ヨーロッパへ行くと古い町並みがそのまま保存されており、石造りの情緒あるアパートや、童話に出てくるようなとんがり屋根のかわいらしい家などをよく見かけます。そして、その古い建物に今も人が住んでいることに驚かされます。
あんなアパートに住めたらどんなに素敵だろうか……と外から眺めていた時はよかったのですが、実際に住んでみるとトラブルが続出!
スイスのジュネーブで、築60年のアパートに暮らして経験したトラブルの数々をご紹介します。
スイスで頻発する断水
ジュネーブで私が住むアパートは、驚くほど断水が多いです。近所で下水道の工事をしていることが関係しているのかもしれませんが、しょっちゅう断水になります。多い時には週に2回工事が行われ、それでも直らず、翌週もまた行われたりします。
長時間、トイレも使えない
しかも毎回、朝の8時から18時までと長時間にわたり断水します。この間、洗濯はもちろん、ごはんを作ることも、手を洗うこともできません。トイレも流せないので、お風呂に水を溜めて汲み置き式で対応します。
仕事などで日中留守にする家庭はまだしも、小さな子供がいる我が家にとっては地獄です。
張り紙に怒りのコメント
断水の予定がアパートのエレベーターに張り出されますが、住民も怒っているようで、ある時は張り紙に「いい加減にしろ!」「もう十分だ!」などと怒りのコメントが殴り書きされていました。
私は断水のたびに友人宅に避難させてもらっていましたが、あまりに頻繁で、だんだん「断水だから遊びに行かせて」とも言い出しづらくなるほどでした。
スイスではよくあるエレベーターの故障
断水よりさらに頻繁に起こるのがエレベーターの故障です。
人生で一番エレベーターに閉じ込められる日々
こちらに来て3年の間に少なくとも5回は動かなくなったエレベーターの中に閉じ込められました。
自力で脱出できたこともあれば、エレベーターの中についているブザーを押してSOSの電話をかけたこともあります。
これまでの人生でこんなにエレベーターに閉じ込められたことはありません!最初はパニックになったものの、今では慣れっこです。
動かないことがスタンダード
また、閉じ込められはしないものの、エレベーターが使用できなくなってしまうのは日常茶飯事。
我が家は日本でいう7階にあるので、エレベーターが壊れるたびにヒーヒー言いながら階段を登り降りしています。
さぁ、出かけよう!とベビーカーに子供を乗せ、エレベーターのボタンを押してもまるで反応がない時のガッカリ感……。約束や予定がある時にエレベーターが止まってしまうと本当に困ります。
たびたび修理業者が来ているのですが、エレベーターが古くてもう直らないのか、いっこうに改善する気配がありません。
早めに緊急連絡先の確認を
ジュネーブで住むアパートが決まったら、冷静なうちにエレベーター内に貼られている故障時の緊急連絡先をチェックしておきましょう。閉じ込められた際のやり取りも英語とフランス語で練習しておくと、いざという時に安心です。
スイスでは家電や家の備品が壊れやすい
ジュネーブに来てから一生分の故障を経験したのではないか?と思うくらい、家にある物が頻繁に壊れます。
シャッターがすべて錆びついていて開かないトラブルにはじまり、老朽化した戸棚から扉が落下したり、冷凍庫の扉や食洗機が壊れたり、変圧器がショートしたり……と次々に家の備品が壊れます。
ありがたい家具・家電付き物件だけど・・・
私たち家族は家具付きの物件を借りています。ベッドやソファーなどの家具の他に、冷凍庫や洗濯機、乾燥機、テレビなどの家電も備え付けられています。
短い駐在生活で家電を買うのはもったいないので、備え付けられているのはありがたいのですが、化石のように古い家電が多く、我々が入居したタイミングで運悪く次々と故障しました。
私が特別に不器用で物を壊してしまうのかなと思っていたら、ジュネーブに住む友人も故障の被害に遭遇していることが分かり、海外の家電や備品は壊れやすいのだということが分かりました。
スイスでは修理屋が来ない
家具や家電が壊れたり、不具合が発生したりしたとき、まずは賃貸契約している不動産屋に連絡をします。
連絡を受けた不動産屋が、家主に修理や買い替えの了承を取り、修理屋に連絡をしてくれます。そして修理屋が、こちらにコンタクトを取って日時を約束し、修理に来てくれます。
このような流れを見ると、言葉が分からない外国人の私たちにとって、不動産屋も修理屋もとても親切で、修理までの流れもスムーズなように思いますね。
ところが、このひとつひとつのアクションにとても時間がかかります。
約束をすっぽかす
時間がかかっても最後まで行き着いて修理屋から連絡が来れば御の字で、途中で連絡が途絶えたり、バカンスに出かけていて連絡が取れないまま放置されたり、忘れられたり……と、待てど暮らせど連絡が来ないということがよく起こります。
日本ではあり得ない対応ですが、ジュネーブではこんなものです。
我が家は一度、故障の下見に来るはずだった不動産屋に約束をすっぽかされました。何度電話してもつながらないので呆れて放置していると、数週間後にあちらからあっけらかんと電話がかかってきたのです。
すっぽかした原因はバカンス!?
