ヨーロッパ就職といえば、なんとなく難しそうなイメージがあるのではないでしょうか。特に、英語圏ではないドイツとなると、ハードルも高そうな気がしますよね。
確かに、東南アジアに比べると、ヨーロッパで労働ビザを取得して仕事を得るのは難しいかもしれません。でも実は、ドイツは他のヨーロッパ諸国に比べて外国人が働きやすい国なのです。実際、私もドイツで働いています。
ここでは、ドイツで就職した他の日本人の声もご紹介しながら、ドイツで働くために必要な情報をお届けします。
- ドイツの就職状況・特徴を知る
- ドイツ就職のメリットだけでなくデメリットも知る
- ドイツ語もしくは英語を勉強し幅を広げる
- ドイツで働く自分をイメージする
- 転職サイトを利用する
【海外求人をチェックしたい方はこちら】
- LHH転職エージェント(全世界から幅広く求人を探す)
- リクルートエージェント(未経験から幅広く求人を探す)
- JAC Recruitment(海外勤務・外資系を狙う年収600万円以上の方向け)
ドイツで働く魅力とは
ワークライフバランスの充実
グローバルシチズンシップが根付く環境はドイツで働く上でも魅力的です。日本の抱える高齢社会、長時間労働、食料廃棄といった社会課題に対して、ドイツは積極的に取り組んできました。
働き方においては、短時間労働と残業禁止により高い生産性と国民のワークライフバランスを実現させ、教育においては公立教育機関を無償化することで、人々の学び直しを加速させています。
循環型社会の実現にも力をいれており、環境負荷の小さい産業開発に最新技術開発を応用する試みも盛んです。
こうした取り組みは、「国籍に関わらず、ドイツに住む人々の手でより良い社会を築こう」という高い市民性を醸成しています。
マルチカルチャー
世界中から移民を受け入れてきたドイツが体現するマルチカルチャーがあげられます。
OECDの2018年度統計をみると、ドイツの総人口に対する外国人割合は12.4%ですが、15歳から64歳の労働人口に占める外国籍人材は69.5%となっています。
このことからも、多様なメンバーと協働する機会は多いことが読み取れます。首都のベルリンは、ドイツの中でも特にグローバルな街と言われています。
IoTやヘルスケア分野をリードする都市として世界中から起業家を集め、イノベーションの機運はファッションや音楽にも影響し、先鋭的なベルリンカルチャーに憧れる欧州各国の若者を呼び寄せています。
様々な文化が共生する社会は人々の創造性を刺激します。
ドイツで働くデメリットとは
サービスの不便さ
デメリットとしては、サービスの不便さ/質の悪さがあげられます。
ドイツ人は勤勉だとよく評されますが、生産性を重視していても必ずしも厳格ではないように思います。
公的なサービスに限らず、民間のサービスにおいても不便さを感じることは多いです。例えば、交通機関の遅れは日常茶飯事ですし、誰も文句はいいません。
対面サービスでも、飲食をしながら接客されることも普通にあります。さらに、ワークライフバランスを重視する社会だからこそ、週末ともなれば多くの店が閉まります(都市部の銀行だけは24時間営業です)。
こうした、日本のサービスに対する当たり前が通用しないことを覚悟しておけば、ストレスなく生活することができます。
日本人がドイツで働くことを選ぶ理由とは?
