ぽっちゃりだけどモデル?アメリカでいまプラスサイズモデルが大注目!

藤井美穂 アメリカ生活・移住

こんにちは。アメリカで女優、プラスサイズモデルとして活動している藤井美穂です。

プラスサイズモデルという言葉、日本ではまだ耳にしたことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか?プラスサイズモデルとはアメリカ、ヨーロッパを中心に人気が出ているモデルの新たなジャンルです。

アメリカでは一般女性の平均サイズであるLL~3Lサイズのモデルたちのことを指します。より購買者に近い体系のモデルで、購買者にイメージしやすく、親しみやすいことから、徐々に人気に火が付いています。

プラスサイズモデルとは

ウエスト

なぜ今そこまでプラスサイズモデルが注目されているのでしょうか?先ほど述べたように購買者により近いということ。それと、「細い」が「美」と直結してしまっていた世の中への警鐘という面もあると、私は考えています。

特にファッション業界では過剰な体重制限をモデルたちに強要するということも珍しいことではありませんでした。

2016年にはブラジルのスーパーモデルのアナ・カロリーナ・レストンさんがモデル業での体重制限を通して、摂食障害を患い死去しました。亡くなったときに身長174センチに対して39キロしか体重がありませんでした。

このことがモデル業界にも影響を与え、その年、イタリアとスペインでは規定の肥満度指数(BMI値)に達しないモデルの起用を禁止。

2017年にフランスでは女性はヨーロッパサイズの34以上、男性は44以上であること、また肥満度指数が低すぎず、健康であると証明する医師の診断書がすべてのモデルに必要であるという法律が制定されました。

これに加えて、フォトショップでの体型の加工は細くすること、大きくすることどちらも禁止されました。

またこの3つの国とイギリスでは16歳以下のモデルを起用することも禁止されています。

なぜなら、成長期前に細かったモデルが成長期を経て、子供から大人の体へと成長するときの体型の変動で、細い体を失ってしまうかもしれないと、多くの精神的苦痛を感じたり、摂食障害を患ってしまうケースが多々あったからです。

この苦痛は子供たちには非常に大きな試練となってしまいます。

これはモデル業界に限った問題ではなく、一般の女性たちの間にも広がっています。日本では摂食障害を抱えている人は全国で2万6000人いると言われ、そのうち9割にあたる2万3000人が女性です。

アメリカでは女性で50万人、男性で10万人ほどの人が摂食障害を患っており、深刻な社会問題のひとつとなっています。この問題の背景にあるのが、先ほど上げた細すぎるモデルや女優などのメディアでの露出です。

非現実的な女性の体型が美しいという間違った考えを女性たちに植え付け、自らの体型を卑下し、自己肯定感を低下させてしまうことが、この摂食障害を患う人たちの増加に大きく影響しています。

そこで、「ボディポジティブ」という、「自らの体型を愛すること」を掲げるプラスサイズモデルが、新たな女性たちのロールモデルとして注目されるようになりました。

プラスサイズモデルの歴史

藤井美穂

最初のプラスサイズモデルの起用とプラスサイズブランドの誕生

ブランドのプラスサイズモデルが始めて起用されたのは1920年代に遡ります。

アメリカの婦人服オーナーであるレーン・ブライアントによる”Expectant Mothers and Newborn”(期待されてきた母親像と新たな母親像)と名づけられた服のブランドでした。

レーン・ブライアントはプラスサイズモデルの起用と同時に’For the Stout Women’(豊満な女性のための)という呼び名でアメリカンサイズの38から56インチのプラスサイズの婦人服を販売しました。

まだ時代はプラスサイズには早すぎたのか、売り上げはいまいちでレーン・ブライアントはそこで一度プラスサイズ婦人服の販売を中止しますが、1960年代には再開し、積極的にプラスサイズモデルを起用しました。

そして現在に至るまでレーン・ブライアントはプラスサイズ婦人服の販売を続けています。

プラスサイズモデル事務所の誕生

プラスサイズモデルがプロのモデルとして事務所に所属するようになったのは1970年代のことです。

1977年にマリー・ダッフィーによって設立された”Big Beauties Little Women”というモデル事務所は、初めてのプラスサイズモデル、そして背の低いモデルを扱うモデル事務所でした。

1978 年には”Ford Models”でもプラスサイズモデルの扱いを開始しました。

その後プラスサイズモデルのムーブメントはどんどん大きくなり、1980年代には”Big Beauties Little Women”が主催のプラスサイズモデル・コンテストも開催され、副賞は”It’s Me ”という雑誌の表紙を飾ることができるというものでした。

1980年代半ばにはトップクラスのプラスサイズモデルで一年で1万5000ドルから2万ドルほど稼ぐことができるほどプラスサイズモデルたちの存在は大きくなっていきました。

その後もプラスサイズモデルを扱うモデル事務所は増え、アメリカ以外にもカナダ、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、チェコ、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、南アフリカ、スペイン、スイス、オランダ、トルコ、イギリスなどの国々にもプラスサイズモデルの事務所があります。

