スウェーデンで起業・独立する際の各種登録と必要事項

スウェーデン スウェーデン生活・移住

北欧スウェーデンで仕事をすると聞いた時、みなさんが思いつくのはどんな事でしょうか?

高福祉国家?税金の高さ?夏休みが長いって本当?どれも本当です。そして企業勤めをするのとは違い、海外拠点で起業する・独立するために一体どんな知識や登録が必要なのでしょう。

ここではスウェーデンで起業するために絶対必要な知識をご紹介すると共に、筆者が実際に起業した際の手順を追って方法や順序・手続きなどをまとめてみました。

スウェーデンで独立・起業するために必要な滞在許可の申請

デスク

滞在許可(レジデンスパーミット)/就労許可(ワークパーミット)の申請

スウェーデンで起業をするのに、まず持っていなければお話にもならないのが「滞在許可」(Uppehållstillstånd)です。滞在許可は、その国に滞在するために必要な許可証ですが、一般的にはビザとも呼ばれます。

移民や難民を比較的受け入れているスウェーデンですので、移住が簡単そうに見えますが、スウェーデンの滞在許可を取得するのは実はとても困難です。

ひとくちに滞在許可と言っても厳密にはいくつか種類があり、それぞれ性質が異なってきます。

例えば起業をするにしても、スウェーデン住む恋人や婚約者・配偶者が既にいる場合は滞在許可(婚姻ビザ、同棲ビザ、家族ビザなど)の申請をするほうが下りやすいですし、特につてがなく単身で事業のためだけに入国するには就労許可の申請をすることになります。

婚姻による家族ビザや同棲のための同棲ビザ(サンボビザ)は手順さえ踏めば時間がかかっても取得できることが多いですが、自分の事業を立ち上げるいわゆる自営の形態で3ヶ月以上スウェーデンへ滞在するためには、まず就労ビザの申請が必要です。

また、自営業という形態の就労ですので、他の会社で雇用されるわけではありません。

スウェーデンで就労ビザを取得する場合、その仕事が自分でなければできない付加価値のある事業内容であったり、実際に勤めている/または過去に勤めていた会社の支社・現地オフィスという形で独立する場合など、以前の雇用主からの証明書や保証が証明できる場合、就労ビザは比較的下りやすくなると言えるでしょう。

申請する際に、過去の雇用形態・給与証明および保険の証明が必要となります。なので、たとえばこれまで無職だった人が、突然一念発起してスウェーデンで起業するぞ、と思い立ったところで滞在許可が下りることはないのです。

また就労ビザの取得の場合、自分を含めて家族(配偶者や子供)の一切の扶養が自身でまかなわれているという証明が必要です。

ですから家族を連れてスウェーデンへ移住を考えている場合、家族の滞在許可も一緒に申請する必要があります。

滞在許可(レジデンスパーミット)申請の必要書類

滞在許可の申請のために必要な書類は、以下の通りです。

  • 有効なパスポート
  • 自分の事業が、何らかのエキスパートであったり特別な資格を有すると証明できるもの
  • スウェーデン語か英語のスキルを証明できるもの
  • 最低半年間以上の事業計画書
  • 物販の場合、スウェーデンでの商材
  • 銀行証明書
  • 運転資金の証明
  • 事業提携や事業買収などの場合の証明書、獲得予定の顧客データなど

滞在許可(レジデンスパーミット)の申請方法

スウェーデンで独立、または起業すること(いわゆる自営業)をEgetföretagareと言います。滞在許可証は移民局(Migrationsverket)に申請をしますが、移民局には常に莫大な待機人数がいるため1年近く待たされることもあります

申請は、基本オンラインで日本からできますが、証明書や必要書類が非常に多いので、漏れのないように正確に揃える事を心がけましょう。それでは、申請の仕方について細かく見ていきましょう。

  • パスポートのコピー

最初の顔写真・サイン・パスポート番号・発行された国や官庁・有効期限の明記されているページのコピーが必要です。

また、滞在許可証はパスポートの有効期限内でしか発行されないため、有効期限が1年のパスポートよりは10年のパスポートの方が良いでしょう。

  • 銀行証明

最初の2年間の滞在の間、生活を保障できるだけの残高証明が必要です。

定められている金額は、自身の滞在のために20万クローナ(約240万円)、配偶者のための10万クローナ(約120万円)、子供がいる場合一人につき5万クローナ(60万円)の金額となっています。

