ストックホルムでの住宅探しは、賃貸・分譲に関わらず、非常に大変だと在住者の誰もが口を揃えます。ここ数年で人口が急増したことに加え、以前から指摘されている住宅不足がいまだに解消されていないことが原因としてあげられます。
スウェーデンに来た外国人にとっては、住宅探しは本当に悩ましい問題というのが現実です。
今回は、賃貸物件が極めて少なく、住宅探しが困難なストックホルムでどのようにして、賃貸物件を探すのかその方法について紹介します。※1スウェーデン・クローナ=約13円(2019年1月)
ストックホルムでは賃貸物件に住むのに10年待ち
スウェーデンでは、賃貸物件を運営する会社が、アパートなどの物件を実質所有しています。人々は年間費を支払い、物件を借りる権利を取得します。その権利を放棄しない限り、半永久的に貸し出し物件に住むことができる仕組みになっています。
ところが、実際には、この権利を有するまでが長い道のりとなり、人々を悩ませます。
賃貸物件空き状況
ストックホルムの地元紙、SvD(Svenska Dagbladet)によると、2017年1月時点で、556,000人がストックホルム市の賃貸物件空き待ちのウェイティングリストに記載されています。
賃貸物件の待ち期間
また、ストックホルム市の賃貸運営会社をまとめる公的機関(Stockholms Stads Bostadsförmedlingen)の発表によると、賃貸住居に住めるまでの待ち期間は、平均8〜10年かかります。
さらに、人気があるストックホルム中心地では、17年〜23年待なければ住むことができないとのことです。
分譲物件はオークションで購入
中古住宅は競り落として買う
住宅不足が深刻なスウェーデンでは、分譲物件を買うにも一苦労します。それは、物件を購入するためには、オークションに参加し競り落とさなければいけないからです。
新築の住宅の場合、デベロッパーが提示する金額で購入できるので、固定価格となっています。
しかし、中古住宅の販売では、オークション形式が採用されます。物件オーナーがスタート希望価格を定め、購入希望者が希望額を入札していくシステムです。
欲しい物件を見つけ、競合する人がいれば、値段はどんどんつり上がります。欲しい物件が希望通りの価格で購入できないことも珍しくはありません。
売主市場で購入のサインをするまで気が抜けない
物件選びに欠かせない内覧は、オーナーが希望する時間に行われることがほとんどです。たいていの場合、週末のお昼どきか月曜日の夜に行われます。
家を購入するかどうかを、限られた内覧時間で決断しなくてはいけません。スウェーデンでの分譲住宅の購入は即決力が必要です。
また、運良く競り落とせたとしても、オーナーが希望する売値に達していなければ、オークションは始めからやり直しということもしばしばあります。
サインする直前で、自分が競り落とした金額よりも高く買いたい人が現れて、契約ができないケースも実際にはあるようです。
契約のサインを交わすまでは何が起こってもおかしくないというのが、スウェーデンの不動産売買の基本です。
列に並ばなくても賃貸に住む方法
賃貸物件にすぐに住むことができず、物件の購入にも苦労がつきまとうスウェーデン。「スウェーデンに来たばかりの人は、どうやって家を探すのか?」と考えてしまわれる方も多いと思います。
実は、10年待たなくても、賃貸物件に住むことは可能です。
セカンドハンドとして賃貸物件を探す
「賃貸物件に住むには長蛇の列に並ぶ」で紹介した、賃貸物件に住む権利を保有することをスウェーデンでは、ファーストハンド(Förstahand)と呼びます。
ファーストハンドの人は、自分が権利を有する賃貸物件を、他者にセカンドハンド(Andrahand)として、又貸しをすることができます。物件管理会社の規定にもよりますが、また貸し可能期間はおよそ2年までです。
ファーストハンドで賃貸に住むことができない人は、セカンドハンドとして賃貸物件を探すと見つけやすくなります。
賃貸物件を探すときの注意ポイント
長期で住めるところを探す
