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カードを取り忘れた!中国のATMでありがちなトラブルと対処法

中国のATM

中国で生活していると、冷や汗が出るような緊張やパニックを時々経験します。筆者の場合、その原因はほとんど自分の不注意にあるので、おっちょこちょいな自分に本当に腹が立ち、恥ずかしくなります。

ただ、この記事でご紹介する中国のATMでのトラブルに関しては、私だけでなく複数の日本人の方が同じ経験をしているので、読者のみなさんが中国に来られたときのATMトラブルの予防と対策のため、ここで自分の失敗談を書かなくては、と使命感に燃えて執筆にあたっております。

目次

中国と日本のATMとの違い

言語

筆者はまだ、中国で、日本語表示ができるATMに出会ったことがありません。選択できる言語は中国語と英語のみです(空港など、日本人利用者が多い場所の一部のATMは、日本語での表示を選べるそうです)。

中国語の表示でも、漢字から大体の意味は予想できますが、初めて中国のATMを使うなら

  • 密碼(暗証番号)
  • 取款(現金の引き出し)
  • 存款(預金)
  • 儲蓄賬戸(預金口座)
  • 查詢(残高照会)
  • 退卡(カード受け取り)

くらいの基本的な中国語は頭に入れていった方がいいでしょう。

中国のATM(中国銀行)の利用法に関しては、親切なサイト(http://www.card-user.net/)があります。

暗証番号

筆者は現在、日本の銀行で作った国際キャッシュカードやVISAデビットカードのほかに、中国国内の銀行のキャッシュカードを使っています。

日本のカードの暗証番号が4桁の数字であるのに対して、中国で作ったキャッシュカードの暗証番号は6桁なので、一瞬戸惑うことがあります。

暗証番号が4桁の場合、4つの数字を打ち込んだ後、緑色の「確認」ボタンを押します。6桁の場合は「確認」を押す必要はありません。

ATMのボタン

3回連続で間違った暗証番号を打ち込むと、カードは凍結され24時間使えなくなります

24時間後には自動で解除されますが、緊急にお金が必要な時に丸1日おろせないのは不便なので、暗証番号は桁数の違いと共にしっかり記憶しておきたいものです。

現金がなく空っぽに

これは、ATMの操作とは関係ないのですが、中国のATMで現金を引き出そうとしてとても驚き、焦ったことがあります。それは、ATMの中に現金が残っておらず引き出せない、という現象です。

特に春節前や5.1(日本でいうゴールデンウィーク。5月第1週の旅行シーズン)、10.1(国慶節の長期休み)には、たくさんの利用者が多額の現金を下ろすため、あちこちのATMが空になります。

口座やカードに問題はないけれど……

現金が残っていない、とATM画面に表示されることもなく、引き出したい額を打ち込むと、現金引き出し不可の表示が突然出るので、初めての時は自分の口座かカードに何か問題が起こったのかと心配になりました。

もし同じことがみなさんの身に起こったら、まず長期休暇の時期かどうか考え、さらに時間があったら、次のATM利用者を観察してみてください。

きっとみなさんと同じように現金が引き出せず、困った顔をしながら、または首を傾げながら、すぐにATMから去っていくはずです。

安全対策!? 「呑み込み」

中国で慣れないATM操作に戸惑っていると、中国語で「呑卡」という現象が起きます。文字通り、カードがATMに呑み込まれるのです。

何人かの日本人の知り合いは、自分のキャッシュカードやクレジットカードがスッとATMに吸い込まれるのを目にし、ショックを受けていました。

これはカードの悪用を防ぐための安全対策だそうですが、何も操作しない時間が60秒間あるとカードが呑み込まれるというのは、外国人にとってはなかなかスリリングです。

ちなみに、ATMの画面の右上方に赤い文字で経過時間(秒)が表示されるので、参考にしてください。

ATMの画面

操作が分からない状態で制限時間の60秒が近づいてきたら、まずは「退卡(カード受け取り)」を選択して、呑み込まれる前にカードを回収しましょう。

もし「呑卡」 されてしまったら、以下の「対処法」の部分の「可能性2」の情報を参考にして、カードを取り戻してください。

一番の注意点!順序

筆者のATMトラブルは、全てこの「順序」の違いで起こりました。日本のATMで現金を引き出す時は、自動で出てくるカードと利用明細を受け取ってから現金を受け取り、終了ですよね?中国のATMはこの最後の部分の順序が逆なのです。

