2018年6月、世界が注目するアメリカのトランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の会談の場所に、シンガポールが選ばれました。シンガポールの治安の良さが世界に認められたことになります。
実際、犯罪発生率は日本と比べて低く、約3分の1です。何しろ刑事罰の1つとして、今だに鞭打ち刑がある国なのです。
シンガポールから日本に一時帰国すると、もちろんホッとします。その一方で日本は治安が良い反面、無防備に感じてしまいます。ではシンガポールはどのようにして治安を守っているのでしょう。
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シンガポール概要
シンガポールは治安を守りやすいコンパクトなサイズです。国土の大きさはほぼ東京23区と同じです。
北側のマレーシア、つまりジョホール水道側は自然保護区などがあり、人口は南側半分に集中しています。東の端のチャンギ空港からMRT東西線で1時間ちょっとで西の終点に着いてしまいます。
シンガポールは島であり、車で移動できる国境はマレーシアのジョホールのみであることも、目が行き届きやすい理由です。
国民のほとんどはHDBという政府の公団住宅に住み、町内会的なコミュニティの中で生活しています。
監視カメラの中で暮らすシンガポールの治安
シンガポールに来て最初に違和感を覚えるのは、その監視カメラの多さです。シンガポールの鉄道網MRTはIT化されて無人運転です。駅にも最低限の人数しかいませんが、車内はもちろん構内も監視カメラだらけです。
幅広いホームにはドアが完備しているので、日本のような人身事故による遅れなどありません。夜遅くてもクダをまく酔っぱらいを見かけることもありません。
シンガポールには2階建てバスがたくさん走っていますが、ドライバーの横には監視カメラのモニターがあり車内を常に確認しています。
街の中、ショッピングビル、ホテル、あらゆる場所はカメラのマークとCCTV(closed circuit television の略で防犯モニターのこと)の文字だらけです。性善説が習いとなっている日本人にとっては、ここまでするのかと憮然とすることもあります。
置き忘れのバッグは不審物となり、物々しい様子で警察が出動するのも見かけました。
治安を守るシンガポールのコンドミニアムの警備体制
シンガポールに住む外国人や富裕層のシンガポーリアンは、コンドミニアムと呼ばれる高層の集合住宅に住みます。
実は、私は日本の戸建住宅で空き巣に入られた経験があるので、家の戸締りに関しては神経質でした。ですが、シンガポールではそのような心配とは無縁で過ごせませす。
コンドミニアムは塀で取り囲まれ、表の出入り口には24時間体制でガードマンがいます。
大きなコンドミニアムになると、住民用の通用口がいくつかあります。入口の開閉にはカードキーが必要なので、忘れると面倒なことになります。
他の住人の出入りを待って一緒に中に入れても、自分の棟のエレベーターホールの入口にもカードキーは必要なのです。
警備体制の厳しさをランク付けした証明書が、警備室に貼ってあります。Aだとなかなかうるさいです。よそのお宅を訪問する時は、門まで迎えに来てもらうことも多いです。
シンガポールの有名な罰金制度
かつて、シンガポールの厳しい罰金制度が、欧米の国から批判されたことがありました。当時の建国の父リー・クァン・ユー首相は、次のようにコメントしたそうです。
「この間まで窓からゴミを捨てていた国民が、公共ルールを守るために、罰金以外の方法があるなら教えて下さい。」
確かに罰金の効力はたいしたものです。うちも今まで2度、罰金とまでいきませんが、ペナルティとしてお金を支払いました。
まずは図書館への本の返却延滞です。確かに注意書きに延滞金云々とはありました。そして実際に延滞したところ、わずかですが本当に徴収され、引き落とされていました。
実はこれは日本人会の図書館でしたが、まさに郷に入っては郷に従えの精神です。
こちらでは小切手を使うことが多いのですが、何しろ不慣れなので、1度書き間違いをしたことがあります。しばらくして銀行から日本円にして2,400円くらいの支払い通知が来ました。無効になった小切手に対してのペナルティです。
どちらのケースもその後は、本当に気をつけるようになりました。効果的であるのは確かです。
実は言論の自由度は低いシンガポール
シンガポールの政治体制は一党独裁で、首相職は世襲されています。そして言論の自由度のランキングは、先進国家の中で実は低いです。政府の検閲機関があり、国民に悪影響を与える出版物やオンラインニュースサイトを規制しています。
多民族が狭い国土に暮らしていますが、1965年の独立の時に「私たちは中国人でもマレー人でもインド人でもない、シンガポール人として1つになる。」と宣言しました。
宗教や文化的なバックグラウンドが違う人々が平和に暮らすためには、さまざまな配慮、調整、そしてある意味「管理」が必要なのかもしれません。
地下鉄やバスの中で高齢者や子ども連れは、必ず席を譲ってもらえます。公共マナーとして当然と考えられていますが、そこに監視カメラの存在を感じてしまうのは、少しひねくれた見方でしょうか。
まとめ
シンガポールは治安の良い国です。駐在員家族や旅行者にとってはありがたいことです。
シンガポールには、a little red dotという愛称があります。地図の上では本当に小さな点でしかないのです。しかし歴史的に見ても、シンガポールは世界の勢力図の中で、小さいけれど重要なred dotでした。
そして現在も金融のハブとして重要な拠点です。世界中がテロの脅威にさらされる中、シンガポールの治安は、国の威信をもって守られているように思います。
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