ヨーロッパへ留学したことのある人であれば、ほぼ誰もが「エラスムス」という言葉を聞いたことがあると思います。そして多くの人が「エラスムスって何?」と疑問に思うでしょう。
エラスムスとは簡潔に言うと、ヨーロッパの留学制度の一つです。私は実際にこの制度を利用し、日本の大学からヨーロッパの大学に半年間留学しました。
その経験をもとに、エラスムスとはどのようなものなのか説明したいと思います。
エラスムスはヨーロッパでメジャーな留学制度
エラスムスとは、エラスムス計画(The European Community Action Scheme for the Mobility of University Students : ERASMUS)のこと。冒頭で述べた通り、ヨーロッパの留学制度の一つです。
大学間で協定を結び、EU(欧州連合)圏内の学生の移動を活発にすることが目的だと言われています。大学にもよりますが、エラスムスを経験しないと卒業できない学校もあります。
日本では留学というと「私費留学」「交換留学」「国費留学」といった制度がメジャーですが、ヨーロッパではエラスムスが最もよく使われます。そのため、「エラスムスをする=留学する」という意味で使われることもあります。
エラスムスの特徴
日本の大学に通う日本人も利用可能
EU間の留学制度であるエラスムス、それを日本人の私がなぜ利用できたのか?という疑問が浮かぶと思います。
もちろん、正規学生としてEU域内の大学に所属していれば日本人でもエラスムスを利用できますが、私はヨーロッパの大学ではなく日本の大学に所属しています。
ここ数年でエラスムスは多様化しており、EU域外にも広がってきています。EU域外の学生が参加できるエラスムス制度をエラスムス・プラス(Erasmus+)といい、これを利用して私はヨーロッパに留学しました。
留学以外のプログラムも
また、エラスムスには留学以外にもさまざまな種類があります。インターンシップ、教員や国際交流のスタッフの移動も含まれます。
インターンシップをしている人では、大学で自分の母語を教える人からラボで働く人まで、あらゆる人と出会いました。
期間も人によって全く異なります。私の場合は半年でしたが、1年の人もいれば数週間の人もいます。期間は自分で選ぶのではなく、募集要項に書かれています。
学費無料・奨学金あり
エラスムスを利用すれば、学費を払う必要はありません。
また、どこに行くかや何をするかによって金額は変わりますが、基本的に奨学金が給付されるので、金銭面で留学が難しい人にとっても非常に魅力的な制度だと言えるでしょう。
生活費や遊興費もまかなえる
奨学金の額はEU域外の学生の方が圧倒的に高いです。私と同様にエラスムスを利用して同じ大学に留学していたフランス人の友達よりも、自分が3倍の額を受け取っていると知ったときには驚きました。
物価の安い街に留学したため、家賃や食費、遊ぶお金を出してもまだ余るくらいの奨学金を受け取っていました。
いろいろな人に話を聞いたところ、留学よりもインターンシップの方が多く奨学金を受け取れることが多いようです。
なお、上限はありますが、EU域外からの参加であれば航空券代も出ます。私の場合、往復航空券は実質負担1万円ほどで買えました。
エラスムスに応募して留学生に選ばれるまで
では、エラスムスを利用して留学するまでの選考や手順について説明します。
所属する日本の大学による審査
私は通っている日本の大学のポータルサイトでエラスムス生が募集されているのを見つけました。
まずは学内の選考があります。大学によって方法は変わりますが、基本的には書類や面接での選考だと思います。
協定先大学による審査
その後、協定先の大学による選考があります。英語で書いた志望動機、Euro cvvと呼ばれるEU域内共通の形式の履歴書、個人情報を記載した書類を提出します。提出はすべて協定大学のホームページを通して行いました。時差があるので締切には注意しましょう。
履歴書はインターネット上で作成でき、PDFとしてダウンロード可能です。TOEICなど語学の資格があればその証書をPDFで添付できるので、過去に受けたものがあれば提出するといいでしょう。
必要不可欠ではありませんが、英語圏以外の場合、その国の言語の資格があればアピールポイントになると思います。
- 履歴書作成サイト: https://europass.cedefop.europa.eu/
合格通知・ビザの準備
その後、合格すれば協定大学からメールでお知らせが届きます。日本人が90日以上ヨーロッパに滞在する場合は学生ビザが必要となるので、急いで準備に取り掛かりましょう。
基本的にエラスムス締結大学は同時に多くの学生を受け入れるので、ビザのための書類は大学から出してもらえることが多いです。
エラスムスの単位取得ルール
