ドイツでは「ペンテコステ」という新約聖書にあるエピソードを祝う祝日が5月にあります。これは精霊降臨祭(Pfingsten)と呼ばれる祭日で、この日に毎年ライプツィヒ郊外で行われる、Ritter Spiel(騎士のゲーム)というイベントがあります。
ドイツ・ライプツィヒから車で30分程郊外へ行ったところにあるトレーブセン(Trebsen)という村の古城を舞台に、3日間続けて開催されるイベントです。この記事ではその様子をお伝えしたいと思います。
*1ユーロは約130円
Ritter Spiel(騎士のゲーム)とは
中世の騎士達は、戦が無い時でも常日頃から乗馬、弓矢や剣、斧などを使って標的を射る訓練を重ねていました。
その技量を計る試合はRitter Spiel(またはRitterturniere)と呼ばれ、中世からルネサンスにかけてヨーロッパ全土で流行していました。
現在でもドイツ各地で開催されているRitter Spielのうちの一つが、ライプツィヒ郊外のTrebsenという町で毎年行われています。
Trebsenの中心地にある古城と、その裏にある自然公園には競技場を始め、中世を催したステージやマーケットが開かれ多くの人で賑わいます。
入場料は大人12ユーロ、5歳以上の子供8ユーロでした。5歳以下の子供は無料です。家族チケットというものもあります。家族チケットでは大人2人と子供2人で30ユーロと少しディスカウントになります。
午前11時に会場がオープンします。メインイベントである騎士の技量対決、Ritter Spielは1日2回13時と18時に開催されます。最終日のみ15:30からの1回の開催です。
古城の裏に続く庭の一部に競技場が建設されています。会場内にて行われるパフォーマンスの見学料は全て入場料に含まれているので、競技場に入るのに特別なチケットを買う必要はありません。
私が行ったのは日曜日でした。晴天で入場者も多く、13時からの試合を見ようと20分前に試合会場に向かった所、4段ある観客席はすでに満席でした。
主催者も予想以上の来客数だということで、席の前の芝生に直に座るので良いのなら、ともう一列作ってくれたので、柵の目の前で見物することができました。
席を取るなら
試合は1時間30分ほどに渡って行われるので、日陰の席がおすすめです。また、台になっている席は基本立ち見用です。1列目でも4列目でも距離感はあまり変わらないので、より高い最後の列からだと競技場全体が臨場感そのままに見えます。
最前列は臨場感はあるものの、目前しか見えず、騎士が競技場の反対にいると何をしているのか見えませんでした。
試合が始まると、会場全体に響き渡る音楽や演説で観客が次々と押し寄せて来るので、なかなか身動きがとれません。トイレを済ませてから、飲み物、食べ物、帽子など準備して向かったほうがいいですよ!
中世風の音楽隊と競技のスピーチが終わると、いよいよ競技をする騎士達の登場です。今回の騎士達はライプツィヒ近郊の領地を代表する7名でした。それぞれ領主の旗を掲げて競技場に名馬と共に乗り付けます。
途中スピーカーの故障で音楽やスピーチ用のマイクが使えなくなってしまいましたが、馬の蹄の音がより競技場に響いて臨場感が増していました!
流鏑馬のように騎乗のまま弓で的を射ったり、2m以上もある槍を自在に操ったりと、次々に競技は進みます。
競技場は50mほどで手狭な印象でしたが、馬がこの短距離で見せる加速には目を見張るものがありました。落馬を装った後に手綱を使って馬に駆け上ったり、立ち乗りしたりと、騎士と愛馬の信頼の深さにも感動しました!
日本の武芸の競技場のような静けさはなく、Ritter Spielの会場は多いに盛り上がります。
前説でも当時を装った演説者が競技の内容や進行を古文の口調で説明しますが、失敗したときは「Schade(残念)!」「ach neee!(あーあ、がっかり!)」など、観客たちが次々と野次を飛ばしているのには驚きました。
騎士も騎士で「こんな簡単なのはやらない!」と的をわざと遠くさせたり、成功した時にポーズを取ったりして会場を湧かせます。
騎士同士の模擬戦や、会場に火をつけて実践の雰囲気を出すなど、本格的に騎士の実演が見れて大満足でした!郊外で行われる小さなイベントかと思っていたので、いい意味で裏切られました。
会場内の各所で行われるパフォーマンス
会場内では砲台があるスペースで歩兵達が戦闘を起こしたり、軽業やファイヤーダンス、音楽隊があらゆる場所でパフォーマンスを始めます。太鼓やバグパイプの音は機材なしでも響き渡るので、すぐに人だかりができていました。
会場の端では弓矢を体験できるスペースがあったり、騎士達のキャンプ場では中世当時のような設営で、休憩中の騎士達が剣の手入れをしていたり炊き出しをしていたりと、野外博物館にいるような光景です。
騎士達はドイツの騎士でしたが、音楽隊やバンド、パフォーマンスをする人は東欧やイギリス出身などさまざまでした。
スコットランドの騎士のように顔を塗り、バッファローの角で出来た杯でお酒を飲む集団も、なにかのパフォーマンスかと思ったらただの来場者でした!
