ドイツの勤務時間と休暇事情とは?ドイツで働く経営者が解説

ドイツ ドイツで働く

ドイツで働きたいと思っている人にとって、ドイツの勤務時間や休暇事情は気になる点だと思います。ドイツでは完全有給消化、さらに有給とは別に、病気の場合は医師の証明書のもと病欠する義務があります。

私はドイツの日系企業で代表として働いていました。IT関係と飲食業という全く違う2つの職種に従事している企業だったので、今回はその2つの業種の労働と休暇事情についてご説明します。

ドイツの「労働時間法」とは

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ドイツには全労働者に定められた、最低限の労働条件があります。

ドイツの労働時間

原則として、

  • 「1日の労働時間は基本的に8時間を超えてはならない」
  • 「残業をする場合も1日の全労働時間は10時間を超えてはいけない」
  • 「6か月間の1日平均労働時間は8時間を超えてはいけない」

のです。

経営者がきちんとこの原則を守っているか、労働安全局のチェックがあり、違反が見つかった場合は罰金、悪質な場合は刑事事件にも発展します。

そのため、夜一定の時間をすぎると自動的に事務所の電気が消灯されるなど対策を設けている企業も多いです。

緊急事態や何か特別な理由でこの基準を守るのが不可能な場合、例外は認められていますが、長期に渡って許されるものではなく、あくまでその場の緊急処置で、超過労働分はあとから特別休暇などで補填されます。

ドイツの1日の労働時間と働き方

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労働時間は上限40時間

ドイツの1週間の労働時間は上限40時間と決められています。しかしドイツ企業では実際の労働時間は40時間より短いことが多いです。

特に金曜日は午後3時くらいになると業務が終了になる会社が多く、金曜日の夕方に電話をしても、誰もいないことが多いので注意が必要です。

日系企業の場合

私が勤めていた会社は日系企業ということもあり、月曜日から金曜日まで8時間x5日間の40時間労働でしたが、ドイツ人従業員から、労働時間が長いと言われることがありました。

そしてこの勤務時間は、医者や役所の営業時間とかぶってしまうので、自分の勤務時間外にアポイントが取れないとも言われました。ドイツではそのような場合、勤務時間内でも従業員が医者や役所に行く許可を出すように決められています。

ドイツの企業は金曜日の労働時間が短い

しかし、金曜日の労働時間が短ければ、経営者は従業員に、医者や役所のアポイントは労働時間外に取るように言うことができます。そのような事情もあって、ドイツの企業は金曜日の労働時間が短いのかもしれません。

その他も、それぞれ子どもの送り迎えや学校行事など予定があるときは、上司に許可を得て早退します。ドイツでは基本的に横のつながりが薄いので、自分の仕事に支障がなければ特に問題はありません。

ドイツでの残業時間の管理

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1日の労働時間の上限

ドイツでは残業時間を含めて、1日の労働時間の上限が10時間と定められています。

ITの職場の場合

ITと飲食の両部門のうち、私が毎日出勤していたITの職場は、社員が少なかったこと、そして私が管理者だったこともあり、事務所の自動消灯のような対策は行いませんでした。

自分が一番に出社し、最後に退社することで、従業員がこれらの基準に違反しないように、自分でチェックしていました。

とはいっても他のドイツ企業同様、定時帰宅が当たり前の会社でしたので、労働時間法を順守するのはそれほど難しくはありませんでした。

飲食店の場合

一方、飲食店の方は、お客様が相手なので繁忙期になるとこの基準を守るのが難しくなります。飲食店に関しては、繁忙期はある程度の長時間労働が認められていましたので、その規則の範囲内でカバーしていました。

そして店舗を開けながら各従業員に有休を取得してもらうのは難しい状況だったため、夏休みや年末年始など、一定期間店舗自体をクローズしてその間を従業員の休暇にあてました

ドイツの祝日

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ドイツの祝日は年に10日ほど

ドイツでは祝日それほど多くありません。1年に10日程度で、年末年始・イースター・ドイツ統一の日・クリスマスなどです。

州によって異なる祝日

そして州によって祝日の日数が違います。カトリック関係の祝日が多いので、カトリック教徒が多い南ドイツの方が祝日が多いです。

普段は自分が住んでいる地域の祝日がスタンダードなので、特に祝日の日数を気にしていません。しかし南ドイツのハイデルベルクから北ドイツのハンブルクに越してきたとき、祝日が3日も少ないと知ってがっかりしたのを覚えています。