世界に数ある国の中でも、就職先としてドイツを選ぶ理由とは何なのでしょうか。ドイツで就職した日本人の場合を見てみましょう。
ドイツを選んだ理由
- 都市ごとに異なる文化がある
- 歴史ある街並み
- ドイツ人が親切
- 芸術家として生きていきたい
- 日系企業が数多く進出している
- ワーキングホリデービザの取得が容易
- ベルリンは英語が話せれば生活できると聞いた
このように、ドイツには様々な魅力やメリットがあります。
そして、日本での就職内定を辞退してまでドイツに渡った人、人生をリセットする場所としてドイツを選んだ人など、その背景にある事情もまた様々です。
以下の記事でそれぞれのストーリーを読むことができます。先輩たちの経験は、迷っているあなたの背中を押してくれるはずですよ。
ドイツで日本人が仕事を見つけやすい都市
ドイツは州ごとに違った特色を持つ国です。日本人が多く住んでいるのは、
などの都市です。
中でもデュッセルドルフは「Japan Town」と言われるほどで、外務省の統計によれば、ヨーロッパではロンドン、パリに続いて3番目に日本人が多く住んでいます(2017年10月1日現在)。日系企業が集まっていることから、働く日本人も自然と多くなっています。
一方、ミュンヘンは国際色が強く、大学に通う日本人やビジネスパーソンが多く住んでいます。
都市別求人傾向
日本人向けの求人が見つかりやすいのは、先述のデュッセルドルフやフランクフルトなどです。特にこの2つの都市は現地採用を行っている日系企業が多いです。
首都ベルリンは、フリーランスやスタートアップ、起業したいという方には向いていますが、大きな企業や日系企業に就職するのは難しいでしょう。
ドイツ系またはヨーロッパ系の企業で働きたいという方、英語やドイツ語に堪能な方は、どこの都市でも仕事は見つかりやすいです。
ミュンヘン
ミュンヘンは、ドイツ南部バイエルン州最大の都市。ドイツ国内でも大きな都市で、ベルリン、ハンブルクに次いでドイツでは3番目に大きな都市です。
多国籍企業の拠点も数多くあり、一般事務、営業、エンジニアなどの仕事があります。そのほか、観光都市でもあるため、ツアーガイドなどの観光業に関する求人やレストランの求人も多いです
ドイツで働くために必要な能力
語学力
ドイツでは、必ずドイツ語ができなくては就職できないというわけではありません。
特に私の住むベルリンはインターナショナルな都市なので、英語ができれば就職先を見つけることはそれほど難しくないでしょう。
ただ、日本語しかできない人が就職できるかどうかとなると、なかなか厳しいのが現状です。たまに日本語のみでも応募できる求人が出るので、根気よく探すことが必要になります。
スキル・資格
ビザ以外にも資格の証明や取得が求められることがあります。
対象職業の代表的な例だと、医師や看護師といった医療福祉関連(ソーシャルワーカーや介護士なども対象)です。
このほか、保育士や教員といった国家資格取得者はドイツの連邦教育・研究省が管轄する職業資格承認制度(berufliche Anerkennung)を利用して資格の証明申請が可能です。
就労する地域により、追加で講習や資格取得を課せられることがあります。また、保育士等の職業によってはドイツ語の語学力証明が求められるため、申請要件は必ず確認をしましょう。
このほか、ワーキングホリデー中のアルバイトであっても、飲食店で働く場合は最寄りの保健所(Gesundheitsamt)で講習受講が義務付けられています。
ドイツで就職するためのビザ
海外で働くには、就労可能なビザの取得が必須。ドイツでも同様です。
ドイツの場合、日本国籍を持つ人は、原則として入国から3カ月はノービザ(パスポートのみ)で滞在でき、その間に現地でビザを申請することになります。
取得サポートの有無を確認
企業に就職する場合は入社前後のタイミングで就労ビザを申請します。
日系企業であれば、基本的にビザ取得サポートがあります。外資系企業だと、必要資料を会社に用意してもらい個人でビザを申請することもあるので、面接のタイミングでビザ取得について「必ず」聞いておくようにしましょう。
また一部、ビザを出さずに働かせる企業もありますが、違法労働なので絶対に従わないようにしましょう。こうした企業は、信頼できる転職エージェントを使うことで避けることができます。
ビザがなくても仕事を探せる
ドイツ以外のヨーロッパの国だと、やってみたいと思う仕事や好待遇の求人があったとしても、「就労可能なビザ保持者のみ」と記載されていることが多いです。
つまり、すでに働けるビザを持っている人しか応募することができないのです。
その点、ドイツではビザ保持を条件にしている求人が少ないのが特徴です。もちろん、すべての求人がそうとは限りませんが、内定後に初めて就労ビザを取得している人が多くいます。
なお、ドイツの場合、制限はありますがワーキングホリデービザや大学生ビザ、フリーランスビザなどでも働くことができます。
ドイツでの仕事を見つけるには
1. 日本の転職エージェントを利用する
どんなに好きな国、憧れの国であっても、やはり海外就職には不安が付きものです。
- どんな仕事があるの?
- 給料はいくらなの?
- 語学力はどれくらい必要なの?
- ビザのサポートはあるの?