今度こそ必ず来るようにと重ね重ね注意するも、「OK!OK!」と軽めの返答。さすがに今度は約束の日時にちゃんとやって来ましたが、現れた不動産屋はこんがり小麦色。明らかにバカンス帰りです。
私との約束をすっぽかした日、コイツはどこかの浜辺で日光浴していたに違いない……。そう思いながらも故障しているシャッターへ案内すると、故障個所の写真を撮ると言います。
仕事よりもプライベート重視
一応ちゃんと仕事はするのねと思ったのもつかの間、「iPhoneのメモリーがいっぱいで写真が撮れないよー」と騒ぎ出す始末。
「いらない写真を消したら?」とアドバイスしながら携帯をのぞいてみると、そこには楽しそうなバカンスのお写真がいっぱい入っていました。
しまいには、「どれも思い出がいっぱいで消せないから、マダムが写真を撮ってメールで送ってくれる?」と言ってきました!
一体何しに来たんだーーー!!メラメラと怒りがわいてきました。
お客様は神様ではない
このように、修理までの道のりは遠く、日本では想定できないような人的トラブルに見舞われます。
そこで、何度も諦めずに不動産屋に問い合わせ続けたり、らちがあかないようであれば、自分から修理屋にコンタクトを取ることになります。
その際は、修理費の請求が家主に行くのか、自分に来るのか、責任の所在を不動産屋とよく確認してから修理屋を呼ぶようにしましょう。
スイスの人件費は世界でもトップクラスです。修理屋を呼ぶだけでもびっくりするような値段の請求書が来ます。気をつけてください。
こういったやり取りの際に重要なのは、日本の感覚を持ち込まないこと。思い通りに事が運ばなくて当たり前、お客さまは神様ではないのがスイススタンダードです。
スイスでは修理屋が来ても直らない
長い間気をもんで、交渉に交渉を重ねた上でやっと修理屋が来る日が決まります。これでようやく直るな……と誰もが安心するでしょう。しかし、そうはいかないのがジュネーブ流。
約束の日に修理屋が来たはいいけど、修理箇所のみ確認して帰っていったり、「今日は部品が手元にないから帰って注文するね」と言うだけで終わったり……とにかくすぐには直りません。
日本では、修理屋が来ればその日のうちに直るものと思いますよね。しかしジュネーブでは、修理屋と約束が取れてもひょっとして来ないか、来てもその日は顔合わせ程度、本格的な修理は次回以降と腹をくくっておくのがよさそうです。
我が家の食洗機の修理には、1ヶ月以上を要しました。
スイスの隣人問題
ジュネーブの住宅は、その多くがアパート、つまり集団住宅となっています。普段はやさしそうなジュネーブの人々ですが、隣人トラブルもよく耳にします。外国人居住者が多いこともその原因となっているかもしれません。
足音は騒音になる
私の周りで多いのは、騒音トラブルです。特に子供のいる家庭はこの手のトラブルを抱えることが多いです。子供が騒ぐ声には寛容ですが、子供の足音には敏感というのがジュネーブの騒音トラブルのポイントです。
条例で子供や赤ちゃんの声がうるさいという苦情は言えないようになっているそうですが、足音は例外で、下の階の住民から度重なるクレームが入り、引越しをしたという日本人のご家族をいくつか知っています。
洗濯物を外に干すのはNG
友人がベランダに洗濯物を干していたら、景観を損ねると注意されたそうです。布団を干していて注意されたという人もいます。
ヨーロッパでは上記の理由で、基本的には洗濯物を外干ししません。
餃子のにおいは悪臭?
我が家が受けたクレームは、餃子を焼いた後「調理の臭いがエレベーターホールに充満してくさい」というもので、翌日に張り紙をされました。
私たちにとっては食欲をそそる餃子や焼き魚のにおいも、ヨーロッパの方にとっては嗅ぎ慣れない異臭です。当然のように干す洗濯物も、みっともないとか恥ずかしいという意識があるのかもしれません。
文化の違いによるトラブルは、滞在国の文化をよく理解しておき、避けたいものです。
鳥のフン被害
我が家が経験した別の隣人トラブルもあります。上の階に住むおばあちゃんがベランダで鳥に餌をあげていたため、我が家の窓にフンが付いてしまうという被害がありました。
少しのフンなら掃除すればいいのですが、渡り鳥の季節になると、真っ黒い鳥の塊がベランダの餌に向かって飛んで来るのが見え、餌を食べた後はフンの雨。
フンのついた窓を眺めながら過ごす毎日に、精神的にも衛生的にも辛くなり、アパートの管理人に苦情を申し入れましたが、上の階に住むおばあちゃんは認知症の一人暮らし。何度注意してもまるで解決されませんでした。
まとめ
ジュネーブ滞在中の主婦は口々にこう言います。私たち一生分の故障をジュネーブで経験したよね!それくらい故障やトラブルは日常茶飯事。
そして修理業者と連絡が取れないのも、約束をすっぽかされるのも、すぐには直らないのも、日常茶飯事!
日本の素晴らしい設備やサービスと比較して、はじめのうちはイライラしていましたが、今ではどうせすぐには直らないからしばらく放っておこう……とか、直ったらラッキーくらいの境地に達しました。
不便はあっても死ぬわけではありません。カリカリせずに、トラブルをネタに昇華して楽しむのがジュネーブの駐在妻流です。
トラブルも楽しむくらいのおおらかさを持つことで、不便なヨーロッパ生活もぐんと楽しくなりますよ。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)