それでも2017年に1回限り祝日に制定された「マルチンルターの宗教改革500年」以来、北ドイツでは翌年以降もその日が祝日に制定されました。それ以来南ドイツとの祝日の差が2日になりました。

祝日は友人や家族とカフェに行ってのんびりしたり、連休になる場合は多くの人がドイツ国内の実家を訪ねます。

ドイツの「休暇法」と実際の有給日数

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ドイツの国で決められている最低有給日数は、週休2日とは別に年間20日です。しかし実情レベルでは週休2日とは別に、ほとんどの会社は年間有給30日を採用しています。

私が働いていた会社のIT部門は週労働5日で、社員に与えられる有給は年間25日でしたが、その代わりにクリスマスから年明けまで、会社の公休として連続した休みを設けていました。

飲食店の方は年間有給日数は25日で、営業中に全ての有休を消化するのは難しかったため、夏休みや冬休みなど、一定期間店舗自体を休みにすることで有給消化をしていました。

ドイツの休暇の過ごし方

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ドイツ人にとって「休暇」はとても大切なものです。

よくドイツ人は「休暇のために働いている」と言われていて、休暇から戻ったら「次の休暇は何をしよう」と考えている、と笑い話になったりしますが、私はあながちこれは冗談ではないと思っています。

有給休暇の30日間

年間30日という有給休暇をドイツ人がどう過ごしているかというと、ほぼ100パーセント旅行に行っています。

そもそもドイツ語の「休暇(Urlaub)」という単語に、すでに「旅行」という意味が含まれており、休暇イコール旅行なのです。(1日、2日休む場合は「フリータイムを取る」といい「休暇を取る」とは言いません。)

有給休暇の義務

しかもドイツでは誰でも最低1年に1度は「1週間以上の連続した有休を取ること」が義務付けられています。

そのため多くのドイツ人は最低1年に1度は2週間程度の長期休暇を取って家族旅行をします。往復の移動もあるので、1週間では休んだ気分にならないようです。

旅行先の大半は近隣のヨーロッパ諸国、トルコ、ロシアなどのドイツ国外です。またドイツ人以外の従業員は、この機会に母国に帰ります。安価な飛行機も多数あるので、みんなが自分の生活レベルに見合った旅行を楽しんでいます。

自分がいた会社の場合

実際に、私がいた会社でも毎年、年の初めに各社員が休暇の相談や予定について許可を求めてきます。それだけ彼らにとっては休暇は大切なんだと思う瞬間です。

私が勤めていた会社は社員が少なかったので、1人の社員が2週間の連続した休暇を取るのはなかなか難しいものがありました。 そのため本来であれば2週間くらい行きたいであろう休暇旅行も、1週間くらいに調整してくれていました。

まとめ

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このように、ドイツでは週休2日制で労働時間は最大週40時間、基本残業はありません。休暇は週末の他、年間約10日の祝日、さらに有給年間30日、プラス病欠制度と労働環境がかなり整っており、働きやすいです。

私自身は経営者だったということもあり、労働者の権利を守るために自分の時間を使うことも多かったですが、それでもうまく時間を管理すれば、毎日を仕事だけで過ごすことはありません。

週に1度はスポーツで体を動かし、たまには週末に近隣諸国にミニ旅行をすることもあります。また毎年1度は日本に戻り、休暇を楽しんでいます。考え方が変わって心に余裕ができたのか、ドイツに来て時間の使い方がうまくなったと感じます。

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プロフィール 札幌出身。2000年よりドイツ在住。語学知識ゼロからドイツ語を始める。2009年南ドイツの大学にて修士課程卒業。2010年北ドイツのIT企業に就職、のちに代表を務める。本業のIT業務のかたわら社内ベンチャーにて、2015年当時都市で唯一の専門飲食店を立ち上げ繁盛店にする。現在はフリー。趣味はテニスと読書。ブログ等でさまざまな方向からドイツ情報を発信しています。

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