つまり、まず現金が出てきて、その後利用明細(明細は「必要」を選択した時のみ)、最後に「退卡(カード受け取り)」を選択して、やっとカードが返ってくるのです。

日本のATMに慣れていると、そして時間がなくて焦っていたりすると、何も考えず、出てきた現金を手に取って、そのままATMを後にしてしまうというミスを犯すことになります。そうすると、取り残されたカードは……。

中国のATMでキャッシュカードを取り忘れた2度の体験

ATMの画面

ATMの画面

「退卡」(カード受け取り)は、常に画面左下に表示されています。

筆者は、河北省の地方都市で生活していた時に2度、ATMに自分のキャッシュカードを忘れてくるという失敗をしました。

1度目

まだ中国に渡って数か月の時です。中国銀行に併設されているATMで、日本の三井住友銀行の国際キャッシュカードを使って現金を引き出し、その約1か月後、また現金を引き出そうとして「カードがない!」と気付きました。

パニック状態で、部屋中を探したり、1か月前の記憶をたどったり……。

キャッシュカードを紛失した場合、日本の常識ではまず発行銀行に連絡し、カードの利用を停止しますよね。

ただ、その時の私にとって、紛失したキャッシュカードは中国で利用できる唯一のもので、カードの停止はなんとしても避けたいと思いました。使えなくなったら生活費はおろか、帰国の飛行機のチケット代も払えなくなってしまうので。

銀行窓口であっさり見つかる

泣きそうになりながら、利用したATMのある銀行の窓口に行って「たぶん1か月前に横のATMを利用した時に、カードをなくしました。日本の銀行の国際キャッシュカードで……」とまだ言い終わらないうちに、窓口のお姉さんが「やっと来たわね!」とにっこり。

「へ?」と驚く筆者にお姉さんは、引き出しから緑色のカードを取り出し「これでしょ?」。あとは、パスポートで本人確認をして、あっさりとカードを返してくれました

今度は、ホッとしたのと感動でまた泣きそうになりながら、窓口のお姉さんとその奥に座っていた役付のちょっと偉そうなおじさんに何度もお礼を言い「誰か親切な方が拾ってくれたんでしょうか?」と尋ねると、「ATMが呑み込んだのを保管しといたのよ」と言われました。この時、「呑卡」という中国語を初めて知りました

2度目

こんな経験、1度で十分なのに、その2年後、またやらかしました。今度は工商銀行に併設されたATMでです。

新しいアパートに引っ越し、光熱費の引き落としの手続きで工商銀行に行った時です。ATMを使い、例によって現金を手にしてそれで満足し、カードを受け取らずにATMを離れました

その後、機械で引き落としの手続きをするのを50代くらいの銀行員のおじさんに手伝ってもらい、彼と少し会話してから帰宅。帰宅してすぐにカードがないのに気付き、銀行に戻りました。

すぐには返してもらえない

2回目なので余裕があります。パスポートを持って窓口へ。

すぐにカードを返してもらえると思っていたのに、窓口のおばさんに「呑み込まれたカードは事務処理をしてからでないと持ち主に返せない。5営業日待って、その後来るように」と言われてしまいました。

そういう決まりなのだから「はい、分かりました」と素直に従えばいいのですが、数日後に遠出をする予定があり、お金も必要だった筆者は、中国人的に「そこをなんとか!」とあきらめずに食い下がりました。