バイクでヨーロッパ全土を回っているらしく、「俺たち?現代の荒くれ者代表だよ!」と豪快にイベントを楽しんでいました。
ステージ
会場には競技場の他にステージが用意されています。古城にステージ、裏の庭に競技場と、会場は大きく二つに分かれています。
ステージでは、バンドの演奏やクラウンのスピーチなど、さまざまな演目が次々と行われています。
バグパイプや見た事も無い楽器を操り「中世風メタル」のようなバンドは、衣装も凝っていて、迫力満点でした!
中世風メタルバンド、Cradem Aventureのサイトはこちらです。
マーケット
古城の周りにはマーケットエリアがあります。子供たち向けの騎士グッズを嬉々としてねだる子供たちを見て、日光で木刀を買う修学旅行生を思い出しました。男の子はやはり憧れがあるようです。
子供用だけでなく、大人用の精密なデザインの器具や鎧も売っています。弓矢や杖、ヘルメットなど多種多様の騎士グッズがありました。
多くの騎士グッズは大量生産されているものではなく、店主の手作りだそうです。取手や使用される皮細工など、一つ一つこだわりが感じられました。
会場内ではロバに乗るサービスもありました。子供限定で、15分ほどで裏庭をぐるっと一周します。ロバを引率する人も勿論中世の装いで、鞍ではなく「当時の通り」厚い布にまたがります。6匹のロバ達が交代で働いていました。
子供たちに慣れているのか、乗っている子供が首に抱きつこうが、背中で歌いだそうがおかまいなく仕事をこなしていました。
飲食
会場では豚の丸焼きが食べられます。土曜に始まったイベントで、日曜の昼まではまだ半身ほど食べられた状態でした。
その他にもおなじみのソーセージやステーキは勿論、パン生地の中に肉や野菜がどっしり詰まっている「Stein Brot」やポーランドのファストフードである揚げパン「Langos」を売るお店が出店していました。
ソーセージやステーキ等は4ユーロから6ユーロで日本人にはちょっと多いくらいの肉の塊です。
Langosはパン生地を油で揚げ、ニンニクたっぷりにチーズや野菜をまぶしたものが主流ですが、パン生地にりんごムースを乗せた甘味風のものもあります。甘味のものは3ユーロ、チーズや野菜がのったものは5ユーロでした。
Steinbrotは一切れ5ユーロで、10cm×10cmほどの大きさですが、中にはハムやパプリカ、キノコなどがどっしり入っています。パンの上にサワークリームと生のパプリカをのせて食べます。サイズが小さいわりにがっつり系で腹持ち満点です。
スイーツでは全粒粉を使用したクレープやナッツをふんだんに使ったケーキがありました。
イギリス人が出店している本格的な紅茶を出すお店や、豆にこだわったカフェなど、出店とは思えない凝ったお店が多かったです。
飲み物のグラスはデポジット制!
ゴミを最小限にしようとする試みから、ホットドックで出される紙皿の他には使い捨て容器を使っているお店はありませんでした。
飲み物はビールもコーヒーもグラス用のデポジットを2〜5ユーロ程支払います。飲み終わったらお店に持っていくとデポジットは返してもらえます。
お店によっては、グラスと一緒に専用のコインを渡されます。コインを無くしてしまうとグラスを返してもデポジットを返してもらえなくなるので、無くさない様に注意しましょう!
環境に優しい移動式トイレ
会場には、古城の中のトイレと外付きのトイレがあります。野外のトイレはライプツィヒの「Ökolocus」という会社のトイレでした。
このトイレは全て「自然の素材」でできています。中にはおがくずが用意されており、用を足したらおがくずをかけることで消臭効果もあり、排泄物の自然分解も促進できるそうです。
一般的なプラスチック製の移動式トイレと違い、天井部分が密接されていないので閉塞感もなく、全く臭くありません!ヨーロッパの野外イベントでは汚いトイレが悩みの種なので、このトイレにはとても感心しました!
自然派移動式トイレの「Ökolocus」のサイトはこちらです。
Ritter Spielの基本情報
- 名称:Pfingst RItter Spiel
- 住所:Schloss Trebsen Zum Schloss 1,04687 Trebsen
- 営業時間:2018年度は5月19日〜21日の3日間
- 公式サイト:http://www.heureka-leipzig.de/
まとめ
ドイツでは5月には父の日、精霊降臨祭と祝日が重なる週末が2回あります。ここ数年は5月の降水率が年内で最も低く、出掛けるには絶好の日和が続きます。
ライプツィヒの観光はほぼ市内で終わらせてしまう人が多いですが、ライプツィヒ近郊の村や町には地域の「城」があり、見応えのあるものが多くあります。
住人が居ない古城は結婚式場になっていたり、レストランになっていたりするので内装を見られる事もあります!
Pfingst Ritter Spielでは、古城の中に入れるだけでなく、中世の装いをした人々やマーケットが当時の雰囲気を醸し出しているので、より興味深い散策ができます。
競技だけを見て帰ろうと思っていましたが、各所で突発的に行われるパフォーマンスを見たり、川が流れ大木が茂る裏庭で穏やかな雰囲気に身をゆだねているうちに、あっという間に一日が過ぎていました。
中世や騎士に興味があっても無くても、おすすめできるイベントです!
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