単位は25~30ECTS取得しなければなりません。ECTSとはヨーロッパ共通の単位で、エラスムス制度のために作られました。
では、いったいどれくらい授業があるのかというと、私の場合は1授業あたり週4時間の授業が5つ(週20時間)でした。講義系か実技系かで5ECTSか6ECTSか違うようです。
なお、1つの授業につき週4時間というのはどこも同じですが、私の留学した大学では1コマ2時間でした。大学によっては3時間と1時間に分かれるなどさまざまです。
語学の授業もプラスできる
これに加え、私のいた大学では現地語の授業も選択可能です。英語でのサポートがあるのですが(後述)、やはり普段のコミュニケーションなどを考えると現地語を知っている方が楽ですよね。
語学の授業はその分の授業料を払わないといけませんが、エラスムスの学生だけは半額以下ととてもお得でした。
もし単位を落としてしまったら
単位を取得するためには、もちろんテストやレポート課題が必須です。もし単位を落とした場合は、再試験を留学先か本来の大学で受けられます。ただ、日本ではまだあまりエラスムスがメジャーでないため、留学先の授業の再試験に対応していることは少ないでしょう。
1つ落としたくらいで卒業に関係ない、という方もいるかもしれません。その場合はそれでも大丈夫です。しかし、大学のホームページには「単位を落とし過ぎると(具体的に何単位とは書いてありませんでした)奨学金の返還を求めることもあります」と書かれていました。
週20時間の授業と語学の授業がある上、日本語ではない環境。日本にいるときより勉強しないと、すぐに単位を落とすことになりかねません。実際私は、平日はほぼ毎日、図書館で勉強していました。
エラスムスのメリット
前項でエラスムスの厳しさについて述べましたが、もちろん得られるものもすごく多いです。私が半年間の留学を通じて何を得たのかお話しします。
とにかくたくさんの人に出会える
私のエラスムス初日はオリエンテーションから始まりましたが、同じ大学で同じ学期の留学生がなんと200~300人もいるのです。国もさまざまで、欧米やアジア、中東、中南米と本当に世界中の人と知り合えます。
さらに、現地の大学生ボランティアによるエラスムスのイベントが定期的に開かれます。お酒を飲むパーティーからスポーツ大会、社会貢献活動まで本当に幅広いです。このイベントはエラスムス生であれば誰でも参加できるので、学生だけでなくインターン生とも知り合いました。
そして知り合った人と仲良くなり、週末にはホームパーティーをしたり旅行をしたりと、忙しい留学生活の中で楽しい思い出もたくさん作ることができました。
英語圏以外でも挑戦しやすい
ヨーロッパの大学はエラスムスの受け入れに慣れているところが多く、英語圏でなくとも英語でのサポートがしっかりしています。授業で使われる教材が英語だったり、テストやプレゼンテーションは英語でよかったりします。
だからこそ、「○○語は話せないから」と尻込みせずにどんどん挑戦してほしいです。特に日本では「留学=文系」というイメージが強いですが、エラスムスは理系学生にもチャンスだと私は考えます。特にエンジニアはヨーロッパでは待遇が良いので、この制度を将来にも役立てられるでしょう。
エラスムスは語学留学にあらず
専攻分野の知識を深める
私が最も声を大にして伝えたいことは「エラスムスでの留学は語学留学ではない」ということです。
エラスムスでの留学は「自分が勉強していることを外国で学び、同時にその学問が自国とどう違うのかを知る」ことが目的だと言えるでしょう。
すなわち、自国で法学を勉強している人は法学を、経済の人は経済を選択します。もちろん専攻を変えることもできますが、たいていの学生が留学先での取得単位を本来の大学で交換して卒業に役立てています。
外国の文化を肌で感じる
エラスムスで留学するもう一つの目的として「外国での生活を通して文化を知る」こともあげられます。専攻分野についての視野を広げることとあわせ、こういった体験をすることで将来外国に出ることのハードルが下がります。
このようにして、EU圏内・圏外の人々の交流や移動を活発にするという本来の目的にたどりつくのです。
まとめ~厳しくても得られるものは多い
エラスムスを終えてみて、海外に住むハードルが以前よりもずっと下がりました。厳しい授業を乗り越えたこと、新しい文化を経験できたこと、素晴らしい友人ができたことなど、さまざまな要因があります。
しかし何よりも、コミュニケーション能力がついたことが一番大きいと思います。この留学で3言語を学べたことに加え、外国語でも自分の意見を堂々と言えるようになったのは大きな財産です。
厳しい中で得られるものも多いエラスムス。この記事を読んで参加してみようと考える人が増えたらと思います。
海外求人
あなたの挑戦を待っている!あこがれの海外企業へ就職しよう(海外求人)