイ人たちの心のよりどころなのです。
まとめ
私自身、タイが仏教国であり王政であることは知っていましたが、やはり実際にタイ人の生活をこの目で見るまでは、どこか軽くとらえていました。それくらいタイ人の仏教と王室への敬愛は、想像の範疇を超えたものでした。
プミポン国王の葬儀を目の当たりにした今では、冗談でも王室を茶化すようなことは言えません。
最初は形だけでもいいので、とにかくこの2つのタブーには慎重に接してください。そうしてタイ人と付き合ううち、彼らが仏教と王室を心から大事に思っていることがわかることでしょう。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)
あわせて読みたい