※1スウェーデンクローナ(SEK)=約12円。2019年1月現在のレート

  • 事業の運営費用の証明書

銀行の残高証明ですが、たとえば物販の場合は買い付けのための金額、滞在理由がスウェーデンの起業買収の場合は資金の証明など、運営するための必要経費を証明できるものが必要になります。

  • 事業買収の場合は、契約書を同封
  • 事業提携の場合は、パートナーシップ契約書、または株主登録書
  • 過去2年間の年次報告書、前月までの会計年度の貸借対照表と損益計算書のリポート

同封することによって、事業の形態をアピールすることができます。

  • 英語、またはスウェーデン語を話せると証明できるコースなどの修了書

たとえば、大学の卒業証明書など学歴を証明できるものやTOEFLなどのスコア証明が良いでしょう。

  • 以前の雇用主からの雇用証明書と税金証明書

過去の仕事経験がわかるので、スウェーデンでは必ず必要な証明書のひとつです。

  • スウェーデン以外に所有している自分の会社の登録証明書

もし、事業拡大などの理由での移住の場合は必要です。

就労許可(ワークパーミット)の申請にかかる費用

就労許可証を申し込むときに必要な費用は以下の通りです。また、支払いはオンラインでクレジットカード決済でできます。日本から銀行振り込みをする場合は、自分の口座のある銀行へ相談しましょう。

  • 独立・起業の場合の労働許可証(個人事業主としての会社登録の場合など):2,000クローナ(約24,000円)
  • 上記の配偶者:1,000クローナ(約12,000円)
  • 上記の子供(18歳以下の場合):500クローナ(約6,000円)/1人当たり

※1スウェーデンクローナ(SEK)=約12円。2019年1月現在のレート

この場合、申請者の配偶者や子供(扶養家族)には申請者に付属するという前提での家族ビザがおりることになります。

家族をともなう場合、扶養家族にも滞在許可としての家族ビザの申請が必要です。家族ビザ発行後の配偶者はスウェーデンでの労働が可能になります。

移民局への振込先案内

IBAN SE6912000000012810106908

BIC/SWIFT code DABASESX

振込先銀行名Danske Bank

振り込みの際にはメッセージ欄に依頼主の氏名・振込みの内容(就労許可の申請など)・家族の氏名を明記するのを忘れないようにしましょう。

また、申請書のほうにも空欄に振込みを済ませた旨を別途記載しておくのが良いでしょう。

税務署への国民登録

書類

国民登録と税金登録

滞在許可が下りたら、まず真っ先にすべきことは税務署への登録です。登録すべき内容は

  1. 国民登録(住所登録)
  2. 税金関係の登録

の2つがあります。それぞれについて述べていきましょう。

国民登録はなんのため?

運よく滞在許可が下りたら、まず真っ先にするべき事はスウェーデンへの国民登録です。スウェーデンではすべての国民が出生時に国民登録番号(ID)によって登録されており、国民登録番号なしに銀行口座の開設や携帯電話の契約すらできません

国民登録を行うと、国民登録番号が発行されます。

この国民登録番号の入った書類を持って再度移民局へ赴くと、顔写真の撮影や指紋の採取、身長の自己申請などの後、スウェーデン出入国の際に必要な滞在許可証(プラスチック製のカード)が発行されます。

以前はパスポートに判を押す形式だった滞在許可証ですが、現在は全てプラスチックのカード式に変わっており、ビザとしての役割だけではなく日常的な身分証明書代わりにもなります。

このカードは滞在許可証としてパスポートと共にスウェーデンへ出入国の際にも必要なものとなりますので大変重要です。

ですから、国民登録はこれから起業しようという時だけでなく、スウェーデンで生活するためには必要不可欠ということになります。スウェーデンへの国民登録は税務署で行います。

国民登録の方法

スウェーデンでは国民登録をFolkbokfördと呼びます。登録は自分の住む町の税務署で行います。これは日本でいう市役所での住所登録同様のもので、今後戸籍謄本同様の役割を担います。

