外国で生きるために一番大切なものはビザです。「命の次に大事なものはビザ」と言われるくらいで、外国人にとってはビザ取得が何を差し置いても最優先事項です。勉強も仕事も生活も、ビザがあって初めて可能になります。
ドイツのビザにはさまざまな種類があります。私は現在、ドイツの永久ビザを持っていますが、それまではビザのために苦労しました。
ここでは、ドイツのビザの種類や取得傾向、そして私自身が実際に取得した5つのビザについてご説明します。
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ドイツのビザの取得傾向
最近は取得が難しくなっている
難民が増えてきて以来、ドイツでのビザの取得は全体的に厳しくなっています。
私はIT事業と飲食店経営という仕事をしてきており、これまでに何度も飲食店の社員用にビザ取得手続きを行いました。しかし、以前ならそれで充分だった書類に追加の書類を要求されるようになり、さらにいくつかのケースでは弁護士の助力を必要としました。
基本的に飲食店は仕事がきついので、外国人が比較的ビザの取得がしやすい業種なのです。それなのに、次第にスムーズにビザを取れないケースが続き、ビザ取得が厳しくなっているのを実感しました。
州ごとに異なるビザ取得状況
とはいっても、ドイツは中央集権制ではなく各州がゆるやかな連合体を形成している国なので、州ごとに状況がかなり異なります。
知っている限りですが、例えばハイデルベルクやマンハイムの学生町、ハンブルクなどは比較的ビザ取得が難しいです。それに比べてスタートアップが多いベルリン、日本人が多いデュッセルドルフでは比較的取りやすいと感じます。
かつて、通常は2〜3カ月かかる労働許可がデュッセルドルフでは1日で取得できる、と言われたくらいです。難民問題発生より前の話で、さすがに少し大げさですが。
ドイツのビザの種類
労働できるかできないか
ビザにはいくつかの種類がありますが、大きく分けると「労働不可の滞在ビザ」と「労働許可付きの滞在ビザ」の2種類です。
労働不可のビザには、語学学校生ビザ、大学生ビザ、婚約者ビザなどがあります。ただ、このうち大学生ビザは、勉強のかたわら制限付きでアルバイトができます。
労働許可付きビザは、期限付き労働ビザ、無期限労働ビザ、30歳以下1年間限定のワーキングホリデービザなどです。その他フリーランスビザもあります。
刻々と変わるビザ取得手続き
私は「語学学校生ビザ」「大学生ビザ」「仕事探しビザ」「期限付き労働ビザ」「無期限労働ビザ」の5つを順番に取りました。
最初は「語学学校生ビザ」でしたが、私がドイツに来た2000年当時は、日本のドイツ大使館(または領事館)で仮ビザを取得してからドイツに渡り、外国人局で改めてそのビザの承認をもらう流れでした。
現在は規則が変わり、日本からノービザ(3カ月の観光ビザ)で入国、ドイツに到着後3カ月以内に外国人局でビザの申請をします。
それではここから、私が取得した5つのビザについて、1つずつご説明していきます。
ドイツの語学学校生ビザ
語学学校生ビザとは
外国人がドイツ語習得を目的に語学学校に通うためのビザ。年齢に関係なく誰でも取れます。先に述べたように、私もこのビザでドイツに来ました。
基本的に語学学校生ビザでは働けません。私の場合、たまたま最初の半年は「制限付き労働可」ビザだったので、その間レストランでホールのアルバイトをしていました。しかし、更新の際に「労働不可」のビザに変更されたため、アルバイトは辞めました。
多分これが本来の形なのだと思います。
申請に必要なもの
語学学校の講習費支払い済みの証明書、当面生活できることを示す銀行の残高証明、健康保険に入っている証明書が必要でした。
残高証明は月約700ユーロ(約9万円)計算で1年分用意して、シティバンク(当時)の日本円の口座をユーロに換算して提出しました。
健康保険は日本の海外健康保険に1年分入り、それをドイツの保険会社に証明してもらいました。
※1ユーロ=約127円(2018年11月現在)
有効期間は最長1年
これらの書類が揃っていれば、1年までは問題なく延長できます。私がいたハイデルベルクでは、3カ月コースに申し込むと3カ月分しかビザをもらえず、コースを延長するたびに更新しました。
