アメリカは日本のような国民健康保険制度がなく、医療費も高いことで有名です。福利厚生のしっかりした勤め先であれば会社を通して医療保険に入れますが、そうでない場合は自費で加入するしかありません。
月々の保険料も日本に比べて高額なため、無保険で過ごしている人もいるのが実情だと思います。しかし、そのような状態で病気にでもなれば大変です。
ワシントンDCの駐在員家庭の一員である私が無保険状態で妊娠した体験を通して、医療保険のない生活や保険への加入方法を紹介します。
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アメリカ駐在員には会社からの医療保険の用意はない
現地採用で働いている方からすると信じられないと思いますが、日本の企業はアメリカに社員を派遣しても現地の医療保険に加入させないところも多いです。
会社を通して加入させてもらえるのは、緊急事態の際の補償をしてくれる「海外赴任保険」がほとんどで、これは健康診断や妊娠出産などには適用されません。
ただし、日本の企業でも医療保険に加入してくれるところもあるほか、保険代ではなく実際にかかった医療費を補助するなど、会社によって様々です。
日本からアメリカへの駐在が決まった時は、日本にいるうちに医療費や医療保険についてのサポートがあるかどうか確認することをおすすめします。
アメリカで無保険のまま生活
駐在員家庭である我が家の場合、医療費や医療保険に関する会社からのサポートは全くありませんでした。
医療保険の一般的な保険料は1人あたり月200~500ドル(約2万2200~5万5500円)ほどと高額なため、最初の数年間は海外赴任保険のみでアメリカ生活を送っていました。周囲には同じ状況の駐在員家庭が多かったのも事実です。
子どものための必要不可欠な医療費も高額
インフルエンザと子どもの予防接種は、安価で受けられるコストコ(Costco)や無料で打ってもらえる保健所(Health Department)を利用していました。
少し体調が悪い時は日本から持ち込んだ常備薬を服用し、自宅で安静にするしかありませんでした。
子どもの健康診断だけは病院で受けさせていましたが、保険がないため全額自己負担で、毎回100~200ドル(約1万1100~2万2200円)かかっていました。
一度間違えて小児科で予防接種を受けさせてしまった時は、1本150ドル(約1万6650円)請求されました。
アメリカで妊娠、無保険妊婦の医療費対策
渡米して数年間、医療保険なしで生活している中で妊娠していることがわかり、以下の方法で費用を抑えようと考えました。
医療保険(オバマケア)に加入する
アメリカでは日本と違い、妊婦健診にも出産にも医療保険が適用されます。会社で用意してもらえる医療保険がないので、私が加入できたのは政府系医療保険、いわゆるオバマケア保険だけでした。
妊娠中でも新規加入できますが、政府系の保険に加入できる期間は毎年11~12月または翌1月(オープン・エンロールメント)と決められています。オープン・エンロールメントで加入した保険が有効になるのは1月からです。
私の場合、出産予定が春だったので妊娠後期以降に保険が適用されることになりました。一番費用がかかるのは出産なので、加入してしまえば一安心です。
なお、加入方法については後述します。
病院に値引き交渉する
妊娠期間の前半は医療保険に加入できず、健診費などを自己負担することになりました。
アメリカでは病院によって診察代が違うので、なるべく安いところを探し、可能であれば値引き交渉をします。
通える範囲で産婦人科(OB/GYN)を絞り込み、自己負担金額を問い合わせて値引き交渉した結果、1回あたりの健診費が146ドル(約1万6200円)になる病院を選びました。
割引されても日本に比べると高いですが、さらに高額だったのが血液検査などの検査費用です。1回100~400ドル(約11,100~44,400円)かかり、最終的に自費で支払った妊婦健診費は合計1,600ドル(約17万7600円)でした。
アメリカの医療保険(オバマケア)の選び方
保険会社を選ぶ
アメリカの医療保険には「ネットワーク」というシステムがあり、基本的に保険で治療費が補償されるのはネットワークに登録されている医師や病院だけになります。ネットワーク内にどのような医師や病院を持つかは保険会社によって違います。
私の住むワシントンDCでは個人加入を受け付けている保険会社が2~3社しかなかったのですが、その中からかかりたい病院が参加しているネットワークを持つ会社を選びました。
保険のタイプを選ぶ
医療保険には大きく分けて、かかりつけ医を決めて利用するHMO、自由に医師や病院を選んでかかるPPOとEPOの3つのタイプがあります。
- HMO:安価だが、ネットワーク外の医療機関にかかった場合は全くお金を出してもらえない
- PPO:毎月の保険料は高くなるものの、ネットワークがHMOより広く、さらにネットワーク外の医療機関にかかってもいくらかカバーしてもらえる
