カナダに住みたい、日本以外の国で働きたい……そんな夢を持っている日本人にとって、その実現のために必要なのは仕事です。
日本人ということを生かした職種として真っ先に頭に浮かぶのは、やはり日本食レストランのスタッフか日本語教師ではないでしょうか。
筆者はカナダに住んで15年以上になりますが、実は両方の職を経験しました。今回はそのうち、今も続けている日本語教師業とここまでの経緯についてご紹介したいと思います。
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日本語教師を目指したきっかけ
日本語を外国人に教えたいと初めて思ったのは、私が20歳の時です。
当時、大学で勉強するかたわら、留学資金をためる目的で3つほどアルバイトを掛け持ちし、分刻みのスケジュールで働いていました。
バイト先での偶然の出会い
そのアルバイト先のひとつだったイタリアンレストランで、ある外国人男性と出会いました。東芝のアメリカ工場で働いていた彼は、出張で3週間ほど東京へ来ていた時に私が働いていたレストランにたまたま立ち寄ります。
日本語が全く分からないので助けてほしいと、ウエイトレスの私に英語で話しかけてきたのがきっかけで、それ以降来店の際には毎回おしゃべりするようになりました。
そこは、東京は東京でも西のはずれだったので、英語が通じる食べ物屋さんが近くにはあまりなく、その男性は毎日のように食事に来るようになりました。
日本語を教えることの難しさ
あと2日で彼の出張が終わるという週末に、一緒に美術館へ行きました。その日は、いつもレストランでしていた、接客の合間を縫った会話とは違い、1日ゆっくりと話しながら歩き回ることができました。
その時に、「せっかくだから帰る前に日本語を色々覚えたい」というリクエストがありました。
留学を夢見て英語を勉強していた私は和訳の知識は多少あったので、お安い御用と引き受けたものの、直訳だけでは説明できないことが意外に多いことにびっくり!1日終わるころには頭を使い過ぎてぐったりでした。
人のために知識を使うことの魅力に気づく
それまでは、勉強したい、知識をつけたいと自分のために新しい情報を取り込むことに忙しかった私ですが、教える側という逆の立場がどういうものかを1日体験し、自分の中にある知識を人のために引き出すということに魅了されている自分に気が付きました。
これが、日本語教師を目指すようになったきっかけです。
日本語教師の資格を取る
資格取得の主な方法は2つ
日本語教師として働きたいと思い描くようになってからは、その資格をいかにして取るか具体的に考えるようになりました。
一般に、日本語教師と銘打って仕事をするにあたって必要とされるのは、
- 日本語教師養成講座420時間コースを受講・修了している
- 日本語教育能力検定試験に合格している
のどちらかです。
結果的に私は、日本語教師養成学校に通い420時間の講座を取ることにしました。受講費用はかかりますが、1年に1度しかない日本語教育能力検定試験に挑むよりも確実であり、何より実践的な知識が身に付くと思ったからです。
ちなみに、日本語教育能力検定試験の情報は下記サイトにわかりやすくまとめられています。こちらの記事によると、合格率は20%台前半。決して簡単な試験ではないことが分かります。
私が選んだ学校
2006年の4月から、新宿にあるアークアカデミーという学校に半年間通いました。
特徴1. それぞれに合った学習ペース
授業は大学の講義のような感じで、自分のスケジュールに合わせて取る量を調節できます。2年かけて資格を取る人もいれば、私のように半年で終える人もいます。
学校では、上の写真にあるテキストを使いました。文法や文字、語彙など言語の要素に当たる部分はもちろんのこと、学習者の心理に関することや、背景に当たる社会文化的なことに関する部分もしっかり勉強します。
特徴2. 教育実習が充実
自己学習だけではカバーできないのが、現場で学ぶ教育実習です。アークアカデミーは個別指導のためのプログラムも充実していました。
実は、アークアカデミーには日本語学校も併設されていて、日本語を勉強している外国人学生もたくさん通っています。そのため、実際に外国人学習者を相手にした実習や、個人レベルでの触れ合いを体験できるのが、私がこの学校を選んだ理由でした。
実習中の嬉しかったエピソード
教育実習ではこんなことがありました。マンツーマン指導の実習で、私はタイ人の男の子を担当しました。休日に何をするかについて作文してもらい、添削するというプログラムです。
その時に、彼がタイで実際に見た映画の半券を私にくれたのです。プリントされていたタイ語はもちろん読めませんでしたが、嬉しくてしばらく大事にとっていたのを覚えています。
教壇の上からの視線だけではなく学習者目線での授業について学べたことは、私にとって大きな財産となりました。
特徴3. オンライン受講も可能
また、私が通っていた時はなかったのですが、今ではWeb講座も選択できるようになっているようで、本当に便利になったなと思います。