このような疑問や不安を解消しながら就職活動を進めていくためには、インターネット上で上手に転職サービス、特に日本の大手転職エージェントを利用することがおすすめです。
エージェントを使うメリット
日本語で気軽に相談できるので、安心して仕事を探すことができます。また、大手エージェントの扱う求人はしっかりしたものが多く、観光ビザで働かせるような違法な企業を避けられるのもメリットです。
そして何より、転職エージェントの利用は無料です。
ドイツ就職においては、とにかく「情報を集めること」が重要になります。経験豊富な日本のエージェントを使えば、効率よく就職活動を進めることができます。
以下に、おすすめのエージェントをご紹介します。
欧米に強い!LHH転職エージェント(アデコ)
世界展開しているエージェントで、人材業界では世界No.1のシェアといわれています。世界中に拠点があり、その数は5,000以上にも及びます。
外資系の案件も多く、たくさんの非公開求人を扱っています。世界的に有名なエージェントなので、有名外資企業の中にはここにしか求人を出さないと決めているところもあるほどです。
リクルートエージェント
転職といえばリクルートエージェントが定番です。非公開求人などを多数持っており、海外求人数が一般の転職エージェントの数倍あるため、海外就職を考えている方はまず登録してみましょう。
他の転職エージェント(LHH転職エージェント)と併用し、比較しながら仕事探しをするのが上手な使い方です。
JAC Recruitment
ドイツの駐在案件などハイクラス求人を探すなら外すことができないのがJAC Recruitment。国内だけでなく、海外にも複数の拠点を持つ転職エージェントです。
海外駐在から現地採用まで様々な求人があり、外資系企業案件を得意としているのも特徴。登録すると非公開の求人を紹介してもらうことができます。
対象は、30代以上で現在の年収が600万円以上の方です。海外就職、特に海外駐在員を希望するならぜひ登録しておきましょう。
2. 日本語のローカルサイトを利用する
日系企業の求人や日本人に関わる仕事を探す場合は、以下の地域サイトも役立ちます。いずれも求人専門のサイトではありませんが、求人広告が出ていることが多いです。
ただし、すでにドイツに住んでいる人向けなので、日本から応募するのは難しいかもしれません。
MixBクラシファイド
飲食店などの求人が多めです。家探しや個人間での売買、習い事の教室検索などにも使えます。
ドイツニュースダイジェスト
様々なニュースを日々配信しているので、職探し以外にもドイツの今を知るために使えて便利です。
3. ドイツ語のローカルサイトを利用する
Indeed
ワールドワイドな職探しサイトで、他の国の求人もあります。JapaneseやBerlinなどのキーワードで検索すると、ベルリンで日本人に関係した求人が出てきます。
なお、私はこのサイトで就職先を見つけました。
Stepstone
情報はほとんどIndeedと変わりません。私の場合は念のため、どちらも見ていました。
Berlin Startup Jobs
せっかくドイツに行くのだから面白くてやりがいのある仕事がしたい!という方には、スタートアップ企業で働くことをおすすめします。
ちなみに、スタートアップの求人数はアメリカに次いでドイツが2番目に多いようです。
4. ドイツで職業訓練を受ける
ドイツで腰を据えて仕事をしたいと考えているなら、現地で手に職をつけて就職先を探すという手もあります。
ドイツには外国人でも利用できる職業訓練制度があり、様々な業種や職種から選ぶことができます。職業訓練を受ける中で技能が身につくのはもちろん、ドイツ語力が向上し、コネやドイツ人との関係も築くことができます。
もちろん、訓練を受けたからといって必ずドイツで就職できるわけではありませんが、外国人にも広く門戸を開いているドイツならではの制度なので、挑戦してみる価値はあります。
期間は2年〜3年程度です。
ドイツの就職採用情報
お給料/月給
現地採用の場合、月約1,500ユーロ(約19万円)からのスタートとなることが多いです。ここから税金や保険料が差し引かれると、手取りは約1,100ユーロ(約14万円)。なお、通勤手当はほとんど支給されません。
ただ、都市によっても給料の相場は異なり、例えばベルリンよりもハンブルクの方が高く設定されています。
ボーナスは、有給休暇を取った月に支給されるUrlaubsgeld(ウアラウプスゲルト)、クリスマス前に支給されるWeihnachtsgeld(ヴァイナッハツゲルト)などがあります。
※1ユーロ=約126円
条件交渉が可能
ドイツに限らず、働く際に必ず結ぶのが労働契約。
最低限チェックすべきは給料と契約期間です。記載されている金額は額面か手取りか、契約期間はどれくらいなのか、しっかりと確かめましょう。
契約書はその場ですぐにサインするのではなく、いったん家に持ち帰り、じっくり読んで後日返送するのが一般的です。そして、不満な点があれば交渉することも可能です。
ドイツでは労働者と雇用主が対等なので、契約書に異議を唱えたことを理由に採用取り消しになることは滅多にありません。
ドイツの有名企業・大手企業
ドイツで有名な企業には、
- 自動車のVolkswagen、Daimler、BMW Group
- 金融のAllianz、Deutsche Bank