つまり、パスポートの申請や就職・進学などにともなう個人の証明書は、税務署より発行されるものが公的な証明書となってくるのです。

滞在許可が下りたら税務署で国民登録をすると、申請より大体1か月ほどで国民登録番号が発行されます。

国民登録をするに当たって必要な書類は以下の通りです。日本から持参する証明書は英語で発行し、コピーではないオリジナルが必要です。また、家族を伴う場合には、配偶者や子供の証明書も必要になります。

  • 有効なパスポート
  • スウェーデンでの滞在許可の証明(Uppehållstillstånd)
  • 婚姻証明(戸籍抄本・戸籍謄本など)
  • 出生証明書(戸籍抄本・戸籍謄本など)

税金登録

国民登録番号(ID)が発行されたら、税務署で税金を納めるための税金登録をする必要があります。

スウェーデンで事業を行う外国人事業家が登録する税金登録はF-Skatt(F-Tax)と呼ばれます。まずは税金登録をしましょう。

税金は仕事をした年の年収によって払うため、仕事を始めた2年目以降から所得により支払いが発生し、毎年税務署より通知がきます。

所得に関しての申請は、その年の1月から12月までの所得を次の年の3月末までに申請することになりますが(いわゆる青色申告)、申請はKivraというサイト経由でオンラインでもできますし、オンラインシステムを利用していない場合は税務署より送られてくる申請用紙を用いることもできます。

付加価値税の登録

税金

税金登録の際に、起業した仕事がサービスや物販系の場合、MOMS (VAT)と呼ばれる付加価値税の申請の登録を一緒にする必要があります。

スウェーデンの付加価値税は日本でいう消費税のようなものですが、一般商品やサービス25%、食品12%、書籍など6%と物によってパーセンテージが異なります。

たとえば物販の場合、仕入れに掛かった金額(支出)と売り上げ(収入)のうちから、各商品の付加価値税の収支の差額を計算し、付加価値税の支払いの義務および還元がされることになります。

また付加価値税の申請は月1回、3か月に1度、年1度など状況に合わせて選べるようになっています。

雇用主登録

もし、あなたが個人事業主であり従業員がいる場合、雇用主登録をする必要があります。それは、雇用主は従業員へ給与を支払う他に労働者の社会保障の為の拠出金を支払う必要があるからです。

社会保障のための拠出金と言うのは、例えば従業員が病気や怪我をした時の保障や、出産や産休に伴う育児休暇金の保証などのことです。

会社登録方法

やっとスウェーデンで起業することになったら、Bolagsverket(事業登録機関)へ自分の事業を登録申請する必要があります。まず、会社登録する場合どのような企業形態で登録できるかを見てみましょう。

  1. 個人事業主…1人で行う事業形態
  2. トレーディングパートナーシップ…最低2人以上の事業形態
  3. 投資事業有限責任組合…ヘッジファンドのような投資組合、最低2人以上の事業形態
  4. 有限会社…最低1人以上の事業形態で、資金が5万クローナ(約60万円)以上
  5. 株式会社…最低3人以上の事業形態で、現金や投資などの証明が必要(事業による)

社名の登録

次に、事業内容や会社名、店舗名(いわゆる屋号)などを申請します。

こちらは候補が3つまで記入できるようになっていて、スウェーデン国内に似たような事業内容の似たような店舗名などがあった場合には申請が下りないこともあるので、よく吟味しましょう。

登録に掛かる費用

まず申込用紙を購入するのにお金が掛かりますので、専用のアプリケーションをダウンロードして使用するのが良いでしょう。

  • アプリケーションの利用は無料
  • Eメールで申込用紙を取り寄せると94クローナ(約1,150円)
  • 書類で申込用紙を取り寄せると250クローナ(約3,000円)

となっています。

申請用紙を取り寄せる場合、メールにて下記へ連絡を取ります。

申請が下りて事業が登録されたら、さらに登録料が掛かります。登録手数料は事業形態によって細かくわけられており金額も異なりますが、Bolagsverketから支払い請求書が届きますのでそれを元に支払いを済ませます。

申請してから、申請が下りるまでの日数は事業形態によってまちまちですが、新規事業であったり初めての事業登録の場合には1か月以上掛かるのが普通です。

また、スウェーデン人は6月から8月に掛けて長い夏休みを取るのが一般的なため、この時期に申請すると通常よりも人手がないため、余分に時間が掛かる恐れがあるのを「スウェーデンあるある」として覚えておいたほうが良いでしょう。