「身分証もあるんだし、ほら、利用明細も。ほんの2時間前ですよ!今、返してくれませんか?」「いや、ダメなものはダメ!」などとやり取りしていると、「どうしたんだい?」と見覚えのあるおじさんが話しかけてきました。

2時間ほど前に機械操作を手伝ってくれたおじさんです。

思わぬ偶然で即座に解決

「あ、おじさん!」と私が言うより早く、窓口のおばちゃんが「支店長!」

え、このおじさん、支店長だったんだ、と改めて彼のネームプレートを確認している私の横で、窓口のおばさんが「この困ったお客さんが……」という顔で状況説明をしています。

ひと通り聞き終わった支店長「今回は特別に、今返してあげようじゃないか。パスポートを持って急いで戻って来たんだし、確かにこのお嬢さんがATMをこの時間に利用してるのは、私も確認しているし」と鶴の一声。

そういうわけで、その日にカードを返してもらえました。

ただ、これはあくまでも特例です。下でも述べますが、どの銀行でも「呑卡」されてから、カードが持ち主に戻るまでには、基本的に5営業日かかります

中国のATMでキャッシュカードを取り忘れたときの対処法

ATM利用後、キャッシュカードやクレジットカードを取り忘れたら、起こり得ることとして以下の2つが考えられます。それぞれの可能性で、対処法は変わります。

可能性1:カードを悪用されてしまう

前述の通り、中国のATMでは現金引き出しなどの操作の後「退卡」を選択しないと、カードがそのままATMの中に残されます。

そして、仮に60秒以内に画面上の「継続取款(追加引き出し)」が選択されるなら、その日の引き出し限度額まで現金を引き出すことができてしまいます。

つまり、カードを忘れた利用者のすぐ後にATMを利用する人がいた場合、その人が正直な良い人でないと、かなりの額の現金を引き出されてしまうことになります。

カードをなくしたことに気づいたら、すぐに銀行のアプリやネットで残高確認をしてください。もし、自分が引き出した以上に残高が減っているなら、残念ながら別の人に操作され、引き出された可能性が高いです。

忘れ物のカードから暗証番号を抜き出して、さらに引き出すようなことをする悪人もいるそうなので、カードの利用をすぐに停止するのが一番でしょう。

可能性2:カードをATMに呑み込まれてしまう

カードを取り忘れてATMに残して来てしまい、60秒が経過して「呑卡」された場合、またはATMの操作に戸惑っていて目の前でカードを呑み込まれてしまった場合は、以下のどちらかの方法で取り戻せます。

銀行に併設のATMの場合

銀行

すぐにその銀行の窓口で「我的卡被ATM吞了」と伝えてください。しかし、呑み込まれてすぐに返してもらうことはほぼ不可能です。5営業日後に、パスポートを持ってまた来るように言われます。

カードを返してもらいに行くとほとんどの場合、求められるのはパスポートの提示(銀行側がカード表面の名前と照合してからコピーを取ります)だけですが、1度カード番号を尋ねられたことがあります

カード番号を控えておくか、カードの写真を撮っておけば、焦らず対処できるはずです。

また、カードの裏の手書きサインが漢字で、パスポート上の名前がローマ字表記だったために「名前が違う」と言われた日本人の友人もいます。カード裏のサインも、パスポート上の名前と同じローマ字表記にしておくのが無難でしょう。

銀行併設のATMではない場合

中国のATM

ショッピングモールや駅などの公共の場所にもたくさんATMがありますが、それら銀行併設でないATMで呑卡されると、少々厄介です。

まず、そのATM番号を確認します。ATM番号が表示されている場所は、それぞれの銀行ATMによって違いがありますが、画面の右上、またはATM近くの壁のプレート上に書かれています。また、ATMの利用明細にも記されています。

看板

次にプレート上またはATMの画面右上に表示されている、24時間対応の客服電話(コールセンター)に電話をかけます。

音声ガイドに従い「人工服務」を選択すると、オペレーターに繋がります。そこで、先ほどのATM番号と呑卡されたことを伝えると、どの銀行にいつ以降行けばよいかを教えてもらえます。

カードを受け取る際に必要なものはパスポートだけですが、ATM番号や利用日時、カードの色なども覚えておいて伝えると、比較的短時間で、呑み込まれた無数のカードの中から自分のカードを探し出してもらえます。

3度目のATMでの体験

ATM

※現金を手にして安心せずに!