もっとも、ドイツでは同じ町でも担当者によってビザをもらえる期間が異なります。最初から1年分の語学学校生ビザをもらえる場合もあるようで、これはかなりラッキーです。
ただ、最長1年までしか滞在できません。例外として1年半まで延長可能ですが、何が例外かは役所の裁量次第で明文化されていません。
ドイツの大学生ビザ
大学生ビザとは
その名の通り、大学生専用のビザです。語学学校生ビザと違って、アルバイトをすることができます。
ドイツでは親が子どもに仕送りをすることはめったにありません。学生自身が学業に差し支えない範囲で自分の生活費を稼げるよう、1年間にハーフタイムで180日、またはフルタイムで90日以内の労働が認められています。
私もこの大学生ビザを持っていた間に、ベビーシッターや2つの日本人補習校の教師として働きました。
大学生になるまでの苦労
私は、語学学校生ビザから大学生ビザへ切り替えました。しかし、この切り替えには大変な苦労がありました。
当時DSHと呼ばれていた大学入学試験を受けるため、大学に申し込みをしました。しかし、私が申請した心理学学科は外国人を1年に1人しか取らないということで、申請が却下されてしまいました。
日本の大学受験の仕組みとは異なり、ドイツでは受験の申請をし、許可証明書をもらうことで試験を受けることができます。この時はたった1つの大学にしか申し込んでいなかったので、私はその時、大学受験のチャンスを逃してしまいました。
語学学校生ビザの延長を申請するも難航
受験申し込みが却下されたのは残念でしたが、それほど落胆はしませんでした。例外として語学学校生ビザを半年延長し、改めて大学受験しようと思ったのです。
ところが、そう簡単にはいきませんでした。外国人局が私のケースを例外と認めてくれず、語学学校生ビザ延長のために大学受験の許可証明書を持って来いというのです。
大学受験の許可証明がないからこそ半年の語学学校ビザ延長を頼んでいるのに、その返事が「大学受験許可証明を持って来い」では意味がありません。
受験する予定の大学に相談すると、親身になって相談に乗ってくれました。大学と外国人局の間を1日に3回往復したこともあります。自分だけでは信用してもらえないのかと、ドイツ人に付き合ってもらったこともあります。
思わぬ助け舟が現れる
しかし、外国人局の態度は変わりません。困っていろいろな人に相談したところ、その中の1人に日本人を配偶者に持つ弁護士さんがいました。ありがたいことに、その人が外国人局の担当者と電話で交渉してくれ、折り合いをつけてくれたのです。
条件は「例外的に語学学校ビザを半年延ばす。その代わり、半年後に受ける大学入試試験DSHの受験チャンスは1度のみ。その試験に不合格だったら、日本に帰国するという書類にサインをすること」でした。
条件をのみ語学学校生ビザを延長
少なくともその当時、ドイツでは大学入試の試験を受けるチャンスは2回のみ。2度試験に落ちたらもう大学には入れません。それだけでも厳しいのですが、その受験チャンスがたった1回になってしまいます。
でも、この条件を拒否すると、ビザの延長ができず今すぐ日本に帰国です。それなら条件をのんで半年後の大学受験のチャンスを選ぶしかありません。こうして、やっと語学学校生ビザを半年延長することができました。
第一志望の大学に合格、そして大学生ビザ取得
半年後の大学受験に向けて、今度は心理学学科から、主専攻言語学・副専攻ドイツ文学・日本学の修士課程に変更しました。興味もあり、なおかつ外国人の人数制限もない学科です。
前回の反省を生かし、複数の大学に願書を出した結果、今度はすべての大学から受験資格の案内が。そのうち受験時期が早かった2つの大学を受験しました。
その結果、第一希望のハイデルベルク大学に合格した時は、奇跡が起きたと思いました。これでようやく、語学学校生ビザから大学生ビザに切り替えをすることができたのです。
大学生ビザの延長
大学生ビザの更新は、最初のうちは2年ごとでした。しかし、後半の延長期間は学業の進捗状況を見て判断されました。
当時のドイツの大学は、アメリカや日本のように学士/修士には分かれておらず、最初から修士コースのみでした。日本の大学院の2年課程修了までが含まれるため、単純に言うと単位取得に6年、卒論と卒業試験に各半年で合計1年、つまり卒業までに7年かかります。
学業に対する厳しいチェック