プラスサイズモデルのメディアへの進出

1979年には“Big Beautiful Woman”というプラスサイズの女性のための最初のファッション雑誌が刊行されました。1995年には休刊となりましたが、今はオンラインマガジンとして復活しています。

1981年には先ほど紹介したレーン・ブライアントが”It’s Me”という雑誌を刊行しました。

またレーン・ブライアントは1995年に自らのブランドのセレブリティーを利用した宣伝キャンペーンを行い、クイーン・ラティーファ、ミア・タイラー、キャムリン・マンヘイム、アナ・ニコル・スミス、クリス・ノース等の有名人を広告に起用、またブランドのイメージキャラクターとしてキャンペーンイベントに出演させました。

2000年からは大規模なプラスサイズランジェリーのファッションショーを開催。

そのショーでレーン・ブライアントは”Cacique Intimates”というランジェリー部門を紹介したほか、コメディアンのロザンヌ・バーを起用し、ムーランルージュを連想させるバーレスクショーもキャットウォークで行いました。

この宣伝キャンペーンとファッションショーの成功によって、レーン・ブライアンとは2001年に3350万ドルの売り上げを記録しました。2003年までこのファッションショーは毎年開催されました。

また1997年には”VOGUE”のプラスサイズ版を目指した”MODE”という雑誌が刊行されました。この雑誌の最大の特徴はモデルの名前とセルフエスティーム(自己肯定感)を促す一言を写真に添えたことです。

これにより読者がモデルを「身近な、自分と似たような有名人」と感じさせることが目的でした。この後も多数のプラスサイズ雑誌がこれらの雑誌の後を追って刊行されました。

またテレビでは、アメリカ全土から次世代に活躍するモデルを選出するという、アメリカの人気番組の”America’s Next Top Model”という番組で、プラスサイズモデルを社会に広める一環として、審査員にプラスサイズモデルを採用しました。

すると、大手プラスサイズモデル事務所と番組が契約を結びました。毎シーズン審査員が代わるので、この番組からプラスサイズモデルのコートニー・コールズやダイアン・ヘルナンデス、ウィットニー・トンプソンらがお茶の間の有名人となりました。

またインターネットの普及によってプラスサイズムーブメントはさらに勢いを増して、プラスサイズモデルも市民権を得ていきました。プラスサイズブランドのイメージキャラクターに有名人たちが起用されることも珍しくなくなりました。

またアメリカ版VOGUEもプラスサイズモデルを積極的に採用するようになり、2012年の3月号の表紙には歌手のアデルがプラスサイズモデルとして始めてVOGUEの表紙を飾りました

またアメリカ版Glamourは今後もっとプラスサイズモデルを多く採用していくという声明を掲げました。

人気のプラスサイズモデル

モデル

アシュリー・グラハム

アメリカ、ネブラスカ州出身のプラスサイズモデル。テレビや雑誌などで最も露出の多い、プラスサイズモデル界のリーダー的存在です。

歴史が長く、表紙を飾ればブレイク間違い無しといわれる雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」の水着特集でプラスサイズモデルとして初めて採用されたり、先ほど紹介した、”America’s Next Top Model”でも審査員を務めました。

またありのままの自分の体型を愛するというメッセージを広める、ボディアクティビストとしても活動し、人気のスピーチイベントの”TED”でも講演を行い、彼女の自然な美を讃えるメッセージは世界に広がっています。

12歳のときショッピングモールでスカウトされモデル業を開始したアシュリー。

始めは「モデルをやっている。」と誰かに言えば怪訝な顔をされ、「プラスサイズの。」といって初めて納得されることに違和感があり、人に自分の職業を言いたくなかったそう。

今でも「プラスサイズモデル」という名称よりも「カーブモデル」という「曲線を持つモデル」という意味の言葉を好んでいるそうです。

そんな彼女を支えてきたのは彼女の母親。他のモデルとは違うアシュリーを、ありのままの自分を愛するように育てました。

今のアシュリーの肯定感や自信は彼女の母親が与えたものとも言えるでしょう。そんな母親と二人で仲良く水着で写った写真もインスタグラムに投稿されています。

また自らのランジェリーブランドも立ち上げ、そこでも成功を納めているほか、フォーエバー21やスイムスーツ・フォー・オールといったブランドとも契約を結んでいます。

イスクラ・ローレンス

イギリス出身のプラスサイズモデルです。もともとモデルとして活躍していましたが、体型が原因でモデル事務所から解雇されてしまったという経験もしています。

しかしその体型を武器にして活躍し、アメリカンイーグル系列のブランド“Aerie”のイメージモデルや、国際摂食障害協会のアンバサダーとしても活動しています。

またアメリカの女性向け雑誌”self”でコラムを執筆するほか、自身では、すべての肌の色、体型の女性を美しく魅力的だというメッセージを発信するウェブサイト”Runway Riot”を運営しています。

