私は2014年からドイツ西端にある地方都市で市立劇場所属のオペラ歌手として働いています。つらかった就活時代を経てやっと手にしたポジションですが、就職して間もないころには慣れないことも多く、戸惑いの連続でした。
国が変われば常識や習慣も変わります。外国人である私たちが職場に溶け込むには、少し時間がかかります。
ここでは、私が職場で3年半働いてきた間に驚いたことや違和感を持ったこと、いまだに受け入れがたいと感じてしまうヨーロッパ人特有の習慣などをご紹介します。
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記事の目次
ドイツでは残業は1分もしない
※トリーアのマークト広場
まず私が驚いたのは、終業時間になると話し合いや稽古の途中でも無言でその場から立ち去ってしまう同僚を見た時です。私は業務が一区切りついてから切り上げるのが当たり前だと思っていたので、時計を見て勝手に出ていく同僚はひどく無責任だと感じました。
ですが、複数の人間がバタバタと退出するのを見て現場の責任者が時計を確認し、「そうか、時間だね」と言って稽古を打ち切ることも多々あります。自己判断で退出するのはこの職場では責められるべき行為ではないのだということを学びました。
それでもやはり、仕事に関する話をしている途中で悪びれることなく席を立つ同僚たちを見ると、私は未だにマナーとしてマイナスな印象を持ってしまいます。
ドイツの職場では上司とケンカ・上司にタメ口
指揮者がピリピリしているところに、同じくピリピリした出演者が強めに自己主張すると、簡単にケンカになります。
それに、オーケストラ・ピットにいる指揮者と舞台上にいる出演者が言い合いをすると、その距離感から必然的にかなり大きな声量でのやりとりになります。
それを目の当たりにすると私は毎回、上司である指揮者によくあんなに強く反論するものだと、半ば感心し、半ば呆れてしまいます。
私は未だに日本で言うところの「上司」的なポジションの人たちには敬語が抜けないのですが、同僚たちは平気でタメ口で話をしています。「上下関係」という観念が、やはり日本ほど強くはないようです。
ヨーロッパには先輩・後輩という概念がない
※クリスマス・シーズンのベルンカステル
上司と部下の線引きが曖昧なことからも予測がつくところではありますが、「先輩・後輩」という概念はヨーロッパには存在しません。年上だろうと勤務歴に数十年の差があろうと、同僚はみな対等です。
同じポジションの同僚の間で敬語を使う人はまずおらず、古株から指導されるようなこともありません。ドイツ語をはじめヨーロッパ各国の言語には「先輩・後輩」という単語すら存在しません。
ヨーロッパ人はいくらでも休みをほしがる
私たちの仕事は少し特殊な職種なので、休日がものすごくたくさんあります。出勤日の拘束時間もとても短く、午前中に1時間半ほど勤務して終了という日もしょっちゅうです。
最低でも週休2日は約束されており、さらにイレギュラーな休日が頻繁に発生するため、週休3日、4日になることも多く、自由な時間を自分の練習や外での仕事に充てることができます。
しかし、それほどたくさん自由な時間が与えられているにも関わらず、劇場の都合に左右されて休日の予定が変更になると、何人かの同僚たちは激しく文句を言います。
休暇は当然の権利
職場のいろんな場面でとにかく目立つのは「権利の主張」がとても強くはっきりと前面に押し出されることです。これは「空気的に有休消化ができない」という日本とは大きく異なる点だと思います。
有休もみんな遠慮なく使います。「彼氏と付き合って10周年記念だから」「隣町で有名歌手が歌うのを聴きに行くから」などの理由で休みを取る人がたくさんいます。私も劇場外での仕事のために、今年は夏休みを1週間長くもらいました。
ドイツ人にはサボり癖がある
職場にはたくさんの外国人がいます。そのうち半分ほどはドイツ人です。国民性として全員一緒くたにしてはいけないとは思いますが、出身国ごとの傾向というのはあるものだと言わざるを得ません。
少なくとも私の職場では、ドイツ人がよくサボります。しょっちゅうずる休みで欠勤する人が4人もいます。もちろん真面目に働くドイツ人の同僚もいるので、サボり癖がドイツ人の特徴だとは言いたくありませんが、私の周りで極端にサボり癖のある人は全員ドイツ人です。
「軽い頭痛」など些細なことを理由にして休んでしまうのですが、周りはみんな「しょうがないなぁ」と少々呆れながらも許しています。
まとめ〜互いの違いを理解して自分らしく働く
私には日本で働いた経験がないので、日本の社会人の勤務姿勢とドイツの職場環境を正確に比べることはできません。でも、やはり日本では考えられないであろう場面にしばしば出くわします。
ドイツなどヨーロッパで働く際には、日本人の良いところとヨーロッパ人の良いところを上手にミックスさせて、自分なりにベストなワーク・スタイルを模索していくことが大切なのかもしれません。
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