外国人局にビザの延長に行くたびに、今回は1年分出すけど、次の延長までにZwischenprüfung(中間試験のこと。日本で言う4年制大学修了)に合格すること、卒業試験に申し込んでおくことなど、常に厳しいスケジュールが課されました。
最後の方は、半年とか3カ月ごとに外国人局に延長に行っていました。期日までに勉強が進まず、ビザ延長不可で日本に帰国した人は山ほどいます。やるしかありません。
でも、その甲斐があって無事に大学を卒業できた時はとてもうれしかったです。
ドイツの仕事探しビザ
大学卒業後のビザ延長には就職が必要
無事に大学を卒業したのはうれしいですが、学生ビザは卒業の日と同時に消滅します。
以前のドイツはとても厳しく、大学卒業時点で就職が決まっていない外国人はビザの延長ができませんでした。
あの卒業試験のさなか、就職活動を同時に行うことを考えるとぞっとします。そのままの制度だったら多分私は就職活動せず、大学を卒業後、満足して日本に帰国していたでしょう。
1年間の猶予を与えられる就職活動用ビザ
幸い2009年当時、大学を卒業した人には1年間の「仕事探しビザ」がもらえるようになっていました。仕事探しビザとは、大学を卒業した人が就職活動をするためにもらえるビザで、最長1年まで延長できます。
仕事探しビザを持っている間は、大学生時代と同じようにアルバイトをすることが可能です。
私もこのビザをもらい、就職活動を始めました。とは言っても、たまたま知った大学の東アジア芸術史学科で助手をしながら英語の勉強を始めたりと、就職活動をしつつも1年間の自由時間を楽しんでいました。
ドイツの労働許可付きビザ(期限あり)
労働局が許可を判断
私がそれまで持っていた労働許可なしの滞在ビザは、外国人局が独自の判断で決定でき、通常は外国人局からその日のうちに許可が下ります。
一方、労働許可付きのビザの場合は外国人局に提出した書類が労働局に転送され、労働局が許可の判断をします。労働局がOKを出すと、外国人局が別の視点からまた審査を行いますが、たいていは労働局がOKといえば外国人局もOKです。
ただし、労働局と外国人局は許可の基準が違うため注意が必要です。例えば、「労働許可」だけなら本人が外国にいてもいいのですが、外国人局が出すのは「滞在許可」のため、必ず本人がドイツに住民登録していることが必要とされます。
取得までの期間
ご説明した通り、労働許可付きのビザは外国人局と労働局の審査が必要なため、学生ビザより時間がかかります。
難民問題以前は、書類さえ整っていれば平均6週間くらいでしたが、現在はもっと長くかかる傾向にあります。決定までに約3カ月と言われたこともあります。
労働局が許可を与えた場合は、外国人局から会社にビザ取得手続きの知らせが来ます。一方、労働局が却下した場合は、労働局から直接本人に手紙が届きます。
労働許可がもらいやすい人は?
ちなみに、労働局が労働のチャンスを与える優先順位は次のように決まっています。
- ドイツ人
- すでに労働ビザを持つ外国人
- これから労働許可の申請をする外国人
新規申請者は優先順位が低いため、労働許可を得るためには1と2のグループよりも自分の方が労働許可に値する人物だと認められないといけません。
また、締結した労働契約書の労働条件がドイツで定められた基準に達していないと判断された時も、労働許可が下りません。そのような場合は、期限内に手紙の内容に沿った修正を行います。
仕事探しビザからの書き換え
普通は内定をくれた会社の担当者がビザ申請の準備をしてくれるのですが、私の場合は社長以外で初の日本人社員ということで、会社にビザについて分かる人が誰もおらず、自分で外国人局に行って情報収集し手続きを行いました。
先に住民登録が必要
まず、ビザの書き換えは、自分が住民登録をしている土地で行わなくてはいけません。そして、申請を行った場所で申請を終える必要があります。
私の場合、ハイデルベルクからハンブルクに引っ越しする必要があったので、どちらの町でビザ申請を行うか迷いました。
ハンブルクで申請するには、まずハンブルクに住所がなくてはいけません。逆にハイデルベルクで申請した場合、申請許可が出るまでハンブルクに引っ越しはできません。
迷いましたが、ハンブルクの家が見つかっていなかったので、1日も早く申請した方がいいと思い、ハイデルベルクで申請しました。
手続きに必要な書類