「2度あることは3度ある」と言われますが、まさにその通り!筆者の3度目は、広東省深セン市で起きました。しかも、河北省から深セン市に引っ越した次の日、スーパーマーケットの前のATMで、です。

慣れない場所で、しかも対処法の難易度も銀行併設の場合より高く、この度はさすがに自分の不注意さを大反省しました。

筆者の3回のATMトラブルを知るルームメイトには「カードに紐つけて、首から下げといたら?」と半分冗談、半分本気で言われました。

「そんなことしたら、また呑卡された時に首吊りしちゃうよ。ATM殺人事件!」と笑いましたが、その後は本当にカードに紐をしっかり結ぶようなつもりで、気を引き締めてATMを使うように気をつけています。

おかげでこの3年半、カードの取り忘れによる呑卡事件は起こっていません。

ATMでのトラブル経験者が現地日本人の手助け利用明細

※できれば利用明細を受け取り、保管しておきましょう。

自分のATMでの失敗談を日本人の友人たちに話していたら、ある日、まだ中国に来て間もないご夫婦から「ATMでカードを呑み込まれてしまったんです、助けて下さい!」と連絡が来ました。

持ち主不明の大量のカード

銀行併設のATMではなかったので、その地域を管轄する大きな中国銀行にお供して行くと、係りの人が金庫から輪ゴムで束ねた大量のカードを両手で抱えて出してきました。

彼が、カードの束の所々に挟まれている付箋に書かれた日付やATM番号に従って選り分け、「これですね?」と持ち主に渡すまでの過程を第三者として見るのは、とてもおもしろかったです。

銀行に大量のカードが保管されているのには、深セン市が人口2,000万を超える大都市でATMの利用者も多い、という理由もありますが、「こんなにたくさんの人が呑卡されているんだ」と驚くと同時に、「みんな慌ててるんだろうな、そしてカードが戻って来た時には、どの人も安堵の表情を浮かべるんだろうな……」などと想像してしまいました。

時には香港に出張も

その数週間後、また別の日本人の女の子から連絡が入り「香港の空港内の銀行ATMで、先週カードをなくしてしまったんです。英語も広東語も自信ないし……。プロに助けてもらいたくて」と頼まれました。

「プロ」と呼ばれてちょっと複雑な心境でしたが、「プロ」は香港に駆けつけ、見事、彼女の手にキャッシュカードを取り戻したのでした。

まとめ

ATM

※カードの取り忘れにはくれぐれもご注意ください!

筆者の場合、自身の3回のカード取り忘れトラブルでも、お手伝いした友人の呑卡事件でも、他者にカードを悪用されて現金を引き出されることはなく、本当に「不幸中の幸い」だったと思います。

中国でのATMトラブルを複数回経験して学んだことは、以下の4つです。

  1. 日本のATMとの違いをしっかり意識して冷静に操作する
  2. 事前に自分のカード番号やカード裏のサインを確認しておく
  3. ネットやアプリで、海外でもすぐに残高確認ができるようにしておく
  4. 普段利用するATMの番号を控えておく、または利用明細を保管しておく

何よりまず1. に気をつけていれば、冷や汗をかきながらトラブル解決をする必要はないので、どうぞATM利用の際には深呼吸をして落ち着いた気持ちで画面と向き合って下さい

呑卡トラブルが発生してしまった場合、残念ながら 読者のみなさんすべての所に「プロ」は駆けつけられませんが、この記事がみなさんのATMトラブル解決に少しでも役立つことを心から願っています。

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この記事を書いた人

中国広東省深セン市在住。アメリカ留学や台湾留学経験もあり。

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