スウェーデンでは、バケーションなどで家を留守にする人が、自宅をそのまま貸し出すことがあります。しかし、このような場合、貸し出し期間が短いことがほとんどで、数か月の期間限定となってしまいます。
短期貸し出し物件に住むと、当然のことながら引越しの繰り返しが必要です。引越しの繰り返しを避けるためにも、最初からなるべく長期で借りれる物件を探す方がおすすめです。
物件は見つけたらすぐに契約
ストックホルムでは、少しでも気になる物件を見つけたらすぐに契約すべきだと言われています。慢性的な住宅不足が続いているので、今日ある物件は明日にはないということもしばしば起こるためです。
賃貸市場は、大家さんのほうが貸したい人を選ぶことができる貸し手優先となっています。ロケーション、家賃、部屋の大きさ、賃貸可能期間など、何を優先するかを見極め、即行動することが大切です。
折り合いをつけて探すことが早期に物件を探せる鍵となるでしょう。
間取りの表示について
スウェーデンでは、間取りや部屋数を表す時に、LDK表示はしません。リビングルームと寝室を分けずに表記します。
例えば「3rum, 69m2」と記載がある間取りは、キッチン1つ、リビング1部屋、寝室2部屋、バスルーム1つということを表しています。rumは部屋という意味です。平米数にはバルコニー面積は含まれませんが、ウォークインクローゼットは含まれます。
洗濯設備について
スウェーデンの集合住宅では、洗濯機がない住宅も多く、その場合は共同で同じ建物内に設置されているランドリールーム(Tvättstuga)を使用します。コインランドリーのように大きい洗濯機や乾燥機を無料で使用することができます。
特に古い住宅が多いストックホルム中心部では、洗濯はランドリールームで行うのが一般的です。
ランドリールームは、予約制で使用します。洗濯をしたい時にすぐに使えないこともあるので、洗濯はまとめて、計画的にする必要があります。
物件広告に、
- Tvättmaskin i bostadとあれば「住居内に洗濯機あり」
- Torktumlare i bostadは「住居内に乾燥機あり」
という意味です。その場合は、わざわざランドリールームに行かずに自宅で洗濯が可能です。
70m2(2ベッドルーム)物件の相場と物件設備
海外は家が広いというイメージがありますが、ストックホルムでは、70m2くらいのアパートに家族4人で住んでいることも珍しくはありません。
70㎡のアパートの間取りとしては、キッチン、リビングルーム、バスルーム(トイレ1つ)、2部屋の寝室というのが一般的です。
中心部の家賃相場
- エステルマルム(Östermalm):23,000SEK〜26,000SEK(約30万円〜34万円)
- ヴァーサスタン(Vasastan)、クングスホルメン(Kungsholmen):22,000SEK〜25,000SEK (約29万円〜33万円)
- セーデルマルム(Södermalm):21,000SEK〜24,000SEK (約27万円〜31万円)
郊外の家賃相場
- ソルナ(Solna)、ブロンマ (Bromma)、リリエホルメン (Liljeholmen)、ストックホルム中心部から地下鉄で15分以内の地域:16,000SEK〜19,000SEK (約21万円〜25万円)
- ソーレンチューナ(Sollentuna)、フッディンゲ(Huddinge)、ベーリンビュー(Vällingby) 、ファーシュタ(Farsta)、ストックホルム中心部から地下鉄で15分以上の地域:14,000SEK〜18,000SEK (約18万円〜23万円)
光熱費
基本的にセカンドハンドで集合住宅を借りる場合は、水道代、暖房代、Wi-fiなどのブロードバンド代は家賃に含まれます。
ストックホルムでは、地中に温水パイプが張り巡らされていて、それが集合住宅などの各家庭に行き渡るようになっています。各家庭に届いた温水は暖房として利用されます。
また、住宅には2重窓や3重窓が採用されているので、暖房の保温効果も高く、外は氷点下の冬でも、部屋の中は暖かく快適に過ごせます。
家具付き物件の方が探しやすい
物件は家具付きと家具無しの両方があります。しかし、物件数でいうと家具付きの方が圧倒的に多いです。