会社に作成してもらった、双方がサイン済みの労働契約書、そして会社に記入してもらう2枚の書類 Angaben zum Betrieb und zur Beschäftigung(企業運営と雇用に関する情報)と Angaben zum/r Antragsteller/in (申請者に関する情報)が必要です。
これらは全ての手続きの土台になるものです。
その他、申し込み用紙や履歴書など自治体や職種によって追加書類がありますが、それらは自分で用意できます。
申請してから結果が出るまでに1カ月ほどかかると言われたので、その間にハンブルクで住居を探しました。
家探しも労働契約と関連が
ドイツでは家賃の上限が手取りの約4割と決められているので、自分の給与と見合った住居を探さなくてはいけません。私が探していた価格帯は競争率が高く、一つの部屋に何十人もの応募者が殺到し見学が数回に分けられるなど大変でした。
加えて、私の労働契約書には「×月×日までに労働ビザが下りなかった場合、契約を解除する」という記述があったので、不動産屋がOKでも、大家さんに労働契約書の内容を理由に断られることもありました。
仕事が決まっても家が決まらないのではと焦りましたが、最終的には無事に住居を見つけることができました。ハンブルクの住居探しに時間がかかったので、結果的に見ればハイデルベルクで労働ビザの申請をしておいてよかったです。
引っ越し直前にビザも下りる
しかし、内定をくれた会社はハイデルベルクにいる私にできるだけ早く働くことを望んでいます。仕方がないので、外国人局におおよその日数を聞いて、その範囲で最短になるよう引っ越し日を決めました。でも、お役所の予想はよく遅れるのでとても心配でした。
その予想があたり、ぎりぎりのタイミングでハイデルベルクの外国人局から手紙が来ます。でも、届いた時にはほっとしました。そして、引っ越しの2日前に無事に労働許可を得ることができたのです。
内定をもらってからビザを取得して新居に引っ越すまで6週間弱で済みました。
ドイツの労働許可付きビザ(期限なし)
永久ビザ申請のきっかけは社長就任
最初の労働ビザは1年の期限付きだったと思います。その後更新して、2年分延長できました。
ただ、この時もまだ期限付きで、さらに「今の会社で働いている限り」という条件もついています。つまりこの時点で退職すると、労働ビザも滞在ビザも消滅して即日本帰国ということです。
3年目にもう一度更新を申請し、2年間の延長が認められました。
通常、5年勤めれば永久ビザがもらえると言われています。しかし、その間に関連会社のオンラインショップの会社の社長を引き受けることになり、事情が変わりました。
会社設立の手続きを進めているうちに、今持っている期限付きビザでは社長になれないことが分かったのです。選択肢がいくつかありましたが、その中で一番手続きが簡単だった永久ビザに書き換えることにしました。
条件をクリアし無期限ビザ取得
永久ビザを取得するには3つの条件があります。
- 無期限の労働契約書を持っていること
- ドイツ語B1の試験に受かっていること
- 年金を5年間納めていること
1は持っています。2はドイツの大学卒業証書で免除されました。3の年金も、会社で働き始めてからは5年未満でしたが、幸い学生時代に日本人補習校の仕事で5年間年金を支払っており、クリアしていました。
こうして、期限付きビザが切れる前でしたが、切り替えを行い、永久ビザを手に入れることができました。
永久とはいっても、パスポートの書き換えのたびに永久ビザも書き換えが必要です。でも、これは単に手続き上の問題で、改めて審査されるわけではありません。ドイツにいる限り永久ビザの権利は保証されます。
まとめ〜まずはワーホリビザでのチャレンジがおすすめ
一番取りやすいのは、滞在ビザなら語学学校ビザ、働けるビザならワーキングホリデービザです。
もしあなたが30歳以下でドイツで働きたいと思っているなら、一度ワーキングホリデービザでドイツに来ることをおすすめします。
期限は1年ですが、その間に正社員でもパートでも自由に働け、働かずにヨーロッパを満喫することもできます。仕事先で気に入ってもらえたら、正規の労働ビザへの書き換えのチャンスもあります。
ドイツ就職に興味のある人は、ぜひチャレンジしてみてください。
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