個人用と会社用の銀行口座の開設

銀行

さて、会社登録を待っている間に銀行口座の開設をしましょう。スウェーデンでは仕事のない(収入のない)人には銀行は不要、ということで日本のようには簡単には銀行口座が作れません。

また、日本のように複数の銀行へ口座を開設することもできませんので、銀行は後々のことも考えてよく吟味したほうが良いのです。個人口座と、会社の口座の2つを開設しますが、この2つの口座は別々ではなく同じ銀行に開設することになります。

また、今後の事業の拡大や事業不振などで銀行から融資を得ることは個人事業主ではほぼ無理だと言うことも覚えておいて下さい。

スウェーデンの銀行は下記のようにいくつかあります。太字の銀行が大手ですが、ここでは顧客の満足度順にご紹介するので、ぜひ参考にしてみて下さい。

大手の銀行の満足度が軒並み低い結果となっていますが、ローンの組みにくさが影響していると考えられます。その中でHandelsbankenは比較的ローンが組みやすいとは言われていますが、それでも個人事業主ではかなり困難です。

  1. Länsförsäkringar Bank(76.1%)
  2. Handelsbanken(72.2%)
  3. Sparbankerna(72.2%)
  4. Skandia(70.7%)
  5. ICA Banken(70.1%)
  6. Danske Bank(65.7%)
  7. SEB(67.5%)
  8. Branschen(66.1%)
  9. その他の銀行(満足度65.4%):Bank Norwegian/Marginalen Bank/Avanzaなど
  10. Swedbank(59.5%)
  11. Nordea(58.5%)

(2019年1月buffert.se調べ)

口座の開設方法ですが、銀行によって異なります。まずは、口座開設予定の銀行へ電話で問い合わせをして、必要書類などを各自確かめます。

特に個人口座ではなく、会社の口座を開設する場合は明確な事業計画書などを提示する必要もあるので、間違っても直接銀行へ突撃しないほうが賢明です。

なぜなら、一般的にスウェーデンでは窓口担当は自分の仕事である窓口業務以外の仕事をしませんので、会社の口座開設を希望する場合、直接銀行の窓口へいっても取次ぎもしてくれないし、名刺を渡されて「ここに電話して」と言われて終わるからです。

まず初めに銀行へ電話をすれば、交換手がエキスパートである担当者へ電話を回してくれ、口座開設のための必要書類を教えてくれたり、ミーティングの日取りを決めてもらえますので無駄足にならずにすみます。

事業のために必要な各種資格と登録

リスト

事業ごとに必要な登録

日本と同様に、スウェーデンでも事業を展開する為に必要な資格と販売許可などの登録が必要になってきます。

許可の登録は事業によって異なりますが、まずはどんな種類の登録をどこへ申請すればよいのかをまとめてみました。

特定の危険物、薬品や物質を取り扱う場合の申請です。

スーパーマーケットのような食品店やレストランなどの登録申請ができます。

3.5%以下のビール飲料(Fölköl)の販売許可を申請できます。

  • アルコールの販売 (Serveringstillstånd)

スウェーデンでは3.5%以上のアルコールの販売は個人ではできませんが、レストランなどでの取り扱い資格が申請できます。コミューンによって違いがあるので、お住まいの地域で確認して下さい。

また、レストランなどでのアルコール類の取り扱い許可を代替申請してくれる民間の会社も多数あります。

まとめ

夢の海外生活ではありますが、起業するのには途方もないエネルギーが要ります。それが海外での起業であればなおさら、言葉の壁やシステムの違いなど乗り越えるべき困難もたくさんありますよね。

特にスウェーデンでの起業に関して、最も気をつけなければならないのが、税金関係の登録や支払いです。

高福祉・高負担国家であるスウェーデンは、国民ひとりひとりがきちんと税金を納めることで国が回っているともいえますので、納税の義務をきちんと果たすことがとても大切なのです。

ただし、それだけの事をひとつずつこなしながら手に入れた人生は、大きな意味があるといえるでしょう。

スウェーデンで起業をして頑張っていきたいと思っている方は時間は掛かりますが、まずはやるべき事を確実にこなしながら前進していきましょう!

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