冷蔵庫・オーブン(ビルトインタイプ)は、家の設備の一部という位置付けなので、家具無しでも家具付きでも備え付けです。家具付きの場合は、電子レンジも使用可能です。また食器類、リネン類も貸出しに含まれていることもあります。
賃貸物件の探し方
セカンドハンドコントラクトを取り扱うサイト
スウェーデンでは、街中に不動産屋はあっても取り扱っている物件は分譲がほとんどです。そこで、賃貸物件は、ネットで探すのが一般的となっています。
ボースタッドディレクト(Bostad Direkt)
セカンドハンドの物件を取り扱っているサイト。自分のプロフィール情報などを登録し、サイト上で申し込みをします。
気になる物件の紹介ページから「Show Interest」をクリックすることで、大家さんに自分の情報が開示されます。その後、貸し出し可能であれば、大家さんから連絡をしてくる仕組みです。
以前は登録代として、700krが必要でしたが、今は無料になりました。
カーサ(Qasa)
登録利用料は無料。家賃にQasaへのマージンが含まれているので、家賃が相場よりも少し高めに設定されているようです。
パーソナルナンバーがなくても、登録、申し込みが可能。サイトから、どの物件にどれだけの人が申し込みをしているかを確認できます。
敷金
どちらのサイトでも礼金はありませんが、敷金(Deposit)を家賃の1か月分としている大家さんがほとんどです。
SNSや自分のネットワークから探す
フェイスブックの日本人掲示板などで、ときおり、部屋を貸したい人の情報が出ることもあります。ご自身の希望に合う物件が見つかれば、日本語での詳細のやり取りが可能なので、スムーズに交渉ができそうです。
また、自分のネットワークから、賃貸物件を探す方法もあります。スウェーデンは、直接的な知人でないにしても、誰かの紹介というだけ信用度が高まり、物事が進みやすくなる傾向があります。
人づてで物件を探すことは、日本ではあまりありませんが、ここスウェーデンでは選択肢として充分に成り立ちます。スウェーデンに来た当初、私は人づてで、賃貸物件を借りることができました。
私の賃貸物件探し
私は、スウェーデンに移住するにあたり、家族4人分の家財道具を日本から船便にて送りました。家財道具には家具類も含まれていたため、家具なし物件をストックホルム内で探しました。
ストックホルムでは、家具付き物件が多くを占めていること、物件数が限られていることから、賃貸物件を探すのは容易ではありません。
しかも借りたくても大家さん次第でことが運びます。家族4人が安心して住める場所がすぐに見つかるかの不安が常にありました。
そのような中、夫の会社の同僚が、アパートを貸したいという知人を紹介してくれました。紹介された人は、賃貸物件に半永久的に住む権利を持つファーストハンドの家族でした。
家族構成はうちと同じく4人、供給が少なく探すのが難しいと言われた、寝室が3つあるアパートに住んでいました。
この家族が、スウェーデンの田舎町に引っ越すことになったので、ストックホルムのアパートから荷物を全て引き払い、一時的に貸し出すことにしたのです。
偶然にもその家族が親日家だったことも幸いし、物件の契約もとんとん拍子に進みました。スウェーデンでは、人とのつながりが功を奏すると感じた瞬間でもありました。
まとめ
住宅供給不足から、賃貸住宅に住むまでに、信じられないくらい長い時間がかかってしまうのがストックホルムの賃貸市場の現状です。
又貸し物件を借りるにも、大家さん次第でことの成り行きが決まります。そして、分譲物件の購入はオークションで競り落とさなければいけないので容易ではありません。
ここストックホルムで、安定して住める家を見つけることは、大変なことの一つと言えるかもしれません。
スウェーデンでの住居探しで大切なのは、早めに行動を起こし、早く決断することです。そうすることで、住宅探しの負担を減らすことができるというのが在住者の間での共通の見解です。
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