フォトショップなどによる写真の編集にも積極的に反対していて、300万人以上がフォローする自らのインスタグラムにも二段腹の写真を加工なしで投稿しています。

それは自らのモデルとしての経験からきているもののようです。フォトショップによって、セルライトは消えてなくなり、本物よりほっそりとしているウエストの写真を見て、直された部分は自分の欠点であるかのように感じたそう。

また、プラスサイズモデルとして働きだした後もプラスサイズにしては小さすぎると、体を大きく見せるパッドをつけなければいけないこともあったそうです。

そんな誰かの理想にならなければいけないモデル業界で、イスクラは自分らしくいることの大切さを学び、それが多くの人の共感を呼び、今の彼女の成功につながっているのです。

ナオミ・シマダ

日本人の父とオランダ人の母を持つ、日本出身、スペイン育ちのナオミ。現在はニューヨークとロンドンに拠点を置いて活動しています。

屈託のない笑顔がとても印象的なモデルです。13歳からモデルをはじめ、絶食などの過酷なダイエットの末、モデル業を一度休業。22歳のときにプラスサイズモデルとしての活動を開始しました。

プラスサイズモデルの活動のほかに、ドキュメンタリー映画の撮影にも力を入れています。

タブリア・メジャーズ

アメリカ、ニューヨーク出身のタブリア。

下着ブランドのヴィクトリアズシークレットのモデルの写真を再現した、ヴィクトリアズシークレットがいかに細身のモデルしか採用してこなかったかを批判するインスタグラムへの投稿が反響を呼び、60万ものいいねが押されました。

また今年、アシュリー・グラハムも採用された「スポーツイラストレイテッド」の水着特集にも抜擢されました。フォーエバー21のモデルも勤めています。

また「The thick」(豊満な)と名づけられたポッドキャストのパーソナリティも勤め、世界にボディポジティブの精神を発信しています。

おすすめのプラスサイズブランド

プラスサイズブランド

普通の服のブランドでプラスサイズを扱っているブランドと、プラスサイズ専門のブランドとがあります。今回はどちらも紹介します。

Fashion Nova

普通のサイズからプラスサイズまで同じ服を幅広いサイズで取り揃えているこのブランド。ほぼすべての種類の服にプラスサイズがあります。

プラスサイズのセクションでは実際にプラスサイズモデルが着ている写真を見ることができるので、自分にどうフィットするのかイメージしやすいです。

かっこいい、セクシー系の服が得意で、ワンピースやオールインワンの品揃えが豊富です。先ほど紹介したタブリア・メジャースもモデルとしてサイトに登場しています。

Curvy Sense

こちらはプラスサイズ専門のブランド。プラスサイズ専門のブランドはどうしてもシンプルなデザインになりすぎたり、若い子が着るデザインではないことも多いのですが、このブランドは凝ったかわいいデザインが多いのが特徴です。

かわいい系からセクシー系まで取り揃えています。またプラスサイズはお値段が張るものも多いのですが、こちらは良心価格です。

Swimsuits for All

“すべての人のための水着”と銘打った、豊富なサイズ展開が売りの水着ブランドです。アシュリー・グラハムもメインモデルを勤めていて、彼女プロデュースの水着は大人気で入手困難になるほど。

水着専門ブランドだけあり、さまざまな種類の水着を取り揃えています。上下違うサイズ注文ができるので、自分にぴったりのサイズのビキニを注文できます。

プラスサイズモデルの私の活動

藤井美穂

私、藤井美穂もプラスサイズモデルとして活動しています。日本では自分の体型に全く自信が持てず、ダイエットにトライしては挫折し、とにかく体型を隠す服を着る毎日でした。

アメリカに来てからプラスサイズモデルの存在を知り、インスタグラムに自らの写真を投稿することを始めました。

そこから、タブリア・メジャーも出演していた、人気のYoutubeチャンネルの“All Good Things”に女優、プラスサイズモデルとして紹介していただき、自分のプラスサイズ観や経験などを話す機会をいただきました。

その後も、Fashion Nova、 Swimsuits for All等のブランドともコラボレーションしていただくようになり、インスタグラムに写真を投稿し始めて一年で5万人ものフォロワーの方に見ていただけるようになりました。

現在は6万人までフォロワーを増やしています。

このプラスサイズモデルの活動は私の大きな自信となり、自分の体型があまり好きではなかった私ですが、いまでは自分らしい自分を好きになれるようになりました。

アメリカではこの文化が大きく広がっていて、多くの女性たちがプラスサイズモデルたちの活躍に勇気をもらっています。このポジティブに考える文化を日本でも浸透させたい、というのが今の私の目標です。

まとめ

藤井美穂

以上がアメリカで大きくなってきているプラスサイズ業界の現状です。日本を含むアジアではこのムーブメントはまだまだ下火ですが、私はすぐにでも輸入されて、大きい業界になると予想しています。

日本でも渡辺直美さんのプラスサイズブランドや、プラスサイズ専門雑誌が発売されるなど、じわじわと盛り上がってきています。

この波に乗り遅れないように、プラスサイズモデルたちもぜひチェックしてみてください。私のインスタグラムもぜひよろしくお願いします。

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