- エンジニアリングのSiemens
- 自動車部品と電動工具のRobert Bosch
- 通信のDeutsche Telekom
- エネルギーのUniper
- 保険のMunich Re Group
- 郵便・物流のDeutsche Post DHL Group
- 小売のMetro
- 化学のBASF
- 化学と製薬のBayer
- 電力のRWE
などがあります。
特にドイツの基幹産業である自動車産業の規模は大きく、上記の3社以外にもメルセデス、アウディ、オペル、ブガッティ、ポルシェ、マイバッハ、ロールスロイスなどの名前は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
現在、メルセデスとマイバッハはダイムラーの、そしてロールスロイスはBMWの傘下に入っています。
ドイツの税金・社会保険料
ドイツはヨーロッパの中でも税金が高いと言われています。消費税は7%もしくは19%の2種類です。
給料から天引きされるものは次の通りです。
- 所得税
- 健康保険料
- 介護保険料
- 失業保険料
- 年金
このほか、ドイツ独自の税金として教会税と呼ばれるものがあります。教会税も給料から天引きされますが、信仰している宗教により払うか払わないかの選択ができます。
健康保険には必ず加入を
天引きされるものは多いですが、充実した健康保険は魅力です。歯医者以外の病院の診察で一切お金がかからないというのはありがたいですよね。
企業に雇用されて働くのであれば、会社がある程度の保険料を負担してくれるはずです。
なお、健康保険加入証明書はビザを申請するときに必ず提出が求められます。海外でも保険は必須。体調不良や万一の事故などに備えて必ず加入しましょう。
ドイツ就職後の生活費
先に述べた通り、お給料は額面で約1,500ユーロ(約19万円)スタートの場合が多いのですが、生活費はいくらくらいかかるのでしょうか。
ドイツに住む日本人の例を見てみましょう。
- 地方都市で一人暮らしをした場合
月約697ユーロ(約8万8000円)
- ベルリンでアパートをシェアした場合
月約669ユーロ(約8万4000円)
※1ユーロ=約126円
どちらも日本と比べると安いですね。
ドイツは食料品が安いので、自炊することでかなり生活費を抑えられそうです。同じドイツでも、ハンブルクやミュンヘンに住む場合は少し割高になります。
下の記事では、それぞれの内訳が詳しく紹介されています。
ドイツの働き方
勤務時間
勤務はフレックスタイムがほとんどなので、子育て中でも時間をうまくやりくりすることができます。また、基本的に残業はありません。
ほとんどの社員が帰宅する17時以降までオフィスに残っていると、早く帰るよう上司に指示されるほど。したがって、1日の勤務時間は8時間以上になることは滅多にありません。
休暇
有給休暇は1年に30日あり、職場によっては3週間連続の休暇を取得することも可能です。大きなホリデーシーズンは、イースターとクリスマスの年2回です。
ビジネス文化
「ドイツ人は日本人と似ている」とよく言われますが、実際には違う場所で暮らし、違う文化を持つ人々です。ドイツのビジネス文化も、日本のそれとは異なる部分があります。
仕事をする上で顕著なドイツ人の特徴を見てみましょう。
- 仕事の範囲を明確にし、責任の取れる範囲で仕事をする
- 基本的に残業せず、時間内に集中して仕事を進める
- 合理性や効率の良さを第一に求める
- 意見をとにかく口に出す
ドイツの良いところと日本の良いところをうまく取り入れながら仕事を進めていきたいですね。
ドイツ就職で失敗しないためには
海外就職は日本国内での就職よりも慎重になる必要があります。条件や待遇だけで決めてしまうと、せっかく仕事が見つかったのに、行ってみると思っていたのと違ったということになりかねません。
失敗するリスクを減らすためにできることが3つあります。
- ドイツ就職の経験がある人に話を聞く
- 大手の転職エージェントを使う
- 現地ドイツへ行ってみる
2つ目をやっている人は多いと思いますが、1つ目と3つ目ができている人は意外に少ないです。
実際に、現地へ一度も行かないまま決めてしまい、気候や食事など仕事とは直接関係のない理由で就職先の国になじめず日本に帰ってしまう人もいます。
下の記事を参考に、できる限り失敗のリスクを減らしましょう。
まとめ~まずは語学力をアップしよう
ヨーロッパの中では比較的ハードルの低いドイツですが、仕事を探す際に一番のネックとなるのはやはり言葉です。
日系企業であればそこまでの語学力は求められない可能性が高いですが、キャリアアップしたい方にとって外国語能力はなくてはならないものです。また、生活においては最低限のドイツ語が必要です。
日系企業以外の選択肢を増やすためにも、また日常生活に困らないためにも、言葉の勉強は今すぐに始めておくといいでしょう。
ドイツ就職・ドイツ転職するには
ドイツで働くためには「情報収集」と「行動力」が必要です。
今すぐの就職・転職を考えていなくても、転職サイトを使い気になる求人情報をストックしておきましょう。情報収集が進めば、より具体的にドイツにいる自分をイメージできるはずです。
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