学生の頃には次々新作を楽しんでいた映画ですが、最近は育児に追われてゆっくり観賞する時間がありません。やっと合間を見つけても、じっくり観賞できないなら、と以前観た事のある映画を楽しむ様になりました。
中でもドイツに滞在し、ドイツ人との交流が多くなると面白味が増す映画があります。できたら渡航前に観賞して、滞在後に再度観賞すると楽しめる作品を、見るときに注意したいポイントも併せて解説します。
今回はドイツ滞在予定がある人、滞在中の人に見て欲しい映画5選をご紹介いたします。
ゾネンアレー(サンアレー)Sonnenallee
- 製作:1999年
- 監督:レアンダー・ハウスマン
東ドイツ時代の青年達の青春を描いた映画です。
コメディ要素もふんだんにあり、日本で初めて見た時も笑って見ていました。が、東ドイツでの「壁の内側の生活」を見事に再現しているらしく、東ドイツ出身の40代以上の人は一緒に見ると「え?ここで?」という場面で爆笑したりします。
舞台はベルリンですが、同じ東ドイツであるライプツィヒで生活していても、十二分に楽しめます。東ドイツ時代の家具の多機能性や、周囲にある程度聞こえるヒソヒソ話など、見ていると思わず「あるあるあるある!」と頷いてしまいます。
- SonnenalleeのFacebookページ:https://www.facebook.com/
- 監督であるレアンダー・ハウスマンの紹介記事:http://www.newsdigest.de/
カリガリ博士 Das Cabinet des Dr. Caligari
- 製作:1920年
- 監督:ローベルト・ヴィーネ
1920年代から30年代、映画がまだ白黒だった時代の映画です。当時ドイツ映画は世界の先駆でした。なかでもカリガリ博士のストーリーの奇異性や舞台芸術はだれもを唸らせるものがあります。
私は初めてこの映画を観た時に、白黒映画に慣れていなかったのもあり、ストーリーが飲み込めず続けて繰り返し観た事を覚えています。
ただ奇抜な作品、というだけでなく、裏の裏の裏まで考えているドイツ人の性格が顕著に現れている作品でもあります。
日本では「石橋を叩いて渡る」といいますが、ドイツでは「石橋を鉄材でさらに補強してから渡る」という印象があります。
例えば三連休前や嵐の警報があったときなど、スーパーで缶詰や乾物などの保存食品が売り切れる場合があります。いやいや大げさでは?と思いますが、「念のため」を考慮するのがドイツ人の性格です。
「念のため」を考慮する国民性があった故に、カリガリ博士の結末にあるどんでん返しが、ドイツ人以外には驚きの上を行く印象深い名作になっているのでしょう。
メトロポリス Metropolis
- 製作:1927年
- 監督:フリッツ・ラング
メトロポリスが制作されたのは日本の大正15年です。当時の資本主義と共産主義の戦いを描いた、おそらく世界発のSF映画とも言える作品です。
学生の時には何度も繰り返し見ては、これがフルカラーだったら!と密かに嘆いていました。この映画の舞台設定や衣装の魅力は現在の映画では見られないものばかりです。
ドイツのデザインは、一言で表すと「シンプルかつ実用的」がベースにあります。
イタリア、フランスとスタイリッシュな国に挟まれているのになぜこうなった?とサンダルなのに白い靴下を延ばして履くドイツ人を見て驚愕しますが、ドイツ人の優先順位上位には常に「実用性」があります。
ドイツに移住して、数年後に再度この映画を観賞したところ、少し見方が変わった事に気付きました。
メトロポリスでは、舞台も衣装もドイツ人特有の「実用的」なものが、映画の為に無理やり装飾されている印象です。色々不自然でありつつも心をざわつかせるものがあります。
表情であまり感情を表さないドイツ人と言われますが、さすがに住んでいると細かな表情の変化にも気付くようになります。
活動劇なので化粧やリアクションが大げさなメトロポリスですが、いかにもドイツ人!というドヤ顔が見られるので、ドイツ滞在をしたことのある人には是非見て欲しい映画です。
グッバイ、レーニン! Good Bye, Lenin!