- EPO:保険料も仕組みもHMOとPPOの中間のようなタイプで、自由に医療機関を選べるが、ネットワーク外のところに行くとHMOと同じくカバーしてもらえない
出産を控えていた私はPPOを選びました。
妊娠出産に関係する分娩室や個室、健診担当医、分娩担当医、麻酔医、検査機関など、一つの治療でも関わる医療機関がそれぞれ個別にネットワークに入っているので、保険適用外の機関にかかってしまった場合の請求費が怖かったからです。PPOでなるべくカバーしてもらいたいと考えました。
保険のランクを選ぶ
保険会社とタイプを選んだら、その中からさらに保険のランクを選びます。
オバマケアの場合、下からブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの4種類です。ランクが上になるほど保険料も上がりますが、その分、診療を受けた時の自己負担額が減ります。
私は予定されている妊婦健診費と分娩費と保険料を算出し、合計金額が一番安くなったプラチナを選びました。保険料は月440ドル(約4万8840円)と高いですが、自己負担額は少なくなります。
アメリカの医療保険(オバマケア)に個人で加入する方法
私はインターネットを通して申し込みました。オープン・エンロールメントの期間になると、政府や州が提供する保険加入サイトがオープンします。
州のサイトを通して加入するか、直接保険会社へ申し込むかは地域によって異なるようで、私の住むワシントンDCの場合はDCのサイト経由でした。
なお、アメリカに納税していない駐在員家庭なので私は利用しませんでしたが、オバマケアで定められた保険料の補助を利用したい場合もこの政府系のサイト経由で申し込みます。
月々の保険料をサポートしてくれる補助額は予定される年収によって違うため、「同じ保険に申し込んでも人によって保険料が違う」となり、アメリカの保険事情をさらに複雑にしています。
- 保険購入サイト(政府):https://www.healthcare.gov/
サイト上での手続き
保険を選択し、一般の通販サイトのようにカートに入れて手続きを進めていきます。その際、住所や職業、健康状態などの個人情報を入力していきます。
駐在員とその家族の場合、持っていないソーシャルセキュリティー番号(SSN)の入力は不要ですが、ステータスを「Immigrant」にしてパスポートのコピーを提出する必要があります。
支払いをすればサービスが受けられる
申請が保険会社に届くと、保険会社から初月分(翌年1月分)の保険料の請求書が郵送されてきます。支払いはクレジットカードや口座引き落としを選択できます。
保険加入者向けのメンバーサイトにも入れるようになり、そこで細かい設定や契約確認ができるので便利です。
支払いが済むと保険証が郵送されてきて契約は完了です。保険の有効期間に入れば新しい保険証を持って医療機関にかかることができます。
アメリカでの出産後もカバー、医療保険に入っていて良かった
産後にかけて、やはり医療保険に入っていて良かったと実感しました。
加入後は健診での自己負担額が0になりました。また、分娩費用に6,173ドル(約68万5200円)請求されましたが、これも保険でカバーされ、自費で支払ったのはベッド代の500ドル(約5万5500円)だけでした。
さらに、出産後すぐに子どもがNICU(新生児集中治療室)に入院しました。1週間入院して病院から提示されたのは21,528ドル(約238万9600円)です。
金額が提示された後、保険会社から自己負担額の連絡が来るまで生きた心地がしませんでしたが、新生児の治療にも親の保険が適用されて自己負担額は0円でした。保険に入っていて本当に良かったです。
アメリカの医療保険(オバマケア)の注意点
システムは毎年変わる
2019年現在、トランプ政権がオバマケア廃止に向けて動いていることもあり、加入の時期や方法などシステムが毎年少しずつ変わっています。去年まで適用されていたルールが変わったりするので、情報収集に気を付けた方が良いでしょう。
医療費は複雑に決まる
同じ治療でも病院によって自由に料金を設定しているので、どこにかかるかで治療費は異なります。また、保険でカバーされる金額も保険会社とプランによって違います。
まとめ~自分に合う保険を選びいざという時の備えを
健康状態が良い時は意識していませんでしたが、いざ自分が病院にかかる立場になると医療保険は必要だと実感しました。
地域ごとに保険会社が違ったり、保険のタイプやプランも複数あったりして選ぶのは大変ですが、例えば医療機関にかかる回数が多いなら、ランクの高い保険を選んだ方が合計金額は少なくて済みます。
条件を一つ一つ絞り込み、自分の健康状態と照らし合わせて選ぶことをおすすめします。
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