アークアカデミーは、日本語教師を目指している人たちへ、卒業生として自信を持っておすすめできる学校です。
基本情報
- 名称:アークアカデミー 新宿駅前校
- 住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-24-1 エステック情報ビル地下1階
- アクセス:新宿駅西口地下直結、徒歩5分
- 受付時間:月~金 9:00~17:00(休日:土日祝日)
- 電話番号:0120-555-520
- 公式サイト:https://yousei.arc-academy.net/
いざ!カナダ人に日本語を教える
2006年秋に学校を卒業し、カナダのサスカトゥーンへ越してきました。2007年1月からこちらの大学に通いつつ、日本語を教え始めます。
マンツーマン指導からスタート
最初は個人指導のみで教えることにしました。個人の能力に合わせて授業をプランし進めていけるのが、マンツーマン指導のいいところです。
複数を1度に教えるグループレッスンは、人数が増える分、同じ時間でもらえる金額は大きくなりますが、最初は個人指導で要領をつかみたいと考えました。
また、個人指導の場合は、お互いのスケジュールを見て都合のいい時にレッスンができます。日にちの都合がつかないので受けられない、という生徒は大分少なくなります。
生徒を探す方法
最初の1年は、チラシを作って大学にある掲示板に掲載しました。あとは、上の写真のような街の大通りの広告塔や喫茶店など、たくさんの人が注目する場所に同じチラシをペタペタと貼って回りました。
1人目の生徒はナイジェリア人の女の子でした。日本のアニメを字幕なしで見たい!という夢をかなえるために勉強が始まります。
1年くらいしてから、オンラインのフリーマーケットサイトで語学関係のチューターとして広告を出せることを知り、それ以降はこのサイトを利用しました。
- Kijiji:https://www.kijiji.ca/
このサイトでは、誰でも無料で商品を売り買いしたり、サービスを紹介したりすることができます。サスカトゥーンでは、中古品を売りたい時などによく使われる、とても便利な存在です。
教材と教え方の工夫
基本的には、スリーエーネットワークが出版している「みんなの日本語」という教科書を使って指導しています。
この教科書は、アークアカデミーで指導方法を勉強していた時に使っていたもので、自分で内容もよく読み込んでいる上、使いやすいので愛用しています。
要望に合わせてプランニング
ただ、生徒の中には「ひらがなカタカナは覚えたくない。会話だけ勉強したい」という人や「JLPT(日本語能力検定試験)を受けるための勉強がしたい」という人もいます。
そういった要望がある時には、その生徒独自のレッスンをプランニングします。このあたりは、教師としての能力が問われるところです。
生徒の中には、スポンジのように何でも吸収できる人もいるのですが、一つのことを覚えるのにずいぶん時間がかかってしまう人もやっぱりいます。
一人ひとり効果がある教え方は違うため、興味をいかに持続させて苦痛にならない勉強をさせるか、四苦八苦しながらその人に合ったレッスンを心がけています。
こんな生徒を教えてきました
生徒たちは、年代も目的も本当に様々です。下は小学生から、上は40代まで指導した経験があります。
日本のアニメが好きで、いつか日本に行ってみたいと思っている人。大学の派遣プログラムで横浜に行くことになったので、少しでも日本語を勉強してから行きたいという人。
昔日本に住んでいた経験があって、もう一度日本語を勉強したいと思っている人。ワーキングホリデーで日本へ行きたいという目標に向かっている人。
日本語を学ぶ動機や目指すゴールは違っていても、日本という国や文化が好きで憧れている気持ちは同じです。彼らの背中を押してあげられるのは、とても嬉しいことです。
生徒とサービスの交換も
生徒の1人はギターを教えているミュージシャンで、彼とのレッスンは少し特別です。
最初の2年は私が日本語を教えるだけだったのですが、ここ数か月はお金の代わりに彼からギターのレッスンを受けています!こんな形でサービスを交換し合うのも楽しいですよ。
カナダでの授業形態の移り変わり
3年くらいして慣れてきた頃には、グループレッスンも始めました。
この頃は一番生徒が多く18人でした。単純に1人1時間としても、週に18時間=1日2~3時間は日本語を教えていた計算です。
当時は私に0歳と2歳の子供がいたので、レッスンに合わせてお昼寝の時間を調整したり、合間を縫って外遊びさせたりと、色々大変だったのを覚えています。
レッスンも、2週間に1回だったり、1回の時間が90分と長めだったり、生徒のスケジュールに合わせて臨機応変に対応していました。
ここ3年ほどは同じメンバーを教えています。子供の数が増えて自宅での指導が限界になってきたので、現在うちに来る生徒は2人だけです。他の生徒は喫茶店で会うか、生徒の家でのレッスンとなっています。
カナダの学校で日本語を教えたい場合は?