- 製作:2003年
- 監督:ヴォルフガング・ベッカー
世界的に大ヒットした近年のドイツ映画なので、知っている人も多い「グッバイ、レーニン」です。コメディ映画ですが、感動深い要素もあり、魅了満載の映画です。日本でも映画館で公開されていました。
映画自体はとても楽しく観賞しましたが、2003年に見た当時、こんな若者が母親の為にここまで努力をするのだろうか?男子ってもっと面倒くさがりやなのでは?照れ屋で「お母さんの為に!」とかなかなかしないのでは?と思っていました。
ドイツ人の友人が増えるたびにこれらの疑問はどんどん減っていき、「ドイツ人男子はお母さんの為に思い切って全力でやってみせる」という確信が芽生えました。
イタリアなどラテン系の国の「ママン」ラブとはまた違い、ドイツ人家庭の結束の強さは別の形を取って表されることが多くあります。
例えば、先日、主人の祖父の弟の奥さんが80歳の誕生日会を開いたのですが、参加者がなんと70名を超えていました。そしてなるべく招待した全員が来れる様にと、招待状が届いたのが8カ月前でした。
普段はあっさりしていて、抱きついて再会を喜ぶ!なんてことはしませんが、「家族」のくくりが広く、手が行き届くようにしっかりと堅実に守られてる感があります。
ドイツ人は大方、それぞれが「自分が良い」と思った事に忠実に生きているので、映画の中のような細かい諍いもありますが、「できることはやる」「やるなら全力で」というドイツ人の性格が面白く、そして分かりやすく描かれています。
パフューム ある人殺しの物語 Das Parfum – Die Geschichte eines Mörders
- 製作:2006年
- 監督:トム・ティクヴァ
世界で大々的に公開され、話題にもなった映画です。映画は英語で収録されており、スペイン、フランスとの共同製作の作品なので、ドイツ色はあまり強くありません。
しかし、この映画の原作の本「Das Parfum – Die Geschichte eines Mörders」(香水 ある人殺しの物語)は、ドイツ人作家のパトリック・ジュースキントの小説です。
この映画は監督もドイツ人で、ドイツ映画で世界的に大ヒットしたラン・ローラ・ラン(Lola rennt/1998)の監督としても知られています。
世界公開を意識して製作されたことが容易にうかがえる本作品ですが、やはりドイツの風がびゅうびゅうと吹き込んでいます。
まず、舞台設定の徹底ぶりやエキストラの多さなど、映画製作に対するこだわりは、前述したメトロポリスを思い出させます。
1度目の観賞ではストーリーを追う事であまり気に留めていなかったのですが、舞台芸術のこだわりようには息を飲むものがあります。
大阪出身の人と沖縄出身の人と東京出身の人と、日本人なら少し話せば、アクセントや雰囲気からすぐに大まかな出身地の特徴が見分けられます。
同じ様に、ヨーロッパに数年滞在すると、「外国人」の枠でくくられていたヨーロッパ人が「ドイツ人」「フランス人」「イタリア人」「オーストラリア人」などの骨格や体形、顔の特徴の違いが分かってきます。
各国の人と、より交流が深まるにつれ、地域性のしぐさや言い回し英語の文法の間違い方などの国別の共通点が分かる様になり、出身国による線引きがくっきりされていきます。
この映画から「ドイツ!」というポイントを多く感じる事があったら、すっかりドイツに馴染んだ証拠です!
まとめ
映画の楽しみ方は人それぞれです。ストーリーは勿論のこと、好きな俳優や興味のある土地で撮影されたものであったり、なにかしら「好きな」要素があると自ずと観賞する機会が訪れます。
ドイツ語の勉強のためにももちろん役立ちますが、それ以上に映画の持つその世界観に引き込まれることによって異文化体験が楽しめます。
出張や学業などでどうしてもドイツに行かなければならない時でも、希望や期待を持ってドイツに渡航する場合でも、映画で気持ちと体を少しドイツ慣れさせるのも一つの手です。
ドイツに滞在中の人も、自分のドイツ度の測定に、是非上記5作品を観賞してみて下さいね。
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