個人でチューターとして指導するのではなく、学校で教壇に立って教えたいという人へ向けて、このサスカトゥーンの街の学校で教える場合に必要な資格などを紹介します。
日本語学校で教える
サスカトゥーンには日本語学校が1校あります。規模は大きくないのですが、創立42年(2018年現在)と歴史があり、夏には街の日本人会と共同で運動会を開催したりもしています。
学校といっても建物はなく、週末に校舎を開放している公立学校を使っています。
2018年の生徒は30人弱、そのほとんどがカナダ人学生です。1976年の設立からしばらくは、駐在家庭や仕事の関係でサスカトゥーンに住んでいる日本人家族のための日本語の補習校という形で機能していたそうです。
校長先生に確認したところ、この日本語学校の先生として働きたい場合は特に資格がなくても大丈夫ということです。ワーキングホリデーでカナダに来た人はもちろん、学生のボランティアも大歓迎。経験を積んでみたいと思っている人には最適な職場です!
基本情報
- 名称:サスカトゥーン日本語学校
- 住所:年度により異なる
- 営業時間:年度により異なる
- 公式サイト:https://japaneselanguagesaskatoon.com/
高校で教える
ここサスカトゥーンは日本のいくつかの街と姉妹都市関係にあり、毎年交換留学プログラムで何十人もの生徒が行き来しています。その関係もあり、市内の公立高校のうち3校では日本語を履修することができます。
日本語は3レベルで、全て終える頃には初級の文法・語彙はひと通り学べるようになっているとのことです。私は一時期、先生に頼まれて高校でボランティアとして教えていたこともあります。
高校で教えるためには教職免許が必要です。日本の学校で取ったものでも、こちらの大学の教育学部を卒業して取ったものでも、どちらでもよいそうです。
2018年現在、たった1人の日本人の先生が3つの高校を回って教えています。急な病気の時などに代理の先生もいない状況のため、需要は確実にあるようです。
大学で教える
2014年からは、サスカトゥーン市内にある州立サスカチュワン大学でも日本語の講義が始まりました。私の知人である北海道出身の先生が講師をしています。
2つのレベルの日本語クラスに加え、映画などを利用しながらカルチャー的な部分を中心に学ぶクラスが用意されています。
これらのクラスは毎年、履修希望が殺到するほどの大人気です。若者の間で、日本とその言語に対する関心が高いことが伺えます。
大学での授業は高校のそれと比べると、同じ初級レベルのクラスでも内容が濃く、深いところまで学べるようです。プレゼンテーションが多く、読み書きの能力に加えてコミュニケーション力を養うことが期待されていると言えます。
まとめ~好きな街で仕事を続けることができる
ふとしたきっかけから日本語教師になった私ですが、こうしてカナダで無事に仕事を続けることができています。
サスカトゥーンは小さいものの、海外、そしてカナダで日本語教師になることを夢見ている方におすすめできる素敵な街です。日本語を習いたいと思っているカナダ人も結構見つけやすいと思います。学校でたくさんの学生を教えるもよし、家庭教師スタイルでの指導もやりがいがあります。
寒い冬の対策だけは忘れずに、カイロをたくさん持参してぜひいらしてくださいね!
※この記事の内容は2018年12月現在のものです。
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